どうでもいいけど、“なのは”って平仮名は文章に入れ辛いね……。
先程、どこかの屋上で訓練を見守っているなのはから、アルファードが三機のガジェット・ドローンを撃墜したとの知らせが入った。
また彼が既に、こちらに向かっているという事も……。
(気に入らないけど、実力は衰えてないみたいね……)
この通信を聞いたティアナは、一瞬苦虫を噛み潰したような心境に陥るも、すぐさまその無駄な考えを振り払い、アルファードが来る前に終わらせてしまおうと後ろに控えていたキャロに声を掛けた。
「チビッ子、確かキャロって言ったわね」
「はい」
「私、あのフィールドに試したい事があるんだけど? キャロ、手持ちの魔法と、そのチビ竜の技で、何とか出来そうなのはある?」
「試してみたいものが、いくつか……」
屋上に立つティアナとキャロの視線の先には、ビルの下で、スバルとエリオに足止めを喰らっている5機のガジェット・ドローンが映っていた。
「だりゃぁぁぁ!!」
魔力で駆動するローラーブーツ型のデバイスを駆って、スバルが猛進的に一機のガジェット・ドローンへと接近していく。
しかし、スバルに接近されているガジェット・ドローンは、もともと周辺に展開していたAMFを最大にし、彼女の魔力を乱そうとする。
刹那――――彼女は、移動系魔法のコントロールすら困難にしてしまう、そのAMFの範囲に接する前に、アスファルトの地面から両脚の瞬発力とバネを使って飛び上がった。
そして、中空で器用に身を捻り、ガジェット・ドローンが展開しているAMFの範囲を強引に犯すように、スバルは一気に目標へと、無骨なナックル型のデバイス、リボルバーナックルを装着している右手を振りかぶりながら降下していく。
既に、スバルの両足に着いているローラーブーツ型のデバイスには魔力が感じられない。
だが、これで――――
「だぁ!!」
スバルが全身を使って振りかぶっていた右拳を、着地点にいたガジェット・ドローンの上部辺りに落下させた。
瞬間、ガジェットの青い装甲に穴が開き、スバルの拳が深く突き刺さっていく。
更に、その拳は留まる事を知らず、デバイスのリボルバー部分を高速回転させながら、カプセル型のシルエットを押し潰すように歪ませ、アスファルトの地面に叩きつけ、豪快な衝突音を残しながら粉砕した。
「ティア! 一機やっつけたよ!」
ガジェット・ドローンのボディから、右拳を引き抜いて、スバルがティアナに報告する。
「見てたわよ! そのまま足止めを継続して!」
「分かった!」
ようやく一機……決してスマートな方法ではないが、スバルがやってくれた。
次は、私の番だ。
ティアナはそのまま、スバル・エリオが再び追い始めた残り4機の内、一機のガジェット・ドローンに標的を定め、屋上を伝ってビルを移動し始めた――――
「フリード、ブラスト・フレア!!」
キャロが指示を出すのと同時に、これまで彼女の後ろで翼を羽ばたかせていた白竜が、その小さな口から一発の火球を吐き出す。
直線的な軌道を描く火球は、屋上から道路の方へと落ちて行くと、スバル・エリオに追われていたガジェット・ドローン4機の内、後方二機の逃走経路へと直撃する。
すると、逃げ遅れたガジェット・ドローン二機の目の前に、まるでナパーム弾が爆撃されたかの様な炎のバリケードが発生した。
そしてキャロはいつの間にか、足もとに桃色の魔方陣を展開させながら何やら口ずさんでいる。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物」
魔法詠唱……彼女がそれを行っていると、足もとから桃色の魔力光が粗粒となって舞い上がっていく。
「言の葉に応えよ、鋼鉄の縛鎖、錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」
キャロの詠唱が終わると同時に、彼女の足もとの魔方陣が一際輝きを増す。
瞬間、浮遊している2機のガジェット・ドローンの真下から、大きな幾何学模様の魔方陣が一つ姿を現した。
(捕まえた!)
