妖怪の知識が無いと犯人は分からないと思います、すみません。お楽しみください。
キョウside
「オラァ!」
「ふっ!」
アカネが鉄骨を投げ、それを荒木刹那が戟で切り裂くと同時に、戦いは始まった。大百足に韋駄天…韋駄天は(持久力はともかく)速さだけならアジア大陸で一番と言われ、大百足の方は都一つを火の海に出来る程の力を持つ妖怪だ。強敵過ぎる…でもこっちは酒呑童子と、雲外鏡が付いているツクモだ。負けないとは思う…けど、見る事しかできない僕が何とも歯痒い。だけど、混ざれる気がしない。
「喰らうがよい、我が半身よ!」
「ウネウネしているのはツクモが嫌いです!」
竜崎夏目の放つ百足の様な…いや、彼女の言葉から恐らく生きている本物だと思われる百足の鞭が牙の生え揃った口を開けてガブガブと迫り、四季咲はUZIの弾丸をまばらに放ちながら後退するが、全く当たらない。やはり生きているみたいだ、勝手に避けている、アレじゃいくら四季咲でも…とか思っていたら、四季咲は何を思ったのか上空に向けて弾丸を連射し始めた。
「何のつもりじゃ…!?」
「ここは建築現場だと忘れない方がいいですよ!」
降って来たのは、壊れた資材や機械の欠片。竜崎は慌てて頭上に百足鞭をグルグルと螺旋状に渦を巻いて回転させ、それを防ぐことに集中するが、その隙を突き突進した四季咲の肘鉄が腹部に叩き込まれ、竜崎は呻く。さらにその距離でUZIを腹部に乱射、追撃しながら四季咲は後退して再び距離を取る。…さすが、一護と並ぶ実力者。これが三好辺りだったら恐らく今頃百足鞭に巻き付かれて終わってる、
「くっ…今のは効いたのじゃ!」
「何で弾丸を諸に浴びて擦り傷で済んでいるんですかねぇ…」
「この服は妾の毒でも溶けぬ特別性の物での、そんな軟な攻撃は効かん」
「つまり肘鉄みたいな急所を狙った打撃や、もしくは服で隠れていない部分を狙えと。さっきの反応から頭部への攻撃も効くようですね、ありがとうございます教えてくれて」
「何々、それぐらい知られたぐらいで…って妾の弱点が何で分かったのじゃ?」
「今自分で喋ったでしょうに…」
…とりあえず、竜崎は強いけど馬鹿だ。少なくとも「半身」らしい百足鞭が溜め息を吐くぐらいには。
「どうしたどうした!日本の代表妖怪、鬼の力はそんなものか!」
「五月蠅いとよ中国のマイナー妖怪、速いだけが取り柄の馬の骨とは比べられたくなかとね」
「…この私を愚弄するか!野蛮なケダモノが!」
一方、アカネと荒木刹那の対決は…なんというか、日本妖怪と中国妖怪のプライドがぶつかっていた。…何で挑発なんてしちゃうかな、君は酒呑童子だから正確にはただの鬼じゃなくて日本三大悪妖怪に属する稀代の大悪鬼だよね。って突っ込んじゃ駄目か、鬼ってのは変わらないし。
「よっ、ほっ、とっ!」
戟による斬撃が迫り来るが、アカネは紙一重で体を捻らせ回避、よく避けれるな。…いや、顔に冷や汗をかいているところから見て本当にギリギリ避けられているみたいだ。やっぱり速いな、流石最速妖怪。刹那…一秒の七分の一の速度だ、常人では見切れない。鬼の身体能力で避けれているような物だ。つまり、アカネが反撃に転じられない。
「どうした、避けるだけが取り柄の猿かお前は!」
「よ、避けられるものを避けているだけったい!今に目に物見せてやると!」
「ならこいつだ!」
「!?」
瞬間、アカネが吹っ飛んで鉄骨の山に突っ込んだ。何が起こったか分からなかったが、鏡に映った物を分析できる僕の力で何とか分かった。たった今、アカネは側頭部を蹴られていた。七分の一秒で、荒木刹那は蹴ってまた同じ体制に戻っていたのだ。いくら何でも、速過ぎる。アカネは無事か…?
