遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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*今回一部のカードに対しての暴言と悪い扱いがあります。 ご了承ください。


第21話 始動 ~XX-セイバー~

シティ内陸部  街路

 

「へぇ~、そんな事があったんだね。 ……やっぱり行って見たかったな~サテライト」

 

空がXX-セイバーのスケッチブックを捲りながら言う。

 

「そんなに楽しい所でもないよ、燃次と冷次もそう言ってたし」

 

「行って見なきゃ解らないよ、人それぞれ」

 

遊伸が空を諭そうとするも空は納得しない。

 

「それにしてもやっぱり私の言った通りだったでしょ? X-セイバーはまだ未完成、きっとこれを加えて完成するんだよ!」

 

空が見終わったスケッチブックを遊伸に返しながら言う。

 

「しかしここまで出来ててなんでカードにしてないんだ? それに話を聞く限り遊伸の親父さんはこれを隠してた様だしよ」

 

鋼貴にはサテライトでの話をするにあたって、遊伸の父親とデッキの話を伝えていた。

鋼貴が疑問を口にするが、遊伸にもそれは分からない、遊伸は頭を振りながら答える。

 

「鋼貴の言う通り、どうしてこんな風にしてたかは分からないけど……一つだけ分かった事があるんだ、父さんは最初から僕にデッキを渡すつもりだった。 そして、X-セイバーを使いこなせる様になった時、このXX-セイバーが僕の手に渡るようにした……」

 

「あのまま見つけられなかったらどうするつもりだったんだろうね……」

 

遊伸達はある場所に向かいながら、サテライトでの話をしていた。

ある場所とはデュエル研、遊伸は持ち帰ったこのカードデザインをカードに出来ないかと、マイルに相談する為に、依頼が区切れた今を利用してデュエル研へと向かっていた。

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部  治安維持局  デュエルモンスターズ研究所

 

「オーケイ! カードにしよう!」

 

マイルはあっさりと快諾する。

 

「は、本当ですか!?」

 

遊伸はこんなにもあっさりと引き受けて貰えるとは考えてなかったので驚いた。

 

「ああ! 君にはお世話になってるし、何よりせっかく生み出されたカードの元が埋もれてしまうのは勿体無いからね! ただ海馬コーポレーションに正式な登録をしようとすると手間が掛かって面倒だから、デュエル研開発の試作カード登録、つまり一枚づつになっちゃうんだけどそれでもいいかな?」

 

「はい! 構いません! よろしくお願いします!」

 

遊伸とマイルがそんなやり取りをしていると、その横で丁度居合わせた友河が遊伸が持ってきたXX-セイバーの絵を真剣な眼で見ていた。

 

「(似ている……言葉では表せないこの感じ……”あの人”の絵に似ている……しかしあの人はドラゴン族が専門だったはず、私が見たデザインもドラゴン族だったし、貰った絵も……)」

 

「? どうしたの友河さん」

 

食い入る様に絵を見ていた友河の様子に気付いた空が声を掛ける。

 

「い、いや何でもないよ……あ、そうだ遊伸君、僕が渡した絵、あれもカードにしてみないか? きっと君の力になると思うし、カードでもイラストがあるから問題ないしね、それに……よく考えて見たらカードの方が持ち運びは便利だし」

 

友河は遊伸が背負ってるリュックに目をやる。

遊伸はあの日以来、友河に託されたドラゴンのデザインを常にリュックに入れて持ち歩いてる。

 

「ありがとうございます! 友河さん! マイルさんいいですか!」

 

遊伸がマイルに許可を求めると、マイルはニッと笑う。

 

「勿論さ! ただXX-セイバーと違ってデザインしか決まってないから時間は掛かるけどね」

 

「ありがとうございます!」

 

マイルはXX-セイバーとドラゴンのデザインを受け取る。

 

「それじゃあXX-セイバーはすぐ仕上げるよ、1時間程待っててくれ」

 

「そんなに早く出来るんですか!?」

 

「ああ、もう殆どこのスケッチブックに書き込まれているからね、後はこの通りにカードに刷り込むだけさ。 それじゃあ後で」

 

マイルは研究所奥へと向かった。

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

「お待たせ!」

 

一時間後、マイルが奥から戻ってくる。

 

「出来立てホヤホヤ、新カード《XX-セイバー》だ、受け取ってくれ」

 

遊伸は出来上がったXX-セイバーを手に取る。

合計13枚、遊伸は手の中で広げて見る。

 

