ルルーシュのためなら死ねる   作:トマトじゃないんです

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文章を書くのって難しい。


STAGE 2 「愚者」

「C.C.のあんな顔、初めてみたわ」

 

隅々まで手入れの行き届いたアリエス宮で

2人だけのお茶会を楽しんでいると

マリアンヌが突然、そんな事を言い出した。

一瞬何をいっているのかわからなかったが

すぐに「あの事か」と答えに辿りついた私は

気恥ずかしさを隠すように空のティーカップで口元を覆った。

マリアンヌはそんな私の様子が可笑しいのか

帝国皇妃にふさわしい上品さで微笑んだ。

 

――軍人をやっていたころはもっと豪快に笑うやつだったのにな。

などと、私はテーブルの向かい側に座る“友人”に

心の中で憎まれ愚痴を叩くも

同時にひどく穏やかな気持ちでいる事に気付いて

訳もなく涙が出そうになった。

 

 

 

 

 

裸一貫この世界に投げ出されてから

すでに数え切れないほどの時が経過した。

一時は発狂寸前までいった私の精神も今では一応の平穏を取り戻している。

何故なら希望のない私の今生において唯一といっていいソレを見出したからだ。

 

「ルルーシュ」という希望を。

 

私の無限に続く地獄を終わらせることができる救世主。

私だけの皇子様――彼を私は自身の寄る辺と見出した。

本人にとって見れば恐らく迷惑この上ない話だろうが

しかしそうでもしないと私は今頃壊れてしまっていただろう。

いやもしかしたら、すでに壊れているのかもしれない。

あの時まだ生まれていもいなかった少年に

私の背負う、不老不死と言う呪いを背負わせると決めたのだから。

 

――そこまで考えて無理やり思考を打ち切る。

ずいぶんと前に決めた事だ。

今さら罪悪感など抱いたところで止まる気などない。

ならば無駄な悔恨などするべきではないはずだ。

ティーカップを口から離して私は先ほどの言葉に答えた。

 

「そうかな?」

 

「そうよ。だって貴女、何時もは全くの無表情なのに」

 

「ああ」

 

納得がいった、と言う風に頷いて

私はティーカップを受け皿(ソーサー)に置いた。

そういえば私はこの世界に転生してからこれまで

己の顔が何らかの感情に染まった様を見た事が無い。

内心どれだけ動揺していようと私の表情筋は

一切の仕事を放棄したかのように動かないのだ。

巷で一番と言われるお笑い芸人のライブを観に行った時も

本当は激しく爆笑しているはずなのだが

この体は笑い声一つ洩らさず無表情を貫いていた。

「私」という異物が中にいるせいかもしれない。

器と中身に齟齬がある為の歪みが表向きの感情の消失、なのだろうか。

芸人には悪い事をしたが決してつまらなかったわけではない。

私自身非常に違和感はあるが私は確かに爆笑していた。

ただ、表情にそれが全く反映されないだけで。

ちなみに一緒に行ったマリアンヌは笑いすぎて腹筋をつっていた。

 

「そんなに感動した?」

 

「命が誕生する場面に立ち会えたんだ、感動くらいはするさ」

 

「ふふ、そう? でも貴女がまさか泣くとは思わなかったわ」

 

「……そうだな」

 

これは恥ずかしい。

先ほどはああいったがこういうときは非常に有りがたい。

本当なら顔を真っ赤にしてしまうところだが

全く顔に血が集まらないし見た目には相変わらずの無表情だ。

まあ、マリアンヌはある程度察しているのか

ニマニマとその美貌に笑みを浮かべてはいるが。

 

「それにしても、何年も前の事をよく覚えているものだ」

 

「それだけ衝撃的だったということよ。」

 

まあ確かに。

普段無表情で愛想のない鉄仮面が

いきなり号泣でもすればトラウマになるのもわかる。

しかし、それも仕方ないことだと私は反論したい。

ルルーシュを唯一の寄る辺と決めてから

マリアンヌやシャルルと出会うまで

これも、またものすごい時間を要したのだ。

その果てにやっと彼の存在を確認できた。

今でもあの瞬間の感動は忘れられない。

荒ぶる感情の波は心の防波堤をことごとく突き崩し

ついには鉄仮面の外装すら弾き飛ばして涙が瞳からあふれ出した。

声こそ挙げなかったものの、あの場で一番水分を消費したのは

まぎれもなく私だったと断言できるだろう。

さすがのシャルルもドン引きしていたことを覚えている。

私は奴のマカロニヘアーにドン引きだがな。

モーツァルトの何倍巻いてるんだよそれ。

いや、むしろバッハに近いか?――比較してみたが激しくどうでもよかった。

 

「それは迷惑をかけたな」

 

「? なんで? 少なくとも私は嬉しかったわ」

 

