──白亜の宮殿・最上階。
階段を上ると、そこには満天の星空が広がっていた。
白亜の宮殿の最奥、最上階には天井がなく、さながら闘技場のような円形の舞台になっている。
それまで不安に苛まれながらも最奥で待っていた黒ウサギは、現れた3人の姿を見た途端慌てて傍まで駆け寄った。
「日向さん、十六夜さん、ジン坊ちゃん!」
「よ、待たせたな黒ウサギ」
「ヤハハ。あんな変態野郎と一緒に居たんじゃ、さぞかし息も詰まったろ?」
「ええ、まあ……って何を言わせるんですか! 本当に心配してたんですからね!?」
「ま、まあまあ。黒ウサギも落ち着いて」
ムッキャー! と両手を上げて猛抗議する黒ウサギを、ジンが苦笑を浮かべて落ち着かせる。
十六夜はそんな黒ウサギを放置すると、円形の舞台を見回した。
「それで? あの変態野郎はどこだ?」
「口を慎め、この“名無し”が」
声は頭上から聞こえてきた。
見上げれば、宙に浮かぶルイオスが侮蔑の眼差しで日向たちを見下ろしていた。
「ふん。たかが“名無し”風情の足止めも満足に出来ないとはね。ホントに無能な奴ら。今回の件で纏めて粛正しないと」
決して見間違いなどではない。
その両足には、確かに翼があった。
膝まで覆うロングブーツより生まれる、光り輝く対の翼が。
「まあでも、これでこのコミュニティが誰のおかげで存続できているのか分かっただろうね。自分たちの無能っぷりを省みてもらうには、いい切っ掛けだったかな」
バサッ、と翼をはためかせる。
その一度の羽ばたきでルイオスは風を追い抜くと、落下速度の数十倍の勢いで日向たちの前に降り立った。
「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……あれ、この台詞を言うのって初めてかも」
それは全て騎士たちが優秀だったからだ。
今回のように準備が整わない段階での突然の決闘でなければ、ここまで容易に階下を突破することは出来なかっただろう。
「まあ、不意を打っての挑戦だったんだ。騎士たちも良くやった方さ。それに何より、俺たちには最初からコレがあったからな」
そう言って日向は右手に持っていた物をルイオスに向かって投げつけた。
ルイオスはそれを受け止めると、いぶかしげに手元へ視線を落とす。
「コレは……“ハデスの兜”のレプリカだと!? どうしてお前らが持っている!?」
「グライアイたちから預かってきたのさ。その兜を、お前に渡して欲しいってな」
「何だと? クソッ、あの老婆どもめ。よくも勝手に余計な真似を……!」
配下の行動に怒りを表すルイオスだったが、そこに日向が声をかけた。
「アンタ、その兜には見覚えがあるじゃないか?」
「……は? 当然だろ。この兜は僕らコミュニティを代表するギフトだ。見覚えのない方が可笑しいだろう」
「グライアイたちから聞いた話によるとな、どうもその兜は失敗作らしいんだ」
「なに?」
「もう一度聞く。その兜に、
日向は真剣な声音で再び問う。
名無し風情が何を偉そうにと憤りかけたルイオスだが、ふと再度手にした兜を見て、そこで何かに気がついた。
「うん? この側面の装飾の歪みは……」
過去の記憶を掘り返し、ルイオスはハッとする。
日向は頷いて話を続けた。
「どうやら、思い出したみたいだな」
「この兜は、まさか……」
「そうだ。それは、
日向の言葉に、ルイオスは衝撃を受けたように瞳を見開く。
「な、に……?」
「当時ペルセウスの跡継ぎだったアンタは、次期頭首として先代からコミュニティを代表するギフト──その“ハデスの兜”のレプリカを製作するよう言い渡された。それでも最初は満足に出来ず、未熟な腕ながらも何とか完成させたのが……その兜だ」
ルイオスの脳裏に当時の記憶が蘇る。
確かにコレは自分がまだ幼い頃、“ペルセウス”の頭首となる以前に初めて製作したものだ。
狼狽するルイオスを見つめ、日向は更に話を続ける。
「しかしその兜は、完全なレプリカには程遠い失敗作だった。恩恵を完全に付与させることが出来ず、一度でも使用すればただの兜に戻ってしまう欠陥品。だが曲がりなりにも、それは自分が初めて自らの手で完成させた作品だ。処分や解体してしまうのは、アンタも気が咎めた。だからこそアンタは、それをグライアイたちにプレゼントすることにしたんだろ? 当時彼女たちは、アンタの遊び相手でもあったそうだからな」
「……フン。あの老婆どもめ、余計なことをベラベラと。それで? お前は僕に何が言いたいの?」
「グライアイたちからの伝言だ。『これ以上、誇りに背くような真似は止めて欲しい。昔の優しかった心を取り戻して欲しい』──ってな」
「アイツらが、僕にそんなことを……?」
「ああ」
「そうだったのか……」
日向の話を聞いて、ルイオスは顔を伏せる。
