遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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*今回色々独自設定が出てきます。 ご了承ください。

13/03/14
設定の重大ミスがあったので修正させていただきました。




第20話 故郷へ ~Return to Satellite~

「おはよー!」

 

空が元気よく挨拶して事務所に入る。

 

「おーす、空、遊伸どっかで見なかったか?」

 

ソファーに座っていた鋼貴が首を空に向けて挨拶を返す。

遊伸はまだ来ていないのか姿が見えない、鋼貴は遊伸に用があるのか、空に居場所を尋ねる。

 

「? 私来たばかりだから知らないよ、まだ来てないの? 珍しいね」

 

「空も知らねぇのか、ロートンも知らねぇし、グレイグも見えねぇし、何かあったんか?」

 

鋼貴がそう言うと、事務所の扉が開く。

噂をすればなんとやら、グレイグがコンビニ袋を手に提げて入ってくる。

 

「おう、お前等来たか」

 

「よおグレイグ、遊伸どうしたんだ? まだ来てないのか?」

 

グレイグが袋をテーブルに置いてソファーに座り、一言。

 

 

 

「遊伸ならサテライトに帰ったぞ」

 

 

 

グレイグの言葉に空と鋼貴は一瞬静まり返ると、次にグレイグに詰め寄り喚く。

 

「嘘!? なん…何で!? どうして遊伸帰っちゃったの!?」

 

「理由を言え理由を!!!」

 

二人がグレイグの耳元で大声を出すと、グレイグは耳を押さえながら大声で返す。

 

「何勘違いしてんだ! 一時的な帰省だ! 辞めた訳じゃねえ!」

 

「…ホントに? 遊伸ちゃんと帰って来るの…?」

 

空が不安そうな顔でグレイグに念を押して聞く。

 

「今日何時も通り6時に来て言っていた! 「サテライトに帰省します、明日には戻ってきます」ってな! それに辞められてたまるか! 遊伸は今や安月給で動かせるうちのエースなんだからな!」

 

リアルな本音が混じったグレイグの言葉に空は脱力してソファーに座り込む。

 

「はぁ~~…よかった……もうっ! 紛らわしいよ!」

 

確かにグレイグの先程の言い方では誤解を生むだろう。

 

「…まあよくよく考えたら遊伸が俺達に黙っていなくなるなんてありえねぇな……黙って帰省はされたが」

 

鋼貴の言葉に空は同調してソファーから立ち上がる。

 

「ホント! 黙って行っちゃうなんて! どうせなら一緒に連れてってくれればいいのに! 行ってみたかったなっ! サテライト!」

 

「駄目だ駄目だ、お前らは仕事だ。 これ以上休まれてたまるか」

 

子供の様に膨れる空にグレイグはそう言い含めると立ち上がり、今日の依頼の話を始める。

 

 

* * *

 

 

サテライト  湾岸  ダイダロス・ブリッジ前バス停

 

遊伸は一日に二回しか出てないサテライト行きの定期便に乗り、今サテライトに到着した。

バスから降りた遊伸は辺りを見渡しながらサテライトの奥へと進んで行く。

入り口であるこの辺りははそれなりに開発が進んでいるが、奥の方へ進んで行くと、瓦礫や廃墟が目立ってくる。

遊伸にはやはりサテライトの開発が進んでいる様には見えなかった。

遊伸はしばらくサテライトを歩いていて、ある事に気付く。

 

「…やっぱり、人が減ってるかな……」

 

遊伸が感じたように、サテライトの人口はどんどん減っている。

気持ちは解らなくもない、目の前に煌びやかなシティへの架け橋があるのだから。

今現在サテライトに住んでいるのは、昔から住んでいてこの土地に愛着を持っている者、わけあって隠れ住まなければならない者、後は物好きやゴロツキが殆どである。

サテライトが開発されれば幾らか人は帰ってくるかも知れないが、その開発を行っていたアルカディア・ムーブメントは既に存在しない、サテライトの復興はかなり遠退いてしまった。

遊伸はそんな故郷の現状を見て、物寂しさを感ていた。

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

サテライト  孤児院

 