「今のは不埒を行なった輩三人を殺した一撃だ。効いただろう?いや、もう死んでいるか。クククッ…」
「…勝手に殺すんじゃなか、なんばすっとね。そげなへなちょこキックが効いて堪るか、なめるんじゃなかよ!」
そう言うとアカネは落ちていた(恐らく四季咲の銃撃で散らばったのだろう)鉄パイプを手に取り突進、戟による一撃を柄の部分を殴り付ける事で弾き、荒木に接近。突きを繰り出し、荒木は飛び退いて避ける。さすがの動体視力だ、一度浴びた攻撃ならば見切れるとか言っていたのは本当だったのか。
「いくら速くてもパターンが分かれば簡単に避けられるとよ。ワンパターンな奴とね全く」
「馬鹿にしていられるのも今の内だぞ…!私を馬鹿にしたことを後悔させてやる!」
すると荒木の姿が翳み、次の瞬間五人に分身する。…高速移動による分身?そして同時に戟を振り下ろして斬撃を叩き込み、アカネはその場で真っ直ぐに跳躍して重なって戟の剣身に乗るがその瞬間、ハイキック五連撃が襲い掛かり(もちろん見えないが)、アカネは腕を縦に揃えて受け止めようとするが思いっきり吹き飛ばされ、鉄柱に背中から叩き付けられ倒れる。そして荒木は一人に戻り、とてもいい笑みを浮かべた。
「どうだ、後悔しただろう?」
「確かに後悔してると。何で高速移動で出来た分身が実体を持っとると、理解の範疇を超えとるけん」
「ふふん、私が凄いからに決まっているだろう」
「…そげん自信、よく出せるとね。私じゃ無理やけん、そげなアホみたいな自信持つの」
「ところで気になっていたんだけど何故下手な博多弁なんだ?馬鹿か」
「アンタに馬鹿にされたくなかとね。これはもう染み付いた物けん、しょんのなかったい」
「…ちなみに、実体のある分身はほぼ同時にそれぞれの方向で攻撃しただけだ、馬鹿め」
「あ、なるほど。納得したと。あんがとね」
「貴様、戦闘中だと忘れてないか?」
「…忘れてなかとね、失礼な」
「何!?」
瞬間、何時の間にかアカネの手から消えていた鉄パイプが空から落ちて来て荒木の眼前の地面に突き刺さり、怯ませると共に土煙が辺りを充満。荒木(と僕)の視界からアカネが姿を消す。さっき蹴り飛ばされた時にこんな手を…?と思っている内に、何時の間にか荒木の背後に回り鉄骨を振り被るアカネが見えた。
「これで終わりとよ――――――!」
「っ…!?」
一方、こちらは竜崎と攻防を繰り広げている四季咲。しかし先程までみたいな隙を見せなくなった竜崎の、カランカランと厚底下駄を鳴らしながら突進してくる
「待つのじゃー!」
「待てますか!?鉄をも簡単に噛み砕く貴方の牙を浴びたらさすがに死にますって!」
「どうじゃ、これが大百足の顎じゃ!なめるでないぞ!」
バキンバキンと馬鹿の一つ覚えと言えるぐらいに鉄骨やら鉄柱やら木材やら地面やらを噛み砕き、迫りくる竜崎から涙目で逃げる四季咲。
「というか何で暗闇で私の場所が分かるのですか!?」
「妾は元より嗅覚に優れる上に昼寝が大好きの夜行性、この眼は日光に弱いが夜でもよく見える!さらにこの触覚で生物ならば一度覚えた気配で今で言う半径5キロと言う広範囲を探れるのじゃ。鬼ごっこやかくれんぼで勝てると思ったら大間違いじゃぞ!」
「触覚レーダーって貴方もう妖怪じゃないでしょそれ!?」
確かに妖怪って言うよりは機械だ。動物っぽいのは妖怪だけど。しかし、彼女では分が悪いか…そう考えた僕は、彼女の傍にある水たまりに移動、一言呟く。
「四季咲交代だ、一護!」
「っ…分かりました…、任せろ、キョー助」
瞳が二つとも蒼く染まり、輝かせた彼女は一護に交代、同時にUZIを水溜りに投げ捨て(同時に僕が隠し部屋に送り)僕が水溜りから出した斬馬刀を掴むとくるくる回してにやりと笑う。それまでとは違う、余裕に満ちたその顔に訝しみながらも迫る竜崎。
「何のつもりじゃ…?まあよい、逃がさなければよいのだからのぅ!」
「お?大した力の割に姑息な手を使ってくるんだな、竜崎…夏目さんよォ?」
「黙るのじゃただの人間がッ!」
いきなり足に巻き付いて動けない様にしてきた百足鞭に、焦ることなく笑いながら挑発する一護。それに激高し牙を煌めかせ百足を彷彿とさせる走りで襲い掛かる竜崎。瞬間、斬馬刀の峰が竜崎の腹部に炸裂、諸に入ったのか唾液を飛ばしながら竜崎は大きく呻いて前のめりに倒れた。
「ガハ…アッ!?に、人間に出せる威力じゃない…じゃとぉ…?!」
「生憎、人間なのは体と本来の持ち主だけだ。私達は人間じゃない。まあ人肉を喰う大百足には分からないか、ほらどうしたそんなものか?京の都を大混乱に陥れた大妖怪の力は」
「くぅ…封じの注連縄さえ取れればぁ…」
「封じの注連縄?やっぱり封印されていたんだな、さっきお前はこの百足を我が半身と呼んでおったが…もしやこの百足はお前の「体」で、お前は「心」か?」
「ぐっ…!」
自身の足を縛っていた百足を簡単に手に取りぶら下げ、そう尋ねる一護に反応し憎々しげに睨みつける竜崎。どうやら当たりの様だ。
「だとしたらそんな封印を行なった陰陽師はとんでもない外道だな。生殺しだ。どんだけ妖怪に恨みがあるんだか。同情するよ、お前はされたくないだろうが」
「よく分かっておるではないか。その面貸すのじゃ、殴ったる」
