遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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*今回は何時もよりだいぶ長いです。 ご了承ください。


第19話 情熱 ~決闘者とデザイナー~

シティ内陸部  治安維持局  デュエルモンスターズ研究所  

 

遊伸達はデュエルを行う為、デュエル研内にある決闘場に来ていた。

デュエルを行う遊伸と友河は準備を終え、決闘場で向かい合い、決闘盤を展開する。

ここは遊伸達のデータ取りの時にも使用した決闘場で、一室を丸々決闘場にしている為、観戦する場合は隣のモニター室で観戦する。

鋼貴と空はマイルと共にモニター室に移動しデュエル開始を待った。

 

「そういえば友河さんってデザイナーさんだけどデュエルはどれ位出来るんですか?」

 

ふと思った空が友河についてマイルに尋ねる。

 

「そうだな……彼はアカデミアを卒業後にデザイナーなった、つまり元決闘者なんだ。 だからデュエル自体は出来るよ、ブランクはありそうだが…」

 

「…つまり、経験はあるが、最近ではデュエルをそんなにしてないって事か……それで決闘者現役の遊伸の相手になるのか……っと始まるぞ」

 

鋼貴がモニターを指差すとそこではもうデュエルが始まっていた。

先攻は友河。

 

「私のターン、ドロー!」

 

友河 手札:5+1

 

「私はモンスターをセット、カードを伏せてターンを終了」

 

LP:8000

手札:4

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:5+1

 

遊伸はこの一週間、悩みに悩み抜いたが、それでも自分の新しいデッキの姿が一向に見えて来ない。

鋼貴に焦るなと言われても沸いてきてしまう焦り、そしてそんな自分に対する苛立ち。

そんな遊伸の心に何度も弱気な考えが押し寄せて来る。

自分には無理なのではないか、ここが限界なのではないか、そんな弱気が押し寄せる度に、自分の信念を、病院での決意を、光円寺に負けた時の悔しさを思い出し、弱気を振り払う。

それを繰り返すうちに遊伸の中の諦めたくない、強くなりたい、そんな思いが日に日に強くなっていく。

そして今日、遊伸はデュエルを求めた。

デュエルをすれば答えが解る、そんな保障も根拠も無い。

だが遊伸は何時でもデュエルから学んで来た。

デュエルをすれば何かが得られる、答えは解らずとも前へは進める、遊伸はそう思った。

 

「(僕は……誰よりも強くなりたい……その為には僕もデッキも”進化”しなければならない……その為の答えに……僕を導いてくれ!! カード達!!)」

 

遊伸はしっかりと前を見据え、引いたモンスターを場に出す。

 

「僕は《レベル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

遊伸の場に頭と胸部に星のマークを象った赤いヒーローが現れる。

レベル・ウォリアーが場に降り立つと星のマーク全てが点滅する。

 

ATK:300

 

「相手の場にモンスターが存在し、自分の場にはモンスターが存在しない場合、レベル・ウォリアーはレベル4として手札から特殊召喚できる! そして《切り込み隊長》を召喚! その効果で手札から《X-セイバー パシウル》を特殊召喚!」

 

続けて遊伸の場に切り込み隊長、その後ろからパシウルが続けて場に躍り出る。

二人は剣を構え、友河を見据える。

 

切り込み隊長       ATK:1200

X-セイバー パシウル  ATK:100

 

「レベル3《切り込み隊長》に、レベル2《X-セイバー パシウル》をチューニング!」

 

パシウルが2つの光輪へと姿を変え、切り込み隊長を囲み、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣に名を連ねし銃士よ! 立ち塞がる敵を討ち、勝利の号砲を上げよ! シンクロ召喚! 荒野の英雄、 《X-セイバー ウェイン》!!」

 

光の柱からウェインが現れる。

腰の二丁銃剣を抜き放ち、構える。

 

ATK:2100

 

「ウェインの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、手札からレベル4以下の戦士族モンスターを一体特殊召喚することが出来る! 僕は手札から《X-セイバー アナペレラ》を特殊召喚する!! 《セイバーズ・テキサス》!!」

 

ウェインが空に向かって号砲を上げると、場にアナペレラが現れる。

蛇腹剣を振るい、その冷たく鋭い視線を前に向ける。

 

ATK:1800

 

「レベル4の《レベル・ウォリアー》と《X-セイバー アナペレラ》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

2体がそれぞれ黄色、オレンジ色の光に変わり、現れた穴に吸い込まれる。

その穴からは金色の閃光が放たれ、1体の戦士が自らの名前を叫びながら現れる。

 

「夢と希望の戦士! 《No.39 希望皇ホープ》!!」

 

ホープはホープ剣を振り上げ、再び咆哮を上げながら振り下ろし、構える。

 

ATK:2500

 

「ナンバーズ…!?」

 

友河は驚いた様子でそう呟く。

友河はこのデュエル研に所属するデザイナーである。

勿論「ナンバーズ」を所有する意味を知っており、遊伸の実力を理解する。

 

「行きます! ウェインでセットモンスターを攻撃! 《クロス・バレット》!!」

 

ウェインが二丁銃剣を構え、セットモンスターに向かって放つ。

セットモンスターが姿を現し、銃弾が命中するがその瞬間、銃弾が弾かれ、金属音が二つ鳴る。

遊伸は驚き、そのモンスターを見ると、呆気に取られた様な顔をして呟く。

 

「ホ、ホッチキス……」

 

そう、ウェインの銃弾を弾いたのは巨大なホッチキス。

守備力を大きく上回る攻撃力の攻撃を受けたのにも関わらず、何事も無かったかの様にその場で浮遊している。

 

DEF:1000

 

「セットモンスターは《D(ディフォーマー)・ステープラン》、このカードは守備表示である場合、戦闘では破壊されない。 そして攻撃を受けた事でもう一つの効果発動! ステープランが攻撃された場合、そのダメージ計算後に相手の場に 攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して守備表示にし、 このカードの表示形式を攻撃表示にする。 守備表示にするのは《No.39 希望皇ホープ》! さあ行くぞ! 《変形(ディフォーム)》!」

 

友河が宣言するとステープランが変形し始める。

V字型になっている機体をI字に広げ、さらにそこから30~40度程広げる。

平たい機体の側面を手足に変形させ、場に降り立つ。

D(ディフォーマー)・ステープラン》のロボット形態、攻撃表示である。

 

ATK:1400

 

「す、凄い! ロボットに変形した!」

 

遊伸が素直に驚くと、友河は誇らしげに語り始める。

 

「どうだい? 面白いだろう? 私がデザインした中でも一番の自信作、《ディフォーマー》シリーズさ! テーマは身近な物、身近にある物がいきなりロボットに変形したら面白いと思ってデザインしたんだ!」