「着いた……まだ3ヶ月も経ってないのに、何年も帰ってなかったように感じるな…」

 

ここは遊伸が父を亡くしてから10年間、遊伸が過ごして来た孤児院である。

遊伸は正門から院内の広場を覗く。

孤児院の子供達が遊具で遊んだり、ボールを蹴って遊んでいる。

 

「おおーい! みんなーー!!」

 

遊伸が大声で広場に声を掛けると子供達は一斉に振り向き、声の主が遊伸だと分かるとわらわらと集まってくる。

 

「あーー!! 遊伸おかえり!!」

 

「シティどうだった? 楽しかった? お土産は?」

 

「あそぼーーーー!!!」

 

子供達は口々に声を掛ける。

 

「待って待って! 順番順番! 一人づつ……」

 

遊伸が対処に困っていると、建物から初老の男性が出てくる。

 

「おお! 遊伸、帰ったか!」

 

「院長先生!」

 

遊伸は院長に近づいて握手を交わす。

 

「手紙で近況は聞いていたが、元気そうで何よりだ!」

 

「先生こそ、変わらない様で何よりです!」

 

遊伸がそう言うと、院長は高らかに笑う。

 

「ハッハッハ! 体が丈夫でないとここのチビ達の相手は務まらんよ! …それにしても急に戻って来てどうしたんだ? 最後に来た手紙を読む限り至って順調そうだったが……おっと、立ち話もなんだ、中に入って話そう」

 

遊伸は院長に続いて孤児院建物の中に入って行く。

そこで遊伸は今回戻ってきた理由を院長に話す。

 

「…ふーむ、決闘者というのは大変なんだなぁ……まあ、男なら迷う事なんて幾らでもある。 好きなだけゆっくりして行くといい。 ここは何時でもお前を受け入れる、お前は幾つになってもここの家族だ」

 

「ありがとうございます……あ、そうだ! 院長先生、一つお願いがあるんです」

 

「? 何だ」

 

「僕が昔父さんと住んでいた家に行ってみたいんです。 確か買い手が見つかるまでは院長先生が管理してくれているんですよね? 一度家に入ってもいいですか?」

 

遊伸がそう話を切り出すと、院長は申し訳無さそうに答える。

 

「あ~…すまん遊伸、まだ最近の事だったからお前にはまだ伝えてなかったな……」

 

「? 買い手が見つかったんですか?」

 

「いや、そうじゃない……実はな…」

 

 

* * *

 

 

サテライト  東部

 

遊伸は今かつての自宅を目指して走っていた。

出来れば院長の話が嘘であって欲しい、そう願いながら走り続ける。

そして遊伸がその場所に到着し、見たものは―――

―――全焼したかつての我が家であった。

院長がセキュリティに聞いた話によると、ゴロツキが空き巣目当てにこの家に侵入したが、この家が空き家で金目の物が無いと知ると、この家に放火をして逃げたのではないか、と。

それらしい証拠も残ってたと言う。

 

「そんな……何て事をするんだ……」

 

この家は遊伸にとって父親との数少ない思い出の一つであった。

それを焼き払われた遊伸は、何か大事な物を奪われた時の様な喪失感を感じていた。

遊伸は焼け跡を見ながらしばらく呆然とする。

すると突然後ろから、ここにいる筈の無い、聞き覚えのある声の持ち主に声を掛けられる。

 

「あれ!? 遊伸? 遊伸か! 何でここにいるんだ!?」

 

遊伸も驚いて振り返るとそこには燃次と冷次がいた。

 

「よう! やっぱり遊伸か! あの事件以来だな! 見舞い行けなくてすまん、あの後遅れながらも行ったんだがもう退院してたから、ま! よかったぜ!」

 

「よう、遊伸。 話は燃次から聞いている、大変だったな……そんな時に眠りこけてたなんて……面目ない」

 

遊伸はようやく状況を理解するとようやく声を発する。

 

「あ、ああ二人とも……いや普通に驚いたよ……どうしてこんな所に」

 

遊伸が尋ねると燃次が答える。

 

「ちょっとした遠足だ! 一度も来た事無かったからな! 興味本位でサテライトに来て見たんだが……」

 