俯くその表情は、まるでこれまでの行いを悔やんでいるかのように歪んでいた。
同じく話を聞いて涙ぐんでいた黒ウサギは、そこでルイオスに声をかけた。
「グライアイさんたちの言う通りなのです! こんな無益な争いはもう止めて、互いに手を取り合いましょう! そうすればきっと平和な解決方法が──」
「──ぷっ、くくく、あっはははははは!!」
唐突に、ルイオスは笑い出した。
腹を抱えて哄笑を上げる彼に、十六夜は厳しい視線で問いかける。
「何がそんなに可笑しいんだ?」
「くくく、いやあ参ったね。まさかアイツらがそんな勘違いをしてるとは思わなくてさ」
「か、勘違い?」
ジンは思わず小首を傾げる。
ひとしきり笑ったルイオスは、一転して馬鹿にするような笑みを浮かべ、
「ここだけの話、先代は怒らせると恐くてね。アイツらに兜をやったのは、体のいい証拠隠滅だったのさ」
「なっ……!」
「それに遊び相手だって? ああ、確かに遊んでたよ。アイツってば醜い上に、目も歯も3人で1つを共有しているような哀れな奴らだったからさ。からかうのが楽しくてね」
「な、何ということを……!」
ルイオスの発言に、黒ウサギは怒りでウサ耳を逆立たせた。
しかしルイオスは嘲笑うかのように兜を見て、
「こんなもの、とっくの昔に存在自体を忘れてたよ。返してくれたんなら、もう要らないし捨ててもいいよね?」
カランと、ルイオスの手から兜が落ちた。
そこでルイオスは再び翼を羽ばたかせ、日向たちの頭上に飛び上がる。
「さあ、無駄話は終わりだ。ゲームマスターとして、お前らに引導を渡してやる!」
傲慢な笑みで決戦の開幕を告げるルイオスを見上げ、日向は最後に呟いた。
「……グライアイたちは、こうも言ってたよ。もしもアンタの目が、それでも覚めないようならその時は……『ぶっ飛ばして、その曲がった性根を叩き直してやってくれ』──ってさ」
「ハッ! やれるものならやってみろ!」
ルイオスの翼がもう一度羽ばたく。
彼は“ゴーゴンの首”の紋が入ったギフトカードを取り出すと、光と共に燃える炎の弓を取り出した。
「……炎の弓? ペルセウスの武器で戦うつもりはない、ということでしょうか?」
「当然。空が飛べるのに、なんで同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ」
小馬鹿にするように天へと舞い上がったルイオスは、首にかかったチョーカーを外し、付属している装飾を掲げて答える。
「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま“ペルセウス”の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろ?」
「っ……!」
黒ウサギは慢心しないルイオスに焦りを感じ始めていた。
もしも彼女の予想通りならば、ルイオスの持つギフトはギリシャ神話の神々に匹敵するほどの凶悪なギフトだろう。
まともに戦ったところで勝てる可能性は低く、ルイオスが油断している間に短期決戦を仕掛けるのが最善手であると考えていた。
しかし曲がりになりも、彼はコミュニティ“ペルセウス”を率いるリーダーなのだ。
たとえ相手が格下であっても、無用な危険を犯しはしない。
「貴様らに見せてやろう。伝承に語り継がれる悪魔の力を!」
ルイオスの掲げたギフトが光り始める。
星の輝きのようにも見間違う光の波は、強弱を付けながらひとつひとつ自身の封印を解いていく。
日向と十六夜はとっさに構えた。
ジンと黒ウサギを背後に庇いながら、いつでも戦えるよう臨戦態勢をとる。
やがて輝きが一層強くなり、ルイオスは獰猛に叫んだ。
「目覚めろ──“アルゴールの魔王”!」
瞬間、光は褐色に染まり、日向たちの視界を染めていく。
すると白亜の宮殿に共鳴するかのような、甲高い女の声が響き渡った。
「ra……Ra、GEEEEEEYAAAAAAaaaaaa!!!」
それは最早、人の言語野で理解できる叫びではない。
冒頭こそ謳うような声であったが、それさえも中枢を狂わせるほどの不協和音だ。
現れた女は体中に拘束と捕縛用のベルトを巻いており、女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立たせていた。
やがて両腕を拘束するベルトを引き千切ると、彼女は半身を反らせて更なる絶叫を上げる。
黒ウサギは堪らずウサ耳を塞いだ。
「ra、GYAAAAAaaaaaaa!!!」
「な、なんて絶叫を」
「──! 避けろ! 黒ウサギ!」
「ったく、よそ見してんじゃねえ!」
えっ、と硬直する黒ウサギ。
日向は黒ウサギを、十六夜はジンを抱きかかえると、すぐさまその場から飛び退いた。
