お姉ちゃん達とともに暮らす事になって2年がたった。いきなりすぎるかもしれないけど、でも僕にとってはいろんな事があった2年だった。というより、毎日が楽しかった。だって、自分の好きな人がこんなに近くにいるなんて、楽しくない訳がないと思う。まぁ、価値観の違いでそう思わない人もいるかもしれないけど、僕はそう思ったんだ。そして今は……。
「おっくぅ〜ん♡ だぁいすき〜♡」
お姉ちゃんに片腕を抱きしめられながら頰ずりされていた。全く、いつ見てもこの様子のお姉ちゃんは可愛いと思ってしまう僕は、俗に言うシスコンという奴だろうか? まっ、僕がお姉ちゃんの事を好きなのは間違いないし、否定する気もない。だからこうやって甘えられるのも、僕は好きだ。一方であの時に初めてあったクロエさんについてだが……。
「あぁ……逢魔様……私、ずっとこうしていたいです」
もう片方の腕に抱きつかれていた。クロエさんとの関係も、この2年で大きく変わった。最初の頃は僕の事を苗字で呼んでいたんだけど、家事とかを教えている時や、逆に僕にISの事を教えてくれる時と、そんな時間を通してか僕の事を慕ってくれるようになった。そして今の様子を見る限りだと……多分僕の事を好き……いや! そんな筈はないと思う。確かにここ2年で僕とクロエさんとの関係は、少しそっけないから僕の事を慕ってくれる、と良い方向に改善はしたと思っている……いや、思いたいの方が正しいかな? まぁそれはそれで、今の現状が見れるほどに僕とクロエさんは仲が良くなったと思うけど、流石に僕に好意を持っているなんて……。
「逢魔様……好きです……」
……これは、どういう意味なのだろうと毎回思ってしまうんだ。この好きです発言は、今初めて聞いたわけじゃない。1年前くらいから頻繁に聞くようになった。そしてその日ぐらいから、クロエさんが僕に甘えだしたんだっけ。でも何でだろう?
「それは勿論、逢魔様の事が好きだからですよ」
「えっ? 僕何も言ってないと思うけど……」
「そんなの、逢魔様の顔に書いてあるからに決まっているではありませんか」
ふむ……どうやらクロエさんは、僕の顔色をうかがってそう言っているようだ。それも見据えていると……これはどうやら、現実逃避ができないと解釈するしかないかな。今まで現実逃避はしてきたものの、その都度何回も同じ言葉を聞いているから、間違いではないんだろう。僕のどこにそんな要素があるのか分からないけど……。
「逢魔様を好きになる要素など、沢山ありすぎて一言では申せません。ですが、それほど逢魔様の事を想っているという事は、理解してくれるとこちらも嬉しいです」
クロエさんが頬を染めながら言った。というか、また顔色で心を読まれてしまった。まさか僕はポーカーフェイスが苦手なのかな?
「これはポーカーフェイスとは無関係ですよ、逢魔様。私の想いが成せる技です」
そうなんだね……なら、僕が一言も発さなくても分かるんだね……。
「いえ、決してそういう訳ではありません。寧ろ私は、逢魔様との会話を楽しみたいです。ですので、逢魔様の口で直接言っていただいた方が、私は嬉しいんです」
「そ、そうなんだ。うん、分かったよ」
「ぶぅー……おっくん、く〜ちゃんとばかり話してずるいよ〜。私とも話してよ〜」
ここでお姉ちゃんが介入してきた。顔を見ると、頬を膨らませて僕を見ていた。こんなお姉ちゃんの顔も可愛いと思ってしまう僕は、引き返す事が出来ない程のシスコンとやらになっているんだろう。
「あぁ……ごめんなさい、お姉ちゃん」
「うんうん! 分かればいいんだよ‼︎ それでおっくん、最近の調子はどう? こっちでも常にモニターはしてるけど……」
「調子はいつも通り、おかしなところはないよ。それにお姉ちゃんのISを使った訓練も“慣れた”し、ISを纏わないでISと対峙する事も、今では普通にこなせるよ。それと知識の方も、途轍もなく細かい部分以外は頭に入ってるし、これもお姉ちゃんとクロエさんのおかげだよ」
「もぅ、おっくんにISの事を教えるのは当たり前のことなんだよ? そんなの、おっくんに分かり易く教えるに決まっているよ! それに、日に日にISを自分の手足のごとく使うおっくんを見ていると、こっちも負けてられないなと思うから、おっくんに差し向けるISも日に日に強くしてるんだ! それでもおっくんは成長が早いから、すぐやられちゃうよ〜。でもそれと同時に、おっくんの成長が見れるから、私としてもとても嬉しいんだ‼︎」
「私も、逢魔様の日々の成長には驚きを隠せません。呑み込みが早いといいますか……しかしながら、私はそんな逢魔様の事を見るのがとても好きです」
と、2人からはそんな言葉が送られた。僕にはもったいない言葉だとは思うけど、そう言われるのはとても嬉しいな。
そう言えば、僕がこの2年の間に何をしていたかをまだ言ってなかったね。だからこの辺で簡潔に言う事にするよ。
僕が住み始めた頃は、拠点を転々と移しながらISの基礎を学んでいたんだ。転々としていた理由は、言わずもがなどこかの組織がその都度侵入してくるからだ。そんな事がある度に、僕とクロエさんがISで迎撃をする。でも僕としては、ISを動かす訓練にもなったから結果としてはいい方向に進んだと思う。それにあのお姉ちゃんの事だから、わざと組織に自分たちの居場所を教えているのかもしれない。まぁそれでも僕にとっては問題はないからいいんだけど……。後はお姉ちゃんが用意してくれた、実戦形式のIS戦闘だったり、知識としてはクロエさんがこの2年間のうちに、基礎から応用まで教えてくれた。そして1番辛かったのが、IS相手に生身で戦闘をするというものだった。こればかりは流石の僕も参ったかな……。僕がIS戦闘において余裕で勝ち始めるようになると、いきなりお姉ちゃんが『おっくんがすごく強くなったから、今度はISを使わないで戦闘してみようね〜』と言って、今度は丸腰のままISと戦闘をするというハメになった。
(まぁ……毎日続けてると流石に慣れるね。今では国家代表と渡り合えるまでなったよ。流石に複数人の国家代表並みとの戦闘は骨が折れるけどね……)
それでも、この2年で僕はお姉ちゃんを守れる力を手に入れた。絶対とはいかないかもしれない。いや、お姉ちゃんの事を守るのであれば絶対でなければならない。
(そして、お姉ちゃんの夢を実現させるんだ。そうしたら僕の夢も……)
「おっくん、どうしたの?」
「どうなさいましたか逢魔様? そんなぼぉーっとしたよつな顔をなされて」
「ん? いや、何でもないよ。ただ、この2年間いろいろな事があったなって思い出してたんだ」
そんな発言をすると……。
「いろいろ? あぁ〜、そうだね。私とおっくんとのあつぅ〜い愛しい時間の事だよね♡」
「何を言っているのですか束様? 私と逢魔様の愛しい時間に決まっているではありませんか」
……そんな発言を返されたよ。そこからはいつもの日常と化した2人の口論を聞きながら、僕の日常を送っていった。