冷次が話を引き継ぐ。

 

「大して面白い事は無かったな、寂れてるわ、ゴロツキに襲われそうになるわ、散々だ。 だからもう帰ろうと港を目指していた所に、遊伸を見つけた訳だ。 そっちは?」

 

遊伸は自分の故郷がサテライトである事、帰省しに帰ってきた事、そしてこの家の事を二人に話す。

 

「そんな事が……酷い事するもんだ、家に罪がある訳でも無いのに」

 

「燃やすのは闘志だけで十分だぜ!」

 

二人は遊伸に同情してくれる。

遊伸は二人に礼を言うと、家の焼け跡に向かって歩いて行く。

 

「? どうしたんだ」

 

燃次が遊伸に聞くと、遊伸は焼けた家の残骸を退かしながら答える。

 

「…家具とかは孤児院に移るときに売り払って、大事な物とかは全部持って行ったんだけど、もしかしたら何か残ってたりしないかなって思って、あったとしても、泥棒に持ってかれちゃってるかもしれないけど……」

 

「お、それなら俺達も手伝うぜ!」

 

燃次と冷次も探索に加わる。

しばらくすると冷次がある物を見つける、

 

「うん? 何だこれは……遊伸、ちょっと」

 

冷次は遊伸を呼ぶと、見つけた物を見せる。

 

「何だいこれ……蓋?」

 

そこにはマンホールにも似た鉄の蓋があった。

取っ手が付いており、引き上げられそうである。

 

「遊伸、これ何か分かるか?」

 

気になって見に来た燃次が遊伸に尋ねる。

 

「いや、知らない……家の下にこんな物があったなんて」

 

「とりあえず開けてみようぜ!」

 

そう言って燃次は蓋を開ける。

見てみるとその下は深い穴になっていて、梯子が掛かっている。

 

「何だこりゃ! すげぇ! 何だかワクワクしてきたぜ!」

 

遊伸は周りを見渡す。

昔の事なのでよく覚えてないが、恐らくここはリビングの辺りだったと遊伸は思い出す。

 

「(僕の記憶が正しかったとして……リビングにこんな物があったなんて知らなかった、父さんが作ったのか?)」

 

遊伸が考えていると燃次が遊伸を急かす。

 

「なあ! 入ってみようぜ! 何かあるかも!」

 

「おい、燃えたとは言え人の家だぞ」

 

そう言う燃次を冷次が諫める様にする。

 

「…うん、入ってみよう。 燃次の言う通り、何かあるかも」

 

「よし! 許可が下りたぜ! 行くぞ!」

 

3人は梯子を降りて行く。

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

梯子を降り切ると、そこは空間になっていた。

しかし、暗くてよく見えない。

 

「全然見えん!」

 

「ライトか何か持ってくるんだったな……いや、少し弱いがケータイのライトを使おう」

 

冷次がポケットからケータイを取り出し、ライトを点ける。

それで前を照らすと、目の前にゲームセンターで見る様なゲームの筐体があった。

 

「あれ? これDT(デュエルターミナル)じゃねーか」

 

DT(デュエルターミナル)って?」

 

遊伸は燃次が言った聞き慣れない名称について、冷次に聞く。

 

「知らないのか? ゲームセンターとかに行くと置いてあるデュエルのシミュレーターだ。 100円(ワンコイン)入れるとCPU相手にデュエル出来る。 しかも海馬コーポレーションに登録されている全カードデータがインプットされているから、対戦相手のカードを好きな様に変更出来るし、自分が好きなカードを使う事が出来る、中々楽しいぞ」

 

「何で遊伸んちにあるのかしらねーけど、とりあえず遊んでいこうぜ! えーと、投入口は…」

 

「待て燃次、電気なんて通ってないだろここは…」

 

燃次が手当たり次第にDT(デュエルターミナル)を触ると、突然アラーム音が鳴り、部屋の明かりが点き、DT(デュエルターミナル)が起動する。

 

「何だ!? 突然明かりが!」

 

遊伸が驚いていると、燃次がDT(デュエルターミナル)を指差して言う。

 

「見ろ! 何かこれ変だぜ! もうデュエルが始まってやがる!」

 