「これが……新しいX-セイバー…!」

 

「良かったな遊伸、これで問題解決かもな! 後は実践だ」

 

鋼貴がそう言って遊伸の肩を叩く。

マイルが腕時計を確認する。

 

「さて、それじゃあ私達はこれで、追加のナンバーズの事もあるし、ちょっとドラゴンの事は遅くなるかも知れないが許してくれ、それでは!」

 

そう言って再び奥へと入って行く。

遊伸達はマイルが言った”追加のナンバーズ”と言う言葉が引っかかった。

 

「……また口から機密が漏れてんぞあの人…」

 

鋼貴が呆れた様にマイルの背中を見送る。

 

「…所長……まあ君達なら問題はないかな」

 

友河が説明をしてくれる。

モンスター・エクシーズの試作品として作られ、そのデータを取る為に実力のある決闘者に配られた「ナンバーズ」、それはモンスター・エクシーズの開発において大きな成果が齎されたが、同時に大きな損失も負った。

それは決闘者によるナンバーズの喪失である。

99枚のナンバーズの内、現在決闘者に配られているのが70枚、その内8枚が行方不明となっている。

持ち主から喪失の報告があったのが3枚、持ち主自体と連絡がつかず、行方も分からないのが5枚である。

世間には99枚あると伝えられているナンバーズ、数が揃わなくなると格好がつかない、そう考えたマイルは無くなった分、新しく作ろうと考える。

しかし世界に一枚ずつのナンバーズ、同じ物を作るのも格好がつかない、それに作ると行方不明のカードが戻ってきた時にダブってしまう、これはこれで格好がつかない。

ならいっそまったく新しい種類のナンバーズを作ろう、そう結論を出したのである。

99から続く番号、100、「オーバーハンドレッドナンバーズ」である。

 

「…つまり面子の為かよ、ちゃんと渡す奴考えないからそんな事になるんだ」

 

鋼貴がまた呆れた様に呟く。

 

「現在は無くなった枚数分、つまりNo.100から107まで制作中だね、特に107番は凄い気合を入れててね、専門じゃないけど私も手伝ったよ」

 

「へぇー! どんなカードが出来るんだろ! 楽しみだね!」

 

「…今普通に聞いちまってるけど一応機密だからなこれ、出来ても見れんと思うぞ……ありがたいが友河さんも程々にな」

 

「(同意するけど、鋼貴って意外と真面目な所あるんだよね)」

 

はしゃぐ空に鋼貴が突っ込みを入れ、遊伸が鋼貴を意外に感じる。

 

「いや、この事を話したのは単に君達を信用しているだけじゃないんだ。 もし行方不明のナンバーズを見つける、あるいは持ち主の決闘者を見かけたらデュエル研に知らせて欲しいんだ」

 

「成る程……分かりました! 見つけたら報告します! 後、よろしければその行方不明のカードについて教えて貰えませんか?」

 

遊伸がそう言うと、友河はハッとし、恥かしそうに頭を掻く。

 

「そうだったね、うっかりしてたよ、行方不明になってるのは…」

 

No.7 ラッキー・ストライプ

No.19 フリーザードン

No.34 電算機獣テラ・バイト

No.42 スターシップ・ギャラクシー・トマホーク

No.61 ヴォルカザウルス

No.83 ギャラクシー・クィーン

No.88 ギミック・パペット-デステニー・レオ

No.96 ブラック・ミスト

 

以上の8枚である。

最初の3枚は喪失の報告を受けているカード、後の5枚は決闘者自体が行方不明のカードである。

No.7 ラッキー・ストライプの持ち主はセキュリティ隊員、カード強盗が大手カードショップを襲撃し人質を取る。

店のカードだけでは飽き足らず、さらにレアカードを要求する犯人、そこに駆けつけた彼がこのカードと人質の交換を要求、ナンバーズと聞いて犯人は喜んで承諾、逃走経路を確保させた後、人質を放し、店のレアカードとラッキー・ストライプを持って逃走、行方をくらます。

その翌日、その犯人は重症を負い、病院へ搬送され、その後逮捕された。

強奪した品を売り捌きに行く途中の交通事故であった。

現場証人によると、偶然落としたカードが風に飛ばされ、拾いに行こうとした所で車に撥ねられた、落として風に飛ばされたカードは、よく見えなかったがフレームからしてモンスター・エクシーズだったのは確かだと言う。