突然、ガジェット・ドローンの足もとに現れた魔方陣から“召喚”されたのは、頑強なる数本の鎖。
その鎖は、迷う事無く、二機のカプセル型のシルエットを雁字搦めに捕縛していく。
「うわ~、召喚魔法って、あんな事もできるんですね」
キャロが召喚した鎖が、ガジェット・ドローン二機を触手の様に捕縛した光景を、ホログラムのディスプレイで観察していたシャーリーは、思ってもみなかったと驚きの声を挙げた。
「無機物操作と組み合わせてるね。なかなか器用だ……だけど、これじゃスバルとエリオがガジェットを追えない」
なのはがキャロの戦技に感心こそしたものの、連携のミスに苦言を呈すると、シャーリーの細い眉毛がピクリと跳ねた。
「お、アルファード君が、もう合流しそうですよ」
既にアルファードの事を君付けで呼び始めたシャーリーの報告に、なのはは表情に鋭さを纏わせる。
「速いけど……自分の行動をちゃんと報告してないから、これは減点かな?」
なのはが呟く様に漏らした声は、訓練に集中していたフォーワード陣に聞かれることは無かった。
ティアナは、キャロの白竜が作り出した炎のバリケードによって、スバル・エリオが追跡不能となっていた残り2機を屋上から追っていた。
「誰か! 残り2機の足止めは出来ないの!?」
「ごめん! ちょっとビルを迂回しないと無理!」
「同じくです!」
「ちっ……」
例え一人で追っていたとしても、こうも速い動きで逃走されていては、構えて照準を合わせた時には射程を離されてしまう……故意にではないが、連係ミスで生まれてしまった状況に、ティアナはビルの屋上を走り、隣の建物へと飛び移りながら思わず舌打ちをしてしまう。
しかし、その時であった。
『こちらライトニング05、俺が足止めする。合わせろ』
「っ!?」
ティアナの耳に、今最も聞きたく無い少年の無機質な声が届いた。
本来なら、コイツの事は無視して、自分の役割に集中していたい所だが、今の状況ではそうもいかない。
背に腹は代えられないか……ティアナは、走っては飛び越えているビルの屋上で、下の道路にガジェット・ドローン以外の影を確認すると、両手で持っていたアンカーガンのグリップを、一度軽く握り直した。
同時に、足止めをすると豪語していた影――――アルファードが、有言実行とばかりに裏路地から出て来た勢いそのまま、大通りを逃走するガジェット・ドローン2機へと接近していく。
やはり、彼が走った軌跡には、炎の足跡と火の粉の塵が揺らめいていた。
そしてガジェット・ドローン2機の背面まであと少しと言う所で、彼の足に装着されているアーマー型デバイスの、脹脛部分の装甲が展開された。
瞬間、アルファードが走りながら身を屈めたかと思うと、彼の魔力である炎がジェット噴射の様に展開された装甲から噴出し、前方45度の角度で中空へと飛び上がった。
これに対し、逃走中のガジェット・ドローンがAMFを全開にする……が、既に魔力の付加価値を得ていたアルファードは、たとえ魔力の推力を失ったとしても、その余韻を消すことなく、巧みな空中制御で身を回転させ、標的である2機の前に着地した。
目の前に敵が躍り出てきたのを確認すると、2機のガジェット・ドローンは、その壁となって逃走を阻んでいる相手に対して弾幕とも言える射撃魔法を放ってきた。
矢の様な青い閃光が瞬く中、アルファードは時に身を翻し、時に防御魔法であるプロテクションという盾を張って、それを凌ぎ間合いを詰めていった。
『こちらライトニング05、足止めは成功した』
その光景を、ようやく見つけたベストポジションであるビルの屋上で確認したティアナは、再びアンカーガンの銃口をアルファードに集中しているガジェット・ドローン一機に向けた。
方角は彼女から見て3時の方向……距離にして200mあるかないか。
同時に、アンカーガンの銃口付近に、オレンジ色の魔力弾が形成され始めた。
(アイツの手助けっていうのは納得いかないけど……こちとら射撃型、無効化されて、はいそうですかって下がってたら、生き残れないのよ!!)
ティアナは自らが形成した魔力弾に、更に魔法による加工を施す。
(要はフィールドを抜けるまでに、魔力弾が残ってれば良い! だったら、攻撃用の弾体を無効化フィールドで消される膜状バリアでくるむ……そうすれば、本命の弾は届く!)