「?」

 

いきなりなにを言い出すかと思えば。

しかしマリアンヌだからな、いろいろ寛容なやつだから

マカロニヘアーの夫を「素敵!」なんていって受け入れる女だ。

無表情で滝の様な涙を流している女を目にしても

その程度は動揺するまでもないと言う事だろう。

さすがは女だてらに“閃光”の二つ名を戦場に轟かせるだけはある。

あのナイトオブワン、ビスマルクですらKMF戦では彼女に勝てない。

ギアスを発動してやっと五分の勝負だというのだから驚きだ。

 

「なるほど」

 

「何か行き違いが発生している気がするけど……まあ良いわ、それより良いの?」

 

「なんだ今度は。主語を抜いて話すな」

 

「だから、ルルーシュの件よ。ナナリーにだって貴女会っていないでしょう」

 

「そのことか」

 

そう、私はここ数年ルルーシュの前には一度も姿を現した事がない。

出生の場にこそ立ち会ったがそれきりだ。

それはナナリーに対しても同じスタンスでいる。

理由としてはやはり「原作」だ。

マリアンヌやシャルルとは交友関係のあったC.C.だが

ルルーシュとナナリーは彼女の存在を全く覚えていなかった。

つまりこの時点でC.C.と彼ら兄弟の間に面識は一切なかったというわけだ。

不老不死以外に取り柄のない私としては

未来を知っていると言うアドバンテージを出来るだけなくしたくない。

だからある程度の齟齬は見逃したとしても

基本的に原作の流れに逆らう気はないのだ。

 

だから、会わない。

 

できることならつかず離れず彼の息吹を感じたいところだが

今は我慢の時だ。なに、待つのには慣れた。

ならばあと十数年くらいは大したことではない。

まあこうして、たまにお茶会を開いてはマリアンヌから

最近の兄弟の様子を写真付きで聞かせてもらったりはするけど。

ああ、この写真なんて最高だ。

おてんばなナナリーに手を焼かされつつも

まんざらでもない笑顔を浮かべるルルーシュ。

カワイイ。超カワイイ。まさに魔性だ。

私は「魔女」なんてよばれているがむしろ

お前にこそ、その称号はふさわしいよルルーシュ。

――おっと、彼は「魔王」だったか。

 

「まあこちらにも色々とあるんだよ」

 

「ふ~ん? まあいいけど」

 

私が適当にごまかすとマリアンヌはそれ以上の追及をやめて

自分の残り少ない紅茶を飲み干した。

その姿は実に優雅で隙が無い。

ルルーシュがマザコンになるのも仕方ないと思えた。

 

……それにしても改めて向かいあって分かることだが

ルルーシュはマリアンヌによく似ていると思う。

ブリタニア人にしては珍しい艶やかな黒髪に

アメシストを思わせる深い紫色の瞳。

元は庶民の出とは言うがその美しい容姿は私がこの世界で出会った

どの貴族よりも高貴な色香を漂わせている。

成程、これほどの美女ならばシャルルが惚れるのも当然というもの。

そしてそれを受け継いだルルーシュが美しいのも必然だ。

 

――などと私の思考がルルーシュで染まりかけたその時

図ったかのようにマリアンヌの口から彼の話題が飛び出した。

 

「ああ、そういえばルルーシュの訓練だけど、最近ものになってきたわ」

 

「……そうか、やはり私の見立ては正しかったな」

 

「ええ、私としても嬉しいし息子に自分の技を教えるのは中々楽しいわ」

 

「閃光のお墨付きとは……。さすが、血は争えないな。体術の方は――」

 

「ああ、ビスマルクに頼んだわ。ルルーシュは、嫌がってるけどね」

 

クスクスと鳥がさえずるように笑ってマリアンヌはいう。

原作の流れを変えないように、と言っておきながら

一部にはちゃっかり介入していたりするのはどういうわけか。

それにもちゃんと理由がある。

前世観た筈のアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」を

思い出すに当たり、やはりルルーシュの最大の弱点は

その体力のなさとKMFの操縦技術だと思うのだ。

後者は一般兵程度には操れるもののエース級相手には歯が立たず

前者に至っては女子にも劣る体たらくだ。

 

まあそこも私としては愛しい所ではあるのだが

ここはアニメの中ではない、少なくとも私にとっては現実なのだ。

で、あるならば何らかのイレギュラーが生じて

うっかりスザク辺りに殺される可能性だってある。

実際、アニメでは幾度も危ない場面があった。

「もしも」を考えればきりがないが

打てる手はすべて打っておきたいと思うのが人情だ。

最大のイレギュラーである「私」がいう事ではないが

突発的なそれでルルーシュを奪われるわけにはいかない。

というわけで彼の成長報告を聞きながらもそれとなく

マリアンヌや場合によってはシャルルを巻き込んで

私なりのルルーシュ強化プランを話してみた。

シャルルはあまり気乗りしないようだったが

マリアンヌには思う所があったらしくこれに賛同してくれて

今では毎日ルルーシュを鍛えてくれている。

経過を聴く限り順調に才能を伸ばしているようでなによりだ。

 

