炎狼   作:ゲレゲレ

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 少し不安になって投稿。
 展開が強引かもしれないという不安と、少しキャラの心情を雑に書きすぎたかもしれないという不安から投稿させて頂きました。
 何かおかしいと思える点があれば、指摘して頂けると助かります。



第二十二話 前篇(仮投稿、いずれ後編と合併する予定)

 古代遺失物管理部機動六課の隊舎には、様々な訓練施設がある。

 それは特殊戦技教導隊所属の、管理局の中でも有数の戦力として数えられているエース・オブ・エース、高町なのは一等空尉の監修のもと建造され、現在は若手フォワード陣のみならず、隊長・副隊長陣から、他の隊舎に詰めている部隊からも出向をしてきて訓練等を行っているときがある。

 基本、育成目的で作られた施設であるために、新人のフォワード陣が使っているのだが、たとえばフォワード陣が当直を終え、明けの休みに入った時、シフト的にはその日は訓練施設の使用部隊欄が空白になっているときがある……つまり、その時に他の隊舎に詰めている部隊が使用したりしているのだ。

 そして現在は、新人フォワード陣はシフト的に明けの休みに入っており、また普段なら休みの日にもある筈の訓練も、先の事件の影響で隊長陣の手が空けられずに、おのずと完全休養日となっていた。

 まあ元々、隊長陣もこの日を休みに充てる筈だったのだが、そうなってしまうと事件の処理の関係で、折角の休みにも関わらず六課隊舎に残って仕事をしなくてはならなくなるために、また近く別の日に完全休養日を用意するつもりだった。

 そんな裏事情は置いておくとして、今現在、普段は六課新人フォワード陣が使っている陸戦用訓練シュミレーター上では、他部隊……つまり、機動六課の隊舎の近くに配置された武装隊が、都市型テロ対策の訓練を行っていた。

 傍目から見れば、ミッドチルダ中央区画湾岸地区の海沿いから伸びる船着き場の近くに、局地的に密集されたビル群が立ち並ぶというおかしな風景は、陸戦用訓練シュミレーターが生み出したフィールドであり、その中では部隊の隊長が設定した環境が忠実に具現化している。

 その様子を、船着き場から階段で上がれる高台で、ジッと眺めている人影が一つあった。

 海から吹いてくる潮風に髪を揺らしながら、普段の訓練服とは違う私服姿で、高台の手摺に両手を軽く乗せて他部隊の訓練を眺める女性。

 普段はツインテールに纏めているオレンジ色の髪を今は降ろし、黒に落ち着いたフリルスカートと白いタートルネックのセーターという、簡単な私服姿でいる女性……それは、どう見ても機動六課スターズ分隊所属のティアナ・ランスターであった。

 彼女は今、激しい戦闘訓練を繰り返しているよその部隊を、非常に疲れた眼差しで眺めていた。

 多少の化粧で誤魔化してはあるが、目元にはうっすらと隈のようなものが伺え、誰が見ても寝不足と疲労を抱えているのが分かった。

(スバルには悪い事しちゃったかなぁ)

 重い瞼に嫌気を感じつつ、自分と同じ分隊のメンバーであり友人でもあるスバル・ナカジマに対して、ティアナはため息を付いて見せた。

 そのため息は決してスバルへの呆れなどではなく、今の彼女自身への呆れであった。

(折角気をつかってくれたのに、当のあたしがそれを無駄にしちゃうんだもの……嫌になるわ)

 昨日、スバルはホテル・アグスタ襲撃事件で失敗をしてしまったティアナに対し、休みになったら街に遊びに行こうという約束をしていた……のだが、その晩、ティアナは睡眠を取ろうにも一向に寝付けず、遂には夜通しで事件の失敗を払拭しようと自主練に明け暮れてしまったのだ。