直後、空から巨大な岩が雪崩のように落下してくる。
二度三度、と続く落石を避ける日向達を見て、ルイオスは高らかに嘲った。
「いやあ。飛べない人間って不便だよねえ。落下してくる雲も避けられないんだから」
「く、雲ですって……!?」
ハッと周囲に眼をやる黒ウサギ。
雲が落下してきているのは、なにもこの闘技場の上だけではない。
“アルゴールの魔王”と呼ばれた女の力は、このギフトゲームに用意された世界全てに対して石化の光を放ったのだ。
瞬時に世界を満たすほどの光を放出した女の名を、黒ウサギは戦慄と共に口にした。
「星霊・アルゴール……! 白夜叉様と同じく、星霊の悪魔……!」
──“アルゴル”とはアラビア語で「ラス・アル・グル」を語源とする、“悪魔の頭”という意味を持つ星のことだ。
同時にペルセウス座で、“ゴーゴンの首”に位置する恒星でもある。
ゴーゴンの魔力である石化を備えているのはそういう経緯があるのだろう。
ひとつの星の名を背負う大悪魔。
箱庭最強種の一角──“星霊”がペルセウスの切り札だった。
「今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。ま、無能にはいい体罰かな」
不敵に笑うルイオス。
なんの防御もしていない日向たちが無事なのは、単に彼の遊び心によるものだろう。
挑発とも取れるその情けに、日向と十六夜は静かに闘志を漲らせた。
「……下がってろ御チビ。守ってやる余裕はなさそうだ」
「すいません……本当に、何も出来ず」
「ま、気にするなって。それより、例の件を覚えてるか?」
ジンは慌てて頷く。
日向の言う例の件とは、彼らが“打倒魔王”を掲げたコミュニティとして活動をしていく計画のことだ。
当初の思惑ではレティシアを取り戻すことで魔王に対抗しようと考えていたジンであったが、彼女は今回の件で既に多くのギフトを失っおり、その希望も水泡に帰してしまった。
ならば今の“ノーネーム”に残る戦力は、最早彼らがこの世界に召喚した日向たちのみ。
彼らに賭けるべきか、賭けざるべきか──ジンは深く考え込むと、やがて決心したように顔を上げた。
「日向さん、十六夜さん。僕らにはまだ貴方たちがいます。貴方たちが本当に魔王に打ち勝てる人材だというなら──この舞台で、僕たちにそれを証明して下さい」
今こそ、この2人の真価を見極める。
ジンの真っ直ぐな瞳と返事に、日向と十六夜は笑って応えた。
「OK。よく見てな御チビ」
「ああ。それと黒ウサギもな」
「へっ?」
突然の呼び掛けに、黒ウサギは思わず気の抜けた返事をする。
そんな彼女に向けて、日向は宣言した。
「いつか、全てを取り戻せたら一緒に笑おう──あの言葉が嘘じゃないってことを、証明してやるからさ」
「あ……」
顔だけを後ろに振り向かせ、男らしく笑う日向の姿を見た黒ウサギは、思わず頬を紅く染める。
それでも、やがてスッと表情を引き締めると、真っ直ぐに日向を見つめて言葉を返した。
「……YES。もしも破ったら、承知しないのでございますよ?」
「ハハッ……おう!」
そして、日向と十六夜は前に出る。
「さ、それじゃ準備はいいかよゲームマスター」
「一応、泣いて謝るなら今のうちだぞ?」
「ハッ。名無し風情が、精々後悔するがいい!」
「ra、GYAAAAAaaaaaaa!!!」
輝く翼と、傷だらけの灰翼が舞う。
ルイオスはアルゴールよりさらに上空に飛び、陰に隠れながら炎の弓を引く。
蛇のように蛇行する軌跡の炎の矢を、十六夜は一喝することで迎え撃った。
「喝ッ!!」
たったそれだけで、炎の矢は消し飛ばされる。
デタラメな肺活量である。
「チッ、うちのクラーケンを打ち倒すだけの実力はあるってことか!」
「俺は倒してないけどな!」
ルイオスが十六夜に気を取られた一瞬の隙をついて、日向がアルゴールに肉迫する。
「くっ、迎え撃て! アルゴール!」
「RaAAaaaa!!」
甲高い叫び声を上げながら、自身の豪腕を振り下ろすアルゴール。
日向はその拳を真正面から受け止めると、そのまま腕を絡めて肩に回した。
「ハッ、馬鹿め! アルゴールの巨体を投げ飛ばせるわけないだろうが!」
「そいつは、どうかな……ッ!」
日向の無謀に嘲笑を浮かべるルイオスだったが、次第に表情を驚愕に染める。
なんと日向が重心を前に傾ける毎に、アルゴールの体が徐々に浮き上がっていくではないか。
日向は最後に一歩足を踏み出すと、渾身の力を込めて遂にアルゴールを投げ飛ばした。
「ウオラァッ! 行ったぞ十六夜!」
日向が正面に向かって叫ぶ。
投げ飛ばされたアルゴールの行き着く先には、獰猛な笑みを浮かべた十六夜が待ち構えていた。
「おいおい日向、お前やっぱ面白いな! ちょっとマジで勝負したくなってきたぞ!」