強奪された全ての品はまだ売られておらず、無事であったが、ラッキー・ストライプだけはどこを探しても見つからなかった。

 

「その人がこの事を報告に来た時にこう言ったそうだ、「あのナンバーズが犯人を捕まえてくれました。 カード1枚と私の不名誉で、人質と多くのカードが無事だったんです。 そちらには申し訳ありませんが、私にとってはこの上ない”幸運”でした」って…」

 

No.19 フリーザードンの持ち主はプロ決闘者、彼は多額の借金に困っていたらしく、何とフリーザードンを勝手に売り捌いてしまったのだと言う。

マイルがその事を責め立てると逆ギレ、「あんな弱いカード使えるか!! 下らん使い辛いカード作りやがって!! だから俺が売っ払って有効活用してやったんじゃボケ!!!」と騒ぎ立てたと言う。

 

「(外れだったんだな…)」

 

鋼貴は内心で少し同情する。

 

No.34 電算機獣テラ・バイトの持ち主は当時のアカデミア主席の2年生、ナンバーズ・テスターに選ばれ、このカードを貰った事を鼻に掛け、周りに自慢して回っていたそうで、それに腹を立てた上級生に奪われ、粉々に破かれてしまったという。

 

「自業自得だけど、泣きながらカードの破片を持って謝りにきた時は流石に不憫だった、って所長が言ってたよ……以上が報告された事だよ。 後の5枚は本当に情報が無いんだ、多分持ち主はどこかに隠れている。 サテライトやダイモン・エリア、または外国か……」

 

友河はうんざりする様に溜息を吐く。

 

「この8枚の内の2枚、No.34 電算機獣テラ・バイトとNo.42 スターシップ・ギャラクシー・トマホークは私がデザインを担当させて貰ったんだ、テラ・バイトは仕方ないけど、せめてスターシップだけでも無事だといいんだけどな……っとと、勿論全部戻ってくるのが一番だね」

 

話を聞き終わると遊伸はテラバイト以外のナンバーズ7種を頭に刻み込む。

 

「よく分かりました! …あ、後もう一つだけ、配られているナンバーズは70枚って言ってましたけど残りの29枚は配らないんですか? それとも条件に見合う人がいないからですか?」

 

遊伸の質問に友河が答える。

 

「いい質問だね、確かにそれもあるけど、まだ理由はあるんだ。 ナンバーズは試作品、だから色んな事を想定して創っている。 ナンバーズの中には他のナンバーズに依存している物もあればカテゴリシリーズの1枚の物もある。 そういった1枚では機能しないナンバーズは基本渡さず、ここでテストをしているんだ」

 

「…意外と考えてんだな、そこをもう少し強さの調整に回してくれればな……」

 

「気持ちは解るけどいい加減しつこいよ鋼貴……」

 

未だに調整に対して不満を言う鋼貴に空が突っ込む。

 

「友河さん、お忙しい中ありがとうございました!」

 

「いや、こっちもいい気分転換になったよ、それじゃ失礼するよ」

 

遊伸達は友河と別れると、事務所に戻った。

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部 マーシャル・レッド事務所

 

「よし! 完成だ!」

 

デュエル研から戻った遊伸達、遊伸は早速デッキ構築に取り掛かり、今し方完成した所である。

 

「お、出来たか。 どれ、俺か空、どっちかと試しにやってみねぇか?」

 

鋼貴が遊伸にそう提案するのと同時に出掛けていたグレイグが事務所に戻ってきた。

 

「ん、盛り上がって何してんだお前等、依頼はまだ来ないか?」

 

グレイグが3人にそう尋ねると、3人は遊伸のサテライトの話からデッキ完成までの話をグレイグに聞かせる。

 

「これがカードにして貰ったデザインです」

 

遊伸はグレイグにスケッチブックを見せる。

 

「どれどれ……ん? こりゃあ懐かしいな」

 

グレイグの呟きに驚く遊伸、なぜグレイグがこの絵を懐かしいと言ったのか? この絵を知っているのか? 遊伸は堪らず身を乗り出す。

 

「グ、グレイグさん!? このカードデザインの事、知ってるんですか!」

 

遊伸の勢いに押されながらグレイグが答える。

 

「お、おいおい落ち着け! …期待されてる所悪いがこの絵自体は知らん、ただこの絵のモンスターが身に付けてるマントは知っている」

 

「え…? マント…?」

 