「できるもんならやって見ろ。ツクモに傷を残す訳に行かないから死んでもさせないが」
睨み合う二人。いや、一護の言い分にも賛成だし、でもかといってこの大百足そこまで悪い奴じゃない気も…せっかくだ、聞いてみるか。そう思った僕は自分の姿を彼女にも見える様に光の角度を変え、姿を現す。
「…ちょっといいかい、竜崎」
「なっ!?何時から其処に居った!?気配すら感じなかったぞ!」
「ああ、キョー助は雲外鏡。暗躍とサポート、物体移動に秀でた能力持ちだからな。気配も隠せるのか、意外と便利だな」
「武器を交換した時点で気付いて欲しい物だけどね…とりあえず聞きたいことがある、ここで起きた転落事件とその昨夜に行方不明になった不良三人の事件…君達二人がやったのかい?」
「は?…答えてやってもいいが、警察には言うなよ?」
「意外と慎重だな」
「五月蠅い。セツナから散々言われとるのじゃ。目立つな、人前で人肉を喰うな、警察に目を付けられるなとな」
その格好の時点で無理だと思うのは僕だけじゃないはずだ、絶対。
「ああ、言わない。そもそも僕たちは自分たちの存在も公表できないからね、言うに言えないよ」
「そうなのか。では話すのじゃ」
ま、相当ヤバい事をしていたら縛り付けて匿名の電話を入れるけどね。だって誰彼構わず殺害して食べる様な奴を放って置くとツクモが危険だしね。
「後者の奴は確かに妾と刹那がやった。セツナが自分に不埒を行なった輩に怒りを覚えて殺害したのを二人で持ち帰り、そのまま妾の餌にしたのじゃ。セツナは元より、妾も人の食い物で飢えを凌ぐことはできるが妾は人食いの大妖怪じゃ、周期的に人肉を喰らわねば死滅する。だから時折人知れず襲い、餌を補充する…つまりは自然の理じゃよ。今回のはセツナが起こしてしまった不祥事を妾が喰らう事で証拠隠滅した訳じゃ。何か問題があるかの?」
「…待て、だったら前者はどうなんだ。君達が関与していて、証拠隠滅に来たんじゃないのか?あの毒は、大百足の物とアカネが言っていた」
「確かに死体を運ぶ際に近道だからここを通った時に毒滴を垂らしておった様で、今朝の事件は驚いたぞ。何か問題が起こってないか調べに来たら人が死んでおるんじゃからのう。もしや妾のせいかと思うたが、何やら別の妖気が残っておるしあの死因から見て別の妖怪じゃと思って、それを調べに来たのじゃよ。てっきりお主たちが犯人だと思っていたのじゃが?」
「いや、私達も調べに来て大百足の毒が在ったからてっきりお前たちが犯人だと…」
「なんじゃと?そう言えば妾の触角が一度知っているはずの妖気に反応しとらんの、すまぬ勘違いじゃった」
立ち上がり、事情を説明して一護の言葉に合掌して謝る竜崎。…やっぱりか、薄々そうだと思っていた。
「…じゃあ、確認だけど犯人じゃないんだね?」
「そうじゃと言っておる。それに妾は先刻も言った通り、証拠を残さない様に人肉を喰らうのじゃよ?死体が残っている時点で妾じゃ無かろう」
「そうだよね。さっきの話を聞いてあれ?と思ったんだ。だったら早く、あの二人にこの事を教えて戦いを止めないと…!?」
その時、僕は嫌な妖気を感じた。これは…アカネたちが戦っていた辺りからか?そう言えば、「首を折る」関係で有名な妖怪がいた様な…確かアレは「のびあがり」?…いや、あの妖怪は気を失わせ転倒させるだけだ、あんな首の折れ方はしないし命も奪わない。だとしたら、もっと悪意の在る「のびあがり」系統の妖怪…そんな奴は、限られてくる。僕は妖怪知識をフル稼働させ、正体を探る。「見上げ入道」?「星ちぎり」?「高入道」?「
「ん、どうしたキョー助?」
「お主、分からぬのか?そう言えば人間だと言っておったの。この妖気じゃ、妾が感じた妖気は。近いぞ…着いて来い!」
「あ、ああ!」
竜崎に先導され、一護がアカネたちの方に向かう。思い出せ…思い出せ…「のびあがり」系統…即ち入道妖怪の代表にして、人の魂を好み、ここまでの妖気が出せる大物…………………見越し入道!
「待って!…二人…共?」
正体に気付いた僕は慌てて叫ぶも、遅かった。二人は既に、アカネたちの元に向かっていた。…不味いな、見越し入道は視線が合ったが最後…相手を何らかの方法で殺すか何かのキーワードで退散させるまで、大きくなり続け…くそっ、何で退散ワードが出て来ない!多分簡単すぎるからだろうけども!とりあえずと、僕は水溜りを介して追いかける。その先の夜空には、巨大なスキンヘッドの影…まさか、ねぇ。
三人称side
「くっ…何が起こったい…」
「体が…動かぬ…!」
一方、セツナにとどめを刺そうとしていたアカネは、彼女共々視線が空に貼り付けにされ、身動きが一切取れぬ状態で、ただ首がどんどん、上を向いて行った。その視線の先、夜空には見知らぬスキンヘッドの大男がいて、自分達の視線に釣られる様にどんどん大きくなっていく。もう20メートルはあり、そんな巨人が現れたのに付近の住民が騒がない。それも可笑しいが、自分達の身動きが取れないと言うこと自体が可笑しい事だった。
口は動く、だが首から下は一切動かないし、首から上は大男の釣られてどんどん上を向いて行く。このままでは、首がぽっくり折れて、そのまま…
「まさか、此奴が…犯人とね…!」
「何っ、お前たちではなかったのか!?」
