遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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*今回は22話と同じ位の長さです。 ご了承ください。



第24話 氷結 ~闇のカードと機甲部隊~

前回から数十分後  シティ内陸部  マーシャル・レッド事務所

 

空 LP:1300 場:ダイガスタ・イグルス ATK:2600

鋼貴 LP:200 場:マシンナーズ・ディフェンダー DEF:1800 魔・罠:セット

 

「ダイガスタ・イグルスでマシンナーズ・ディフェンダーを攻撃!」

 

空が攻撃宣言すると鋼貴がマシンナーズ・ディフェンダーを墓地に送る。

すると鋼貴が魔法・罠ゾーンに伏せたカードを捲る。

 

「罠発動! 《ヘル・ブラスト》! 自分の場に表側表示で存在するモンスターが破壊され墓地へ送られた時、場の攻撃力が一番低い表側表示モンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力の半分のダメージを受ける! 場には一体! ダイガスタ・イグルスを破壊!」

 

空 LP:1300→0

鋼貴 LP:200→0

 

鋼貴が立ち上がり、ガッツポーズをする。

 

「よっしゃー! 負けなかったぜ!」

 

「勝ってもないじゃん!」

 

空がカードを片付けながら言う。

 

「今まで勝てなかったんだ! 十分な戦果だぜ、ハハハ!」

 

鋼貴が腰に手を当て笑う。

 

「何か腹立つ~!」

 

空は頬を膨らせ鋼貴を睨む。

 

「まあまあ空、進展があって鋼貴も嬉しいんだよ」

 

遊伸が空を宥める。

すると突然事務所のインターフォンが鳴る。

 

「客か?」

 

グレイグが扉に顔を向ける。

一人立ち上がっていた鋼貴が扉に進み出る。

 

「俺が応対するよ、はいはいどなた?」

 

インターフォンに出ずに鋼貴が扉を開けると、そこにはセキュリティ隊の制服を着た男が立っていた。

 

「おう、鋼貴か」

 

鋼貴はその男を確認すると扉を閉める。

 

「おい鋼貴! 訪ねて来た相手にこの仕打ちはなんだ! 開けろ!」

 

鋼貴は再び扉を開け一言。

 

「何で兄貴がここに来てんだ!」

 

訪ねてきたセキュリティは鋼貴の兄、鋼牙だった。

 

「こ、鋼牙さん!?」

 

気になって様子を見に来た遊伸も鋼貴の背中越しでその人物が鋼牙だと確認すると驚いた声で言う。

 

「また会ったな、近衛 遊伸。 鋼貴、今日は仕事で来たんだ、グレイグさんを呼んでくれ」

 

鋼牙が鋼貴にそう言うが、グレイグは既に遊伸の後ろに来ていた。

グレイグが前に出ると鋼牙に声を掛ける。

 

「おう鋼牙さん、久しくだな」

 

グレイグがそう言うと

 

「グレイグさん、お久しぶりです、弟が世話になってます。 治安維持局より、公認デュエルチーム全てへの通達です。 詳しくはこの通達書をご覧ください」

 

鋼牙は懐から封書を取り出してグレイグに渡す。

 

「おう、ご苦労さん」

 

グレイグは封書を開き、中の通達書を読み始める。

 

「…何で隊長の兄貴がこんな仕事してんだよ、こんなの部下にやらせりゃいいじゃねーか」

 

「理由は二つ、近衛 遊伸に直接伝えたい事があったのが一つ、お前がちゃんとやれているか確かめるのがもう一つだ」

 

鋼貴がそれを聞くと顔を赤くし、地団駄して怒鳴る。

 

「ガ、ガキじゃねぇんだぞ!! 余計なお世話だ!!!」

 

「ハハハ! お前が何時も心配掛けさせるからだぞ! 前にも言ったが、大丈夫だというなら、もうちょっと家に顔を見せろ、だから心配されるんだぞ」

 

尚も怒っている鋼貴をそのままに、鋼牙は遊伸の方へ向く。

 

「さて、最後の用だ、近衛 遊伸……いや、何時までもフルネームは疲れるな、俺も下で呼んでいいか?」

 

「あ…はいどうぞ……」

 

遊伸は鋼貴が言っていた事を改めて理解する。

自分の目の前にいる、弟をからかって笑っていた人物が、昨日自分と激闘を繰り広げた相手と同一人物だとはとても思えなかった。

 

「では遊伸、お前と小谷 正志、そしてその仲間の言う犯人を捕らえた」

 

「ほ、本当ですか!? どうやって!?」

 

遊伸は思わず身を乗り出す。

これが本当なら正志への疑いが晴れるかもしれない、そう思ったからである。

 

「…期待している所を悪いが、まだ小谷 正志の疑いが晴れた訳ではない」

 

鋼牙がそう言うと遊伸は目を少し落とす。

 

「…そうですか……犯人を捕まえたんですよね? 犯行を認めてないんですか?」

 

遊伸が鋼牙にそう尋ねると、鋼牙は頭を振る。

鋼牙は犯人捕縛の経緯を話し始める。

あのパイプラインの激闘の後、鋼牙はセキュリティ本部へと戻った。

そしてその夜、何とその犯人であるデュエルギャングリーダーがセキュリティ本部へと単身で乗り込んで来たのである。

ランディとの類似性があった為、鋼牙がランディの時と同様、特別仕様の拘束装置を用いてデュエルに挑み、倒したという。

犯人は拘束装置によって倒れ、今も気を失ったままだと言う。

 