遊伸が聞き返すとグレイグが頷く。

 

「こいつ等が着けてるマント、こりゃマーシャル・レッドのユニフォームだ、正確にはデュエルギャング時代のな」

 

思わぬ答えに遊伸だけでなく、鋼貴も空も驚く。

 

「な、何でそんなモンをモンスターのこいつ等が身に付けてんだ?」

 

「グレイグ、このモンスター達はマーシャル・レッドじゃなくてX-セイバーだよ」

 

「知らん、しょうがないだろ、こいつ等が身に付けてんだから」

 

グレイグは鋼貴と空の質問と意見を一蹴する。

 

「ど、どういう事なんだ……偶然なのか? XX-セイバーは……おそらくだけど、父さんがデザインした……少なくても父さんだけが持ってた物だ、父さんとマーシャル・レッドは何か関係があるのか?」

 

本気で考え出した遊伸を見かねたグレイグが溜息を吐いて言う。

 

「そんなに気にする事じゃねーだろ、お前の親父が昔ここに関わってたってだけなんだからな。 お前の親父の世代が分からんから断言できんが、デュエルギャング時代で俺と関わらずにいたとすると……大体30年位前か? いたとしたらそん位だな」

 

「30年……父さんは若い時デュエルギャングだったのか……?」

 

「まあ俺には分からんけどな……お」

 

突然事務所の電話が鳴る。

グレイグは受話器を取り、応対する。

 

「こちらマーシャル・レッド事務所……何だお前か、どうした……ああ……ああ」

 

どうやら知人からの電話の様である。

通話を終えると3人に依頼内容を通達する。

 

「珍しい事だが依頼者は高尾だ、内容は助っ人だ」

 

「おいおい、助っ人が助っ人を頼むのかよ」

 

鋼貴も意外に感じながらそう言う。

 

「正確には助っ人の助っ人、所謂「応援要請」だ。 中央広場に来てくれとの事だ。 それと来るのは誰でもいいそうだが、出来れば空に来てくれと言っていたぞ」

 

「私? 何で?」

 

空は高尾に呼ばれる心当たりが無く、小首を傾げている。

 

「知らん、とにかく急いでる様だったから詳しくは聞かなかった。 早く行ってやったらどうだ?」

 

「それを早く言え! どうせ他に依頼は来てねぇんだ! 全員で行くぞ!」

 

3人は急いで中央広場へと向かった。

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部  中央広場

 

「おお! 間に合った! よく来てくれた!」

 

中央広場に着くと高尾が出迎えた。

高尾の後ろでは複数の人間が二つの陣営に分かれ、デュエルしているのが見える。

 

「高尾さん! お久しぶりです!」

 

「よお高尾! 久しいな、で、用件は? 急いでたんだろ!」

 

遊伸と鋼貴が挨拶し、鋼貴が用件を聞く。

急いで来たので少し落ち着きが無い。

 

「いや、十分間に合ってるぞ! おかげでゆっくり説明出来る位だ」

 

高尾がそう言うと遊伸達は一旦落ち着きを見せる。

 

「今回の依頼は助っ人だ、今俺はこのデュエルチーム「ファイブニンズ」の助っ人をしていたんだ、鋼貴、お前も知ってるあの5人だ。 おい! 一ノ瀬!」

 

高尾がチームリーダーらしき人物を呼ぶ。

 

「やあ鋼貴、卒業以来だな」

 

「あ! お前一ノ瀬じゃねーか! 何時もアカデミア内を5人組でつるんでた奴らのリーダー! 覚えてるぜ! …と言うことは他の奴らもそうか!」

 

鋼貴がそう言うと一ノ瀬は頷く。

 

「その通りだ、俺ら5人はアカデミアを卒業した後、5人でデュエルチームを作ったんだ。 最初は宣伝活動で忙しくて7月の大会にも出られなかった位だ。 そしてようやく軌道に乗り始めたんだけど……」

 

ここで高尾が話しを引き継ぐ。

 

「今回このチームに大きな依頼が来たんだ、だが横から「ブラックファイア」の連中が口出ししてきてな、自分達の規模と名声を使って依頼を掠め取ろうとしてきたんだ! それでこの一ノ瀬が依頼主の説得に向かったんだが……」

 

高尾が相手側に立ってデュエルを観戦している肥満体の男を指差す。

 

「あの依頼主がちょっと変わっててな、お互いが5対5でデュエルして勝った方に依頼し、そのまま得意先として利用すると言うんだ。 そして今しているデュエルがそうなんだが、色々予想外が続いててな、最初から話すと……」