「そういことは全部終わってから言え!」
「ま、それもそうだなっ……と!」
「Ra!?」
ヤハハ! と哄笑を上げる十六夜はそんな日向とのやり取りもさておき、向かってくるアルゴールを全力で蹴り上げた。
その尋常ならざる脚力にアルゴールの体は浮き上がり、大きく裂けた口からは大量の息が吐き出される。
十六夜は息つく暇も無くアルゴールの上方に跳躍すると、そのまま体を一回転させ、彼女の後頭部に踵落としを叩き込んだ。
「Ra……GYAAAAAaaaaaaa!!」
地面に激突したアルゴールは巨大なクレーターを形成し、堪らずに苦悶の絶叫を上げる。
空中で体勢を立て直した十六夜は倒れ伏しているアルゴールの背に降り立つと、そのまま幾重にも彼女の背中を踏みつけた。
「ハハ、どうした元・魔王様! さっきのは本物の悲鳴みたいだったぜ!?」
「LaAGYAAAAaaaa!?」
十六夜が放つ攻撃は一撃ごとに闘技場全体に亀裂を走らせ、白亜の宮殿を砕いていく。
それを見て焦ったルイオスは咄嗟に炎の弓を仕舞い込むと、代わりにギフトカードから“星霊殺し”の名を持つギフト・ハルパーを取り出した。
「クソ! 図に乗るな!」
「アンタがな」
光る翼を羽ばたかせ、未だアルゴールを捻じ伏せている十六夜に向かって突撃しようとしたルイオスは、突然の言葉にギョッとする。
慌てて周囲を見渡すと、日向が闘技場の壁の足場を踏み砕いて跳躍し、一気にルイオスの眼前へ躍り出た。
「なっ!?」
「生憎といくら空中にいるからって、届かないわけじゃないんだよ!」
反射的にハルパーを構え防御の姿勢を取ったルイオスに、日向は問答無用とばかりに山河を砕く拳を振り下ろす。
辛うじて致命傷は避けられたものの、吹き飛ばされたルイオスは大気を突き抜けながら落下していき、地面に組伏せられたままのアルゴールに激突した。
第三宇宙速度に迫る速度で背後を打ち付けられたルイオスは盛大な嘔吐感を覚え、その下敷きとなったアルゴールもまた苦悶の絶叫を上げる。
タイミング良くアルゴールの背から飛び退いていた十六夜は、同じく地面に降り立った日向と並んで言い放つ。
「おいおい、まさかこの程度ってことはないだろうな!? ええ? 元・魔王様!」
「何か奥の手があるんだったら、今の内に出しておくことをオススメするぞ?」
余裕の態度を見せる2人に対して、何とか立ち上がったルイオスは狼狽して叫ぶ。
「き……貴様ら、本当に人間か!? 一体どんなギフトを持っている!?」
無理もない疑問だった。
“星霊”を力で捻じ伏せ、天駆けるヘルメスの靴より速く走る人間など存在しない。
その疑問に応えようと、日向と十六夜は懐からギフトカードを取り出す。
「ギフトネーム・“
「同じくギフトネーム・“
苦笑する日向たちを見て、ジンが慌てて叫んだ。
「い、今のうちにトドメを! 石化のギフトを使わせては駄目です!」
星霊アルゴールの本領は身体能力ではない。
世界を石化させる程の強大な呪いの光こそ、彼女の真の力なのだ。
だが自分の力で捻じ伏せたいルイオスは、更に正面対決を選んだ。
「アルゴール! 宮殿の悪魔化を許可する! 奴らを殺せ!」
「RaAAaaaa!! LaAAAA!!」
謳うような不協和音が再び世界に響く。
途端に白亜の宮殿は黒く染まり、壁は生き物のように脈を打ち始めた。
宮殿全域にまで広がった黒い染みから、蛇の形を模した石柱が数多に生まれ、日向と十六夜に襲いかかる。
すでに周りが見えていないのか、ルイオスは狂気じみた形相で叫んだ。
「もう生きて帰さないッ! この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だッ! 貴様らにはもはや足場ひとつ許されていないッ! 貴様らの相手は魔王とこの宮殿の怪物そのものッ! このギフトゲームの舞台に、貴様らの逃げ場は無いものと知れッ!!!」
ルイオスの絶叫と、魔王の謳う様な不協和音。
それに合わせて変幻する魔宮は白亜の外壁を、柱を、蛇蝎の如き姿に変えて襲い掛かり、日向と十六夜の身体を覆う。
千の蛇に呑み込まれた2人は、その中心でポツリと呟いた。
「「────……なら、
「「え?」」
にべもなく応えた2人に、ジンと黒ウサギは盛大に嫌な予感がした。
日向は拳を、十六夜は足を無造作に持ち上げ、黒く染まった魔宮に向かって振り下ろす。
それだけで千の蛇蝎は一斉に砕け、彼らの周囲から霧散した。
凄まじい衝撃は周囲の大気をも震撼させる。
直後に宮殿全域が揺れ、闘技場が崩壊し、瓦礫は4階を巻き込んで3階にまで落下した。
「わ、わわ!」
「ジン坊ちゃん!」
崩壊に巻き込まれたジンに黒ウサギが叫ぶ。
彼女は審判としてしかゲームに参加出来ないため、プレイヤーに直接手を貸すことが出来ない。