 

さっきまで暗い顔をしていた友河が子供の様な笑顔を見せ、生き生きとした表情で自身がデザインしたカードについて語る。

遊伸はその様子を見て、友河のカードに対する思いを強く感じ取った。

 

「(友河さん、カードをデザインするのが……いや、デュエルモンスターズが大好きなんだな)」

 

しばらく話すと友河はハッとした様に話を止め、恥かしそうな顔をする。

 

「ご、ごめんよ、今は関係ない話だったね……デュエルを続けよう、ステープランの効果で希望皇ホープを守備表示に!」

 

友河の宣言により、ホープは背部のライトウィング・シールドを展開し、勝手に防御の体勢を取ってしまう。

 

DEF:2000

 

ステープランが攻撃表示になり、戦闘破壊耐性が失われたが、これでは追撃が出来ない。

 

「…僕はバトルフェイズを終了、カードを伏せてターンエンド」

 

LP:8000

手札:1

モンスター

・X-セイバー ウェイン

・No.39 希望皇ホープ

(オーバーレイ・ユニット:レベル・ウォリアー、X-セイバー アナペレラ)

魔法・罠

・セット

 

「私のターン、ドロー!」

 

友河 手札:4+1

 

「私は《D(ディフォーマー)・ラジオン》を召喚!」

 

友河の場に現れたのは巨大な携帯型ラジオ。

攻撃表示の為、長方形のラジオが人型のロボットへと変形する。

武器なのか付属していたイヤホンを振り回し、遊伸を威嚇する。

 

ATK:1000

 

「ラジオンのモンスター効果! このカードが場に表側表示で存在する限り、自分の場の《D(ディフォーマー)》と名のついたモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」

 

D・ラジオン    ATK:1000→1800

D・ステープラン ATK:1400→2200

 

「!? 800ポイントも…!」

 

「さらに罠カード《ブレンD(ディフォーマー)》を発動! 自分の場に《D(ディフォーマー)》が2体以上表側表示で存在する場合、相手の場に存在するカードを2枚選択、相手はその中から1枚を選択し、相手が選択したカード1枚を破壊する! 選択するのは《X-セイバー ウェイン》と《No.39 希望皇ホープ》! さあ、その2体の内、どちらを破壊する?」

 

「……すまないウェイン、僕は《X-セイバー ウェイン》を選択!」

 

遊伸が宣言するとウェインが消滅する。

一度効果を使用したら通常モンスター同然のウェインよりも、攻撃を防ぐ能力のあるホープを残すのは当然の事であった。

 

「さらに装備魔法《団結の力》をラジオンに装備! このカードの装備モンスターの攻撃力と守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する モンスター1体につき800ポイントアップする! 現在モンスターは2体、よって1600ポイント攻守をアップする!」

 

ATK:1800→3400

 

「こ、攻撃力3000を超えた!?」

 

ホープの守備力どころか攻撃力すら上回る数値である。

このD(ディフォーマー)、一体一体の力は小さくとも複数集まる事で爆発的な力を見せる。

D(ディフォーマー)と言うカテゴリの力である、X-セイバーにはない、名前の力。

X-セイバーは未完成のカテゴリなのではないか、今朝事務所で空に言った事を痛感する。

 

「(X-セイバーに足りない物は何なんだ……)」

 

遊伸は一瞬そう考えると、すぐにその考えを消す。

 

「(簡単な事だ……僕が未熟だからじゃないか……カードのせいにするな……僕がする事はカードを信じる事、そして”進化する為の答え”を見つける事だ…!)」

 

遊伸は気持ちを整理し、来るであろう攻撃に対して身構える。

 

「行くぞ遊伸君! バトル! ステープランで希望皇ホープを攻撃! 《ニードル・ショット》!」

 

ステープランの頭部からコの字型の針をホープに向かってとばす。

 

「希望皇ホープの効果発動! このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いてモンスターの攻撃を無効にする! 《ムーンバリア》!」

 

取り除いたオーバーレイ・ユニット

レベル・ウォリアー

 

ホープは周りを漂っている光球を一つ取り込み、既に展開していたライトウィング・シールドを輝かせ、攻撃を防ぐ。

 

「そんな効果が……ならば全てのユニットを削って置こう! ラジオンで攻撃! 《イヤホーン・シュート》!」

 

ラジオンが手に持っていた巨大なイヤホンを投げ縄の様に振り回し、ホープに向かって投擲する。

 

「くっ……《ムーンバリア》!」

 

先程と同じ様に攻撃を防ぐホープ、周りを漂っていた光球はもう無い。

 

「私はこれでターンを終了する」

 

LP:8000

手札:3

モンスター

・D・ステープラン

・D・ラジオン  

魔法・罠

・団結の力(D・ラジオン)

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「! 僕は希望皇ホープをリリースして手札から《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

希望皇ホープが光に包まれると、その光からターレット・ウォリアーが現れる。

 

ATK:1200

 

「ターレット・ウォリアーの効果発動! 戦士族モンスターをリリースしての特殊召喚に成功した時、そのリリースした戦士族の元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする! 希望を繋げ! ターレット・ウォリアー!」

 

ターレット・ウォリアーが金色の光に包まれる。

 

ATK:1200→3700

 

「さらに《バルキリー・ナイト》を召喚!」

 

遊伸の場にバルキリー・ナイトが現れる。

フェニックス・ブレードを構え、真っ直ぐな瞳で相手を見据える。

 

ATK:1900

 

「ラジオンの攻撃力を上回るだけでなく、態勢まで整えるとは……」

 

友河は思わず呟く。

 

「バトル! ターレット・ウォリアーでラジオンを攻撃! 《リボルビング・ショット》!」

 

ターレット・ウォリアーの砲撃の嵐がラジオンを襲う。

ラジオンは受けきれず、粉々になる。

 

「ぐう……ラジオンが……」

 

友河 LP:8000→7700

 

ラジオンがいなくなった為、ステープランの攻撃力が落ちる。

 

ATK:2200→1400

 

「バルキリー・ナイトでステープランを攻撃! 《フェニックス・スラッシュ》!」

 

バルキリー・ナイトがステープランに斬りかかり、上下真っ二つにする。

 

「ステープランの効果発動!」

 

友河の宣言と同時に、ステープランの頭部からコの字形の針が飛び出し、バルキリー・ナイトの左肩に刺さる。

バルキリー・ナイトが跳び下がると同時にステープランが機能を停止し、破壊される。

 

「戦闘によって破壊された場合、このカードを破壊したモンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせる」

 

友河 LP:7700→7200

 