 

高尾によると、本来は一ノ瀬、二見、三井、四日市、五階堂の5人で挑む予定だったのだが、五階堂が熱を出し、急遽出られなくなった。 

そこで一ノ瀬は高尾を雇い、このメンバーで挑んだ。

一ノ瀬はブラックファイアの対策を考えていた。

ブラックファイアは団体戦をする場合、必ず実力者を後ろに置くので、こちらは逆に前に実力者を集中させて先に3勝を取る作戦を行った。

先鋒にサブリーダーの二見、次鋒にリーダーの一ノ瀬、そして中堅に助っ人高尾を配置し、勝負に挑んだ。

しかしサブリーダーで実力もそれなりにあった二見が負けてしまった。

その後の一ノ瀬、高尾は勝利したが、後の二人ではとても敵わない、そう思った矢先、何と大将であった四日市が逃げ出してしまったのだ。

人数が足りなくては相手の不戦勝となってしまう、高尾はそうなる前にマーシャル・レッドに連絡したのだと言う。

 

「今、三井がデュエルしている、持ち堪えてはいるが……正直厳しい、三井には悪いが間違いなく大将戦へ進む。 そして相手の大将はブラックファイアのリーダーだ」

 

高尾がそう言うと、空が合点がいった様に手を打つ。

 

「あ! だから私だったんだね!」

 

空は大会でこのリーダーにノーダメージで勝利している。

高尾が空を指定したのはこの為であろう。

 

「…そういえば桐原は出てないみたいですね」

 

遊伸が少し警戒する様に辺りを見渡す。

かつて遊伸とデュエルしたブラックファイアのエースにしてアカデミアプロ候補生である。

 

「ああ、理由は分からんが、今回はいないと向こうが言っていた。 まあこちらとしては好都合だが」

 

高尾がそう言った瞬間、デュエルが終了する。

 

「くそっ!」

 

悔しそうに地面を殴る三井。

 

「くそっ! こんな弱小チームに手間を取らされるとは……さあ次は俺だ! 出て来い!」

 

ブラックファイアのリーダーが前に出て自分の対戦者を呼ぶ。

すると彼は向こうの陣営に遊伸と空を見つけると驚く。

 

「近衛 遊伸に西野 空…!? なぜマーシャル・レッドがここに!?」

 

「おい、何で俺が入ってねーんだこら」

 

「鋼貴はブラックファイアの人とデュエルしてないからじゃないの?」

 

空にそう言われ、少し落ち込む鋼貴、空や遊伸が入るまでは自分がブラックファイアと衝突していたはずなのに…と。

 

「フン! マーシャル・レッドを呼べば勝てるとでも思ったか? 安易なんだよ! 今の俺をあの時と同じと思うな! さあ西野! 今度は俺が貴様を倒してやる!」

 

リーダーは空を指名するが、空は遊伸の背中に回り、顔を出す。

 

「私でもいいけどそれよりもこの遊伸はどう? 私より強いよ~!」

 

「そ、空?」

 

遊伸が何をするんだ?と言いたげな顔を空に向ける。

 

「いい機会じゃん! XX-セイバー、試してみたら?」

 

「どっちでもいい! さっさと来い!」

 

リーダーが怒鳴ると遊伸が前に出る。

 

「それじゃあ……よろしくお願いします」

 

遊伸とリーダーが決闘盤を構える。

 

「そういえば空、あいつってどんなデッキだったっけか? あの時はお前への対策考えててちゃんと見て無くてな」

 

鋼貴が空に尋ねると、空は呆れながらも説明する。

 

「もう! 商売敵なんだからそれ位覚えときなよ……昆虫族のパワーデッキ、前と変わってないならそうだよ。 私にとって戦いやすいタイプ」

 

空のデッキは相手の攻撃を防ぎ、その後隙を突いて反撃する、所謂カウンタータイプのデッキ。

力押しのパワーデッキ程戦いやすい相手はおそらく無いだろう。

 

「ふーん……お、始まるぞ」

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

先攻 BF(ブラックファイア)リーダー

 

「俺のターン! ドロー!」

 

BFリーダー 手札:5+1

 

「俺は《手札断殺》を発動! お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、 カードを2枚ドローする!」

 

BFリーダーの送ったカード

ポセイドン・オオカブト

共鳴虫

 