遊伸も見ると、確かに燃次の言う通り、既にカードが場に何枚か並べられている。

DT(デュエルターミナル)の横で冷次が置いてあった本に目を通す。

 

「遊伸、燃次、これは「詰めデュエル」だ」

 

「何だって!? 詰めデュエルって、アカデミアの入試の時や、ライセンス試験の時出てきた問題の事か?」

 

詰めデュエルとは、あるデュエルの状況を想定して、限られたカードを使い、その状況を切り抜けデュエルに勝利するという、一種のパズルの様なゲームである。

デュエルのタクティクスを試すのに最適なゲームである為、アカデミアやデュエルに関する各種試験の問題として出題される事が多い。

 

「(どうして父さんはこんな所にこんな物を……)」

 

「面白そうじゃん! よっしゃ! まず俺が挑戦するぜ! 遊伸いいか?」

 

遊伸はとりあえず頷く。

いきなり始めようとする燃次を冷次は止める。

 

「慌てるな、ちゃんとルール見なきゃ出来ないだろうが、今からルールを読み上げる」

 

まずは場・手札・墓地の状況。

 

自分の場

デッキ枚数:2

エクストラ:0

墓地

・スキル・サクセサー

・ADチェンジャー

LP:4000

手札:?

モンスター

・なし

魔法・罠

・セット(リビングデットの呼び声)

 

相手の場

デッキ枚数:2

エクストラ:0

墓地

・なし

LP:4000

手札:5

モンスター

・光帝クライス

魔法・罠

・強者の苦痛

・暗黒の扉

・セット

 

「…と、こんな感じだ、見るからにこっちが不利だな、で、次が…」

 

手札について。

相手の手札は5枚、それぞれ

・地帝グランマーグ

・炎帝テスタロス

・氷帝メビウス

・風帝ライザー

・闇帝ディルグ

となっている。

 

自分の手札、エクストラデッキはこの詰めデュエルを行う物が使いたいモンスターカードを3枚選択し、それぞれ手札、エクストラデッキとする。

 

「…自分で使うカードを選ぶなんて初めて見たぞ……それに相手の手札……気を付ければ簡単じゃないか? …まあいい、次」

 

この詰めデュエルのルール

・自分のメインフェイズ1からのスタート

・ターン制限は無し

・勝利条件は相手にドローフェイズでの通常ドロー以外の行動をさせず、相手のLPを0にする事、これ以外の勝ち方は認められない。(発動や召喚をする事を宣言させるだけでも行動とみなす。 なのでカード効果で発動を無効にしても敗北となる)

 

「…詰めデュエルはそのターン以内に勝て、って言うのが普通なのに、ターン無制限とは……やっぱり簡単じゃ……と思いきや勝利条件、これは難しいんじゃないか? 燃次、出来るか?」

 

燃次は改めて場を確認する。

相手の場の《光帝クライス》、攻撃力は2400、守備力は1000、召喚、特殊召喚時に強力な効果を発動出来るが既に召喚済みなので気にしなくていいだろう。

次は《強者の苦痛》と《暗黒の扉》。

前者は相手の場のモンスターの攻撃力をそのモンスターのレベル×100ポイントダウンさせる永続魔法。

後者はお互いにモンスター1体でしか攻撃する事が出来なくなる永続魔法である。

 

「……分かったぜ!」

 

「本当かい燃次!?」

 

「ああ! 任せろ! 俺が使うモンスターはこの3枚だ!」

 

燃次はDT(デュエルターミナル)にカードの名前を入力する。

 

燃次が選んだモンスター

・ゴブリンドバーグ

・ゴブリンドバーグ

・ジェムナイト・パール

 

「さあ行くぜ! デュエル!!!」

 

画面に「START」の文字が表示される。

 

「さて! 二人とも見てな! 一見難しそうに見えるが……攻略法はある! まずは《暗黒の扉》! こいつがある限り1ターンに一体しか動けない……つまり! 強い一体のモンスターで戦えという事だ! 俺は《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

燃次の場に小さなプロペラ飛行機の操縦席にスッポリ納まったパイロット姿のゴブリンが現れる。

 

ATK:1400

 

