ルルーシュのためなら死ねる   作:トマトじゃないんです

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初投稿になります。
ハーメルンの機能はまだ把握しきったわけではないので
どこかおかしい個所があれば感想等でご指摘ください。


STAGE 1 「魔女の寄る辺」

この世の理は平等ではない。

「理不尽」と言い換えても良い。

 

 

例えば「これだけは誰にも負けない」

という特技が君にあったとしよう。

そうだな、君が学生だったとしてクラスでは

その分野に限り、真実己が一番だ。

一生懸命努力して血反吐を吐いてまでそれに執心し

ゆえに自分が他者に劣ることなどありえない。

学校の一クラス、いやもしかしたら

学校全体でもその分野で君は一番かもしれない。

 

だが、だ。

 

年を経るごとに解ってしまう。

「自分が特別ではない」ということを。

己が一番だと思っていた分野でさえ例外ではない。

なぜならそう、何事においても上には上が存在する。

自身が及びも付かない領域にまで簡単に至れる者。

それも大した苦労もせず片手間程度で。

 

その時君はどう思うだろうか。

 

己が血反吐を吐き地べたに這いつくばってまで極めた特技を

鼻歌交じりで超越してみせる人物を前にして

君は「理不尽だ」と思わずにいられるだろうか?

「人は平等だ」などということができるだろうか?

少なくとも私にはできない。

この世はいつだって理不尽で、人は平等じゃない。

 

究極、この世は「運が全て」だといって良い。

 

生まれつき美しい者、醜い者。

そして富める者、貧しい者。

さらに強い者、弱い者。

すべて己では決められず、だからこその理不尽で不平等。

 

 

 

 

 

だから、そう。私が今これほど理不尽な目にあっているのも

全てはこの世の理によって定められた運命だと言えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……これ」

 

意識はハッキリとしていた。

だからこそ今この現状が余計理解できない。

まず、私は裸だ。すっぽんぽんだ。

一糸まとわぬ姿、下着すら身につけていない。

だが誤解しないでほしい。私に露出性癖は無い。

しかし現実問題私は全裸だった。

 

後ろのステンドグラスから差し込む光が

私の魅惑的な肢体を薄暗い室内にぼう、と浮かび上がらせている。

己の視界に映るのは大きすぎず、そして小さすぎないジャストサイズの美乳。

滑らかでシミひとつない処女雪の様な手足。

そして手ですくとサラサラとこぼれおちる緑色の長髪。

これが、「私」だと?

 

「……いや、まて」

 

あり得ない(・・・・・)

誰だ?これは(・・・・・・)

まず「私」は何だ?ここはどこだ?

軽くパニックになりつつも現状を把握するため

薄暗い室内を見渡すと、ソレはすぐに見つかった。

 

 

「シスター?」

 

私の真正面には満足そうな顔で額に穴を穿たれ死んでいる女性の死体があった。

服装からシスターと思われるその女性はしかし、不思議と見覚えがあって……。

 

 

 

 

 

 

――次の瞬間、私はすべてを理解した。

 

 

 

 

 

 

「コードギアス……」

 

そう、ここは「私」が好きだったアニメ作品

「コードギアス 反逆のルルーシュ」の世界なのだと。

そして私はその作品内において主人公ルルーシュに異能の力

「ギアス」を与えた契約の魔女にしてヒロインの1人、「C.C.」なのだ。

――つい先ほど同じ言葉をつぶやいた気がするが、言わせてほしい。

 

「……いや、まて」

 

ありえないでしょ、常識的に考えて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は端的に言って地獄だった。

原作のアニメ作品を知ってるからと言って

それは=コードギアスの全てを知っているというわけでは決してない。

特にC.C.に関して言えばその人生の大半が謎に包まれている。

ルルーシュとエリア11で出会うまでの彼女の動向はほぼ謎。

ギアスシリーズをアニメだけしか知らない「私」にとって彼女は

マリアンヌやらシャルルと仲が良かったとか。

V.V.とはあまり仲良くなさそうだ、とか。

中華連邦でマオと暮らしてたけど捨てた、とか。

ギアス嚮団とかいう謎のカルト集団の長をやってたとか、大まかな知識しかない。

そしてそれらが何年、何月までの期間そうであり

どういった経緯でそうなったのかは全く分からないし

そもそも設定してあったのかも今となっては本当に謎である。

 

 

だがまあ、謎といえば「私」が一番の謎だ。

己の事なのに何もわからないのかと思われるかもしれないが

本当に何一つわかる事が無いのだから仕方がない。

 

 

唯一分かっている事と言えば、前世(便宜上そう呼ぶ)において

「私」は日本に住む唯の一般人であり、それなりにアニメやら

サブカルチャーに通じていただけの人間だった、と言う事だけ。

それ以外の記憶についてはひどく曖昧だ。

なにせ「私」本来の性別がどちらだったのかすら分からないのだから。

だがまあ、それは別に良い。いや、よくはないが

差し当たって問題ではなかった。

というかそんな事を考えてる余裕はなかったしどれだけ記憶を遡っても思いだせない部分に関しては仕方ない。

人生諦めが肝心だ。

まさに裸一貫異世界に放り込まれた上に

記憶もおぼろげで元の世界に戻る方法も分からない。

さらにこの身は不老不死、とくればこの世界で生きていく以外の選択肢が無いのだ。

 