遊伸が送ったカード

X-セイバー アクセル

X-セイバー ウルズ

 

BFリーダー 手札:3+2

遊伸 手札:3+2

 

「そして今墓地に送った2体の昆虫族をゲームから除外して手札から《デビルドーザー》を特殊召喚!」

 

場に巨大なムカデが現れる。

地を這い、遊伸を見つけると、奇声を上げて遊伸を威嚇する。

 

ATK:2800

 

「いきなり最上級モンスターを!? しかもこんな簡単に!?」

 

遊伸が驚くとBFリーダーは鼻で笑う。

 

「驚くのは早いぜ! 手札から装備魔法《|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》》を発動! 手札を1枚捨て、 ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択!  選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する! 来い! 《ポセイドン・オオカブト》!!」

 

BFリーダーの場の空間が歪むと歪みの中からカブト虫を模した鎧と兜を身に付けた大男が現れる。

戦士族に見えるがこれでも昆虫族であり、背中に前羽と後ろ羽が付いている。

手に持った三叉槍を振り回し、遊伸に対して構える。

 

ATK:2500

 

「もう一体!?」

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:0

モンスター

・デビルドーザー

・ポセイドン・オオカブト

魔法・罠

・D・D・R

・セット

・セット

 

「初ターンから一気にきやがった……しかも最上級2体、正直あいつを舐めてたぜ」

 

「でもあのプレイングは正直危険だよ、1ターンで手札を使い切っちゃうなんて……突破されない自信でもあるのかな」

 

鋼貴は相手を見直した様だが、空はそうでもなく、冷静にデュエルを見ていた。

 

「フン! 凡人には解るまい! この王者のプレイングを!」

 

「王者の…?」

 

遊伸が首を傾げると、BFリーダーはわざわざ説明してくれる。

 

「世の中は決闘王と言えば宝月 仁や君臨期間が長かったアーノルド・フラナガンを挙げるが、俺は違う! 俺は幻の決闘王、「テオドール・ハイドフェルド」を尊敬している!」

 

「テオドール…?」

 

テオドール・ハイドフェルドとは、数十年前に弱冠16歳でプロ入りし、その年の内に決闘王に挑戦し、勝利して新たなる決闘王となった決闘者である。

しかしその翌年に突如引退、行方をくらませたので、「幻の決闘王」と呼ばれる。

彼のデュエルスタイルはパワースタイル、圧倒的な戦力を序盤で並べ、相手をそのまま押し潰す。

そんなプレイスタイルこそ王者のデュエルに相応しい、と彼を称える者は多く、数十年たった今でも根強いファンが存在する。

BFリーダーもその一人なのであろう。

 

「そして俺はそのデュエルが出来る! あの圧倒的なデュエルをな! さあ来い! 捻り潰してやる!!」

 

彼がこれだけ強気なのは、彼が遊伸のデッキを研究していたからである。

自分を倒した空だけでなく、桐原を倒した遊伸もマークし、戦術を研究した。

彼の場の伏せカード、一枚はミラーフォース、もう一枚は《あまのじゃくの呪い》。

あまのじゃくの呪いは発動ターンだけ攻守の上昇・減少を逆にする効果を持つ。

遊伸の主な戦術がモンスターの攻撃力を大幅に上げ、攻撃を行う事である事を見抜いた、何れ対戦する事に備え、対策カードをサイドデッキに潜ませていたのである。

戦うか分からない相手の対策をこっそりする辺り、テオドール・ハイドフェルドに憧れるのはこの小心を隠す為なのかもしれない。

 

遊伸は自分の新しいデッキを見つめる。

 

「(僕の新しいデッキ……僕が作り上げたデッキ……僕はこのデッキに全身全霊を込めたつもりだ……僕はあの人に勝ちたい! だから……答えてくれ! 僕のデッキ!)」

 

遊伸はデッキに指を掛ける。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:5+1

 

「自分の墓地にX-セイバーと名の付くモンスターが2体以上存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合、このカードは特殊召喚出来る! 来い! 《XX-セイバー ガルドストライク》!」

 

遊伸の場にエアベルンを連想させるような獣戦士が現れる。

赤いマントを羽織り、手には曲剣を逆手で持っている。

自分より巨大な相手を睨みつけると大きく咆哮する。

 

ATK:2100

 

「おお! いきなり来たぜXX! やっちまえ遊伸!」

 

XX-セイバーの登場に興奮する鋼貴。

 