「ゴブリンドバーグの効果発動! 召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる! この効果を使用した場合、こいつは守備表示になる! 手札からもう一体の《ゴブリンドバーグ》を特殊召喚!」

 

DEF:0

 

燃次の場にもう一体ゴブリンドバーグが現れる。

 

ATK:1400

 

「まあ、素材は何でもいいんだ。 問題はここ! 普通強力なモンスターといえばシンクロ! だが相手の場には《強者の苦痛》がある……あの魔法はこっちのモンスターのレベル分攻撃を下げる、つまり強力なシンクロを出すとその分攻撃を下げられるって訳だ! ならどうする? 答えはこれだ! エクシーズ召喚!」

 

燃次は二体のゴブリンドバーグでオーバーレイ・ネットワークを構築する。

 

「来い! 《ジェムナイト・パール》!」

 

燃次の場に体が真珠の様に輝いた岩石族モンスターが現れる。

 

ATK:2600

 

「モンスター・エクシーズならレベルの効果を受けねぇ! そしてこのジェムナイト・パールはランク4の中でも2600っつー高い攻撃を持ってる! さらに墓地の《スキル・サクセサー》の効果発動!墓地のこのカードをゲームから除外する事で、自分の場のモンスター1体を選択し、その攻撃力をエンドフェイズ時まで800ポイントアップする!」

 

ATK:2600→3400

 

「さあ行くぜ! ジェムナイト・パールでクライスを攻撃! 《鬼神の連撃》!」

 

ジェムナイト・パールがクライスに強烈なラッシュを喰らわせる。

クライスは耐え切れず、破壊される。

 

LP:4000→3000

 

「よし! このデュエルにターン制限はねぇ! このまま押し切ってやるぜ! これでターンエンド!」

 

燃次がターンを終了させると、DT(デュエルターミナル)から合成音声が流れる。

 

「私のターン、ドロー。 セットしていた魔法カード《クロス・ソウル》を、あなたの場のモンスター、ジェムナイト・パールを選択して発動……相手が通常ドロー以外の行動をしました、あなたの負けです」

 

「へ?」

 

画面に「GAME OVER」と表示されると、また最初の画面に戻る。

 

「…燃次、忘れてたのか? 通常ドロー以外の行動をさせてはいけないってルールを……」

 

燃次は思い出したかのようにあっ!っと声を出す。

 

「くっそー! 忘れてたぜ……」

 

「残念だったな……遊伸、次は俺にやらせてくれ。 燃次の様にはならん」

 

「うん、分かった冷次」

 

遊伸が承諾すると、冷次はDT(デュエルターミナル)の前に立つ。

 

「燃次、お前の考えは悪くなかった。 だが力の入れ方が足りない、素材まで拘らなくてはな。 俺が選ぶのはこの3枚」

 

冷次が選んだモンスター

・魔導戦士 ブレイカー

・カゲトカゲ

・ジェムナイト・パール

 

「さあ、行こう。 デュエル!」

 

画面に「START」の文字が表示される。

 

「俺は《魔導戦士 ブレイカー》を召喚」

 

冷次の場に金の模様が入った鎧、盾、マントを身に付け、剣を持った戦士が現れる。

しかし、その身から溢れ出る魔力はとても戦士の物とは思えなかった。

 

ATK:1600→1200(強者の苦痛により)

 

「ブレイカーの効果発動、召喚に成功した時、自身に魔力カウンターを1つ置き、乗っている魔力カウンター1つにつき、 このカードの攻撃力は300ポイントアップする。 そしてこの効果に手札から《カゲトカゲ》の効果をチェーン発動、自分がレベル4モンスターの召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚する事が出来る。 来い、《カゲトカゲ》」

 

場のブレイカーの影から一匹のトカゲが現れる。

その名の通り体は影の様に平面で真っ黒である。

 

カゲトカゲ        ATK:1100→700

魔導戦士 ブレイカー ATK:1200→1500

 

「ブレイカーのもう一つの効果を発動、自分のメインフェイズ時にブレイカーに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事で場の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。 破壊するのはセットされている《クロス・ソウル》だ。 《マナ・ブレイク》!」

 