 疲れて眠くなって来たのが6時頃で、シャワーを浴びて寝付いたのが6時半頃、そして起床したのが自身の寮室にスバルが迎えに来た10時半頃……その時には、彼女の連日の疲労とストレスからなる負担は限界を迎えており、起きて玄関でスバルを出迎えた時には、それはもう驚かれたのを今でも鮮明に思い出せる程だ。

 確かに、スバルに酷い顔と言われたように、鏡で見た自分の顔はとても10代の成せる顔ではなかった。

 肌は乾き、瞼は半分しか開いておらず、目元には隈が出来た顔は、正直街に繰り出せるような状態ではなかったのだ。

 故に、スバルからは今日は休むようにと強く言われてしまい、負い目を感じつつも本当に疲労困憊という状態でもあったので、お言葉に甘えさせてもらう形となっていた。

「はぁ~……何やってんだろ、あたし」

 最近物事がうまく回らないと感じていたティアナは、これまでの自分も含めた呆れの声を漏らす。

 かといって、その言葉は誰に聞かれるわけでもなく、ただただ海の潮風に流されるだけであった。

 もともと、ここにきたのも寮室にいてもやる事が無く、自主練をするにも集中力が散漫な状態であったために、何もする事が思いつかずフラフラと散歩をしていただけなので、そういった行動も相まって、今は倦怠感しか感じられないでいる。

 幸いにも、この辺一帯は景観もよく、明るい色の煉瓦が敷き詰められた海沿いの道は散歩コースとしてはもってこいの場所であったために、視覚だけはまだポジティブな映像を捉えていた。

「……」

 長い髪の毛を風で揺らして、どれくらいの時間が経ったであろうか……。

 気分転換に散歩をしようと思い立っただけだったので、時計などは身に着けておらず、有事の際にと待機状態にして持っていたデバイスぐらいしか通信手段が無い状態であるため、時間を確認しようとも思えなかった。

 そんな、何をするにも億劫になりかけていた時であった。

「うん? そこにいるのはランスターか」

「え?」

 突然、自身の後ろから掛けられた男の声……これに、不意を突かれたティアナが振り返ると。

「……顔色が悪いようだが、熱でもあるのか?」

「あんたか……」

 振り返った先に見えた人物を見て、ティアナは心の中で「最悪」とつぶやいた。

 そこにいたのは、昨日機動六課に戻ってきたばかりのアルファード・レヴェントンであり、彼は簡単な私服姿のティアナとは違って、編み上げ靴にライトニング分隊として貸与された訓練服を着ていた。

 彼が着ている黒のTシャツを見ると、汗が少々滲んでおり、どうやらどこかで体を温めていた事が伺える。

 しかし、やはりいつ見ても見事に鍛え上げられた肉体をしており、黒のTシャツを着ている事も相まって、その筋骨隆々の逆三角形を惜しみなくティアナに見せつけていた……そして、シャツに汗が滲んだせいでぴったりと肌にくっついているために、その右胸から左脇腹に掛けて伸びる、切り傷と火傷が合併した跡も、目の前のティアナは視界に入れていた。

 そんな暑苦しくも痛々しい格好をアルファードがしていたために、感傷に浸っていたティアナは見るからに不機嫌な顔つきになる。

「何でもないわよ、ただ疲れてるだけ。あんたに心配されるほどでもないわ」

「そうか」

 反りが合わない、気に入らない、認められない……様々な感情を湧き上がらせながらも、ティアナは至って詰まらなそうにアルファードから視線を外し、再び海の方へと体を向けてしまった。

 対してアルファードは、そんなティアナの素振りなど気にも留めず、陸戦用訓練シュミレーターのある場所へと向かうため、ここから船着き場へと降りられる階段へと歩き出した。