このままでは彼が危ないと焦った黒ウサギだったが、そこにひとつの人影が現れ、ジンを抱えて安全圏まで移動した。
「ふう、悪い悪い。ちょっとばかしやり過ぎた」
「──! 日向さん!」
ジンを抱えた日向を見て、黒ウサギはほっと安堵する。
一方で翼を持つルイオス達は上空に逃げていたが、あまりの惨状に息を呑んでいた。
「……馬鹿な……どういうことなんだ!? 奴らの拳は、山河を打ち砕く程の力があるのか!?」
上空で怒りとも恐怖ともつかない叫びを上げるルイオス。
残った闘技場の足場から見上げる十六夜は、やや不機嫌そうに声をかけた。
「おいゲームマスター。まさかこれでネタ切れって訳じゃないよな?」
「……っ……!」
ルイオスは屈辱で顔を歪ませる。
彼にとって本拠での正式なゲームは、これが初めてだった。
それがまさかここまで一方的に押されるなど、考えてもみなかったのだろう。
しばし悔しそうに表情を歪めていたルイオスは──スッと真顔に戻る。
そして極め付けに凶悪な笑顔を浮かべ、
「もういい。
石化のギフトを解放した。
呼応したアルゴールの口元に光が集い始める。
それと同時に、十六夜の隣へジンを救出した日向が戻って来た。
「さて、と。どうやら向こうも、そろそろ後がないみたいだな」
「──……カッ。ゲームマスターが、今さら狡いことしてんじゃねえよ」
不満そうに吐き捨てる十六夜。
それを聞いたルイオスは、知ったことかとばかりに叫んだ。
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ! これで終わりだ! 全て終わりだ! 石化の光に呑まれて死に絶えるがいい!」
刹那、光がより一層輝きを増す。
ルイオスの言葉に呼応した星霊・アルゴールは謳うような不協和音と共に、遂に世界の全てを呑み込む褐色の光を放った。
これこそアルゴールを魔王に至らしめた根幹。
天地に至る全てを褐色の光で包み込み、灰色の星へと変えていく星霊の力だ。
やがて褐色の光に包まれた日向と十六夜は、真正面からその瞳を捉え──
「「──……しゃらくせえ!!!」」
褐色の光を
……比喩は無い。
他に表現のしようもない。
アルゴールの放つ褐色の光は、天道日向の拳によって無効化され、逆廻十六夜の脚部によって跡形もなく砕け散った。
「ば、馬鹿な!?」
ルイオスが叫ぶ。
叫びたくもなるだろう。
階下から戦況を見守っていたジンと黒ウサギでさえ、驚愕の叫び声を上げていたのだから。
「……せ、“星霊”のギフトを無効化し、破壊した!?」
「あ、あり得ません! あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを無効化、あるいは破壊するなんて!?」
白夜叉が“ありえない”と結論付けた理由。
その2つの恩恵は、絶対に相反するギフトのはずなのだ。
この神々の箱庭において、“恩恵”を無効化するものなどさして珍しくは無い。
だがそれは、武具などの形で肉体と別に顕現している物に限る。
日向と十六夜は他に“恩恵”を持っていない。
それはギフトカードを見ても明らかだ。
なのに天地を砕く恩恵と、恩恵を無効化、あるいは砕く力が両立していることになってしまう。
だがそんな魂は、絶対にあり得ないはずなのだ。
「さあ、続けようぜゲームマスター」
「“星霊”の力は、まだまだそんなものじゃないんだろ?」
余裕の素振りで挑発する十六夜と日向。
しかしルイオスの戦意はほとんど涸れていた。
“箱庭の貴族”はおろか、“白き夜の魔王”でさえ知らない出所不明・効果不明・名称不明と三拍子揃った、正真正銘のイレギュラー。
奇跡を身に宿しながら、奇跡を無効化、あるいは破壊する矛盾したギフト。
ルイオスはありえない存在を前に呆然としていた。
そこに黒ウサギがため息混じりに割って入る。
「残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」
「何?」
「どうしてだ?」
「アルゴールが拘束具に繋がれて現れた時点で察するべきでした。……ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです」
「っ!?」
ルイオスの瞳に灼熱の憤怒が宿る。
射殺さんばかりの眼光を放つルイオスだが……否定する声は上がらなかった。
黒ウサギの言葉が真実だからだろう。
だがこの惨状を誰が予測できた。
数多のギフトで身を固め、さらには世界を石化出来るほど凶悪な星霊を抱えたルイオスが“名無し”風情に負けるなど、誰にも予想できまい。
「ま、所詮は七光りと元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」