ブレイカーが魔力を剣に集中させると、それを斬撃としてセットされたカードにとばす。

セットされたクロス・ソウルは真っ二つになって破壊される。

 

「これで相手のターンに使われる事は無くなった。 行くぞ、場の2体でエクシーズ召喚、来い、《ジェムナイト・パール》」

 

冷次の場にジェムナイト・パールが現れる。

 

ATK:2600

 

「そして墓地の《スキル・サクセサー》の効果発動、このカードを除外して攻撃力を800ポイントアップ」

 

ATK:2600→3400

 

「バトル、ジェムナイト・パールで攻撃、《鬼神の連撃》!」

 

ジェムナイト・パールが先程と同じ様にクライスを破壊する。

 

LP:4000→3000

 

「これでよし、ターンエンド」

 

冷次がターンを終了させると、DT(デュエルターミナル)から先程と同じ合成音声が流れる。

 

「私のターン、ドロー。 モンスターをセット……相手が通常ドロー以外の行動をしました、あなたの負けです」

 

「あ…」

 

画面に「GAME OVER」と表示され、また最初の画面に戻る。

 

「冷次……俺の様にならないんじゃなかったのか?」

 

燃次にそう言われると冷次は項垂れる。

 

「相手のドローしたカードの事を忘れていた……不覚」

 

「くそーー解らん! どうすればいいんだ?」

 

燃次が吠えると今までほぼ無言だった遊伸がDT(デュエルターミナル)の前に立つ。

 

「二人とも、これは詰めデュエルの問題じゃないかもしれない」

 

「はあ!? どういう事だよ! 確かにルールはおかしいけど、これは詰めデュエルの問題だろ?」

 

燃次がそう言うと遊伸は頭を振る。

 

「いや、違うと思う、少なくとも……誰にでも解ける様には作られてない」

 

「それならこの問題は俺達じゃクリア出来ないって事か?」

 

冷次がそう聞くと遊伸はまた頭を振る。

 

「…多分、僕なら解ける、見てて……僕はこの3枚を選択」

 

遊伸の選択したモンスター

・X-セイバー エアベルン

・X-セイバー ウルズ

・X-セイバー ウルベルム

 

「デュエル!!!」

 

画面に「START」の文字が表示される。

 

「僕は《X-セイバー ウルズ》を召喚!」

 

遊伸の場にウルズが現れる。

手に双剣を構え、クライスを睨む。

 

ATK:1600→1200(強者の苦痛により)

 

「そして墓地の《ADチェンジャー》の効果発動! 墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、場のモンスター1体を選択、選択したモンスターの表示形式を変更する! 僕はクライスを守備表示に変更!」

 

うっすらと場に現れたADチェンジャーが持っているDと書かれた旗を揚げると、クライスが防御体勢をとる。

 

DEF:1000

 

「行くぞ! バトル! ウルズでクライスを攻撃! 《暗狼剣・十字斬り》!」

 

ウルズが二本の剣でクライスを斬り裂き、破壊する。

 

「ウルズの効果発動! 戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、 このカードをリリースして破壊したモンスターを持ち主のデッキの一番上に戻す! 《クロス・リターン》!」

 

ウルズが咆哮を上げると消滅し、クライスがデッキトップへと戻る。

 

「これでターンエンド!」

 

LP:4000

手札:1

モンスター

・なし

魔法・罠

・セット(リビングデットの呼び声)

 

次はいよいよ相手のターン。

DT(デュエルターミナル)から合成音声が流れる。

 

「私のターン、ドロー。 このまま何もせずターンを終了します」

 

LP:4000

手札:6

モンスター

・なし

魔法・罠

・強者の苦痛

・暗黒の扉

・セット

 

これが遊伸の狙い、クライスをデッキトップに戻す事で行動可能なカードが手札に加わるのを防ぐと同時に、クロス・ソウルの対象となるウルズをリリースする事で発動を防ぐ、これにより相手はこのターンに行動を起こす事が出来なかったのである。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「! やっぱり……手札から速攻魔法《トルネード》を発動! 相手の魔法・罠カードゾーンにカードが3枚以上存在する場合、相手の魔法・罠カードゾーンのカード1枚を選択して破壊する! 僕はそのセットカード、《クロス・ソウル》を破壊する!」