「……訓練でもするつもり? 今は他の部隊が使ってるみたいよ」

 自身のすぐ横を通り過ぎ、階段を降りていくアルファードの背中に、ティアナが呆れたように声を掛ける。

 しかし、目に掛からない程度に伸びた黒いザンバラ頭を風に揺らす彼は、いつもの鋭い眼付でティアナへと振り返り、至極当然とばかりに答えた。

「そんなものは把握している、予定を確認したうえで来たのだからな。あと5分程で訓練は終わる筈だ」

「そう、でもあんた昨日退院したばかりなんでしょ? 休んだら?」

 自分で言って、正直自分に返ってくる台詞だなと理解しつつ、ティアナは一応体裁として同僚を気遣う姿勢を見せた。

「そうはいかない。俺は事実、あの防衛戦を最後まで耐えきれなかったからな。まだまだ戦力として不十分であったという事だ」

「……そう」

 アルファードの言葉に、自身も最後まで防衛戦に参加できなかった身なので、ティアナはもともと疲れ切っていた表情を更に沈ませてしまう。

 実際、全体への貢献度で言えば、アルファードと自身とでは比べ物にならない程に成果に差がある……片や、防衛で手一杯で、状況が変化した瞬間に精彩を欠き、後方へと下がらされた人間――――片や、敵の召喚魔導師という戦力の中核がいる場所を特定し、護衛と思われる敵魔導師二名と交戦、負傷し戦闘続行不可能と判断されながらも、召喚魔法による波状攻撃に歯止めをかけ、また事件に関与したその3名の映像記録を手に入れた人間。

 これだけ見れば、例え一方は単独行動であったとしても、全体に与えた戦果は後者の方が上であると誰が聞いても判断できるために、ティアナは益々奥歯を噛みしめる事となる。

 ティアナは握っていた手摺に、更に力を込める。

 情けない……ただ、その一言がティアナの胸中に木霊した。

「それに、昨日首都防衛隊の時にお世話になった方から、新しいブーストデバイスを譲り受けたのでな。その慣らしも兼ねている」

「新しいブーストデバイス? なによ、それ」

 胸中で自虐を繰り返していたティアナが、沈んでいた瞼を驚きと共に開かせる。

 対照的にアルファードは、至って事務的にティアナへと簡単な説明を行った。

「外部強化骨格という、擬似リンカーコアを使用したものらしい。俺も書面上でしか確認していないからな、先ほどシャリオ一等陸士から作動テストの許可も頂いてきた。まあ、出力を10%に抑えて使用するならという制限付だがな」

「外部強化骨格? 擬似リンカーコア? どれも聞いたことが無いわ」

「ああ、なにせ個人が設計し作成したデバイスだからな。いわば専用品(ワンオフ)というやつだ」

「ふーん。で、どういう効果があるデバイスなのよ?」

「書面上では、俺のリンカーコアと、外部強化骨格に内蔵された擬似リンカーコアという、いわば追加エンジンを直結させることで、取り込める魔素を増やし、それを魔力に変換させるスピードと量を強化させるらしい。また魔力回路も増えるみたいだから、カートリッジを使用するよりも魔法力の強化が見込めるそうだ」

「……それ、大丈夫なの? 胡散臭いを通り越して、危ない匂いしかしないんだけど」

「信頼している方から頂いたものだ、どんな結果であろうと、何かしら得るものはあると俺は考えている」

 そういいながら、彼はズボンのポケットから自身のデバイスを取り出す。

 いつも通りのリングネックレス型の待機フォームではあるのだが、ネックレスに掛けられたリングの数が一つ増えていたのが、ティアナの眼からも確認できた。

 どうやらその追加分が件のブーストデバイスであると判断したティアナは、心なしか目尻を吊り上げてしまう。

 それは嫉妬も入り混じった、焦燥感から来たものであったと、後のティアナは考えている。

「うん? どうやら訓練も終わったようだ」

「……そうみたいね」

 船着き場から海の方へと足場が伸びた場所にある、陸戦用訓練シュミレーターに具現化されていたビル群が、まるでテレビの映像を切ったかのように消え去るのを確認したアルファードが、再び階段を降りはじめる。