日向は拍子抜けしたように肩を竦める。
勝敗が決した瞬間だった。
黒ウサギはゲームの終了を宣言しようとするが──そこでふと、十六夜が思い出したように口を開いた。
「ああ、そうだ。もしもこのままゲームで負けたら……お前たちの旗印。どうなるか分かってるだろうな?」
「な、何?」
不意をつかれたように声を上げるルイオス。
それもそうだろう。
彼らの目的は旗印ではなく、レティシアではなかったのか。
「十六夜?」
十六夜の真意が分からずに、日向も隣で疑問の目を向ける。
しかし十六夜は、軽薄な笑みで言葉を続けた。
「そんなのは後でも出来るだろ? そんなことより、旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。──そうだなぁ。次はお前たちの名前を戴こうか?」
ルイオスの顔から一気に血の気が引いた。
そこでようやく十六夜の言葉の意図に気づいた日向は、やれやれと肩を竦めて苦笑する。
そしてつくづく意地の悪い奴だな──と、改めて逆廻十六夜という人間の在り方を理解した。
十六夜は一片の慈悲もなく、凶悪な笑みのまま更にルイオスを責め立てる。
「その2つを手に入れた後“ペルセウス”が箱庭で活動できないように名も、旗印も、徹底的に貶め続けてやる。たとえお前たちが怒ろうが泣こうが喚こうが、コミュニティの存続そのものが出来ないぐらい徹底的に。
「や、やめろ……!」
ルイオスは今になってようやく気が付く。
自分たちのコミュニティは今まさに、崩壊の危機に立っているのだと。
「そうか。嫌か。──ならもう方法は1つしかないよな?」
一転して凶悪さを消し、今度はにこやかに笑う十六夜。
指先で誘うようにルイオスを挑発し、
「
獰猛な快楽主義者が、両手を広げてゲームの続行を促す。
彼はまだ遊び足らなかったのだ。
獅子に狙われた子鹿のようなルイオスに、日向は心の中で合掌する。
自ら招いた組織の危機に直面したルイオスは、覚悟を決めて叫んだ。
「負けない、負けられない、負けてたまるか!! 奴らを倒すぞ、アルゴオォォォォル!!!」
「RAGAAAaaaaaa!!!」
輝く翼と灰色の翼が羽ばたく。
コミュニティのため、敗北覚悟で2人は駆けるのだった。
***
それから間もなくして。
その後果敢に十六夜へと勝負を挑んだルイオスだったが、やはりその地力を埋めることは出来ず、完膚なきまでに叩きのめされて、地面の上に倒れていた。
「クソッ、クソッ……! この僕が、こんな“名無し”共に……!」
呪詛のように暴言を吐き出すルイオスのそばに、ふと日向が歩み寄った。
その手にはルイオスが投げ捨てた、すでに恩恵を失った“ハデスの兜”のレプリカがあった。
ルイオスは倒れたまま日向を見上げ、舌打ちした後で悪態をつく。
「……何だよ。何僕を見下してんだ」
「……グライアイたちは、最後にこう言ってたよ。『たまには、また顔を見せに来て欲しい。私たちはルイ坊のことを、本当の孫のように思っているから』──だってさ」
「……フン」
日向はそれだけ告げると、ルイオスの頭の横に兜を置いて去って行った。
しんと、静まり返る闘技場。
ルイオスは一度だけ兜を見つめると、頭上に輝く満天の星空を見上げ、
「……クソ。あの孫好きどもめ」
──ポツリと、そう呟いたのだった。
***
──その後、“ノーネーム”の本拠にて。
「「「じゃあこれからヨロシク、メイドさん」」」
「え?」
「え?」
「…………え?」
十六夜、飛鳥、耀の口を揃えての宣言に、黒ウサギやジンはもちろんのこと、よくやく石化を解かれ目を覚ましたレティシアも、思わず言葉を失い固まった。
「ははは……」
そんな彼らの直ぐかたわらで、日向は気の毒そうに苦笑する。
「『え?』じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって、私たちだけじゃない? 貴方たちは本当にくっ付いてきただけだったもの」
「うん。私なんて力いっぱい殴られたし。あと石になったし」
「つーかそもそも挑戦権を持ってきたのは俺と日向だろ。所有権は俺たちで等分、2:2:3:3でもう話は付いた!」
「俺は参加した覚えないんだどな」
堂々と意味不明な根拠を基に持論の正当性を説いていく問題児たち。
「い、一体何を言っちゃってんでございますかこの人たち!?」
黒ウサギは完全に混乱していた。
ついでに言えばジンも混乱していた。
ただひとり、当事者であるレティシアだけが冷静だった。
「んっ……ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れたことに、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君たちが家政婦をしろというのなら、喜んで引き受けようじゃないか」