 

ソリッドビジョンの竜巻が現れるとセットされているクロス・ソウルを巻き込み、破壊する。

 

「そしてチューナーモンスター《X-セイバー エアベルン》を召喚!」

 

遊伸の場にエアベルンが、研ぎ澄ました自慢の爪を振り回し、現れる。

 

ATK:1600→1300

 

「永続罠《リビングデットの呼び声》を発動! 墓地の《X-セイバー ウルズ》を特殊召喚!」

 

場に再びウルズが現れ、エアベルンと共に吠える。

 

ATK:1600→1200

 

「行くぞ! レベル4《X-セイバー ウルズ》に、レベル3《X-セイバー エアベルン》をチューニング!」

 

エアベルンが3つの光輪へと姿を変え、ウルズを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣に名を連ねし無法の戦士よ! 双剣を振るい、己の力を刻み込め! シンクロ召喚! 荒ぶる剣!《X-セイバー ウルベルム》!!」

 

光の柱から現れたのはウルベルム、双振りの長剣を背から抜き放ち、構える。

 

ATK:2200→1500

 

「バトル! ウルベルムで直接攻撃! 《クロス・セイバー》!」

 

ウルベルムが相手の場まで踏み込み、空を斬る。

シミュレーションなので相手は目の前にいない、今ので相手を攻撃した事になるのだろう。

 

LP:4000→2500

 

「ウルベルムの効果発動! 相手の手札が4枚以上の場合、ウルベルムが相手LPに戦闘ダメージを与えた時、相手の手札をランダムに1枚選んで持ち主のデッキの一番上に戻す! 《セイバー・リターン》!」

 

相手 手札:6-1

 

「ターンエンド!」

 

LP:4000

手札:0

モンスター

・X-セイバー ウルベルム

魔法・罠

・リビングデットの呼び声

 

「私のターン、ドロー。 このまま何もせずターンを終了します」

 

LP:4000

手札:6

モンスター

・なし

魔法・罠

・強者の苦痛

・暗黒の扉

 

遊伸がウルベルムの効果でまたデッキトップにカードを置いたので、行動出来るカードをドローする事が出来ず、ターンを終了する。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「僕はドローした速攻魔法《サイクロン》を発動! 《強者の苦痛》を破壊する! これによりウルベルムの攻撃力は元に戻る!」

 

再び竜巻が相手の場を襲い、強者の苦痛を破壊する。

 

ATK:1500→2200

 

「そして墓地にある《スキル・サクセサー》の効果発動! このカードを除外してウルベルムの攻撃力を800ポイントアップ!」

 

ATK:2200→3000

 

「バトル! ウルベルムで攻撃! 《クロス・セイバー》!」

 

ウルベルムが再び斬り込み、LPを全て削る。

 

LP:2500→0

 

「おめでとうございます。 あなたの勝利です」

 

画面に「Congratulations」と表示される。

 

「おおお! すげぇ! やったぜ遊伸!」

 

「そうか……そう言うことか」

 

燃次が遊伸に称賛を送っている横で冷次は納得した様に頷く。

 

「なんだ冷次、どうしたんだよ?」

 

「遊伸の言う通りだ、これは誰にでも解ける問題じゃない、遊伸にだけ解ける問題だ」

 

「どういうことだ? 確かに難しかったが」

 

燃次は頭に疑問符を浮かべる。

 

「解らないのか? この問題は遊伸だけが持っているX-セイバーのカードと用意されたカード全てをフル活用して初めて解ける問題だ、つまり、X-セイバー事をよく知っている人間、遊伸だけが解ける問題、と言う訳だ」

 

燃次はようやく納得した表情になる。

 

「多分だけど、父さんがこの問題を作ったんだ、皆が解ける様な物じゃなくて、X-セイバーを持つ人が解ける様にして……」

 

「何でそんな仕様にして作ったんだ? しかもこんな地下に」

 

冷次が遊伸に問うと遊伸は分からない、と呟く。

 