 その後ろ姿を眺めていたティアナであったが、ふと湧き上がった感情に、思わず口を開いてしまう……衝動的に、自分でも分からずに声を発していた。

「待ちなさい」

「なんだ?」

 階段を降り切ったアルファードだったが、その妙にハッキリと掛けられた言葉に振り返る。

 振り返った先では、ティアナも自分が降りて来た階段に足を乗せていた。

「私もあんたの訓練に付きあってあげるわ」

「何故だ? 俺のは自主的な訓練だから、ランスターが付きあう必要は無い筈だ? それに、俺とお前では模擬戦もできんだろう」

「違うわよ。一応あたしはセンターガードだから、あんたへ指示を出す時もあるの。だから、その時のための戦力把握をしたいのよ。新しいデバイスがどんなものか分からないと、指示も出せないでしょ?」

 アルファードの最後の言葉の意味を問いただすのは後にして、ティアナは唯一持ち歩いていた荷物でもあるデバイス“クロスミラージュ”を待機状態で取り出して、階段を降り切った。

 正直、目の前の相手とワンツーマンで訓練をするというのは気が進まないにも程があるが、今日に至ってはスバルとの約束を反故にしてしまったせいでやる事も無く、また先日の悔しさも払拭出来ていなかったために、フラストレーションが溜まっている状態なのだ。

 なので、今は体を動かした方が精神安定的にもいいだろうと判断したティアナは、気に入らない相手が新しい力を手に入れたという焦りも相まって、陸士訓練校時代から数えて初めてアルファードとの訓練を自分から申し込んだのだった。

 しかし、この行動は歩み寄りなどという、両者にとってプラスになるものでは無かった……。

 何故ならティアナもアルファードも、互いを見ていないからだ。

 物理的ではない、精神的な面で、両者は違う方向を向いており、またティアナからは強い執念の様なものが湧き上がっている。

 それに気づけないアルファードは、ティアナから出てきたもっともらしい理由に「そうか、ならばよろしく頼む」とだけ答えて、訓練場へと足を進ませてしまった。

 自身の背中に、敵意にも似た、鋭い視線と感情を向けられている事も気付かずに。

 

◆(1)

 

 近くの隊舎に配置されている武装隊が訓練を終え、出向解除を終えた後、陸戦用空間シュミレーターを後にしたところを見計らって、アルファードとティアナが訓練場へと足を踏み入れた。

 さっきまで都市を模したビル群が立ち並んでいた訓練場であったが、今は特殊な材質で作られた足場が平面に敷き詰められているだけで、外から見れば海を埋め立てて出来た浮島に、二人がポツリと立っているだけに見えてしまう。

 ティアナと3歩程の間合いを空けて立っていたアルファードが、自身のデバイスである“エクスキューション”を展開させる。

 今回は訓練ではあるが、後々新しいデバイスの作動テストも行うために、六課フォワード陣のパーソナルカラーでもある白を基調としたバリアジャケットを展開させる。

 しかし、展開したアルファードのバリアジャケットはこれまでの物とは少し違っており、胸空けの丈の短い、白い半袖のジャケットは変わってはいないのだが、インナーは少しだけ変更されていた。

 今までは腹を晒したデザインであったが、先の戦闘で刻み込まれた傷跡を隠す様に、黒の半袖インナーが腹部も隠しており、また腰に巻かれていた白い腰布も取り除かれ、黒のズボンのみとなっている……後は両前腕に装着されたガンドレット型のデバイスと、レッグアーマー型のデバイスが鉄の色を日に晒していた。

 この変化に、ティアナも疑問を覚えたが、彼女は特に彼へと言及する事は無く、自身もインテリジェントデバイスである“クロスミラージュ”を展開させた。

 こちらは特に変更点は無く、強いて言えばさっきまで降ろしていた髪がリボンでまとめられ、いつも通りのツインテールとなったぐらいだ。

「フィールドを設定する」

 それだけ言って、アルファードは空間投影モニターを自身の前に展開させ、今二人が立っている陸戦訓練用シュミレーターを起動させる操作を行った。

 自身の正面に浮かび上がったモニターをキーボードの様に操作し、自分が想定していたフィールドを出現させる。

 すると、辺りは先ほどまでの風景から一新され、様々なテナントが立ち並ぶ繁華街へと姿を変えた。

 周囲を覆う高層ビル群、オレンジ色や黄色の煉瓦で色調を統一している地面、おそらく実在の場所をモデルにしているのであろう、どこかで見たことがある噴水や風力発電装置が街のシンボルとして存在していた。