「う、うん。私達もてっきりアンタたちが犯人かと思っちゃて…悪かったけんね」
「いや、いい。今は此奴をどうにかしなければ…死ぬぞ…!」
「分かっておると!そんな事いきなりあらばんといて!」
「…あらばんといてって?」
「あー…叫ぶとか騒ぐとかそんな意味たい」
「なるほど、覚えとこう。…じゃなくて、どうする鬼!」
「私は酒呑童子たい!単なる鬼じゃなかと!この韋駄天!」
「おいこらそれは人間を「おい人!」と呼ぶことと同義…ってすまない、私もだな。アカネ…だったか、どうする?」
「大丈夫けん、えっと…セツナ?私の相方は頭がよかと、直ぐにこの事に気付いて打開策を練ってくれるはずけんね」
「それはいいな。私の相方は生憎馬鹿でな、人に負けると言う事さえ理解できぬ阿呆だ」
「それは難儀とねー。私にもいるとよ、人間だけど」
「…お前等いい加減にしろ!」
同じ窮地に立たされているからか、何時の間にか仲良くなっていた二人に怒号を浴びせるバリトンの効いた低い声。その声は、自分達が視線を外せない大男から放たれた物だった。
「俺の起こした事件が訳の分からない連中に嗅ぎ回れているって聞いて来てみれば…こんなアホな連中だとはな。さっさとお前らも殺して証拠隠滅だ。どうだ、苦しいだろう?」
「なるほどなぁ、全部お前の仕業か、巨人。ダイダラボッチか?」
「見るからに屑じゃのう」
そこにやって来た一護とナツメ。大男はそれを見て口を開くが、一護の顔を見てびくっと震える。
「残念だがデカいだけが取り柄のソイツとは違う…ってお前は!」
「あん?」
「忘れたのか!お前は今朝方、この俺を散々痛めつけたドS女だろうが!あの後警察に連行されて肝っ玉冷やしたんだからな!」
「あー、二藤が虐めていたスキンヘッドか。てかお前が犯人か。妖怪だと気付かない二藤も、犯人だと気付かない警察も間抜けだな。浄化させてもらうぞ」
「浄化じゃと?お主そんな事ができるのか」
「この俺を浄化だと?なめるな!」
カッ!と眩い光がスキンヘッドの額に現れた第三の目から放たれ、思わずスキンヘッドの「目」と視線を合わせてしまう二人。どうやら、そのスキンヘッドは朝に不注意でツクモにぶつかって因縁をつけ、二藤に撃退され三好の手で警察に引き渡されたあのスキンヘッドの様だ。視線を合わせてしまった事に思わず叫ぶセツナとアカネ。
「駄目だ、ソイツと目を合わせるな…!」
「動けなくなるったい!というか何で一護に代わってるけんね!?四季咲の方がいいとに!」
「何を言っておる…って、やられた…」
「う、動けぬ…こんな雑魚にしてやられるとは…」
一護とナツメまで動けなくなり、戦闘不能の状態で揃って視線が昇って行く四人。そこにやって来た、スキンヘッドには見えない様に光の角度を変えているキョウ。そして鏡影であるが為に視線を合わさずにその全体図を見た彼は、その正体を確信する。
スキンヘッドの頭の額に開いている第三の目に三白眼で鑢になりそうな顎鬚を生やした、粗暴そうながら僧侶を思わせる厳格な顔の作り、身に纏っているのは朝の様なヤクザ風の服ではなく、僧侶の着る様な黒い着物をロック風にアレンジした様な物と黒のレザーパンツで、それに似合わず首には錆びた様な赤色の数珠がかけられ、素足にサンダルを履いていた。その(服装以外の特徴から)推理通り、見越し入道だった。
江戸時代から現れた僧の姿をした妖怪で、怪しい光を放つ眼で獲物の視線を自身に固定し、その視線を餌にしどんどん大きくなって最終的には、転ばせて後頭部を強打させたり、首が折れる程に視線を固定させたり、近くの竹を落としたり、喉元を噛み千切ったりの何らかの形で命を奪う性質の悪い割とメジャーな妖怪だ。基本的に山など田舎の夜道に出るが、まあ例外もいるだろう。
転落事件は多分、奴は基本的に夜行性で魂を好んでいるから、夜明けにちょうど一人でいる被害者を見付けて視線を固定し、そしたらちょうどその足場は大百足の毒で朽ち果てようとした瞬間だったがために転落、見越し入道はその魂を食べると退散し、現場には彼の痕跡は何も残らなかった。そりゃそうだ、建築現場ではなく、建築現場から見える位置で巨大化していたんだから。ついでに言うとスキンヘッドだから髪の毛一本落ちなかったというのもあるだろう。
…ここからは想像だが、何で足場が落ちたのかで悩んでいた所にツクモとぶつかり、恐らく気弱な態度から丁度いい獲物だと思ったのだろう、いちゃもんを付けどこか人気の無い場所に誘い込もうとしたら逆に二藤に撃退された…恐らく、こんなところだ。少なくともツクモにまで危害を与えようとしたんだ、許せない…いや、許さない。怒りを燃やすキョウ。とにかく、一護の人格を交代させれば視線の固定は何とかなる筈…!そう考えたキョウは、一護の背後に在る水溜りに移動し、機会を窺う。
「…してシキザキよ」
「今は一護だ。何だ?」
「なるほどのう、人格ごと代わっているのか。一番近いのはお前じゃ。この注連縄、外せるかの?そうすれば形勢逆転できるのじゃが。妾では外せないのじゃ」
「無理だな、力を入れてもビクともしない。だが…別の私がしてやるから、安心しろ」
「? それはどういう…」
「こういう事だ、キョー助!」
「りょ、了解!交代だ…三好!」
「ただいま参上!三好ちゃんです!」
