インフィニット・ストラトス 流星に導かれて   作:橆諳髃

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2話 自信のない夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親が他界してすぐに、隣に住んでいる篠ノ之さんの家に養子として迎えられる事になった。研究所の人達がいつ手を出してくるかなんて分からないけど、未だに幼い僕としては何もできないために、篠ノ之さんの家でお世話になる事となったんだ。

 

篠ノ之さんの家は4人家族で、僕を引き取ると言ってくれた篠ノ之父と、その妻である母、その間に生まれた2人姉妹で生活をしている。長女の方が束さん、その下が箒さんという名前で、箒さんとは同い年ではあったけど、若干生まれた年が僕より早いという事で、実質的には義姉という立場になる。そして束さんだが、年齢は中学生ぐらいでとても頭が良さそうな人だった。でもここで問題が生じたんだ。

 

箒さんとは、同年代のために割と早く仲が良くなった。最初は引っ込み思案ではあったんだけど、段々と僕と過ごしていくうちに心を開いてくれた。問題は姉の束さんの方だ。束さんは、普通に家族といる時は問題ないのだが、僕を見る途端に急に態度を変えて「何でお前がこんな所にいるんだ? 邪魔だから私の目の前から消えろ」とまぁ、会うごとにこんな事を言われた。

 

まぁ気持ちは分からなくもない。だって、急に他人と生活をしますと言われて素直に受け入れる事が出来るかと問われれば、人それぞれで答えは違うだろうけど無理だと答える人はいると思う。

 

最初僕はそう思っていたんだけど、どうやら違うらしい。結論から言うと、束さんは極度のコミュニケーション障害を持っているんだ。自分の興味のある対象にしか素直に接しない。篠ノ之家にお世話になって1ヶ月ほどでそれを理解した。

 

自分の中では、もはやどうしていいか分からなかった。どうしたら、束さんとも仲良くなれるのかなって……。

 

それで1ヶ月と少し経ったある晩の事、中々眠りにつく事ができなくて、不意に部屋の窓から夜空を眺めた。因みに今僕が寝ている部屋は、束さんと箒さんが一緒に過ごしている部屋だ。束さんは……まぁいつもの事ながら箒さんにべったりだった。そして僕との距離も離れている。まぁ仕方がない事ではあるんだろうけど……。

 

それで僕は、束さん達を起こさないように部屋のベランダに通じる戸からベランダに出て、そこから屋根の上に登って久々に満天に広がる夜空を眺めた。

 

夜空を眺めて10分ほど経っただろうか? 眠くなってきたために、そろそろ部屋に戻って寝ようと思った。屋根の上で寝転んでいる体勢から上半身を起こした。それで部屋に戻ろうとした時……。

 

「こんな所で何してんだよ? 親に見つかったら私が怒られるんだ。さっさと部屋に戻れ」

 

束さんが屋根の上にいつの間にか登っていて、僕にそう言っていた。その顔は、僕の事を迷惑そうに見ていた。確かに嫌いな相手の事も見なきゃいけないから、その顔をするのも分かる。僕も過去に何度もそういう事があった。だからそんな顔を向けられる事に慣れてる。

 

まぁでもあっちから話しかけてきてくれたんだ。それにはちゃんと答えないなと思って僕は口を開く。

 

「ごめんなさい。でも、こんなに天気のいい日にふと夜空を見上げたものだから、ついつい外に出て久々に夜空をを眺めていたくなったんだ」

「……お前……夜空が好きなのか?」

「えぇ、僕は昔から夜空を……こういう風に眺めるのが好きなんです。静かな時に、こうやって1人で夜空を眺めていると、どんなに辛い事があっても気分が晴れるんです。こんな事を言ってしまうと笑われるかもしれませんが、あの夜空……果てはその向こう側を自由に行くことができたらって……今でもそう思ってます。あっ……なんか語ってしまってごめんなさい。すぐに部屋に戻りますね」

 

そう言って、僕は部屋に戻ろうとした。

 

「ちょっと待って」

 

いきなり束さんが口を開いた。それも、今までのような嫌悪感がある声音ではなかった。

 

「君は……本当に空の向こう、最果てに興味があるの? 普通の人間が1人では向かう事もできない空の果てに……」

 

そんな事を言ってきた。束さんの目を見ると、とても真剣に聞いてるように見えた。だから僕は真剣に、そして本気で答えたんだ。

 

「僕は、空の果てを見てみたい。そこに今までにない、常識を打ち破る景色があるというなら、僕はこの目で確かめてみたいです。でも……その方法は今の所宇宙飛行士しかないなって思ってるから、空に上がったとしても地球の周りが精々かもしれないって思ってます」

 

本気では答えたけど、でも自信は正直な話なかったんだ。だから最後の方になると、声音も自信がなくなっていた。だから、束さんには申し訳なく思ったんだ。真剣に聞いてくれた束さんに……これ以上顔を向けることはできないなと、そう思っていたんだ。

 

「……君、面白い事を言うね!」

「えっ?」

 

束さんの発言に、下を向いた顔が自然と束さんの顔に向いていた。

 

「えっ? じゃないよ‼︎ そんな事を言う子、中々いないよ! それにぶっ飛んだ発想してるし、後私の夢とも被ってる! 私もね、見てみたいだよ。空の果てってやつをさ!」

「た、束さんも空の果てを?」

「そうだよ! だからさ、これから私と仲良くして欲しいんだ‼︎」

「ぼ、僕がですか⁈」

「当たり前だよ! この場に他の子なんていないでしょ? 君に言ってるんだよ!」

 

今までに僕が見た事がない笑顔で束さんは言った。僕はその笑顔を見たとき、生まれて初めて心臓の鼓動がうるさく感じた。それに顔も熱くなっていた。

 

「だから、これから宜しくね! “ おっくん”‼︎」

「あっ……よ、よろしく……お願いします……」

 

束さんは僕の両手を優しく包みながら、そして満面の笑みでそう言った。そして僕は真正面からそんな事を言われた事がなかったから、いい雰囲気にも関わらず残念な返し方しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その後〜

 

 

 

 

 

「はぁ……おっくんの香りはこんな感じなんだ〜」

「……」

 

あの後部屋に戻って、自分の布団に戻ったまでは良かった。だけどその後、いつの間にか束さんが僕の隣にいて抱きついてきた。それも頬をすりすりしながら……。それを寝ながらやっているから逆に凄いと感じてしまう。

 

「もぅ〜……おっくんそんな硬くしなくて良いよ……。私の事はお姉ちゃんって呼んで〜……」

 

そして度々そんな寝言が隣から聞こえる。

 

(あぁ……逆に眠れなくなってしまった……)

 

多分今日は……眠れない日なんだな……。

そう思いながら目を瞑って眠る努力をした。

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