「ここは、繁華街ね……」

 ツーハンドモードで両手に握っている拳銃型デバイスを構えつつ、周囲の状況を確認したティアナは、アルファードが何故このフィールドを設定したのかという疑問を覚えていた。

 しかし、聞くことはしない……何か、癪に障るからだろうか?

 そんな彼女の様子を知ってか知らずか、アルファードは事もなげに答えた。

「今回は新型のブーストデバイスを使用するからな。使用した場合の周囲への影響を確かめたい」

「だから一般市民の行き来が激しい繁華街を選んだの? 影響を調べたいのなら、コンクリート造の建物が並んでればどこでもいいじゃない」

「都市型テロの標的になりやすいのは、まず一般市民だ。一番要求を通りやすくするのならば、政府高官を狙える場所を選ぶが、本物のテロリストは最初無差別に標的を散らしてくるのがセオリーだ」

 首都防衛隊所属故の考えだろうか、それともアルファード個人の持論なのか、いまいちハッキリしない所であったが、ここで質問する気は無いティアナは「そう、ならいいわ」とだけいって、両手に構えたクロスミラージュの銃口をアルファードへと向けた。

「ランスター、何をしている?」

 その行動に対し、アルファードが眼光を鋭くさせながら問いかける。

 もともと、今回は外部強化骨格の作動テストのために来ただけであって、訓練自体は軽く済ませようと考えていたアルファードであったが、付いてくるといったティアナが取った行動に、少々疑問を覚えた様であった……視線を鋭くさせたのは、銃口を向けられたから反射的にそうなっただけで、決して怒りなどを覚えている訳ではない。

 すると、ティアナが静かに口を開いた。

「折角二人で訓練をするのだし、模擬戦から始めない? その外部強化骨格の作動テストだってどうなるか分からないんだし、出来るうちにやっておいたほうが良いと思うんだけど?」

 普段勝気な表情をしているティアナであったが、今はあえてアルファードを挑発するかのような、相手を嘲笑う顔つきをしている。

 だが、先に言った通り、ティアナとは模擬戦は出来ないとしたアルファードは、冷静に答えた。

「お前と俺では、タイプが違いすぎて模擬戦には向かんと思うのだが? 遠・中距離と近接では、戦い方がワンパターンになるだけだ。だからやるとするのなら、前・後衛のコンビネーションを高めるものの方が良いと思うのだが?」

「別にいいじゃない。そのワンパターンとやらを鍛えれば」

「それは高町教導官から叩き込まれているから、今は別に必要ない。模擬戦をやるのであれば、俺は近接特化の人間とやりたいのだが?」

「そう、でもなのは隊長ばかりじゃない方が、対応策は多く見つけられるんじゃないの?」

 あくまでも食い下がってくるティアナに、アルファードもどうしていきなり、彼女がこんなに模擬戦を申し込んでくるのか理解しかねる所であったが、彼は一つ、退屈そうにため息を付いた。

 この仕草に、ティアナが唇を紡いでムッと強張らせる。

 彼女の表情の変化はいざ知らず、アルファードは素直にティアナとの模擬戦をやりたがらない理由を述べ始める――――それが、彼女にとって途方も無い屈辱であったにも関わらず、訳も無く口を開いたのだった。

「確かに対応策は見つけられるだろうが、ランスター、お前では俺の模擬戦相手は務まらない。第一、高町教導官が粗方の対応を俺に教えてくれているからな、今更間に合っている事をやっても仕方ないだろう。自主練というのは、訓練では足りなかった部分を鍛える場だと俺は考えているからな」