キリドヤァなんて擬音が聞こえそうな満面の笑みと共に、キョウの言葉で一護は三好と代わり視線を下にしてポイッと斬馬刀を水溜りに投げ入れ、そのまま軽やかな動きでナツメの注連縄を外した。
「なっ!?何で動ける…ってその感じは俺を警察に突き出した嘘泣き女!」
「嘘じゃないよ、泣き落としだもん。さ、これでいいよね大百足?」
「また変わったの…だがよくやった、この弱小妖怪に目に物見せてやろうぞ…!」
瞬間、ガクンッとなる交代の動作を利用して視線を外せた三好に驚く見越し入道を尻目に、封じの注連縄が外されロングヘアーとなったナツメの全身にやってきた百足鞭が巻き付いてそのまま黒緑色の妖気が纏い、ゴウッと膨れ上がって細長い巨体を形成する。
全身黒緑色の甲殻に包まれた30メートルは裕に超える巨体を持ち、名前の通り百本もの五十対の紅い節足がシャカシャカ動き、臀部には蛇の様にのた打ち回る二本の細長い尻尾が、頭部の額からも二メートル程の長さでウネウネ動く紅い二本の触角が伸び、生え揃った牙を剥かせたその顔はカミキリムシを思わせる怪獣の様な物で、一対の眼は黒い瞳孔の中に紅い光がボゥッと輝き、鍬形を思わせる両顎がカシャカシャ動き、体を仰け反上がらせてはるかに小さい見越し入道を威圧するその姿はまさに、京の都を火の海にした大妖怪「大百足」の姿だった。
「なぁ…お、おおおおおお、大百足!?」
『分かったかド阿呆が。貴様がどんなに愚かな行動をしたのかをなぁ!』
「おいナツメ!毒は使うな、というより騒ぎを大きくするな、分かったな!」
『了解じゃセツナよ、三分で終わらせる!』
見越し入道が慌てたからか、身動きが取れるようになったセツナの言葉に鎌首をもたげて頷き、ドドドドドドドッ!そんな擬音を響かせて百脚を動かして見越し入道に急接近した大百足はその巨体を蛇の様に巻き付かせ、締め上げる。
「ヌオォォォォォッ!?」
『このまま絞め殺してくれるわ!』
「…うわぁ、さすが天下の大妖怪、大百足たい」
「圧巻だねぇ、怪獣映画みたい。40メートルのウル●ラマンより小さいけど」
「それでも十分、デカいけどね」
むしろそれより大きな妖怪なんて、片手の指で数えられる程しか居ないが…そう三好の発言に苦笑するキョウ。しかし、アカネ、三好と共にナツメの猛進撃を見つめるセツナの顔には、不安の影が在った。
「…だが、弱点もある」
「どういう事けんね、セツナ?」
「アイツ、平安時代は確かに鵺と並んで最強だったらしいが、何百年も私と出会うまで本来の姿に戻っていなかったからか…というか私達も最近、封じの注連縄は他人なら外せると分かったんだが…あの姿に変身するたびに強烈な疲労感に襲われてせいぜい10分しか行動できず、それが過ぎると自動的に注連縄が再び括られて変身が解けてしまって、そのまま半日眠り込んでしまうんだ…」
「じゃあ手古摺ったら、不味くない?」
「そうなんだ、しかも昨夜も変身していたから疲労感は多く感じるはずだ、もしかしたら10分も持たないかも…」
「それは不味か!けどもこのままだったら普通に勝てると思んげど…」
「いや、不味いねこれは」
「「「え?」」」
キョウが言った通りだった。締め付けようと回っていたナツメだったが、うっかり視線を見越し入道の第三の目と合わせてしまい、見越し入道は30メートルを裕に超える巨体へと成長し、身体に見合う大きさとなった手でガシッと大百足の巨体を掴み、グルンッと引っ繰り返した。
『ぬおおうっ!?』
「ハッハッハ!俺の勝ちだな、自称大妖怪!」
「目を合わせたら巨大化するってさっきの見ていて分かんらなかったのか!」
『面目ない…ゴフゥ』
引っ繰り返された時に建築現場の仕切り塀に上から叩き付けられ、腰を強打したかのような衝撃にダウンする大百足。人型と非人型の違いがここにあった。それを見たキョウはすぐさま隠し部屋からスリングショットを取り出して三好に渡し、アカネとセツナも戦闘態勢となる。
「三好、僕が正確な位置を教えるから第三の目を狙い撃て!君の正確な狙撃が必要不可欠だ」
「やっぱり弱点なんだ、あの目。でもキョーっち?…非力な私の狙い撃ちじゃさあ、30メートルも上のあの眼を狙い撃つなんて無理だと思うんだけど?」
「「…確かに」」
そんな三好の言葉に、構えながらも頷くアカネとセツナ。デカくなり過ぎた為か遥か上の顔は見えないが、あんな所に当てるなんて確かに無理がある。それを確認したキョウは、作戦を提示した。
「だったら荒木刹那!手を貸してくれないか」
「…何をすればいい?」
「アカネはそのまま足下で暴れて搖動、その間に荒木が三好を担いで、この建築現場の高度30メートル辺りに上がってそこから撃つんだ。竜崎がダウンした今、これしかない。速くしないと騒ぎになる、頼む荒木!」
「…名字で呼ぶな。まあしょうがないな、このままではナツメまで見つかって騒ぎになるのは明白だ。私の速さなら直ぐだ、乗れ!えっと…シキザキ?」
「今は三好ですよーだ。でもいいの?」
「ええい!ややこしい!いいから早く乗らんか!アカネ、搖動は任せたぞ」
「任されたったい!」