バルキリー・ナイト ATK:1900→1600

 

「そんな効果まであったのか……僕はこれでターンエンド」

 

LP:8000

手札:0

モンスター

・ターレット・ウォリアー

・バルキリー・ナイト

魔法・罠

・セット

 

「私のターン、ドロー!」

 

友河 手札:3+1

 

「流石だ遊伸君、だがこれからだぞ! 私は魔法カード《D(ディフォーマー)・スピードユニット》を発動! 手札のD(ディフォーマー)1体をデッキに戻してシャッフル。 その後、フィールド上のカード1枚を選択して破壊し、デッキからカードを1枚ドローする! 私は手札の《D(ディフォーマー)・クロックン》をデッキに戻してシャッフル、そして破壊するのは《ターレット・ウォリアー》!」

 

友河が宣言すると時計型のディフォーマー、クロックンが背中にスピードユニットを取り付け、 ターレット・ウォリアーに突進する。

直撃する直前にクロックンは消え、スピードユニットとターレット・ウォリアーが激突し、爆散する。

 

「ターレット・ウォリアー!?」

 

「そして私は1枚ドローする」

 

友河 手札:2+1

 

「私は《D(ディフォーマー)・モバホン》を召喚!」

 

友河の場に巨大な携帯電話が現れ変形し、ロボットになる。

 

ATK:100

 

「モバホンのモンスター効果を発動! これからモバホンの胸の数字がランダムに選択される。その数字の分だけ自分のデッキの上からカードをめくり、その中からレベル4以下のD(ディフォーマー)と名のついたモンスター1体を選び特殊召喚し、残りのカードはデッキに戻してシャッフルする! 行け! 《ダイヤル・オン》!」

 

モバホンの胸の番号がランダムに点滅を始める。

点滅が終わり、選択された数字は”3”。

 

「選ばれた数字は3! よってデッキから3枚めくる!」

 

めくったカード

D・ボードン

D・コード

カードカー・D

 

「私は《D(ディフォーマー)・ボードン》を特殊召喚!」

 

モバホンの目が光ると隣にジェットエンジンをつけたスケートボードが現れる。

車輪部分から手足を展開し、ロボット形態となる。

 

ATK:500

 

「さらに手札から魔法カード《ジャンクBOX》を発動! 自分の墓地からレベル4以下のD(ディフォーマー)を1体を選択して特殊召喚する! 私は《D(ディフォーマー)・ラジオン》を特殊召喚!」

 

場に一つの箱が現れると中からロボット形態のラジオンが飛び出してくる。

しかし、最初に見た時と違ってボロボロである。

 

ATK:1000

 

「ラジオン!? ということは……」

 

「その通り! ラジオンの効果でD(ディフォーマー)の攻撃力は800ポイントアップする!」

 

D・モバホン ATK:100→900

D・ボードン ATK:500→1300

D・ラジオン ATK:1000→1800

 

「行くぞ! バトル! ラジオンでバルキリー・ナイトを攻撃! 《イヤホーン・シュート》!」

 

バルキリー・ナイト ATK:1600

 

ラジオンがバルキリー・ナイトに向かってイヤホンを投擲する。

本来のバルキリー・ナイトならイヤホンをかわし、そのまま反撃に移り、ラジオンを破壊する事が出来ただろう。

しかし、今のバルキリー・ナイトはステープランの死に際の反撃により負傷している。

それにより上手くかわす事が出来ず、ラジオンの攻撃をまともに受けてしまう。

バルキリー・ナイトは力を振り絞り、手に持つフェニックス・ブレードを地面に突立て、自身は消滅する。

 

遊伸 LP:8000→7800

 

「バルキリー・ナイト……だけどその遺志は紡がれる! バルキリー・ナイトの効果発動!」

 

遊伸が宣言すると、バルキリー・ナイトが突き立てたフェニックス・ブレードが光を発する。

 

「戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、 自分の墓地の戦士族1体とこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地からレベル5以上の戦士族1体を特殊召喚できる! 僕は《切り込み隊長》とこのカードを除外して、《X-セイバー ウェイン》を特殊召喚!」

 

フェニックス・ブレードが光を放ち、消えると代わりにウェインがそこに現れる。

ウェインは弔いの号砲を天に向かって鳴らすと、仮面の下の眼に炎の様な熱い意志を漲らせ、銃剣を構える。

 

ATK:2100

 

「まさか次なる展開への布石を残しているなんて……遊伸君、やはり侮れない……だが私の攻撃を止めるには至らないぞ! ボードンのモンスター効果! ボードンが場に攻撃表示で存在する限り、 自分の場のD(ディフォーマー)は 相手プレイヤーに直接攻撃が出来る! 行くぞ! モバホン、ボードンの2体で直接攻撃! 《ブレンD・ダイブ》!」

 

ボードンがスケートボードに変形するとモバホンがそれに飛び乗り、ジェットで空を飛ぶと遊伸に向かって突っ込む。

 

「うわぁ!!」

 

遊伸 LP:7800→6900→5600

 

「私はこれでターンを終了……ここで《ジャンクBOX》の効果、この効果で特殊召喚したラジオンはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される」

 

ジャンクBOXの効果で特殊召喚されたラジオンはその場で崩れ落ち、その残骸がジャンクBOXに収容されるとジャンクBOXが消滅する。

 

LP:7200

手札:1

モンスター

・D・モバホン

・D・ボードン

魔法・罠

・なし

 

「(どういう事だ…?)」

 

遊伸は疑問に思った。

なぜラジオンを維持出来ない状況で攻撃に出たのか。

ラジオンはいるだけでディフォーマーの能力を上げる、攻撃力が低いディフォーマーにとって無くてはならないキーカードである。

ラジオンがいなくなってしまうと、ラジオンがいても低い攻撃力のモバホン、ボードンが完全に無防備になってしまう。

罠、遊伸はそう考えたが伏せカードも何も無い。

 

「(とにかく、今攻めない訳にもいかない…) 僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「バトル! ウェインでモバホンを攻撃! 《クロス・バレット》!!」

 

遊伸はディフォーマーを特殊召喚するモバホンを狙う。

ウェインが銃撃をしようとした瞬間、友河が手札からカードを一枚墓地に送った。

 

「この瞬間! 手札から《ガジェット・ドライバー》を墓地に送って効果を発動! 自分の場に表側表示で存在するD(ディフォーマー)を任意の数だけ選択して表示形式を変更する! 私はモバホン、ボードンの2体を守備表示へと変更! 《変形(ディフォーム)》!」

 

ボードンが再びスケートボードに、モバホンは携帯電話に変形する。

 

D・ボードン DEF:1800

D・モバホン DEF:100

 