「手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスター1体を墓地へ送って、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する! 僕は《XX-セイバー エマーズブレイド》を墓地に送り、デッキからチューナーモンスター《X-セイバー パロムロ》を特殊召喚!」

 

ガルドストライクに続いて場に爬虫類族のX-セイバー、パロムロが現れる。

 

ATK:200

 

「行くぞ! レベル5《XX-セイバー ガルドストライク》に、レベル1《X-セイバー パロムロ》をチューニング!」

 

パロムロが1つの光輪に変わり、ガルドストライク を囲い、5つの光に、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣に名を連ねし新たな戦士よ! 華麗なる技を持って戦場に舞え! シンクロ召喚! 切り開け! 《XX-セイバー ヒュンレイ》!!」

 

光の柱から現れたのは一人の女戦士。

金と青で彩られた甲冑とXの文字が入った赤いマント、未来的なバイザーが付き、髪が両サイドから出るようになっている兜、そこから出ている髪はシニヨンにしており、青い水晶のようなシニヨンキャップにはそれぞれにXの文字が浮き上がっている。

バイザーの奥の眼には強い意志を宿し、相手を睨み付けると一気に腰に提げている鞘から長剣を抜き放つ。

剣を一回振り、大きな耳飾りを揺らしながら剣を光らせ、構える。

 

ATK:2300

 

「(シンクロモンスター……だが攻撃力は低い! 強化だな! 来い、返り討ちだ)」

 

BFリーダーはあまのじゃくの呪いを発動出来る様に構える。

 

「そしてヒュンレイの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、場の魔法・罠を3枚まで選択して破壊出来る! 《クロス・ソードダンス》!!」

 

ヒュンレイが素早く相手のモンスターの背後、プレイヤーの目の前に移動し、舞う様に、かつ素早く剣を振る。

ヒュンレイが遊伸の場に戻り、剣を鞘に収めると、相手の魔法・罠が全て真っ二つになり、破壊される。

 

「ば、馬鹿な!? 一度に3枚も!?」

 

「そして《D・D・R》が破壊された事により《ポセイドン・オオカブト》は破壊される!」

 

場にいたポセイドン・オオカブトは突然苦しみだし、体が歪むとそのまま爆散する。

 

「ぐ…だがまだデビルドーザーがいる! こいつはそう簡単に……」

 

倒せるはずがない、そう言おうとした時には遊伸が既に次のカードを手に取り発動していた。

 

「魔法カード《セイバー・スラッシュ》を発動! 自分の場に攻撃表示で存在する《X-セイバー》と名のついたモンスターの数だけ場にある表側表示のカードを選択し、破壊する! 僕の場にX-セイバーは1体、1枚カードを破壊する! 《デビルドーザー》を破壊!」

 

遊伸がそう宣言すると、ヒュンレイが飛び上がり、剣を抜き、斬撃を飛ばす。

デビルドーザーは真っ二つにされ、破壊される。

 

「デ、デビルドーザー!?」

 

「まだまだ行きます! 《XX-セイバー ガルセム》を召喚!」

 

遊伸の場に二足で立ち、赤いマントを羽織ったガゼルが現れる。

立派な二本の角を持ち、それを模した剣を両手に持っている。

 

ATK:1400

 

「ガルセムのモンスター効果! このカードの攻撃力は自分の場に表側表示で存在する《X-セイバー》と名のついたモンスターの数×200ポイントアップする! 場のX-セイバーは2体、よって現在のガルセムの攻撃力は400ポイントアップする!」

 

ATK:1400→1800

 

「さらに! このカードは自分の場に《X-セイバー》と名の付くモンスターが2体以上いる場合、手札から特殊召喚する事が出来る! 来い! 《XX-セイバー フォルトロール》!!」

 

遊伸の場に赤いマントを羽織った巨漢が現れる。

機械の義手を両手に付け、大剣を振り回すその様はパシウルを思い起こさせる。

白い髪にゴーグルを付け、紋様の様な物が刻まれたアーマーを着ている。

現れてからしばらく沈黙していたが顔のゴーグルが発光すると咆哮を上げ、大剣を相手に向かって振り上げ、構える。

 

ATK:2400

 

「フォルトロールの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地からレベル4以下の《X-セイバー》と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する事が出来る! 墓地から《XX-セイバー エマーズブレイド》を特殊召喚! 《セイバー・リライブ》!」

 