そう言うなり資材の鉄パイプの山を担いでドサッと見越し入道のサンダルを穿いた足に叩き付けるアカネ。普通に痛かったのか目に涙を浮かばせギロリとアカネを睨みつける見越し入道だったが、アカネは上を見ずに鉄パイプをポイポイ投げ付けながら走り回り、いい具合に搖動している内に三好を背中に乗せたセツナが風の如き速度で建築現場の鉄骨の足場を駆け抜けて行った。
「にゃあっ!?速過ぎるぅ~」
「我慢しろ!奴に気付かれたらお仕舞なのだからな!」
途中で三好が振り落とされそうになるも、何とか掴まり、どんどん上がって行く。すると、アカネの搖動に気付いたのか、見越し入道は建築現場を駆け抜ける不自然な風に気付き、腕を振り上げて来た。
「何小賢しい事やってんだオラァ!」
「ちょっ、不味いって韋駄天さん!」
「質量イコール速さか、クソッ!」
ドゴーン!と建築中の骨組みを破壊し迫りくる腕から逃げ、落ちて行く鉄骨の欠片にも乗って登っていくセツナ。もうほぼ、崩れ始めている骨組みのみの建物を登って行くのは命がけであった。
「俺の目を狙う気か、させるかぁ!」
「しまっ…クソッ、行け!」
「にゃああっ!?このぉ、喰らっちゃえデカいの!」
ついに30メートルの高さに辿り着くが追い詰められ、足を踏み外して落ちるセツナだったが、咄嗟に取り出した戟の剣身に、落ちた拍子に離れていた三好の両足を乗せて振り上げて飛ばし、そのまま落ちて行った。飛ばされた三好は悲鳴を上げながらも放物線を描きながら狙いを付け、地面で拾っていた掌より少し大きいサイズの石をスリングショットで引っ張り発射…しようとするも空気を吸い込んでいた見越し入道の口から吹き出された突風を喰らって叩き落とされる。
「奥の手は残しとくもんだ!」
「ちょまっ、にゃあああああああっ!?…え?」
『
しかし落ちる途中で起き上がった大百足…ナツメの頭部が受け止め、そのまま見越し入道の顔の目の前まで上がった三好は既に狙いをあらかじめ決めていたのか、目を瞑って発射。先程までダウンしていた大百足が起きた事に気を取られた見越し入道の額に炸裂し、野太い悲鳴が上がった。
「ありがと、大百足さん。喰らえデカブツ!」
「ギャアアアアアアアッ!?おのれぇ…」
「あ、やっぱり私じゃ力不足で浄化ができないか。だったら…代わりたくないけどしょうがない、大百足さんソイツの体を拘束して、暴れられたらたまんないから!」
『それはいいが…リミットは二分じゃ、急げよ?』
「分かった、ちょっと待ってて!」
『どこに行く気じゃ?』
額を押さえて呻きながら暴れる見越し入道を何とか止めといてくれとナツメに頼んだ三好は、見越し入道に巻き付き始めたそのつるつるした甲殻の巨体を滑り下りて行き、ちょうど落ちてきたセツナをお姫様抱っこでアカネが受け止めセツナがキュンっとしていた光景を無視してその傍の水溜りに映るキョウの元に急いだ。
「キョーっち、緊急事態だから早く交代!今日は許すから!」
「あ、うんありがとう。いつもそんな感じだと助かるんだけど…交代だ、二藤」
「私にするのが遅いのですわ、この下僕!」
「はいっ、ごめんなさい!?」
三好と交代した二藤にいきなり蹴られるキョウ。理不尽だがしょうがない。自分のせいでツクモに危険が及んでいると思っているのだろう、何気に責任感の強い第二の別人格である。
「ほら、早く武器を。あのハゲはさっさと浄化させます」
「分かった。頼んだよ、二藤」
「ふ、ふん!了解しましたわ!」
スリングショットを水溜りに投げ捨て、代わりに飛び出した剣程の長さの柄に鋭い凹凸を付けた鉄塊が付いたシンプルな武器を手に取りペロリと鉄製の柄を舐めて拘束されながらも暴れる見越し入道を見据えた二藤はトンッと跳躍。大百足の背に乗るとグルングルンとメイスを回転させ勢いを増しながら駆け抜けて行き一分も経たずに頭頂部に到着すると高く跳躍、見越し入道の顔に向け笑顔で跳んだ。
「まだ無駄口叩く元気がありましたか…」
「て、テメェの顔はあの時のドS女!?何なんだよお前は!」
「説明する気になりませんわ、一つ言うなれば一つの体に宿る別の私達、です。成仏しなさい、ハゲ豚」
「誰がハゲ豚だ!?俺には
『ぬっ、まだ力を残していたか!』
大百足の拘束を解き、空中に浮かぶ二藤に向けて拳を放つ見越し入道…否、弓越。二藤はその場でクルクル回転すると放たれた拳に反る様にしてスレスレで回避、その回転の勢いのまま、メイスをその額にある第三の目に叩き付けた。
「はあっ!」
「っっっっっっっっっっっっっっっっっっ痛ゥ~~~ッ!?」
『「「「うわぁ…」」」』
…元々頭蓋骨を粉砕する程の威力を有する拷問器具だ、いくらその頭部が巨大でも、威力は絶大。しかもそれが急所だと言うのなら、猶更だった。それを見て思わず弓越に同情する面々。当の本人は痛いとかそう言う問題ではなく、三つの眼から涙を垂れ流しにし、額を押さえてとにかく悶絶する。メイスを骨組みの鉄柱に叩き付けてストッパーにし、大百足の背に飛び乗って地面に降り立った二藤はそれを見て、ご満悦そうに笑みを浮かべ一言。
「浄化完了。ごきげんよう、ですわ」
「どこが御機嫌ようだァ!?」
実に御尤もな断末魔を上げながら、弓越は黒い霧と化して闇夜に消えた。辺りを静寂が支配し、ボロボロとなった建築現場…跡で、四人と一匹は一息吐いた。すると。
「ふわっ…すまぬセツナ、もう限界じゃ…眠い…」
「ああ。お疲れ様だ、ナツメ」