「ただ、乗り込んで来た男の特徴や様子が小谷 正志やその仲間の話と一致していたからな、おそらく小谷 正志達の疑いが晴れるのはそう遠くないだろう」

 

それを聞いて安堵する遊伸。

しかし遊伸は犯人を捕まえるくだりの話をした時の鋼牙を見て、犯人を捕まえたと言うのに、あまり浮かない顔をしているのが気になった。

 

「伝えたい事は伝えた、それでは失礼する。 鋼貴、しっかりやれよ」

 

そう言うと表に停めてあったバイクに跨り、ヘルメットを被るとバイクを発進させて去って行く。

 

「…遊伸、今の兄貴の話、おかしいと思わねぇか?」

 

事務所内に戻ろうとした遊伸に鋼貴が聞く。

 

「え? どういうことだい?」

 

「まずどうして兄貴自身がわざわざデュエルした? 相手はランディみたいなプロじゃなくてアマのゴロツキだぜ? セキュリティなら誰でも勝てるだろ……まあ相手は殺人犯、危険だから兄貴が挑んだのかもしれんが……なら今回もランディの時もどうして兄貴一人で挑んだ? 殺し方も解らねぇんだぞ! 一人じゃ危険だ……この時こそ拘束装置のバトルロイヤルモードを使うべきだろうが」

 

鋼貴の言う通り、確かに不自然ではある。

相手は犯罪者、律儀に勝負する必要は無いのである。

 

「そうだね……何でだろう?……でも一つ解った事があるよ」

 

遊伸が自信ありげな顔をする。

 

「お! 何だよ?」

 

「何だかんだ言って鋼貴も鋼牙さんを心配してるって事さ」

 

遊伸がそう言うと鋼貴は呆気に取られた後、へっ! とそっぽを向いて事務所内に入って行ってしまう。

遊伸も笑いながら後を追うと、空が一足早く戻っていたグレイグに手紙の内容を教えるようにせがんでいた。

 

「ねえ何て書いてあるの?」

 

「まてまて、もう読み終わる……お、お前らも戻って来たか、それじゃ手紙の内容について話すぞ」

 

全員がソファーに座る。

 

「内容は二つ、一つはうちへの通達、もう一つは全デュエルチームへの共通通達だ。 まずはうちへの通達」

 

グレイグが似合わない満面の笑みを浮かべる。

 

「喜べ! 何と来月からこのマーシャル・レッドが最優秀デュエルチーム”カイザー”に認定されたぞ!」

 

それを聞いて鋼貴も空も思わず立ち上がる。

 

「マジかよ!?」

 

「嘘!?」

 

一人だけ訳が解らない遊伸。

 

「あの……”カイザー”って?」

 

カイザーとは、治安維持局公認の最優秀デュエルチームに付けられる称号で、これを付けられたチームは様々な特典を受けられる。

 

「凄いんだよ! デュエル関連の施設の使用料とか、試験の受験料が一部免除になるんだよ! ライセンス試験、プロテスト、セキュリティ入隊試験……他にも色々!」

 

空が興奮した様子で話す。

 

「後一般のデュエルチーム以上に色んな権限が与えられるんだよな、時々セキュリティからも依頼がきたりするんだぜ! 因みに前までのカイザーはブラック・ファイアだ! あいつら今頃泣いて悔しがってるぜ!」

 

鋼貴が笑いながら言う。

 

「認定理由は3つ、デュエルチーム大会での上位独占、チーム内でのナンバーズ所持数2枚、デュエル研からの推薦、だそうだ。 よくやったぞ! 数ヶ月前は弱小チームだったうちが今ではトップだ!」

 

グレイグが手を叩いて喜ぶ。

 

「これは遊伸のおかげかもね!」

 

空がそう言うと遊伸は頭を振る。

 

「僕だけじゃないさ、皆が頑張ったからだよ」

 

「いや、一人頑張ってないのがいるぞ」

 

鋼貴は目でグレイグを指す。

 

「失敬な普段俺は立派に留守を守っているぞ、たまに依頼にだって出てる」

 

「でも絶対的に俺達と量が違うじゃねーか!」

 

鋼貴が突っ込みを入れると空と遊伸が笑う。

 

「分かった分かった、じゃあ今日は全員に休みをくれてやる。 それでチャラだ」

 

グレイグがそう言うと鋼貴が跳び跳ねる。

 

「おっしゃー! 解ってるじゃねーか!」

 

「この話が終わってからな、と、そうだ、忘れるとこだった。 カイザーになった祝いに、デュエル研からナンバーズを一枚進呈するってよ、お前等なら誰でもいいそうだ、で誰か要るか?」

 

グレイグが封書の中からカードを取り出し3人に見せる。

 

「こいつは…!?  俺俺! 俺欲しい! 二人とも良いか!」

 

鋼貴が2人にそう言うと遊伸は頷く。

 

「僕はもう2枚も持ってるしね、良いよ」

 

空はカードをよく見てから頷く。

 

「良いよ、ランク4だから私のデッキじゃ使い難いし」

 

2人からの承諾を受けた鋼貴はナンバーズを受け取る。

 

「おーし! 念願のナンバーズだ!」

 