「手札から!? …ダメージが無理ならせめてモバホンだけでも! ウェイン! 《クロス・バレット》!!」

 

手札からのモンスター効果に驚く遊伸。

攻撃を防がれた訳ではないとモバホンを破壊しようとするが、ウェインの銃弾はステープランの時と同じ様に弾かれてしまった。

 

「ど、どうして…」

 

「悪いな遊伸君、ボードンのモンスター効果、ボードンが場に表側守備表示で存在する限り、このカード以外の自分の場のD(ディフォーマー)は戦闘では破壊されない!」

 

隙だらけだと思っていた友河の戦術。

だが友河に隙は無く、遊伸の攻撃は止められてしまった。

 

「…僕はカードをセットしてターンエンド」

 

LP:5600

手札:0

モンスター

・X-セイバー ウェイン

魔法・罠

・セット

・セット

 

「私のターン、ドロー!」

 

友河 手札:0+1

 

「モバホンを攻撃表示に変更! そして効果を発動! 《ダイヤル・オン》!」

 

モバホンが再びロボットになると、胸の番号ボタンを点滅させる。

選ばれた数字は”2”。

 

「選ばれた数字は2、よってデッキから2枚めくる」

 

めくったカード

・巨大化

・D・マグネンU

 

「私は《D(ディフォーマー)・マグネンU》を守備表示で特殊召喚!」

 

友河の場に巨大なU字磁石が現れる。

守備表示で特殊召喚された為、変形はしない。

 

DEF:800

 

マグネンUは遊伸の場に磁極を向けると、ウェインの体が引っ張られる様に一瞬動き、ウェインはその場で耐える様に踏ん張る。

 

「どうしたんだウェイン!?」

 

「マグネンUのモンスター効果! マグネンUが場に表側守備表示で存在する限り、相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない!」

 

「何だって…!?」

 

遊伸は守備表示のマグネンUがいる限り、マグネンUにしか攻撃出来ない。

そして守備表示のボードンがいる限り、ボードン以外のディフォーマーは戦闘で破壊されない。

つまり、遊伸は戦闘では友河の布陣を突破する事が出来なくなってしまった。

ディフォーマー達による結束のロックコンボである。

 

「私はこれでターンを終了」

 

LP:7200

手札:1

モンスター

・D・モバホン

・D・ボードン

・D・マグネンU

魔法・罠

・なし

 

「(このコンボ……突破してみせる!) 僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「よし! 僕は罠カード《ガトムズの緊急指令》を発動! 場にX-セイバーと名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、墓地に存在するX-セイバーと名のついたモンスター2体を選択し、選択した2体を自分の場に特殊召喚する! 特殊召喚するのは《X-セイバー パシウル》と《X-セイバー アナペレラ》!」

 

遊伸の場に再びパシウルとアナペレラが現れる。

パシウルは大剣、アナペレラは蛇腹剣を構え、ウェインの両脇に立つ。

 

X-セイバー パシウル   ATK:100

X-セイバー アナペレラ  ATK:1800

 

「行くぞ! レベル5 《X-セイバー ウェイン》に、レベル2《X-セイバー パシウル》をチューニング!!」

 

パシウルが2つの光輪へと姿を変え、ウェインを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし剣の輝きが、希望の活路を照らし出す、光差す道となれ! シンクロ召喚! 切り開け! 《セブン・ソード・ウォリアー》!」

 

光の柱からセブン・ソード・ウォリアーが現れる。

金色の剣と鎧を輝かせ、場に躍り出ると二本の大剣を構える。

 

ATK:2300

 

「新しいシンクロモンスター……だがそれだけではこのロックは破れないよ遊伸君」

 

「勿論これだけではありません! 手札から装備魔法《神剣-フェニックスブレード》をセブン・ソード・ウォリアーに装備! そしてセブン・ソード・ウォリアーの効果発動! 1ターンに1度、装備カードが装備された時、 相手のLPに800ポイントダメージを与える!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがフェニックスブレードを手に取ると、それに反応するようにセブン・ソード・ウォリアーが体から閃光を放つ。

 

「ぐうっ……」

 

友河 LP:7200→6400

 

「そしてセブン・ソード・ウォリアー2つ目の効果! 1ターンに1度、このカードに装備された 装備カード1枚を墓地へ送る事が出来る! そして装備された装備カードが墓地へ送られた時、 相手の場の表側表示モンスター1体を破壊する事が出来る! 破壊するのはマグネンU! 《イクイップ・ショット》!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがフェニックスブレードをマグネンU目掛けて投げつける。

回転しながらフェニックスブレードはマグネンUに向かって飛ぶ。

フェニックスブレードはマグネンUに引き付けられるように突き刺さり、マグネンUは爆散する。

 

「しまった!? マグネンUが!?」

 

「これで攻撃が通る! バトル! セブン・ソード・ウォリアーでボードンを攻撃! 《セブン・ソード・スラッシュ》!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがボードンを真っ二つにするとマグネンUと同様に爆散する。

 

「続けてアナペレラでモバホンを攻撃! 《クロス・バイパー》!」

 

アナペレラの蛇腹剣が縦横無尽に舞い、モバホンをバラバラにする。

 

「うわぁぁ! …ぐ」

 

友河 LP:6400→4700

 

「僕はこれでターンエンド!」

 

LP:5600

手札:0

モンスター

・X-セイバー アナペレラ

・セブン・ソード・ウォリアー

魔法・罠

・セット

 

「凄い……やるじゃないか遊伸君!」

 

自分が押されているのに友河は興奮した様子で言う。

 

「何時以来だろうか、こんなデュエルは……こんな気持ちは! 遊伸君! 私はまだ負けないぞ!   さあ! 勝負だ……!?」

 

高揚していた友河が突然ハッとした様な表情になり、下を向き、黙ってしまう。

 

「と、友河さん…? どうしたんですか?」

 

遊伸が声を掛けると友河は顔を上げ、答える。

 

「遊伸君、解ったよ、スランプの原因が」

 

「!? 本当ですか!」

 

友河は憑き物が落ちた様な表情をしている。

 

「ああ、私は忘れていたんだ、この気持ちを……今から20年以上前、私はアカデミアで友人達と熱いデュエルをし、夢を語りあったものだ……そして夢を叶え、その時の私は未来への希望でいっぱいだった……」

 

友河は昔の楽しかった事を思い出しながら語る。

 

「そして私はデザイナーとしての腕を認められて、今では沢山のデザインの依頼が来るようになった、有難い事だ……でも」

 

友河は胸を押さえる。

 