だが不幸中の幸いと言うべきかこの世界の常識は全てこの体が覚えていた。

言語や宗教、その他もろもろまるで始めから知っていたかのように

知識として私の中に有ったのだ。

これについて明確な答えは今になっても不明なままだが

恐らくは「コード」が関係しているのではないかと思う。

 

C.C.やV.V.を不老不死たらしめている「コード」。

これによってシャルルらが「神」と呼ぶ「集合無意識」とつながりが強い

私たちコード保持者はある程度、それに干渉できる能力を持っている。

いわば人類が誕生してからこれまでの知の集積体であるそれから

私が必要としている情報をコードを通じて無意識的に手に入れたのだろう。

つまり「私」が成り替わる前のC.C.がこの世界で蓄えた常識と知識を。

この時なぜ「C.C.の記憶」がインストールされなったのかは不明だが

無意識の領域で「私」が拒んでいたのかもしれないし

「私」というイレギュラーが集合無意識にあったであろうC.C.の記憶項目を上書きしてしまったのかもしれない。

まあどちらにせよただの推測にすぎず答えは依然不明のままだ。

突然この器に宿っただけの凡人がコードやギアスなどといった超常の力を理解できるはずもない。

この件について私は考えるのをやめた。

 

さて、集合無意識にある膨大なデータにアクセスできると言うのならそれを利用して元の世界に帰る手立てなり自分の知能を上昇させるなりできるはずだろ

と思われるかもしれないが結論からいって、それは不可能だ。

そもそも無限の情報体である集合無意識から

自分以外の他者の知識を正確に抽出し取り込むなど不可能だと言えるだろう。

ただ例外として自身が契約を結んだギアスユーザーの知識や記憶ならば恐らくは……といったところだ。

 

勿論、やろうと思えばできないこともない。

ただそれは「アーカーシャの剣」のような大がかりな古代の遺物が必要だと思われる。

つまりコードも万能ではないと言う事でそれはそのまま

「私」のC.C.としての人生難易度が鬼レベルで跳ね上がると言う事だ。

(というかコードよりギアスの方がこの状況では百倍頼りになる気がする。)

 

 

 

ぶっちゃけた話、私に原作開始まで待とうだなんて考えはなかった。

あまりにもお先真っ暗すぎて早く死にたかったとさえ言える。

というか実際死のうとした。勿論コードが私を死なせないが。

そこでコードを持つ物を殺す事が出来る存在、つまりは

ギアスを極限まで極めたものを育てようとした。

しかし歴史の修正力だろうか、私が契約したやつらは皆ことごとく死んでいった。

惜しいところまで至った者はいたが、それだけだ。

私からコードを奪えないのであれば意味が無い。

 

 

そうして長い時間を無為に消費していくにあたり、私の精神は次第に消耗していった。

なにせ自分を自分たらしめる確固たる記憶もなく、寄る辺となる他者もいない。

特に賢くもないのならば死なないだけの非力な女だ。

しかしその「死なない」という一点が他者を嫌悪させる最も大きな要因となる。

 

無実の罪で燃やされ、灰にされて死んだ事もあった。

下種な男に犯される寸前、自ら舌をかみちぎって死んだ事もあった。

なんか知らんがギロチンで首を飛ばされ死んだ事もあった。

――――だが死ねない。

これで狂うなという方が無理な話だ。

とっくに私の精神は限界を越えていたのだ。

 

 

いつまでも終わらない死と再生の連鎖。

親しいものはみな私を置いて先に逝く。

前世の記憶もほとんど無くC.C.がコードを得るまでの記憶も無い。

個としての質量が足りない空っぽでがらんどうのこの器に

不老不死という特性はただひたすらに魂を劣化させる地獄でしかなかった。

 

 

「死にたい」

 

 

それだけがいつしか私の行動原理となっていた。

今だから分かるがC.C.は本当にすごい。

この圧倒的孤独と虚無の中生き抜いて見せたのだから。

アニメの最後はルルーシュにすら先立たれ、また独りに逆戻り。

ありえないだろ、なんだその精神の強さは。

 

私ではこの永遠に耐えられない。魂は既に悲鳴を上げている。

だから、ああ、はやく――――私の生を終わらせてくれ。

 

 

 

 

 

 

だがそんなある日、私は気づいた。

 

ルルーシュだ、ルルーシュがいるじゃないか――と。

 

 

 

 

この世界がコードギアスの世界だと言うのなら

彼が私を殺すことができるレベルに至れるのはほぼ確実だ。

ならば彼の生誕をまてばいい。そうだ、それがいい。

「私」のおぼろげな前世の記憶では「私」は彼が

コードギアスのキャラクターの中で一番好きだった。

そう考えると最早私の思考は止まらなかった。

まるでアイドルに会える時をまちわびる少女のように胸が高まる。

あれだけ前世で好きだった存在に生身で会えるのだ。

こんなにうれしい事はないじゃないか。

しかも十数年たてば私を「殺してくれる」。

 

 

個としての質量が限りなく薄く、長い時の中で疲弊し摩耗した私にとって

ルルーシュと言う存在はまさに地獄に下ろされた蜘蛛の糸。

寄る辺なき私には彼こそが救世主に思えた。

終わらない地獄から私を解放してくれる、救世主に。

 

 

 

 

 

ああ――まさに、私だけの皇子様――――――!

 

 

 

 

 

 

そして「私」がC.C.となってから

数え切れないほどの時がたち――――ついに

 

彼が、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがこの世界に産声を上げた。

 




次回からはサクサク進みます。たぶん。
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