アニメではその頭脳だけが取り柄のように描かれる事もあったが

ルルーシュはその実パイロットとしての適性は高い方だろう。

全く実戦を経験していないにも関わらずサザーランドも動かせるし

何気にランスロットのクルクルキックを防御している。

体力の面に関しても彼に意欲が無かっただけで

運動センス自体は非常に光るものがあると思う。

なぜならシンジュク事変の際、ルルーシュをテロリストだと誤認した

スザクの生身クルクルキックをしっかり防いでいるのだから。

常人に初見で、それも視界の悪い地下であれを防御するのは不可能だろう。

なんせスザクはギアス世界屈指の人外キャラだ。

ただ死なないだけの私などよりよっぽど恐ろしい。

それをしっかりガードしている時点で反射神経は非常に優れていると言っていい。

 

原作の彼が最後まで体力が無くてKMFの操縦がイマイチなのも

ただ本人に運動への関心がほぼほぼ皆無だった事と

優秀すぎる頭脳で他をカバーできてしまった(・・・・・・・)ためだろう。

さらにゼロとなってからは二重生活で多忙を極め

そっち方面の才能を伸ばす機会を失っていたのだ。

ガウェインは基本C.C.まかせでハドロンだし

蜃気楼は絶対防御が主で碌に戦闘していない。

 

 

だからこそ、ここで私の未来知識が役に立つ。

 

 

幼少の頃から体と操縦技術を鍛える習慣をもたせ

ブラックリベリオンに備えさせるのだ。

そうすれば将来スザクに勝てなくとも

善戦できる程度にKMFを操れるかもしれないし

体力だって少なくとも運動部に所属している女子程度にはつくはずだ。

KMFはマリアンヌに任せるとして体術の面を

誰に任せるかが問題だったが既にビスマルクに

教えて貰っているようなら安心だ。

なにせ生身では最強の男だ。マリアンヌやスザクでさえ

彼と真正面からやりあって勝てはしない。

 

「まあ、やつ(ビスマルク)も忙しいから、いつもと言う訳にはいかないんだろうが」

 

「そのときは私が体術の方も面倒みてるから大丈夫よ」

 

「ルルーシュに嫌われないようにな」

 

「あら、それを貴女が言うの?」

 

「ちがいない」

 

といってもルルーシュは私の存在をまだ知らないわけだが。

しかしこの関係もあと少しで終わるだろう。

そろそろV.V.がマリアンヌを襲撃する時期だったはずだ。

 

――とはいえ私は彼女を殺させるつもりはない。

 

ここまでくるとお前は本気で原作通りに進める気があるのか?と

この状況をみている第三者がいたのならツッコミを受けている所だろう。

私の目的はあくまでルルーシュに殺されることだが

仮にも友人関係を築いてるマリアンヌを見殺しにするほど白状ではない。

アニメの視聴経験から当初彼女への印象はあまり良い物ではなかったが

実際に関係を構築してみればその精神が決して悪しきものでない事は分かる。

ルルーシュとアーカーシャの剣で再開したマリアンヌがアレだったのは

おそらく長い間精神体として存在していた事が原因なのだろう。

つまり物質的な執着が消えた事により今までの常識に価値を感じなくなったのだ。

そうして精神が変質しルルーシュが嫌悪するそれになった、と。

まあ推測でしかないがとりあえず私は彼女を殺させるつもりはない。

そのためにルルーシュが10歳になる少し前からはずっと

ここ、アリエス宮に(表向きはマリアンヌの警護として)住まわせてもらっている。

ルルーシュやナナリーと出くわさないようにするのは大変だが

これも友人と、私の皇子様の為と思えばなんでもない。

同じコード保持者であるV.V.が動けば私にそれが伝わるし

いざとなれば身を呈してかばえばいい。

いっそV.V.の襲撃を伝えてしまおうかとも思ったが

シャルルの様子を見る限りこの時期の兄弟の信頼関係では

私がそれらしい事を云ったところで無駄だろう。証拠もないからな。

それにもしシャルルを怒らせでもして封印されたらたまらない。

というわけでマリアンヌ暗殺事件は私一人で何とかするしかないわけだ。

ままならないが仕方ない。まあ、上手くやってみせるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その数日後、アリエス宮にテロリスト(・・・・・)が侵入。

マリアンヌ皇妃が銃撃され、死亡した――。

 




C.C.だめじゃん!と思ったあなた、正解です()
よーし次からはもっとサクサク進めるぞー。
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