「何時からだろう……名声を得て満足でもしたのだろうか、私は昔持っていた熱い気持ちを……情熱をすっかり忘れてしまっていたんだ……デュエルする前まで空っぽだったのが、今では心の底から沸いて来るのを感じる……これを忘れてさえなければ、スランプにもならなかっただろうにな……」

 

友河がそう言うと遊伸は強い語気で言う。

 

「忘れてなんかいません! 忘れてなんか無いですよ友河さん!」

 

「え…?」

 

「だって楽しそうだったじゃないですか、ディフォーマーの事を話す時も、子供達にデュエルを教えていた時も、あんなに楽しそうに出来るんです! 忘れてるはずがありませんよ!」

 

「……ならどうして私はそれに気付けなかったんだろうか?」

 

友河が遊伸に聞く。

 

「えっと…それは…」

 

言葉が見つからないのか遊伸は視線を泳がせながら必死に言葉を捜す。

 

「……矛盾してるかも知れないんですけど、多分、友河さん自身が認めたくなかったんだと思います、自分が昔、大事にしていた熱意を忘れていた、なんて……それで……無意識の内に体や口が忘れないようにと……」

 

遊伸は考えが纏まりきらず、勢いで言ったのか歯切れが悪い。

 

「……ふっふっふ……ハッハッハッハッハッ!!」

 

遊伸の言葉を聞いた友河は突然笑い出す。

今までで一番いい笑顔で、若く見える顔がさらに幼く見える。

あまりの笑いっぷりに遊伸は恥かしくなる。

 

「(もうちょっと考えてから言えばよかった…)」

 

「はぁはぁ……すまない、君の事を笑った訳じゃないんだ……遊伸君、君の言う通りかもしれない……あの時、子供達にデュエルを教えようと思ったのも、昔の自分の様にデュエルを楽しんでいる子供達を見て、無意識に思い出そうとしていたのかもしれないな……あの時の気持ちを」

 

ようやく落ち着いたのか友河は一息吐き、真っ直ぐ遊伸を見る。

 

「ありがとう、遊伸君、君のおかげだ! もう描ける! 描いてみせるよ!」

 

「友河さん…!」

 

友河が笑顔でそう言うと遊伸も釣られて笑顔になる。

 

「さあ! 後はこのデュエルに決着をつけるだけだ! 遊伸君、さっきも言ったが私はまだ負けない、勝負はここからだ! 行くぞ! 遊伸君!」

 

「はい!!」

 

遊伸は大きな声で返事をし、それを聞いた友河がデュエルを続行する。

 

「私のターン! ドロー!」

 

友河 手札:1+1

 

「私は魔法カード《貪欲な壺》を発動! 自分の墓地のモンスター5体を選択、選択したモンスター5体をデッキに加えてシャッフルし、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

戻したカード

D・モバホン

D・ボードン

D・マグネンU

D・ステープラン

D・ラジオン

 

友河 手札:1+2

 

「私はチューナーモンスター《D(ディフォーマー)・スコープン》を召喚!」

 

友河の場に巨大な顕微鏡が現れ、変形を始める。

台の部分が脚となり、顕微鏡部分が頭部、その下部側面から触手の様なアームが伸びている。

 

ATK:800

 

「スコープンの効果発動! 攻撃表示の時に1ターンに1度、手札からレベル4のD(ディフォーマー)1体を特殊召喚できる! 私は手札から《D(ディフォーマー)・ビデオン》を召喚!」

 

今度は巨大なビデオカメラが現れ、ロボットに変形する。

今までのディフォーマーの中でも特に複雑な変形を見せ、ロボットとなる。

複雑なだけに戦闘ロボットらしいフォルムをしている。

 

ATK:1000

 

「ここに来てチューナー!? まさか…」

 

「そうだ! 行くぞ遊伸君! これがディフォーマーデッキの切り札だ! レベル4《D(ディフォーマー)・ビデオン》に、レベル3《D(ディフォーマー)・スコープン》をチューニング!」

 

スコープンが3つの光輪へと姿を変え、ビデオンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「世界の平和を守るため! 勇気と力をドッキング! シンクロ召喚! 愛と正義の使者《パワー・ツール・ドラゴン》!!」

 

光の柱から現れたのはドラゴンを模したロボット。

尻尾にスコップ、右腕にはパワーショベル、左腕には巨大なマイナスドライバーだろうか、モーター音を鳴らしてドリルの様に回転している。

黄色と銀のカラーリングや武器には見えない様な武装など、容姿を見ると”戦闘機械”と言うよりも”玩具”に見える。

 

ATK:2300

 

「(これがディフォーマーの切り札……攻撃力はセブン・ソード・ウォリアーと変わらないけど…)」

 

遊伸がそう考えていると、パワー・ツール・ドラゴンから起動音の様な物が鳴る。

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、デッキから装備魔法を3枚選んで相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚選ぶ! そして相手が選んだカード1枚を自分の手札に加え、残りのカードをデッキに戻す! 《パワー・サーチ》!」

 

遊伸の目の前に3枚のカードのソリッドビジョンが現れる。

 

「私が選ぶのはこの3枚!」

 

デーモンの斧

魔導師の力

ダブルツールD&C

 

3枚のカードが裏になると一瞬消え、再び遊伸の前に現れる。

 

「遊伸君、選んでくれ!」

 

「…僕から見て右のカード!」

 

遊伸が宣言するとソリッドビジョンが消え、友河のデッキから1枚のカードが選び出され、友河はそれを手札に加える。

 

友河 手札:1+1

 

「手札から装備魔法《巨大化》をパワー・ツール・ドラゴンに装備! このカードは自分のLPが相手より下の場合、 装備モンスターの攻撃力を元々の攻撃力の倍の数値にする! 私のLPは4700、君のLPは5600! よってパワー・ツール・ドラゴンの元々の攻撃力は倍となる!」

 

パワー・ツール・ドラゴンに巨大化が装備されるとパワー・ツール・ドラゴンが二倍近く大きくなる。

 

ATK:2300→4600

 

「!?」

 

さらに友河は追い討ちを掛ける。

 

「手札から装備魔法《ダブルツールD&C》をパワー・ツール・ドラゴンに装備!」

 

「今度は僕が選んだカードか!」

 

装備魔法がパワー・ツール・ドラゴンに装備されると腕のパワーショベルとマイナスドライバーがそれぞれドリルとカッターに変わる。

 

「このカードは自分のターンの時、装備モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!  そして装備モンスターが攻撃する場合、 バトルフェイズの間だけ攻撃対象モンスターの効果を無効にする!」

 

ATK:4600→5600

 

「こ、攻撃力が5000を超えた!?」

 

「行くぞ遊伸君! パワー・ツール・ドラゴンでセブン・ソード・ウォリアーを攻撃! 《クラフティ・ブレイクD》!!」

 