アンカーガンの銃口前にあるオレンジ色の魔力弾に、薄い膜上のコーティングが徐々になされていく。
これを、ホログラムのディスプレイで眺めていたなのはは。
「フィールド系防御を突き抜ける多重弾核射撃。本来なら、AAランク魔導師のスキルなんだけどね……」
「AA!?」
同じ中・遠距離の射撃系を得意とする故か、これからティアナがやろうとしていた事を一発で見抜いた。
そして、その戦技が今のティアナの魔導師ランクBを容易に上回っている言う事に、シャーリーは思わず驚きの声を挙げてしまう。
しかし、そんな二人を知ってか知らずか、ティアナは多重弾核射撃のために更なる集中力を見せていた。
「固まれ……固まれ……固まれ!」
胸中だけでは無く、声に出してまで徹底的に、魔法弾の加工に全神経を費やすティアナ……。
アンカーガンのアイアンサイトには、先程からアルファードが足止めしている一機のガジェット・ドローンの後部が収められている。
撃てば当たる……されど、まだこれだけでは、あのAMFを抜くには叶わない。
だったら……!
「固まれ……固まれぇ!!」
ティアナが全身全霊で気合を込めて、最後の加工を一気に完了させた。
多重弾核射撃……現在、ティアナが両手でグリップを握っているアンカーガンの前では、同色の薄い膜に覆われた、オレンジ色の魔力弾が発砲準備を終えている。
後は、これを標的にぶち込めば良いだけの話だ……。
ティアナは、そう考えると同時に、デバイスの引鉄を迷わずに引いた――――
◆(1)
「皆、お疲れ様」
「お疲れ様♪」
訓練を終え、海上に建設された陸戦用空間シュミレーターから出たフォワード陣五人が、一人を除いて、潮風が心地よいコンクリートの岸でぐったりとしていると、なのはとシャーリーが満面の笑みで歩み寄ってきた。
これに、先程まで地面に腰を下ろし、表情を俯かせていたアルファード以外の四人が慌てて立ち上がり、姿勢を正した。
しかし、これに対しなのはが「良いよ、座ってても」と許しを出すと、四人は其々「失礼します」といって腰を下ろした……当然、アルファードだけはさっきから直立不動で規律正しく、戦技教導官であるなのはと向き合っている。
「とりあえず今回の訓練について私から言える事は、皆、連携がまだまだ甘いね。いくらまだ会って間もないからって、実際に任務に身を置いたのなら、その瞬間から完璧なチームワークを見せなきゃいけない……それがプロなんだから」
「「「「「はい」」」」」
なのはの、今回の訓練についての総括に五人は真剣な面持ちで耳を傾けている。
その様子を見渡しながら、なのはは次に、5人の中で頭一つ背の高い少年へと視線を合わせた。
「特にアルファードは、初めから皆と合わせる気が見られなかった。地上本部の首都防衛隊でも、ああいう事をしてたのかな?」
「はい! 申し訳ありません!」
他の四人がぐったりとしてる中、胸を張った休めの姿勢を取っているアルファード……。
この愚直なまでの真面目さに、なのはとシャーリーは苦笑をするが、彼に対しては、まだまだ言う事がある。
「本来なら5人で行動することを想定していたのに、君が勝手に行動してしまった事で、チームワークに乱れが生じた。たぶん、皆は気づいていないと思うから言うけど、チームワーク、連携って言うのは、一人でも勝手な行動を取っていたのなら自然と乱れていくものなんだ。だから今後、アルファードは単独行動を取らない事……これからは、センターガードのティアナの指示をちゃんと待って聞く事。いい?」
「はっ! 了解致しました!」
下手すれば敬礼でもしてしまうのではないだろうかと思える、アルファードの返事に、またしてもなのは含めたティアナ以外の全員が苦笑してしまう。
ティアナはというと、なのはの言葉を受けた瞬間、少しだけ嫌そうな顔をしていた。
「他にも、まだまだ言いたいところはあるけど、そこは皆で一度話し合って見つめ直して欲しいな……と言う訳で、これから皆には着替えてもらった後に、今回の訓練に関する報告書とレポートを書いて、私に提出してもらいます」
「「「「「はい!」」」」」