「報告書書けって内容も書いてあったから忘れんなよ。 …さて、次は全チーム共通の方だ、何でも最近、”不正カード”が出回っているらしいから見付けたら回収するように、との事だ」

 

「不正カード?」

 

遊伸が疑問に思うと鋼貴が説明する。

 

「不正カードってのはな、デュエル研や海馬コーポレーションが認めてない非公式にかなり強く作られたカードの事だ。 でもグレイグ、それってそんなに問題にする事か? 正直不正カードなんて作ったって意味無いだろ」

 

カードには種類ごとに目には見えない特殊なコードが刻まれている。

それを読み込むことで決闘盤がカードを認識し、ソリッドビジョンを作り出しているのである。

つまり、不正カードを作っても決闘盤には読み込まれず、ソリッドビジョンが作り出されないのである。

 

「あのマイルさんがコードの書き方を洩らしてなきゃ実用出来る不正カード何て作れないぜ」

 

「それが出ちまったんだとよ、実用出来る不正カードが」

 

「はあ!?」

 

グレイグの言葉に驚く鋼貴。

 

「ま、まさかホントに喋っちゃったの? マイルさん……」

 

空が信じられないといった顔をして口に手を当てる。

 

「さあな、直接聞いてみろ……とにかく、これは依頼じゃない、決闘者の義務だ。 不正カード何てふざけたカード見付けたら速攻で処分しろ、いいな」

 

 

* * *

 

 

シティ沿岸部  デュエル・スペース付近

 

珍しく出来た休暇。

遊伸達はとりあえずデュエル、と考えたのでデュエル・スペースに向かっていた。

 

「ねえ、私思ったんだけどさ」

 

歩いている最中、先頭を歩いていた空が突然話を切り出す。

 

「さっきの実用出来る不正カードってもしかして”闇のカード”の事じゃないかな」

 

「あー、またそう言う話かよ……」

 

空が言った言葉に鋼貴がうんざりした様に呟く。

 

「闇のカードって?」

 

遊伸が空に聞く。

 

「闇のカードはね、鳩時計シュートと同じシティの都市伝説の一つだよ!」

 

空が闇のカードについて話を始める。

闇のカードは、デュエルの事で思い悩んでいる人の前に突然現れると言われている。

闇のカードはとても強力なカードであり、使うと負け悩んでいた事が嘘の様に連戦連勝が出来る程であると言う。

しかしそのカードを使い続けていると不幸になり、最終的には悲惨な形でデュエル人生を終える事になると言う。

 

「実は最近出来たばかりの都市伝説なんだよ!」

 

空がそう言うと鋼貴は呆れた様子で両手を挙げる。

 

「何が闇のカードだよ、そんなのがあって連戦連勝してる奴がいたらとっくに噂になってるだろうし、それに突然強くなって連戦連勝が都市伝説になるなら、遊伸はとっくに都市伝説だぜ」

 

「そう言えばそうだね」

 

2人にそう言われて遊伸は困った顔をしながら頭を掻く。

 

「で、伝説にしないでよ…」

 

「ハハハ! そうだな! お前は実在してんだから伝説よりもっとすげーよな!」

 

鋼牙とそっくりな笑い方をして鋼貴は遊伸をからかう。

「ホントそっくりなんだから…」、遊伸はそう呟く。

暫くして先頭の空が到着を告げる。

 

「着いた着いた! さてどれ位やって……あれ?」

 

空はデュエル・スペースを見渡すが、殆ど人がいない。

今は夏休み、平日だろうと今の時期は大いに賑わっているはずなのだが、今は帰り支度をしている少年が2人いるだけでデュエルをしている人間は誰もいない。

 

「あれ~? 私達久しぶりにここ着たけど、今の時期こんなに空いてるっけ?」

 

「いや……これは幾らなんでもこれはおかしいぞ……おい、そこの2人!」

 

鋼貴は帰り支度を整えた2人の少年に声を掛ける。

大体中学生位だろうか。

 

「何ですか? お兄さん達も早く帰った方がいいですよ」

 

「何でだよ? それより何でこんなに人が少ないんだ? 何かあるのか?」

 

鋼貴がそう言うと、少年達は驚く。

 

「え!? 知らないんですか! ここはこれから”闇の貴公子”がデュエルしに来るんですよ!」

 

少年が発した言葉に鋼貴は耳を疑う。

 

「…あ? 何だって? や、闇の貴公子……?」

 

「はい! 闇の貴公子です! 今の内に逃げないと……」

 

「いやいやいやまてまてまて! 何だ闇の貴公子って!」

 

少年達は信じられないという目で鋼貴を見る。

 

「本当に知らないんですか? 闇の貴公子は”闇のカード”を持ってる凄く強い高校生ですよ」

 

「はあ! 闇のカード!?」

 

「へえ! 闇のカードって都市伝説じゃなくて実在するんだ!」

 

鋼貴は顎を落とし、空は興味ありげに目を輝かす。

空の言葉に少年達は頷く。

 

「そうです! その都市伝説の”闇のカード”ですよ! その闇の貴公子が持っている闇のカードは凄いんです! 本人曰く「闇の女神から授けられたカード」らしくて、凄く恐ろしいんです! 強いんです!」

 

「……おい、その、”闇の貴公子”、もしかして”アレ”な奴か?」

 

鋼貴がうんざりとした様子で少年達に聞く。

 