パワー・ツール・ドラゴンが右腕のドリルを振り上げ、セブン・ソード・ウォリアーに向けて突き出す。

ドリルはセブン・ソード・ウォリアーを粉々に粉砕する。

 

「うわぁ!!! …何て攻撃だ……!」

 

遊伸 LP:5600→2300

 

「(大きなダメージを受けてしまった……しかし解らない、どういうつもりなんだ…)」

 

巨大化は鋼貴も使用する強力なカード、遊伸も勿論知っている。

だがそれ相応のデメリット、LPが相手を上回ると元々の攻撃力が半減するという物がある。

確かに巨大化を使用すれば遊伸に大ダメージを与えられるが、大ダメージを与えてしまうとLPが遊伸のLPを上回り、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は半減してしまう。

さらに先程友河はダブルツールD&Cの効果を「自分のターンの時、装備モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる」と説明している。

つまり遊伸のターンになると攻撃力は上がらず、巨大化の効果で攻撃力は半減し、たったの1150となってしまう、倒してくれと言うようなものだ。

しかし遊伸は思い出す、友河の隙がある様で無い戦術を。

 

「(友河さんの事だ、きっと何かある……手札、場には何も無い、墓地か…? それとも……)」

 

遊伸は巨大なパワー・ツール・ドラゴンを見上げる。

 

「(このパワー・ツール・ドラゴンにはまだ何かあるのか…?)」

 

「パワー・ツール・ドラゴンに装備されている巨大化の効果、自分のLPが相手のLPを上回っている場合、元々の攻撃力は半分になる。 私はこれでターンを終了、そして相手のターンに移ることでダブルツールD&Cの効果で上がっていた攻撃力も落ちる」

 

巨大化していたパワー・ツール・ドラゴンがみるみる小さくなっていき、最初の大きさの半分程になる。

 

ATK:5600→2150→1150

 

LP:4700

手札:0

モンスター

・パワー・ツール・ドラゴン

魔法・罠

・巨大化(パワー・ツール・ドラゴン)

・ダブルツールD&C(パワー・ツール・ドラゴン)

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

パワー・ツール・ドラゴンは予想通りの結果となった。

危険な予感がするが、遊伸は攻める事を選ぶ。

 

「僕は墓地にある《神剣-フェニックスブレード》の効果を発動! 自分のメインフェイズ時に自分の墓地に存在する戦士族2体をゲームから除外する事で、このカードを自分の墓地から手札に加える! 墓地から《レベル・ウォリアー》と《ターレット・ウォリアー》をゲームから除外してこのカードを手札に!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「そしてアナペレラに《神剣-フェニックスブレード》を装備!」

 

アナペレラはフェニックスブレードを手に持つと、パワー・ツール・ドラゴンに対して構える。

 

ATK:1800→2100

 

「バトル! アナペレラでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 《クロス・ブレード》!」

 

アナペレラがフェニックスブレードでパワー・ツール・ドラゴンに斬りかかる。

現在パワー・ツール・ドラゴンは巨大化のデメリット効果で小さくなり、アナペレラと殆ど変わらない大きさである。

アナペレラがパワー・ツール・ドラゴンの頭上に向かって剣を振り下ろすと、パワー・ツール・ドラゴンは両の腕で剣を受け止める。

受け止めた時に衝撃波が起こり、友河を襲う。

 

「ぐっ……パワー・ツール・ドラゴンの最後の効果! 装備魔法を装備したこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードに装備された装備魔法1枚を墓地へ送る事が出来る! 墓地に送るのは《巨大化》! そしてダブルツールD&Cの効果発動! 相手のターンに装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、 その相手モンスターを破壊する!」

 

友河 LP:4700→3750

 

パワー・ツール・ドラゴンの眼が光ると突然パワー・ツール・ドラゴンが元の大きさに戻っていく。

完全に元の大きさに戻り、アナペレラを見下ろすと、左手のカッターを振り下ろし、アナペレラを破壊する。

 

「アナペレラ!?」

 

パワー・ツール・ドラゴン ATK:1150→2300

 

友河の狙いはこれだった。

遊伸は自らパワー・ツール・ドラゴンを助けてしまったようなものである。

 

「…僕はカードをセットしてターンエンド」

 

LP:2300

手札:0

モンスター

・なし

魔法・罠

・セット

・セット

 

「私のターン! ドロー!」

 

友河 手札:0+1

 

パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→3300

 

遊伸のLPは2300、パワー・ツール・ドラゴンで攻撃すれば0である。

気になるのは伏せカード、もしかするとミラーフォースの様な逆転のカードの可能性もある。

友河は最後まで油断をしないようにする。

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 《パワー・サーチ》!」

 

遊伸の前に3枚のソリッドビジョンが現れる。

 

選択したカード

魔導師の力

デーモンの斧

D・パワーユニット

 

カードのソリッドビジョンが裏になり、一瞬消えるとまた現れる。

 

「さあ遊伸君! 選んでくれ!」

 

「…真ん中のカード!!」

 

遊伸が選択するとソリッドビジョンが消滅し、友河は選ばれたカードを手札に加える。

 

友河 手札:1+1

 

加えたカード:D・パワーユニット

 

「(装備魔法の枚数の問題で選ばざるを得なかったディフォーマー限定のカードを選び当てるとは……だが自分が不利になった訳ではない)」

 

「バトル! パワー・ツール・ドラゴンで直接攻撃! 《クラフティ・ブレイクD》!!」

 

パワー・ツール・ドラゴンがドリルを遊伸に向けて突撃する。

 

「罠発動! 《波動再生》!! 相手の直接攻撃宣言時、その攻撃モンスターのレベル以下の レベルを持つシンクロモンスター1体を自分の墓地から選択、そしてその時の戦闘ダメージは半分になり、そのダメージステップ終了時に選択したシンクロモンスターを自分の墓地から特殊召喚する! 僕は同レベルの《セブン・ソード・ウォリアー》を選択!」

 

パワー・ツール・ドラゴンの攻撃が遊伸を襲う。

 

「うわぁぁ!!! ぐうっ…!! …来い!! 《セブン・ソード・ウォリアー》!!」

 

遊伸 LP:2300→650

 

遊伸の場にセブン・ソード・ウォリアーが再び現れる。

パワー・ツール・ドラゴンに向かって大剣を構える。

 

ATK:2300

 

「私はこれでターンを終了……驚いた、パワー・ツール・ドラゴン相手にここまで渡り合い、引かないなんて…」

 

「…ありがとうございます」

 

遊伸は体勢を立て直すと、友河の言葉に礼を言う。

 