「レ、レティシア様!?」
黒ウサギは今までにないくらい焦っていた。
まさか尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならいとは……と困惑している内に、飛鳥が嬉々として服を用意し始める。
「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。私の家の使用人ったらみんな華も無く可愛げも無い人たちばかりだったんだもの。これからよろしく、レティシア」
「よろしく……いや、主従なのだから『よろしくお願いします』のほうがいいかな?」
「使い勝手がいいのを使えばいいよ」
「そ、そうか。……いや、そうですか? んん、そうでございますか?」
「黒ウサギの真似はやめとけ」
ヤハハと笑う十六夜。
意外に和やかな雰囲気を見て肩を落とした黒ウサギは、ダメ元でこの場にいる最後の問題児に泣きついた。
「日向さ~ん」
「まあ、本人が納得してるならいいんじゃないか? それに……」
「そ、それに?」
「何だかんだで俺も、レティシアのメイド姿には結構興味があるからさ」
その無慈悲な言葉に、黒ウサギはガックリと肩を落としたのだった。
***
──それから3日後の夜。
子供たちを含めた“ノーネーム”の面々は、水樹の貯水池付近に集まっていた。
その数、総勢127人とプラス1匹。
数字だけを見れば、中堅以上のコミュニティと呼んでも差し支えはないだろう。
黒ウサギはそんな彼らの前に立つと、愛らしい満面の笑みで宣言した。
「えーそれでは! これより新たな同士を迎えた、“ノーネーム”の歓迎会を始めるのですよ♪」
ワァッと子供たちから歓声が上がる。
本拠の館から運んだテーブルの上には、本当にささやかながら料理が並べられていた。
子供だらけでいささか賑やか過ぎる歓迎会ではあるものの、日向たちも悪い気はしていなかった。
果実水を注いだグラスを手に持ちながら、飛鳥はふと気にしたことを口にする。
「ふふ、こういう騒がしい歓迎会も悪くはないわね。だけど、どうして屋外での開催なのかしら?」
「あ、それは私も思った」
「黒ウサギになりに精一杯の意匠を、ってところじゃねえか?」
「はは、そうかもな。聞いた話だと、コミュニティの財政は今のところかなり厳しいらしい。だから豪華な食事や演出なんかは無理でも、せめて会場だけは華々しくしよう……なんて考えたのかもしれないな」
日向の言っていることは事実である。
現状、“ノーネーム”の懐事情は想像以上に悪い。
あと数日もすれば金蔵が底を尽くほどだ。
これから本格的に彼らが活動へ乗り出したとしても、100人を超える子供たちを支えるのは難しいかもしれない。
ましてやその中で魔王と戦い、なおかつ仲間の救出まで行わなければならないのだ。
こうして敷地内でワイワイと騒ぎ、お腹一杯に飲み食いするのも、実は贅沢に他ならない。
飛鳥自身もそのような惨状は聞いたので、黒ウサギの気遣いに苦笑しながらため息を吐いた。
「無理はしなくていいと言っておいたのに……馬鹿な子ね」
「そうだね」
耀も苦笑を浮かべて返す。
そうして次第に歓迎会もたけなわになると、黒ウサギが大きな声で皆に注目を促した。
「さてさて、ここで皆さんお待ちかね! 本日一番のビッグイベントが始まります! 全員、箱庭の天幕に注目してください!」
黒ウサギの言葉に従い、日向たちを含めたコミュニティの全員が箱庭の天幕に目を向ける。
その日の夜も空には満天の星々が、まるで宝石箱の中身を散りばめたように燦然と輝きを放っていた。
覚めるような美しさの広がる夜空を見上げ、誰も彼もがしばし心を奪われている頃。
──異変が起きたのは、その直後だった。
「……あっ」
ふと、誰かが呟いた。
最初に一条の星が夜空を流れ、それからほどなくして、多くの星々が連続して流れた。
すぐに全員が流星群だと気づき、思い思いに歓声を上げる。
黒ウサギは日向たちや子供たちへ伝えるような口調で語った。
「この流星群を引き起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの御四人が、この景色のキッカケを作ったのです」
「え?」
子供たちの歓声の裏で、日向たちが驚いたような顔をする。
黒ウサギは構わず話を続けた。
「箱庭の世界は天動説のように、全ての法則がここ、箱庭の都市を中心に回っております。先日同士が打ち倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北により“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」