「…俺達も最初はそう思ったんですけど、でも違うんです! 俺達、一回闇の貴公子のデュエル見たことあるんです! それで闇の貴公子が言ったんです! 「闇のカードの力を思い知れ」って、最初はカードの強さだと思ったんですけど、そのデュエルした相手が……本当に怪我を負っていたんです!」

 

「!?」

 

3人はそれを聞いて驚く。

デュエルで実際のダメージを負う。

3人はその力をよく知っていた。

 

「おいおい! 話からそいつがサイコな奴なのは解るが、本物のサイコ・デュエリストかよ!?」

 

「待って鋼貴! まだ決め付けるのは早い!」

 

遊伸は少年達に詰め寄る。

 

「君達、その闇の貴公子がデュエルしてる時、常に相手にそういう怪我を負わせていたかい?」

 

遊伸がそう聞くと少年達は頭を振る。

 

「いや、闇のカードが出た時だけだよ、凄いのは闇のカードなんだ」

 

遊伸はそう聞くと、鋼貴に振り向く。

 

「多分サイコ・デュエリストじゃないよ、僕が光円寺とデュエルした時は全てのダメージが実物になってたから」

 

「…じゃあサイコ・デュエリストじゃなきゃ何なんだ?」

 

「今じゃ本当に神の力だって言って一緒にいる信者の様な人も出てきたなぁ……あ!」

 

少年が突然声を上げる。

少年が声を上げた方向を見ると、マントを付けた少年を数人の少年少女を引き連れて歩いてくる。

 

「何だお前達は! ここはこれから闇の貴公子様が使う予定なのだ! 去れ!」

 

取り巻きの一人が大声で言う。

鋼貴が前に出て言い返す。

 

「何言ってやがる! ここは皆で使う場所だぞ! 独占すんな!」

 

「愚か者め! このお方を誰だと…」

 

取り巻きが言おうとするのをマントの少年が腕で制す。

 

「いや、私が相手をしよう」

 

そう言ってマントの少年が進み出る。

空はその少年を見て声を出す。

 

「あれ? 板垣君?」

 

空がそう言うと鋼貴が空の方へ振り返る。

 

「知ってんのか?」

 

「うん、アカデミアで同じクラスだよ、それにしても闇の貴公子って板垣君だったの?」

 

空にそう問われると、闇の貴公子こと板垣はマントを払い、ポーズをとると空に言う。

 

「やあ西野さん、悪いがもうその名は捨てた……今の私は闇の貴公子……闇の女神より授けられた力を持って戦い続ける宿命を背負いし者……」

 

「あいてててて! 予想通りだが直面するときついぜ!」

 

板垣の挙動と言葉を聞いてもがく鋼貴。

 

「ここは闇の貴公子である私の秘められた力を解放、そして制御する為の鍛錬場だ、君達が来る所ではない、私ですらまだこの強大な力を完全に制御する事は出来ない……命が惜しいなら立ち去る事だ」

 

これを聞いてさらにもがく鋼貴。

 

「あだだだ! 空! こいつアカデミアでもこんな事言ってやがるのか!」

 

「ううん、終業式の時までは普通の子だったんだけど……ホントにどうしちゃったの?」

 

空は彼の豹変振りにかなり困惑している。

 

「とにかく! さっきも言ったがここは独占していい所じゃないんだよ! 皆お前に迷惑してんだよ! 貴公子ごっこなら家でやりな!」

 

鋼貴の言葉に板垣は溜息をつく。

 

「愚かな……もしやお前は私が倒すことを定められた者か! …そうか、ならば宿命を果たす為、ここで消えて貰う! 女神より授かった闇のカードの力、見せてやろう!」

 

そう言うと板垣は決闘盤を展開する。

 

「おお! 闇の貴公子様がデュエルをなされるぞ!」

 

取り巻きも慌しくなる。

 

「何だ? やろうってんのか? いいぜ! 何が闇の貴公子だ! ぶったおして目ぇ覚まさせてやる!」

 

そう言って鋼貴も決闘盤を構え、展開する。

すると遊伸が鋼貴の元へ走り寄ってくる。

 

「鋼貴!」

 

「遊伸止めるなよ! 俺はあいつを一発のしてやらんと気が済まん!」

 

「止めに来た訳じゃないよ、ただ気になる事があって……彼が言う”闇のカード”って、もしかしたら”不正カード”のことじゃないかな?」

 

「何だって!?」

 

遊伸の言葉に驚く鋼貴、遊伸は続ける。

 

「事務所で言ってたよね? 「不正カードは非公式でかなり強く作ったカード」って、強さの秘密は多分それで、ダメージも多分、カードの方に仕掛けがあるんだと思う……まだ分からないことが多いから気をつけて!」

 

鋼貴が頷くと、遊伸は後ろに下がる。

 

「成る程ねぇ、そうかもな。 よし! 過ぎた玩具を取り上げるとするか! いくぞ!」

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

先攻 鋼貴

 

「俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:5+1

 

「俺は《マシンナーズ・ソルジャー》を召喚!」

 

鋼貴の場に機甲部隊の切り込み役、マシンナーズ・ソルジャーが現れる。

右手のブレードを煌かせ、突撃の構えを取る。

 

ATK:1600

 

「ソルジャーの効果発動! 自分の場にモンスターが存在しない時に召喚に成功した時、 手札から《マシンナーズ・ソルジャー》以外の《マシンナーズ》と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事が出来る! 俺は《マシンナーズ・ピースキーパー》を特殊召喚!」