フォルトロールが地面に大剣を突き刺すと、隣にXの文字が現れ、そこから一匹の巨大なバッタが飛び出してくる。

バッタに見えるが人間の様な二本の腕を持ち、その手には二対のブレードを構えている。

背中の後ろ羽は鋭利な剣の様に輝いていて、頻りに羽ばたかせる。

 

ATK:1300

 

「行くぞ! モンスターで一斉攻撃! エマーズブレイド! ガルセム!」

 

XX-セイバー ガルセム ATK:1800→2200

 

名前を呼ばれた二体が一斉に跳び掛かる。

エマーズブレイドが高く跳躍し、二対のブレードで縦に斬り付ける。

エマーズブレイドが跳び退くとガルセムが腕を交差させ、その状態から左右それぞれに剣を振り抜く。

 

「うおおお!」

 

BFリーダー LP:8000→6700→4500

 

「ヒュンレイ! 《ダブルクロス・スラッシュ》!」

 

ヒュンレイも跳躍し、相手を二度斬り付ける。

 

「ぐわっ!」

 

BFリーダー LP:4500→2200

 

「これで最後! フォルトロールで攻撃! 《ダブルクロス・スマッシュ》!」

 

フォルトロールが相手の眼前に立つと、頭上に向かって思い切り大剣を振り下ろす。

 

「あああああ!!!」

 

BFリーダー LP:2200→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

そのアラームがはっきり聞こえる程、周りは静まりかえっていた。

遊伸はBFリーダー相手にノーダメージ所か1ターンキルを成し遂げてしまったのだ。

これが遊伸の持つ展開力、制圧力に優れたカテゴリシリーズ、《X-セイバー》シリーズの力である。

遊伸達の陣営から歓声が上がる。

 

「すげぇぞ遊伸! 驚いたぜ! これが《X-セイバー》か!」

 

「もうびっくりしちゃった! ここまで何て!」

 

鋼貴と空が称賛を送る。

すると今度は一ノ瀬が駆けて来て遊伸の手を掴み、激しく縦に振る。

 

「ありがとうありがとう! これで助かった! 仕事が無くならずに済んだよ! 本当にありがとう!」

 

「あいたた……ありがとうございます」

 

「やったな遊伸、1キルには恐れ入ったぞ! また強くなったな!」

 

今度は高尾が来て遊伸に称賛を送る。

 

「高尾さん、ありがとうございます……でも僕も夢中になりすぎて……相手に悪い事をしました」

 

遊伸がBFリーダーに目を向ける。

チームメンバーが慰めの声を掛けているのにも関わらず、何だこれは…、何かの間違いだ…などと下を向きブツブツ言っている。

 

「いいんだよ! ああいう偉そうで傲慢な奴にはいい薬だ! これでちょっとは大人しくなるだろうぜ!」

 

相手を気遣う遊伸に鋼貴が向こうを見ながら言い放つ。

過去にブラックファイアに馬鹿にされた事があるのか鋼貴は彼らに対して冷たい。

桐原の存在も原因だろうが。

 

遊伸は今回のデュエルを思い返す。

 

「(XX-セイバー、凄いカードだ……だけど)」

 

遊伸は危機感を感じていた。

遊伸はデッキ製作中、XX-セイバーの可能性を知った、そしてデュエル中に、XX-セイバーの力に酔いしれた。

前のX-セイバーでは比べられない程の強さ、遊伸はこの強さを無意識に試したくなり、1ターンキルを行った。

遊伸はこのデュエル中、忘れていたのだ、相手を尊敬(リスペクト)する事を、自分の信念の一つを。

遊伸は恐れた、この力を使い続けると、桐原の様に調子に乗り、傲慢になり、自分の”信念”を忘れてしまうのでは無いか、と。

 

「(僕が弱いんだ、このデッキに……XX-セイバーに比べて……でも、僕にはこのデッキが必要なんだ……カード達、僕はもっと強くなる、だから……僕を支えてくれ)」

 

遊伸は誓う、このデッキに、XX-セイバーに相応しい決闘者になることを……

 




今回はナンバーズ周辺の設定の補足とXX-セイバーのお披露目でした。
前に感想でオーバーハンドレッドナンバーズはどうするのか、と言うご質問を受けまして、一応出てきますがそんなに物語には関わりませんといいましたが、後になってなんだか勿体無く感じて急遽予定を変更、結局絡ませることにしました、返信詐欺申し訳ございませんm(_ _)m
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