欠伸をする大百足の巨体に向かって巨大になった封じの注連縄が飛来、自動的にその眉間に巻き付いて黒緑の光が霧散と化すと、その場には黒緑色の長髪を注連縄で髪を括って扇状に広げた髪型にしたナツメと百足鞭が、寝息を立てている姿が在った。10分のタイムリミットが過ぎた様だ、彼女はこれから半日は眠り込んでしまうだろう。それを見て優しげな笑みを浮かべたセツナは、それを見守っていた三人にキッと切れ長の目を向ける。
「…今回はすまなかった、勘違いだとはいえ…この大食い馬鹿の分まで謝る、すまぬ」
「いいって。私達も犯人だと思うとったから…」
「そう言う訳には行きませんねぇ、たっぷりお礼をしなくては…」
「はい、ややこしくなるから交代だ、四季咲」
「そんな殺生な!…相も変わらず二人目がすみません、キョーさん」
頭を下げて謝るセツナに笑いかけるアカネだったが、二藤が心底楽しそうな笑みを浮かべてメイスを構え、すかさずキョウが止めに入り、四季咲と交代させた。その様子を見て不思議そうに首をかしげるセツナ。
「…今更だが、その少女は一体…?そこの鏡妖怪の声で口調…と言うより人格が変わっている様に見えたが…」
「さすが最速妖怪、よく見とるたい。…キョウ、言っていいと?」
「…とりあず、言えることは…彼女は影山九十九、とある事情を持つ生まれながらの多重人格さ。そして彼女は、僕達が守る」
「私達、別人格もです」
「そう言うこと。私は半年程前からだけどね」
帽子とヘッドホンを付け、通常モードに戻ったアカネは笑顔でセツナに告げた。その笑顔を見て顔を赤くしたセツナは誤魔化すように顔を背け、百足鞭をキュッとナツメの腰に巻くとナツメを背中におぶり、背を向ける。
「事情は大体分かった。とりあえず私達はアパートに帰る、運が良ければまた会おう」
「ちょっと待ったセツナ。…これからも、ナツメのために殺していくのか?」
「確かに生きるためとはいえ人殺しは問題ですね」
「人食い妖怪の性と言う奴だ、仕方が無い。だが安心しろ、騒ぎにはしない。私達の事は見逃してくれると助かる。…それと、さっき落ちた時は助かった。アカネ、ありがとう」
「え?」
「では、御免!」
気のせいか最後に顔を紅潮させボソッとアカネに呟くと、セツナは脚をまるで馬の様な蹄がある物に
「…セツナの奴、どうしたんだ?」
「さあ?取り敢えず貴方は朴念仁の阿呆と言うだけです、罪作りな女ですね」
「え?四季咲は分かったの?」
「…キョーさん、貴方は男だからしょうがないですけど乙女心は知っておかないとまたツクモに怒られますよ?」
「ん?なんだ、ツクモの奴やっぱりキョウと喧嘩していたのか?」
「あ、うん。ツクモが怒っただけなんだけど…でも、それは困るなぁ…」
「それよりも早くここから去りましょう、こんなに大暴れしたんです、早く逃げないと不味い。キョーさん、アレを」
「了解。摩訶不思議道具…隠れ蓑!」
四季咲に言われ、キョウが水溜りの中から出して二人に手渡されたのは、一見おとぎ話の「傘地蔵」などに出て来る、あの変哲もない蓑。田舎でも見ない様なそれを、二人はさも当然とばかりに被る。と、あら不思議。二人の姿は蓑を着ただけなのに跡形も無く消えた。もちろん二人はそこに居り、この隠れ蓑はカメレオンと同じように背景に溶け込む代物なのだ。ちなみに蓑なので雨には強いが火には弱い、雨に打たれたら一晩乾かさないと腐ってしまうなどの弱点もあるが、事件を調べに来る際には欠かせない隠し部屋に在る摩訶不思議アイテムの一つである。
「じゃ、帰りましょうか。アカネ、何時も通り帰った後にキョーさんが隠れ蓑を回収しに行くはずなので、お風呂とかに入らないでくださいね。キョーさん、ラブコメの主人公タイプなのでお風呂に入っていたらその窓からやって来そうなので」
「そんなことはしないよ!?四季咲は僕を何だと思っているんだい?!」
「…雲外鏡?」
「…さいですか」
仮にもツクモの口からどう思っているのかと聞いたのに種族名を聞かされ、思わず落ち込むキョウと、それを無視してさっさと帰路に着く二人の少女であった。
そして翌日の早朝、霧が立ち込めるそこ…一夜にして人知れず崩れ落ちた建築現場の前で、黒ずくめの女性が一人、その現場を見て薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「まったく、せっかく情報を流して事件を起こさせた見越し入道は大百足と韋駄天の介入であっさり九十九姫の連中に
そう呟いた女性はパチンッと長い袖から現れた右手の骨の様な指を鳴らすと霧を消し、その手で懐から取り出した口元が露出している髑髏の面を被ると背後を向く。そこには、姿が見えないいくつもの視線が合った。
「…
そう呟くと右手で印を結び、掻き消える様にその姿を消した。
まさかの犯人=前回の雑魚モブだと思われたスキンヘッド、これに気付いた方は恐らくいないかと。こういうフラグ回収を考えるのは楽しいですね。
そして最後に出て来た謎の女性。一体何者なんでしょうね?彼女の言う「九十九姫」、そして「社長」…これは一体何を意味するのか。では、何時も通り簡単だけど濃いキャラ紹介です。
・竜崎夏目【弐】