「友河さん、もう一度言わせて貰います、ありがとうございます。 僕も今日友河さんとデュエル出来てよかったです……次が、ラストターンです!!」

 

「何だって!? …よし、来い! 遊伸君!」

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「墓地にある《神剣-フェニックスブレード》の効果を発動!! 《X-セイバー アナペレラ》と《X-セイバー パシウル》を除外してこのカードを手札に!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「そして《神剣-フェニックスブレード》をセブン・ソード・ウォリアーに装備! そしてセブン・ソード・ウォリアーの効果発動! 相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがフェニックスブレードを手にすると体から光を放つ。

 

「ぐっ……まだまだ!」

 

友河 LP:3750→2950

 

「そしてもう一つの効果! 《神剣-フェニックスブレード》を墓地に送ってパワー・ツール・ドラゴンを破壊する! 《イクイップ・ショット》!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがフェニックスブレードをパワー・ツール・ドラゴンに向けて投げると、パワー・ツール・ドラゴンは両手のダブルツールD&Cでそれを受ける。

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 《ダブルツールD&C》を墓地に送り、破壊を免れる……!」

 

パワー・ツール・ドラゴンの効果が発動すると、ダブルツールD&Cがフェニックスブレードと共に砕け散る。

 

「行きます! バトル! セブン・ソード・ウォリアーでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 《セブン・ソード・スラッシュ》!!」

 

「反撃だ! 《クラフティ・ブレイク》!!」

 

飛び掛るセブン・ソード・ウォリアーを返り討ちにしようとパワー・ツール・ドラゴンはパワーショベルを繰り出す。

セブン・ソード・ウォリアーは左の大剣でパワーショベルをいなすも、右からのドライバーに腹部を貫かれてしまう。

セブン・ソード・ウォリアーは最後の力を振り絞り、右の大剣をパワー・ツール・ドラゴンの心臓部へ突き刺すと力尽き、パワー・ツール・ドラゴンの爆発に巻き込まれ共に消滅する。

 

「パワー・ツール・ドラゴンが……」

 

パワー・ツール・ドラゴンを倒され、呆然とする友河。

しかし遊伸はセブン・ソード・ウォリアーが倒されたにも関わらず、その眼で勝利を見据えていた。

 

「罠カード《奇跡の残照》を発動!! このターンの戦闘によって破壊され、自分の墓地へ送られた モンスター1体を選択し、選択したモンスターを墓地から特殊召喚する! 来い! 《セブン・ソード・ウォリアー》!!」

 

先程パワー・ツール・ドラゴンと相打ちとなったセブン・ソード・ウォリアーが生き返り、場に舞い戻る。

 

ATK:2300

 

「バトル! セブン・ソード・ウォリアーで直接攻撃! 《セブン・ソード・スラッシュ》!!」

 

セブン・ソード・ウォリアーが大剣で友河を斬りつける。

 

「ぐわぁぁぁ!!! …まだ、まだ終わってないぞ遊伸君!」

 

友河 LP:2950→650

 

「これで最後です! バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2! 墓地の《神剣-フェニックスブレード》の効果を発動!! 墓地の《X-セイバー ウェイン》と《No.39 希望皇ホープ》を除外してこのカードを手札に!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「フェニックスブレード……しまった!? 効果使用のリセットか!」

 

友河は遊伸の狙いに気付く。

セブン・ソード・ウォリアーの能力は1ターンに1度しか発動出来ない。

なのでメインフェイズ1に効果を発動しているセブン・ソード・ウォリアーはもうこのターンに効果を発動することは出来ないのだ。

そう、”メインフェイズ1に効果を発動している”セブン・ソード・ウォリアーは。

現在遊伸の場にいるセブン・ソード・ウォリアーは”奇跡の残照の効果によってバトルフェイズ中に新しく特殊召喚された効果を発動していない”セブン・ソード・ウォリアー、つまりこのターンのメインフェイズ2に効果を発動出来るのである。

 

「《神剣-フェニックスブレード》をセブン・ソード・ウォリアーに装備! そして効果発動! 相手に800ポイントのダメージを与える! 行け! セブン・ソード・ウォリアー!!」

 

セブン・ソード・ウォリアーが眩い光を放つと、その光が友河を覆う。

 

「ぐっ……! …見事だ遊伸君」

 

友河 LP:650→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

 

「友河さん!」

 

遊伸が友河に駆け寄る。

 

「…はぁ~~~……燃えた、燃え尽きた……だけど、また燃え上がってくるこの感覚! まさしくあの頃のデュエルだった! 遊伸君、楽しかったよ!」

 

そう言って友河は遊伸に手を差し出す。

 

「こちらこそ! 楽しかったです! また何時かやりましょう友河さん!」

 

そう言って握手に応じる遊伸。

すると突然決闘場の扉が開き、モニター室にいた3人が入ってきた。

 

「いやあ! 遊伸君! 友河君! いいデュエルだったよ!」

 

マイルがそう言いながら友河に近づく。

 

「どうだ、友河君? 遊伸君とのデュエルは?」

 

「所長、心配を掛けました。 もう大丈夫です! 描けます! 期日までに間に合わせて見せます!」

 

友河はデュエルの興奮がまだ抜け切らないのか声のテンションが高い。

 

「うんうん! やっぱりマーシャル・レッドさんに頼んでよかった!」

 

一方こちらは遊伸。

 

「やったな遊伸! すげぇデュエルだったぜ!」

 

「ありがとう鋼貴!」

 

鋼貴の称賛に礼を言う遊伸。

 

「それにしても私びっくりしちゃった! 遊伸も凄かったけど、友河さんがあんなに強い人だったなんて! デザイナーさんってデュエル強いんだね!」

 

空が興奮した様子ではしゃいでいるとマイルが振り向いてこちらの会話に入る。

 

「いや、友河君が特別なんだ。 友河君はデュエルアカデミアを主席で卒業しているんだ。 同級生は皆不思議がっていたよ、どうしてプロかセキュリティに進まなかったのか、ってね」

 

「ひゃあ~、凄い人なんですね友河さん」

 

マイルにそう言われて空は恐れ入ったように友河を見る。

 

「デザイナーをするんだったら、カードに関わるデュエルの事にも精通してなきゃ行けない、と思って……ガムシャラに頑張ってたら何時の間にか先頭だったよ」

 

友河が昔を懐かしむように言う。

 

「筆記はともかく、実技は歯が立たなかったな……ぐぐぐ…」

 

マイルが悔しそうに天井を見上げている。

マイルの話と反応を見て鋼貴がある事に気付く。

 

「あんた達同級生だったのか……探すだけならここの人手だけでもよさそうなのに、わざわざ俺達を雇う訳だ」

 