「(父さんがこれを作ったのは亡くなる前、つまり僕の手にデッキが渡る前だ。 父さん以外にこのカードを持っている人はおそらくいない……スターダスト・ドラゴンは別れる前に貰っていたけど、もしかして父さん、初めから僕にこのデッキを渡すつもりだったのか…?)」

 

遊伸が自分のデッキを見ながら考え込んでいる中、燃次が何気なくDT(デュエルターミナル)を見ると、DT(デュエルターミナル)の筐体からある物を見つける。

ゲームセンターなどにあるDT(デュエルターミナル)には、幾つかの問題を解いていくモード、通称チャレンジデュエルをクリアすると終了時にカードが一枚貰える機能がある。

今問題をクリアしたからなのか取り出し口からカードが出ていた。

 

「おい! カード出てきたぞ! どれどれ……ん? これは…」

 

燃次がそのカードを手に取ると、そのカードは表面にコードが書かれているだけのカードであった。

 

「これ…DTデッキレシピじゃん、俺達誰も作ってないぞ、なんでこれが…」

 

DTデッキレシピとは、DT(デュエルターミナル)の機能の一つで、DT(デュエルターミナル)で作成したデッキのデータをカードに書き込み、次回以降でDT(デュエルターミナル)のカードスキャナーに読み込ませると、再びその作成したデッキを使用する事が出来るという物。

 

「とりあえずスキャナーに読み込ませてみたらどうだ?」

 

冷次が燃次にそう提案すると、燃次はカードをスキャナーに置く。

するとDT(デュエルターミナル)から電子音が鳴り、その後ろから何かの鍵が開く様な音がする。

 

「? 何だろう…」

 

遊伸が後ろに回り込み見てみると、DT(デュエルターミナル)とは別に箱が置いてある。

DT(デュエルターミナル)からコードが延びていて、箱に繋がっている。

さっき鍵が開いた様な音がしたのはこの箱からの様だ。

 

「何だ? けっこう大きい箱だけど……」

 

遊伸は箱を開ける。

中には一冊のスケッチブックが入っていた。

 

「(何だか最近スケッチブックに縁があるな…)何が描いてあるんだ?」

 

「遊伸、何だそりゃ?」

 

「スケッチブックか?」

 

二人もやってきて後ろから覗いている。

 

「どうやらこれがクリアのご褒美みたいだね」

 

「え~~! マジかよ……カードの方がよかったぜ」

 

「お前が貰える訳じゃないんだぞ、カードだったとしても貰えるのはクリアした遊伸だ」

 

遊伸は表紙を捲る。

 

「!? こ、これ…」

 

そこに描かれていた物、それはX-セイバーであった。

遊伸はそこに描かれている絵を見た事は無い。

しかし絵の特徴や見た目にX-セイバー達の特徴が見える。

ページを捲り、一枚一枚見て行く毎に確信していく。

間違いなくここに描かれているのはX-セイバーであると。

 

「何でだ……X-セイバーは10人のはずなのに……」

 

とうとう最後のページ、そこには描かれていたX-セイバーらしき絵全ての名称、カードテキストなどが記されており、一番下にメッセージの様な物が書かれていた。

 

 

完成、力と意志を紡ぐ、新たなる十の剣、その名も―――

 

 

 

 

XX(ダブルエックス)-セイバー……!」

 

 

 

 




今回初めて詰めデュエルを作ってみましたが、後から詰めデュエルは1ターンで決着をつける物だって知りました、アニメも見てたのに……OTL

とまあ今回変則ルールと言って誤魔化したエセ詰めデュエル、作中ではX-セイバーを使う事が前提と言ってますが、どうでしょうか? 自分はそのつもりで作りましたが、もしかしたら穴があるかも知れません、もしその穴を見つけられて、こんな方法もあるよ、と言う方、いらっしゃったら是非お教えくださいm(_ _)m

後、一応こちらでもチェックしましたが、もしルール的な事で間違いがありましたらご指摘ください
m(_ _)m

追記
詰めデュエルのルールをよく分かっていませんでしたOTL
相手の情報は全て公開するものだと感想で教えていただきました。
なので冷次の台詞を一部修正、そしてセットカードは3人の確認し忘れという事でお願いします。
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