 

続いて鋼貴の場にマシンナーズ・ピースキーパーが現れる。

その3輪で場に降り立ち、頭部の目を光らせる。

 

ATK:500

 

「ピースキーパーの効果発動! 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして 自分の場の機械族に装備!」

 

ピースキーパーが盾の様に変形し、ソルジャーに装備される。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:2

モンスター

・マシンナーズ・ソルジャー

魔法・罠

・マシンナーズ・ピースキーパー(マシンナーズ・ソルジャーに装備)

・セット

・セット

 

「フフフ……さあ! 始めようか! 闇の貴公子のデュエルを! ドロー!」

 

板垣 手札:5+1

 

「さあいでよ! 我が忠実なる僕! 《暗黒の狂犬(あんこくのマッドドッグ)》!」

 

板垣の場に恐ろしげな狂犬が現れる。

歯茎を剥き出して鋼貴を威嚇する。

 

ATK:1900

 

「さあ行け暗黒の狂犬! 《ヘル・ファング》!」

 

暗黒の狂犬がソルジャーに跳びかかる。

ソルジャーは左腕のピースキーパーを前に出すと暗黒の狂犬はピースキーパーに噛み付き、砕く。

 

「ピースキーパーのユニオン効果発動! 装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する! さらに場に存在するこのカードが破壊され、墓地へ送られた時、自分のデッキからユニオンモンスター1体を手札に加える事が出来る! 俺は《マシンナーズ・ギアフレーム》を手札に!」

 

鋼貴

LP:8000→7700

手札:2+1

 

「フフフ……私はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

LP:8000

手札:2

モンスター

・暗黒の狂犬

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「(痛みは無し……確かにサイコ・デュエリストじゃねーな) 俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:3+1

 

鋼貴は光円寺と遊伸のデュエルを思い出していた。

側から見ているだけで解るサイコ・デュエルの危険性、そしてそれに対峙する恐ろしさ。

少年達の言う通り、闇のカードがサイコ・デュエルと同じ様に痛みを与えるカードなら、鋼貴もタダでは済まないだろう。

このデュエルは闇のカードを拝む為にしている訳ではない、人々を脅してデュエル・スペースを独占する板垣を懲らしめる為のものである。

ならば最上なのは、闇のカードを出させずに短期決戦で勝負を決める事。

 

「(見てみたい、ってのは無い訳じゃねぇが、遊伸達に心配掛ける訳にもいかねぇ、痛いのも嫌だしな!) 《マシンナーズ・ギアフレーム》を召喚!」

 

鋼貴の場にマシンナーズ・ギアフレームが現れる。

場に現れたギアフレームは目を光らせ、効果を使用する時の起動音を鳴らす。

 

ATK:1800

 

「ギアフレームの効果発動! 召喚に成功した時、自分のデッキから《マシンナーズ・ギアフレーム》以外の《マシンナーズ》と名のついたモンスター1体を手札に加える事が出来る! 俺は《マシンナーズ・フォートレス》を手札に!」

 

鋼貴 手札:3+1

 

「行くぜ! レベル4の《マシンナーズ・ソルジャー》と《マシンナーズ・ギアフレーム》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

マシンナーズ・ソルジャーとマシンナーズ・ギアフレームがオレンジ色の光に変わり、地面に現れた穴に吸い込まれる。

 

「エクシーズ召喚! 来い! 《ギアギガント X》!」

 

穴から赤い閃光が放たれると、ギアギガント Xが全身の歯車を回転させ、現れる。

その周りにオレンジ色の光球が2つ漂っている。

 

ATK:2300

 

「ギアギガント Xの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて自分のデッキ・墓地からレベル4以下の機械族モンスター1体を選んで手札に加える! 俺はデッキから《マシンナーズ・ディフェンダー》を手札に!」

 

取り除いたユニット:マシンナーズ・ギアフレーム

 

鋼貴 手札:3+1

 

「さらに手札から《マシンナーズ・フォートレス》の効果発動! 合計レベル8になるように機械族を捨てて手札、または墓地から特殊召喚する! 《マシンナーズ・ディフェンダー》と《マシンナーズ・フォートレス》を捨てて、墓地から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚!」

 

鋼貴の場に鋼貴のエースモンスター、マシンナーズ・フォートレスが現れる。

その青いボディを輝かせ、キャノン砲を構える。

 

ATK:2500

 

「バトル! フォートレスで暗黒の狂犬を攻撃! 《マシンナーズ・キャノン》!」

 

フォートレスが砲身からエネルギー波を暗黒の狂犬に向けて放つと、暗黒の狂犬は跡形も無く消え去る。

 

「うう! よくも私の僕を!」

 

板垣 LP:8000→7400

 

「まだだぜ! ギアギガント Xで直接攻撃! 《ギアギガント・ナックル》!」

 

ギアギガント Xが板垣の前に跳びかかり、拳を振り下ろす。

 

「ぐわああ!」

 

板垣 LP:7400→5100

 

「闇の貴公子様!」

 

取り巻きが声を上げる。

闇の貴公子、板垣は再びマントを払うと取り巻きに言う。

 

「大丈夫だ……これも宿命、避けられぬ痛みなのだ……」

 

「普通にデュエルしろ! ソリッドビジョンなんだから痛くねぇだろうが!」

 

鋼貴が叫ぶ。

 