「その通り! 士郎の一大事だからね! 万全を尽くしたさ!」

 

「ありがとう、コンラード!」

 

二人は握手を交わし、アカデミア生時代の呼び名で呼び合う。

今の二人は上司部下ではなく、完全に同級生であった。

友河はふと思い立った様に遊伸に振り向く。

 

「…遊伸君、これを受け取ってくれ」

 

友河は自分の決闘盤から一枚のカードを取り、遊伸に差し出す。

遊伸はそのカードを見るて驚いた。

 

「こ、これ《パワー・ツール・ドラゴン》じゃないですか!? こんな凄いカードをなんで…」

 

遊伸が動揺しながら友河に聞く。

 

「…今日、君とデュエル出来ていなければ、私のデザイナー人生は終わっていただろう……君は私を導いてくれた。 だから私も君の力になりたい……このカードは、きっと君の力になってくれると思う。 …だから受け取ってくれ、遊伸君」

 

「……分かりました、友河さん、ありがとうございます! 大事に使います!」

 

遊伸はパワー・ツール・ドラゴンを受け取ると、大事そうにエクストラデッキにしまう。

 

「…そうだ! もう一つ……ちょっと来てくれるかな」

 

友河は遊伸達を連れて決闘場から移動する。

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

「おまたせ」

 

友河が研究所内の自室からスケッチブックを一冊持って来る。

 

「これを見てくれ」

 

そう言ってスケッチブックの表紙を捲ると、そこには一体のドラゴンが描かれていた。

下の方に「士郎君へ  題名 "L・S・D" 」と書いてある。

 

「友河さん、これは?」

 

遊伸が友河に尋ねると、友河は懐かしむように語り始める。

友河がまだアカデミア高等部1年生の時、あるデザイナーのカードデザインを見て、とても感動したと言う。

友河はそのデザイナーに会ってみたくなり、そのデザイナーの事を調べたが中々身元の情報が見つからず、やっと分かったのはサテライトに住んでいると言う事だけであった。

友河は会いたい一心で、夏休みにサテライト旅行を計画し、サテライトへと渡った。

この頃はまだダイダロスブリッジが架けられたばかりで、サテライトの治安は今よりずっと悪かった。

本当に命がけだったと友河は言う。

そして夏休みも後僅かというところでようやくそのデザイナーを見つけた。

友河は存分にそのデザイナーの話を聞きた、これが自分がデザイナーを目指したきっかけだと言う。

デザイナーの方もわざわざシティから訪ねに来てくれた事を嬉しく思ったらしく、友河の為にこのドラゴンをデザインし、プレゼントしてくれたのだと言う。

 

「私はこのドラゴンを元にパワー・ツール・ドラゴンをデザインしたんだ」

 

遊伸はパワー・ツール・ドラゴンを取り出し、皆で見比べる。

 

「本当! そっくり!」

 

「逆にパワー・ツール・ドラゴンをモデルにして描いたって言っても通用するんじゃねぇか?」

 

空と鋼貴が感嘆の声を出す。

 

「そのデザイナーって何て言う人なんですか?」

 

遊伸が友河に聞くと、友河は頭を振る。

 

「申し訳無いけど、その人との別れ際に約束したんだ、自分の名前や居場所は誰にも言わないでって」

 

「まあ職人とかには有名になって騒がれたくないって人もいるから、しょうがないんじゃないかな」

 

マイルが納得するように頷きながら言う。

友河はスケッチブックを閉じると遊伸に向き合い、切り出す。

 

「…遊伸君、実は君に依頼があるんだ」

 

「依頼? マーシャル・レッドじゃなくて、僕にですか?」

 

「ああ、これは無理にこなしてくれとは言わない、君が歩んでいく決闘者の道で、機会があったらついでにこなせばいい。 その位の気持ちでいいんだ」

 

「はあ……それで、どんな依頼なんですか?」

 

よく理解出来ていないが、とりあえず話を聞く遊伸。

 

「…おそらく、私があの人に再会することはもう無い、何となく解るんだ……だけど遊伸君、君はまだ若い、それに決闘者だ、これから先色んな人に出会うだろう」

 

友河は再びスケッチブックの表紙を捲り、ドラゴンのデザインを遊伸に見せる。

 

「だから遊伸君、もし君があの人に会えたら、このドラゴンとパワー・ツール・ドラゴンをあの人に見せて伝えて欲しいんだ、"あなたのおかげで夢に見たデザイナーになることが出来ました、ありがとうございます"って……あの人の情報を何一つ教えられないのに、こんな事頼むのはおかしいけど……お願い出来るかな?」

 

そう言って友河は遊伸にスケッチブックを差し出す。

遊伸は手に持っていたパワー・ツール・ドラゴンをデッキにしまうと、それを受け取る。

 

「依頼主は友河 士郎、依頼内容は人探し、報酬はドラゴンのデザインとパワー・ツール・ドラゴン……友河さん、依頼、お受けします! 任せてください!」

 

「ありがとう、遊伸君……よし! 所長、私は仕事に戻ります! マーシャル・レッドの皆さん、今日は本当にありがとうございました! 報酬は仕事を終えたら必ず振り込んでおきます! それでは!」

 

 

* * *

 

 

 

シティ内陸部 歩道

 

遊伸達はデュエル研から事務所に帰る途中であった。

 

「それにしても遊伸、えらく気に入られたな、それに個人的な依頼まで受けちまって、これで二件目か、大丈夫か?」

 

「ハハハ…まあ何とかなるよ」

 

「ねえ、遊伸。 今回友河さんとデュエルして何か掴めた?」

 

空が遊伸に尋ねる。

 

「…デッキについてはまだ掴めてないけど、今回のデュエルは僕にとっても重要な物だったよ」

 

「そうだね! 私もそう思う! だって遊伸、今朝までは悩んでばっかりでいい顔してなかったもん!」

 

空がそう言って遊伸の顔を覗き込む様にして見ると、鋼貴もそれに習って覗き込む。

 

「そうだな、今いい顔してるぜ遊伸」

 

二人の言葉に遊伸は笑って返すと、沿岸部の方角へ顔を向ける。

正確には海の向こう、生まれ故郷のサテライトを見ていた。

 

「(あそこから出て来て二ヶ月半か……皆どうしてるかな……)」

 

遊伸は生まれ育った故郷へ思いを馳せる。

 

「(こっちの生活も安定してきたし……根拠はないけど、場所が変われば何か良い事を思い付くかもしれないし……一回、戻ってみようかな……)」

 

 

 

サテライトへ……

 




何故か本文の字数制限が20000文字以下だと思い込んでいましたOTL
分ける必要なかったですね…。
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