「よろしい♪ では、今日の訓練はここまで。皆、明日から本格的な訓練が始まるから、夜はちゃんと寝るんだよ?」
「「「「「はい!」」」」」
「特に、アルファード君は可愛い女の子ばっかだからって、皆にちょっかい出さないようにね♪」
「はっ! 肝に銘じておきます!!」
「あらら……」
からかおうとも、それすらもこれぞ地上本部首都防衛隊といった様に、仏頂面かつキリッとした眼で答えるアルファード……。
基本的に、誰とでも隔たりなく接せるシャーリーを持ってしても、彼の堅苦しさには肩をズルリと落さざる負えなかった。
◆(2)
重々しい空気が、先程から場を支配している……。
隊舎の窓から差し込んでくる日差しや、真新しいモニターが取り付けられたデスクの座り心地と手触りが、本来なら気分を高揚させるものなのだが……五つの事務用デスクを囲むように座った、既に訓練用の衣服からカーキ色の制服へと着替えたフォワード陣5人には一切の笑顔が見られなかった。
理由なら、皆理解している……何故なら、その原因となっている二人が先程から延々と対面で睨み合っているからだ。
まあ、正確には、対面している二人の内、一人が一方的に睨んでいるだけで、もう一人は、もともと仏頂面の無表情なため目つきが悪いだけなのだが……。
「す、スバルさん……ティアナさんとアルファードさんの二人って、前に何かあったんですか?」
「あったって言えば、あったんだけどね……」
「うぅ……二人とも、怖いです」
そんな空気に耐えられないのか、取り残されたエリオ・スバル・キャロの三人が、ヒソヒソと二人に心配そうな視線を向けている。
すると、徐にティアナが、デスクの上に置いてあった水が入っている紙コップを手に取り、それを口に含んだ。
たったそれだけの動作だったのだが、ティアナがお冷のコップをデスクに置いた瞬間、他の三人がビクリと体を震わした……。
「で……アンタは結局、これから私の指示に従うの? 従わないの? どっち?」
フォワード陣の司令塔とも呼べるセンターガードとして、だけではなく、どこか私情も含まれている様なティアナの鋭い眼つきに、アルファードは何ともないとばかりに、普段通りの無機質な様子で答えた。
「高町教導官からの命令だ、従うに決まっているだろう」
「なのはさんからの命令だから……ね」
ふざけてるの――――?
もともと厳しい口調のティアナであったが、この時の声音は、棘どころか槍すら付いているのではないかと錯覚しそうな程の剣幕を纏っていた。
彼女が、タイトスカートから衣擦れの音を発しながら、ゆっくりと足を組み直す……腕を胸下で組んで、相手を見下しているような彼女の視線は、その道の者であれば一発で昇天してしまいそうな威力を誇っていた。
しかし、それでも尚、彼女と向き合っているアルファードの表情に乱れは無い。
「ふざけてはいない。上官の命令に逆らうなど、そんな愚かな真似は俺はしない」
「へぇ~そうですか……真面目な事ね、とっても模範的で、とってもムカつく答えだわ」
「そうか」
「大体アンタ、なんでなのはさんにああ言われたのか、実際理解してないし納得してないでしょ?」
「それでも、上官の命令は絶対だ」
「そう……」
こいつには、本当に何を言っても無駄みたいね……。
ティアナは一度瞼を俯かせながら、胸中で悟る。
だが、どんなに悟ったとしても、これから目の前の糞野郎とは、いくら分隊とはいえ、一緒のチームで前線に出なくてはならないのだ。
ここで妥協し、引いてしまっては、いずれ取り返しの着かない事が起こってしまうかもしれない。
故に彼女は、本来ならいつまでも話をしていたくないアルファードに対して、吊り目がちの勝気な視線を向けた。
「いい? この際だからハッキリ言うけど、アンタは、この隊にとっては邪魔な存在なの。そりゃ確かに実力は申し分ないわ。けどね、協調性の無い人間なんて、チームとして考えたらお荷物以外の何でもないの」
「ティア、それはっ!」
「馬鹿スバルは黙ってなさい!」
いくら何でも言い過ぎであろうと、スバルがオズオズと二人の合間に入っていこうとしたが、機嫌が最高に悪いティアナに一喝されてしまい、シュンとした様子で、座っていた椅子に縮こまってしまった。