通称ナツメ。本来ならば京の都一つを火の海に出来る大妖怪。彼女の武器「百足鞭」は彼女の半身であり、彼女の「体」彼女自身は「心」そんな風に平安時代陰陽師に封じられた。一護曰くそれは生殺しに近いらしい。その為か案外脆く、着物を改造した服は火鼠と言う妖怪の衣で作られた防御力の高い物で、百足鞭を使った防御をメインとしている。
あっさり自分の弱点を教えてしまう様な馬鹿ではあるが、触覚をレーダーとして使ったり嗅覚にも優れ夜でも良く見える目を持ち、闇夜の戦いを得意とする。
殆んど本来の力と違わない己の牙と顎に絶対の自信を持ち、金の延べ棒でも破壊可能と言う代物。それを使って人肉も骨ごと食べている様だ。
あっさり自分の弱点や事情について話すなど自分に正直でマイペースな性格。そして大食い昼寝好き。
・大百足
ナツメ本来の姿で鵺と並んで平安時代最強の妖怪だった。封じの注連縄を他人が外す事により百足鞭と共に黒緑色の妖気を纏い変身できる、30メートルは裕に超える巨体を持つ百足の怪獣の様な大妖怪。噛み付き攻撃や締め付け攻撃、今回は使わなかったが人を簡単に融解させる猛毒を放射したりで戦う。硬い甲殻を持ち弾丸などは弾けるが、塀など突起類にぶつかると痛い物は痛い。
しかし弱点もあり他人に封じの注連縄を外してもらう必要があるために、セツナと出会うまで何百年も一匹狼で本来の姿に戻っていなかったため、変身するたびに強烈な疲労感に襲われ大百足の姿では10分間しか行動できず、それが過ぎると自動で注連縄が絞まって封じられ元の姿に戻り、そのまま半日も眠ってしまう。本来の姿なのに、不憫な事である。
・荒木刹那【弐】
通称セツナ。アジア大陸で一番の速さを誇る妖怪だが、持久力に難あり。中国妖怪としての高いプライドを持ち、鬼であるアカネに「中国のマイナー妖怪」「速さだけが取り柄の馬の骨」と呼ばれ激怒、「野蛮なケダモノ」「避けるだけが取り柄の猿」と評して「刹那」即ち、七分の一秒の速度で襲いかかる。奥の手として高速移動による分身も使う。本性は馬に近い姿。
恩義はちゃんと返すタイプで、最終的にアカネに惚れたがただのツンデレで惚れっぽい人。憧れの
・酒呑童子
アカネの事。日本三大悪妖怪に属する大悪鬼。現在は力技のみだが、本来は武器も扱える頭脳派で相当な実力者。彼女曰く、「一度浴びた攻撃ならば見切れる」らしい。ついでに言うと本来は美少年の鬼で、今回セツナが惚れてしまったのもしょうがないと思われる。
・
前回と今回のゲストで通称スキンヘッド。前回二藤に痛めつけられたただのモブ人間だと思われたが、実は今回の建築現場で起きた転落事件の真犯人「見越し入道」で額に第三の目を持つ。見た目は完全に現代風の僧侶だが、本来は江戸時代から現れた、怪しい光を放つ眼で獲物の視線を自身に固定してその視線を餌にしどんどん大きくなって最終的には何らかの形で命を奪うと言う性質の悪い割とメジャーな基本的に山など田舎の夜道に出る夜行性の僧の姿をした妖怪。
事件を起こした理由は人気の無い所で一人だった被害者を見付け、その魂を食べようと企てた為。しかし昨夜に通った大百足の毒で取れ落ちた足場を不思議に思い、フラフラと歩いていたためツクモとぶつかり二藤に甚振られ、警察から出た後何者かから事件を嗅ぎ回られていると聞き、証拠隠滅に来たところでツクモたちと戦闘となる。
視線を固定されたら彼の任意か退散ワードを呟く事でしか解放されず、死を覚悟した方がいい。さらに視線を合わせることで成長して行き、最終的に大百足の視線まで餌にし30メートル以上にまで巨大化した。しかし何故か騒ぎにはならなかった事からそう言う能力もあるみたいだ。
弱点は唯一の武器でもあり急所でもある第三の目。あと巨大な体が仇となり視線を合わせられなくなることも弱点である(もっとも、ずっと視線を合わせて30メートルも巨大になれば首は折れているだろうが)。ちなみに、キョウが思い出せなかった退散ワードは「見越した」である。のびあがり系にも効くので覚えて置こう。
最終的に四人と三好、二藤に翻弄され二藤のメイスを叩き込まれ浄化された。名前の由来は「見越し入道」→「みこし」→「弓越(みこし)」→「弓越(ゆみごし)」。
・のびあがり
名前だけ登場した見越し入道の亜種の様な妖怪。実体がない人影のような存在で、視線を逸らせない様に固定し何処までも成長、相手を失神させる。他にも「見上げ入道」「星ちぎり」「高入道」「
・ダイダラボッチ
名前だけ登場した、日本の巨人ならこの人と言うべき妖怪。日本列島そのものらしい。
・鵺
平安時代で最も有名な妖怪。悪事を働く大百足をその正義感から邪魔していた。ちなみに色んな動物の特徴を持った姿がメジャーだが、それは人間達が想像した姿で本来は黒い霧に包まれた正体不明の妖怪。後に登場予定。
こういうバトルを書くのは楽しかったです。巨大な敵と言ったら最近は「巨人」がブームですね。…ダイダラボッチも何時か書こうか、どう考えてもスケールが違うけど。
一応セツナ&ナツメの二人は、時々出す事にします。一応他作者様のキャラとして考えた物なので。今回の様な強敵相手にはここまで頼もしい味方はいません。何話に一度と言う様な感じだと思います。
次回は連続放火事件。火が燃え移る筈の無い場所で燃え上がる、その謎の裏に隠された犯人妖怪とは一体?次回もお楽しみに!感想を頂けると嬉しいです。