「鋼貴、早めに勝負をつけるつもりだね」

 

鋼貴のここまでの動きを見て空が言う。

 

「正解だよ、サイコ・デュエルのダメージは本当に危険だ……このままいけるといいんだけど」

 

遊伸が心配そうに鋼貴を見る。

サイコ・デュエルの痛みを一番知っているのは遊伸である。

遊伸は一心に鋼貴の無事を祈った。

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

LP:7700

手札:2

モンスター

・ギアギガント X

・マシンナーズ・フォートレス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「お前のエンドフェイズに罠発動! 《リビングデットの呼び声》! さあ! 私の為に地の底から蘇れ! 《暗黒の狂犬(あんこくのマッドドッグ)》!」

 

板垣の場に再び暗黒の狂犬が現れる。

 

「そして私のターン! ドロー!」

 

板垣 手札:2+1

 

「フフフ……やはりお前は私と戦う宿命の者、中々の強さだ……いいだろう! 闇の女神から授かりし闇のカードを見せてやろう!」

 

「何!? (だが俺の布陣は完璧だ! 何でもきやがれ!)」

 

鋼貴は内心で笑う。

 

「私はチューナーモンスター《ダーク・スプロケッター》を召喚!」

 

板垣の場にスプロケットを身に付け、チェーンを体に巻いた悪魔が現れる。

 

ATK:400

 

「おお!いよいよお出になるぞ! 闇のカードが!」

 

板垣の取り巻き達が騒ぎ始める。

 

「チューナーだぁ!? 闇のカードはシンクロモンスターか!」

 

鋼貴がそう言って驚くと、板垣は勝ち誇った様に笑う。

 

「フハハ! 見よ! これが宿命を背負いし変わりに授けられた力だ! レベル4《暗黒の狂犬(あんこくのマッドドッグ)》に、レベル1《ダーク・スプロケッター》をチューニング!」

 

ダーク・スプロケッターが体のチェーンを暗黒の狂犬に巻き付けて取り付くと、1つの光輪、4つの光と変わると突然、それらが黒くなり、漆黒の柱へと変わる。

 

「闇と闇重なりし時! 冥府の扉は開かれる! 光なき世界へ! シンクロ召喚! 最強の僕、闇のカード《氷結のフィッツジェラルド》!!!」

 

漆黒の柱から一体の悪魔が現れる。

大きな翼をもっており、胴体と頭以外は全て氷で覆われている。

その姿を見て遊伸達は感じているだろう、背筋が寒くなるのを、それがこのモンスターの冷気によるものなのか、それとも”恐怖”によるものなのか、誰にも解らなかった。

 

ATK:2500

 

「で、でたぁ~! こ、こいつです!」

 

少年達が震えながら指差す。

 

「こ、これは……」

 

遊伸は思い出していた、光円寺とのデュエル、その最後に現れた龍の事を。

 

「光円寺の太陽龍インティと相対した時、それだけで身が焼かれるような熱さを感じた……これはその逆だ! 凍える様なこの寒さ……空! 空も感じるだろう! この寒さを!」

 

遊伸の言葉に空は頷き、鋼貴に大声を掛ける。

 

「鋼貴! 気をつけて! 間違いなく”本物”だよ!」

 

「ああ! 任せろ!」

 

策のある鋼貴は余裕のある返事をする。

 

「(確かに見て呉れは大したもんだが、問題ねぇ! 返り討ちだ!)」

 

鋼貴の場に伏せているカード、一つは《聖なるバリア-ミラーフォース-》、もう一つは《次元幽閉》、鋼貴はこのカードで闇のカードを返り討ちにする算段である。

 

「さあ! 闇の洗礼を受けよ! フィッツジェラルドよ! ギアギガント Xを葬り去れ! 《ブリザード・ストライク》!!」

 

フィッツジェラルドが体から無数の氷柱をギアギガント Xに向かって発射する。

 

「待ってたぜ! 罠発動……何!?」

 

鋼貴が次元幽閉を発動させようとするが、宣言してもカードが発動しない。

 

「な、何でだよ! こんな時に故障……!?」

 

フィッツジェラルドの攻撃がギアギガント Xに命中する。

無数の氷柱がギアギガント Xを貫き、貫いた氷柱が鋼貴を襲う。

 

「うおおおお!?」

 

鋼貴 LP:7700→7500

 

「「鋼貴!」」

 

遊伸と空が同時に叫ぶ。

 

「どうして!? 何で鋼貴の罠が作動しなかったの?」

 

空が疑問を口に出すと、後ろにいた少年達が怯えながら言う。

 

「あ、あれだ! 闇のカードはああやって罠を封じちまうんだ!」

 

「そう! これが神の力! 闇の貴公子様が持つ闇のカードの力!」

 

板垣の取り巻きが声を張り上げて言う。

板垣は笑いながらフィッツジェラルドの特殊能力を説明する。

 

「フハハ! これが闇の女神より授けられたカードの力!  氷結のフィッツジェラルドが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動する事は出来ない!」

 

「(マジかよ……ミラフォも幽閉も使えねぇなんて……それにたった200でもこの痛み……早く倒しちまわねぇと!)」

 

「私はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:5100

手札:1

モンスター

・氷結のフィッツジェラルド

魔法・罠

・セット

・セット

・リビングデットの呼び声

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「俺は《グリーン・ガジェット》を召喚!」

 