もはや二人の合間に入っていけなくなってしまったスバルに、キャロとエリオの二人が同情の籠った視線を向けている。
そんな他の三人を無視して、アルファードがティアナの言葉に対して口を開く。
「俺にとっては、別にそれで構わない。一人で行動していた方が多くの敵を落とせるからな」
「なによ、それ……私たちがアンタのお荷物になってるっていうの?」
肩を震わせて、アルファードを睨むティアナ……。
「現に、そうだっただろう。俺が4機、お前が1機、ナカジマが1機、ルシエが2機、モンディアルが0機……最後に至っては、お前の射撃を待つよりも、俺が直接落とした方が早かった」
「なんですって……」
「結果的に見れば、お荷物になっていたのはお前達の方だと言っている。だが気にするな、これからは教官の言うとおり、お前の指示に従って動く。好きにするがいい」
「このっ!?」
当然とばかりに物を言うアルファードに、ティアナが遂に椅子から立ち上がり、デスクから乗り出そうとしたのだが。
「そ、その! ちょっと良いですか!!」
突然、これまで二人が醸し出す険悪なムードに怯えきっていたキャロが、場の空気を引き裂くかのように間に割って入ってきた。
これに二人だけでは無く、スバル・エリオの二人も同時に、驚いたように振り向いていた。
一斉に視線を集めてしまったキャロは、その見開かれてはいるが弱々しい瞳をちょっとだけ潤ませながら、勇気を振り絞って口を開いた。
「あ、あの、どうしてアルファードさんは、そんなに皆の事を信用してくれないのですか? どんなに強い人だって、一人よりも皆で闘った方が、きっと楽ですし心強いと思うんです」
隣に座るキャロは、今までのアルファードの言い分について何か思う所があったのか、第一印象の時からは考えられない、意思の籠った声音で言葉を発している。
しかし、当のアルファードに、反省の色どころか思考する意思すら見られない。
「確かに、チームで行動が出来るのなら、それに越したことは無い……俺が前にいた部隊では、皆が一つの生物として動く事で、1足す1の戦力を何倍にも跳ねあげていた」
「でしたら……っ!」
「しかし、だ……」
両手を胸の前で握って、必死にアルファードに対して何かを伝えようとしたキャロを制する様に、彼が鋭い視線を彼女に向ける。
その少しでも隙を見せれば、一瞬にして生命の糸を断ち切られてしまいそうな、鋭利な瞳に、キャロは思わず押し黙ってしまう。
「それは、全員の力が拮抗していてこそのチームワークだ。今のスターズ・ライトニング分隊には、それ程の拮抗が見られない……つまり、まだ俺一人で動いていた方が、お前たちと一緒に動くよりも高い結果が得られるという事だ。いや……むしろ、お前たちが俺をサポートするべきだ」
「そんな……」
「キャロ、こいつにそんな事言ったって無駄よ」
「ティアナさん……」
一貫して、皆とまともに取り合おうとしないアルファードに一蹴されてしまったキャロに、ティアナが暗に諦めろと告げる。
すると、徐にアルファードが事務用のデスクから立ち上がった。
「話は、これで終わりだな。だったら、俺は昼食を取りながら報告書とレポートを作らせてもらう」
「勝手にしなさい」
「ああ、そうさせてもらう……お前たちも、早く昼食を取った方が良い。生活のリズムを崩すのは、なるべく避けた方が良いからな」
「大きなお世話よ……」
本気で言っているのか、それとも、こちらを馬鹿にしているのか、いまいち判断が付きにくい言葉を残して、アルファードは事務用デスクに差し込んでいた小型の周辺機器を取り出すと、何事も無かったかのように、その場を立ち去って行ってしまった。
彼が立ち去る後ろ姿を眺める、フォワード陣の其々の視線。
一人は不機嫌そうに、また一人は心配そうに……そして残りの二人は、どうしていいのか分からないと言った眼で、彼を見送っていた。
次からはファーストアラート編です。
物語の構成としては、そこからこの二次小説の話が動いて行くので、今回までの四話は序章的な位置になっています。