「……へぇ」

 用は、お前では足りないと言われたと捉えられても仕方のない言葉に、ティアナが怒気の孕んだ息を吐く。

 しかし、アルファードは自分が思っている事を、上司でも先輩でもない同僚に伝えただけなので、特に気にした様子は見せない……ただ、当たり前の事を言っただけという顔をしている。

 実際、アルファードはティアナの実力はある程度認めているつもりで、彼女の指揮能力の高さ、周囲の状況分析の速さ等は買っているのだが、戦闘技能でいえばまだまだだと考えている。

 どこがまだまだかと言えば、単にティアナを相手にした時、自分ならば簡単に接近できるであろうと言う自信があるからで、その自信が無い相手が模擬戦を申し込んでいたのなら、アルファードは自主練のメニューを変更していた所であろう。

 つまりは、彼は言葉通りの事を考えており、それを相手に考えなしに伝えてしまっただけなのであった。

「間に合ってるか間に合ってないかは別として、私じゃあんたの相手にもならないって言ってるのね」

「事実だ。現にこの間合いなら、俺は初手でお前に一撃を与えられる自信がある」

 事もなげに告げるアルファードに、益々眉間に皺を寄せるティアナ。

(そうだ、こいつはそういう奴だった……昔スバルにも、似たような事を言ってたしね)

 もはや敵意を隠していない視線であったが、アルファードはいつも通りの無表情でそれを受け止めている。

 それが、益々腹に立つ。

 疲れている、眠い、失敗に負い目を感じている等の無意識下の感情がティアナには存在していたせいで、彼の言動や態度に、いつも以上の反応を示してしまっている。

 これが何にも無い状態であったのなら、自主練に付きあうなどという事もしなかったし、ましてや感情的になる事もなかった筈だ……しかし、今のティアナにはそんな余裕が無かった。

 今はとにかく強くなりたい、ならなければならないという強迫観念にも似た使命感のせいで、昨晩というより今日の早朝まで自主練をしていた彼女は、ついに怒りの感情を押し殺すことを辞めてしまった。

「そう、なら試させてよ。そんなに言うのなら、全うな模擬戦をやろうじゃない。制限時間は10分、このフィールドの全てを使って、あんたの言う自信とやらを確かめさせてもらうわ」

「……」

 ティアナの提示した条件に、アルファードが困ったように思案を始める……が、答えはすぐに出てきたようで。

「分かった。ならば、俺もお前との模擬戦を外部強化骨格の作動テストに当てよう。実戦に近い形でデータを取った方が効率もいいからな」

「決まりね。なら早く外部強化骨格とやらを展開させなさい。私はその間にポジションを決めておくから」

 それだけ言って、ティアナはアルファードから振り返り、背中を向けて歩いて行ってしまう。

 どうしていつもは冷静な彼女が、ここまで怒っているのか分からないアルファードは、一先ずは気持ちを入れ替えて模擬戦に臨むことにした。

 正直、何から何まで首を傾げる事ばかりである――――ティアナが付いてきた事、不機嫌な事、模擬戦に固執している事、そのどれもがアルファードには分からない。

 これは彼が人として欠落した部分があるからだろうか、それとも目的に我を忘れ始めたティアナに問題があるのか……おそらく、両者共に原因はあるのであろう。

 しかし、二人は気づかないまま模擬戦を開始してしまう。

 その結果が、どちらに運ぶとも分からずに。

 

 





 本当なら模擬戦も入れて投稿したかったのですが、前書きの通り不安になって投稿させて頂きました。
 あまり、読んで下さる方にどうすればいいのかとか聞くべきではないのでしょうが、今回のは下手したらティアナ下げになってしまうために、アドバイスを貰いたいがために前篇として投稿させて頂きました。
 どうでしょうか?
 正直展開が強引かなとか思ってますし、おかしな文章もあると思いますし、何より心理描写が足りないというか雑と言うか、そんな感じがします。
 何かおかしなところがあれば指摘してください、お願いします。
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