鋼貴の場に緑の歯車、 グリーン・ガジェットが現れる。

 

ATK:1400

 

「グリーン・ガジェットの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《レッド・ガジェット》1体を手札に加える事が出来る!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「永続魔法《マシン・デベロッパー》を発動! 場に表側表示で存在する機械族の攻撃力は200ポイントアップする!」

 

マシンナーズ・フォートレス ATK:2500→2700

グリーン・ガジェット      ATK:1400→1600

 

「罠が駄目なら直接叩いてやる! バトル!  フォートレスでフィッツジェラルドを攻撃! 《マシンナーズ・キャノン》!」

 

フォートレスがキャノン砲をフィッツジェラルドに向けて発射すると、フィッツジェラルドを粉々に粉砕する。

 

「フフフ……」

 

板垣 LP:5100→4900

 

板垣は闇のカードを破壊されたと言うのに笑っている。

 

「何笑ってやがる!」

 

「…お前はまだフィッツジェラルドの力を知らない、フィッツジェラルドは闇の女神から―――」

 

「それはもういい! 聞き飽きたわ! 何が言いてぇんだお前は! 結果だけにしろ!」

 

鋼貴が板垣の台詞を遮る様に言うと、板垣はムッとした顔になる。

 

「…死に急ぐか……いいだろう! フィッツジェラルドの第2の力! 蘇れ! 《氷結のフィッツジェラルド》!!!」

 

板垣がそう宣言すると、板垣の場にブリザードが巻き起こると、その中心にフィッツジェラルドが現れる。

 

DEF:2500

 

「な、何!?」

 

「フィッツジェラルドは戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時、自分の場にモンスターが存在しない場合、手札を1枚捨てる事で墓地から表側守備表示で特殊召喚する! フィッツジェラルドは不死なのだー!」

 

捨てたカード:スキル・サクセサー

 

攻撃に対する罠を封じ、戦闘破壊しても蘇る闇のカード、氷結のフィッツジェラルド。

鋼貴はこのモンスターを召喚させてしまった事を悔やんだ。

 

「何とかしねぇと……俺はターンエンドだ!」

 

LP:7500

手札:2

モンスター

・マシンナーズ・フォートレス

・グリーン・ガジェット

魔法・罠

・セット(ミラーフォース)

・セット(次元幽閉)

・マシン・デベロッパー

 

「私のターン! ドロー!」

 

板垣 手札:0+1

 

「さあ再び出陣の時だフィッツジェラルド!」

 

板垣はフィッツジェラルドを攻撃表示へと変更させる。

 

ATK:2500

 

「私は魔法カード《マジック・プランター》を発動! 自分の場に表側表示で存在する 永続罠1枚を墓地へ送ってデッキからカードを2枚ドローする! さあ《リビングデットの呼び声》よ! 私の新たな血肉となれ!」

 

板垣 手札:0+2

 

「そして墓地の《スキル・サクセサー》の効果発動! 場のモンスター一体の攻撃力を800ポイントアップする! さあフィッツジェラルド! 新たな力だ!」

 

ATK:2500→3300

 

フィッツジェラルドの攻撃力がフォートレスの攻撃力を上回る。

本来ピンチだが鋼貴はこれをチャンスと見た。

フォートレスの特殊能力、《アサルト・ボム》を使い、フィッツジェラルドを破壊することが出来る。

フィッツジェラルドは戦闘破壊の時のみ蘇生出来るが、効果破壊では蘇生出来ない。

 

「行け! フィッツジェラルド! マシンナーズ・フォートレスを葬れ! 《ブリザード・ストライク》!!」

 

フィッツジェラルドが氷柱を飛ばすと、それはフォートレスに突き刺さる。

フォートレスは爆弾を一つフィッツジェラルドの真下に転がすと爆発し、刺さっていた氷柱が鋼貴に命中する。

 

「うお! …いってぇ……」

 

鋼貴 LP:7500→6900

 

「どうだ? フィッツジェラルドの力を思い知ったか! ハッハッハ!」

 

板垣がまた勝ち誇った様に言う。

 

「思い知るのはテメェだ! マシンナーズ・フォートレスの効果発動! 戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、相手の場に存在するカード1枚を選択して破壊する! 《氷結のフィッツジェラルド》を破壊だ! 《アサルト・ボム》!」

 

鋼貴が宣言するとフォートレスがフィッツジェラルドの真下に転がした爆弾が秒読みを始める。

 

「無駄だ! 私とフィッツジェラルドには闇の女神の加護があるのだ! カウンター罠《デストラクション・ジャマー》を発動! 手札を1枚捨て、「場のモンスターを破壊する効果」を持つ効果モンスター・魔法・罠の発動を無効にし破壊する!」

 

捨てたカード:ダークゼブラ

 

爆弾が爆発すると、フィッツジェラルドを囲う様に障壁が張られ、フィッツジェラルドを守る。

 

「マジかよ!? くそっ! …フォートレスが破壊された事によって《マシン・デベロッパー》の効果発動、ジャンクカウンターを2つ乗せるぜ」

 

マシン・デベロッパー カウンター数:2

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

LP:5100

手札:1

モンスター

・氷結のフィッツジェラルド

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「まだだ! まだ俺には手がある! チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》を召喚!」

 

鋼貴の場に大きな機械の目玉の様な物体が現れる。

その見た目は正しく”未知の存在(アンノウン)”である。

 