「────……なっ、」
日向たちは驚愕し、完全に絶句した。
飛鳥は再び空を仰ぎ、大きく息を呑んで叫ぶ。
「まさか……あの星空から、星座を無くすというの!?」
刹那、一際大きな光が星空を満たした。
間もなくして光が収まった時、確かにそこにあったペルセウス座は──流星群と共に、跡形もなく姿を消していた。
この数日ですでに様々な奇跡を目の当たりにしてきた彼らだが、今度の奇跡は圧倒的にその規模が違う。
言葉が出ない日向たちとは裏腹に、黒ウサギは明るい笑みと声音で進行を続ける。
「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ております。星に願いを掛けるもよし、皆で観賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」
嬉々として杯を掲げる黒ウサギと子供たち。
しかし4人はそれどころではない。
「星座の存在さえ思うがままに出来るなんて……それではあの星々の彼方まで、その全てが、この箱庭を盛り上げるための舞台装置ということなの?」
「そういうこと……なのかな?」
それまでの価値観を大きく逸脱するほどの御業に出会い、飛鳥と耀は呆然とする。
一方で日向と十六夜は、流星群を眺めながら感慨くため息を吐いていた。
「アルゴルが食変光星じゃないところまでは分かっていたんだがな。まさかこの星空の全てが箱庭のためだけに作られているとは思わなかったぜ……」
「ははは、だな。これは流石に想定外だ……」
──アルゴルが悪魔の星として語り継がれる理由。
それは十六夜が述べた通り、この星が変光星であるからだ。
連なる星々が互いにその身を重ね合い、光の波長を変える星。
それこそが変光星であり、アルゴルの魔性の正体。
「星の位置を自由に遊び、宇宙の彼方までをも支配するような……そんな絶大な何かが、この箱庭の中にはあるってことか」
「ヤハハ。そいつはまた楽しみが増えたな」
そのまま感動を補充するように瞳を細めていると、元気な声が彼らを訪ねた。
「ふっふふ~のふ~ん♪ どうです? ビックリしました?」
ピョンと跳んで黒ウサギが2人の元に来る。
十六夜は盛大に両手を広げて頷いた。
「ああ、素直にしてやられたぜ。世界の果てといい、水平に廻る太陽といい……色々と馬鹿げたものを見てきたつもりだが、まだこれだけのショーが残っていたなんてな」
日向も流れる星々を眺めながら、呆れたように苦笑した。
「ああ、俺も驚いたよ。星々さえも誰かの意思で弄ぶ、まさに神々の“箱庭”ってわけか。ここまで手の凝った造りにするなんて、一体この都市の創始者たちは何を考えているんだか……けれど、これで目標が出来たな」
「ああ。コミュニティの宣伝としては申し分ないし、掲げる指針としても上出来だ」
「おや? どんな目標でございますか?」
日向と十六夜は星空を見上げ、消えたペルセウス座の位置へとその手を伸ばし──
「「あそこに、俺たちの旗印を飾る」」
今度は黒ウサギが絶句した。
「私たちの旗印を……あの星空に?」
「ああ。つーか日向、ハモんなよ」
「それはこっちの台詞だ。……けどま、どうだ黒ウサギ?」
「なかなか面白そうだと思わねえか?」
2人は不敵な笑みを黒ウサギに向ける。
そんな彼らを前に唖然としたままの黒ウサギ。
しかし途端に弾けるような笑顔を浮かべ、
「……YES。それは、とてもロマンが御座います」
「「だろ?」」
「はい♪」
「「だからハモんなって」」
星降る夜に、3人は顔を見合わせ笑い合う。
日向たちの道のりは険しい。
宿敵の魔王を倒し、“名”と“旗印”を取り戻す。
だが他の2人も、きっと反対はしないだろう。
そんな予感が日向と十六夜にはあった。
──“家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い”──
それだけの対価を支払った問題児たちの物語は、これから紡がれていくのだから。
YES! あとがき・舞台裏次回予告!!
黒ウサギ「お疲れ様です! 舞台裏、次回予告のコーナーでございます♪」
日向「次回は飛鳥がメインらしいぞ」
飛鳥「あら、私?」
耀「うん。飛鳥がメインで黒ウサギを弄る話」
黒ウサギ「そうですそうですっ! 飛鳥さんがメインで黒ウサギの弄り役を、って違いますよ耀さん!?」
十六夜「そうだぞ春日部。お嬢様がメインの台本で、俺たち3人が黒ウサギを弄り倒すんだ」
黒ウサギ「そうですそうです御三人がメインでもう黙らっしゃい!」(スパァーン!)
飛鳥「……結局、私がメインで何をするの?」
全員『次章は書き上がり投稿予定! ご意見・ご感想お待ちしておりまーす♪』