ATK:0→200(マシン・デベロッパーにより)

 

「行くぜ! レベル4《グリーン・ガジェット》に、レベル1《アンノウン・シンクロン》をチューニング!」

 

アンノウン・シンクロンが1つの光輪へと変わり、グリーン・ガジェットを囲う。

そして光輪がグリーン・ガジェットを4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「偉大な技術の結晶よ! 正義の名の下に破滅の光を根絶やせ! シンクロ召喚! 殲滅しろ!《A・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス) カタストル》!」

 

光の柱からA・O・J カタストルが現れようとしていた。

このカードは間違いなく、鋼貴の劣勢を覆すはずだった。

 

「そうはさせん! カウンター罠《神の宣告》を発動! ライフポイントを半分払い、魔法・罠の発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する! 私はA・O・J カタストルの特殊召喚を無効に破壊する!」

 

板垣 LP:4900→2450

 

板垣が発動した罠から光が発せられると、光の柱が消え去る。

 

「な!?」

 

「この闇の貴公子が無知なる存在だと思ったか? A・O・J カタストル、その存在はよく知っている……フィッツジェラルドにとっては脅威だ、だから消えて貰ったぞ! ハッハッハ!」

 

鋼貴がシンクロ召喚しようとしたモンスター、A・O・J カタストル。

このカードが闇属性以外の場に表側表示で存在するモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わず、そのモンスターを破壊するというモンスター。

このモンスターでフィッツジェラルドを攻撃すれば、水属性であるフィッツジェラルドは戦闘破壊ではなく、効果破壊され、自身の効果で蘇生することが出来なくなるのである。

出ていれば間違いなく劣性を覆したモンスター、しかし、板垣の方が1枚上手であった。

 

「ち、チクショウ……だがまだだ! カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:6900

手札:1

モンスター

・なし

魔法・罠

・セット(ミラーフォース)

・セット(次元幽閉)

・マシン・デベロッパー

・セット

 

「私のターン! ドロー!」

 

板垣 手札:1+1

 

ここで鋼貴が先程伏せた罠を発動する。

 

「罠発動! 《強制脱出装置》! 場のモンスター1体を手札に戻す! 俺は《氷結のフィッツジェラルド》を…」

 

「無駄なのだよ! カウンター罠《魔宮の賄賂》を発動! 相手に1枚ドローさせる代わりに魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

「ぐうぅ……くそぉ…!」

 

鋼貴 手札:1+1

 

遊伸は考えていた。

 

「(板垣君の戦術は高尾さんと同じタイプだ)」

 

高尾は戦術の幅をVWXYZに絞ることでその欠点である”手札不足”をデッキの大半を占めるドローソースでサポートし、解消する戦術である。

そして板垣は強力なカードである氷結のフィッツジェラルドの唯一の弱点、”効果除去”を防ぐ為、デッキの大半をカード効果を無効にする防御カードと、相手の最上級モンスターに対抗する為の強化カードで占めているようだ。

しかし、板垣にはさらに大きな弱点がある。

特定のカードを全力で守る為のデッキ、つまり、板垣は氷結のフィッツジェラルドに完全に依存しているのである。

この氷結のフィッツジェラルドさえ封じることが出来れば勝負は決まったも同然である。

 

「(だけど氷結のフィッツジェラルド自体を封じるのが難しい……鋼貴、カードを信じるんだ! どうか、君自身は折れないでくれ…!)」

 

「さあ! 闇の貴公子である私に屈するがいい! フィッツジェラルドで直接攻撃! 《ブリザード・ストライク》!!」

 

フィッツジェラルドの放った氷柱が鋼貴を襲う。

 

「うおぉーーーー!!! ぐっ…がはっ……」

 

鋼貴 LP:6900→4400

 

「「鋼貴!!!」」

 

遊伸と空が同時に叫ぶ。

鋼貴は声を振り絞って2人に返事をする。

 

「…大丈夫だ……こんなの遊伸の相手と比べりゃへでもねぇ…」

 

「フフフ……愚かな! このままフィッツジェラルドの餌食になるがいい! 私はターンエンド!」

 

LP:2450

手札:2

モンスター

・氷結のフィッツジェラルド

魔法・罠

・なし

 

「…遊伸! 助けに入ろう! 鋼貴は怒るかもしれないけど、このままじゃこの前の遊伸みたいに……」

 

空が遊伸に訴えかける。

遊伸は黙っていたが、暫くして鋼貴に向かって口を開く。

 

「鋼貴! 僕も空も、本当は助けに入りたい! でも、君は望まないんだろ!」

 

遊伸がそう言うと、鋼貴は背中を向けたまま無言で頷く。

 

「…分かった! 鋼貴、カードを信じるんだ! 君のその強い意志があれば必ず答えてくれる!」

 

遊伸の言葉に鋼貴は右腕を横に広げ、親指を立てる。

 

「…ごめん空、友達として本当は止めなきゃいけないんだろうけど……僕には出来なかったよ」

 

「…解るよ、鋼貴、凄いやる気だもん……この前の遊伸みたいに」

 

遊伸は空の言葉に苦笑する。

鋼貴は自分のデッキに目を落とす。

 

「(俺にも出来るか? いや、やるんだ! やってみせる! 頼むぜ、俺のデッキ!)」

 

鋼貴はデッキに指を掛ける。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「! 俺は《レッド・ガジェット》を召喚!」

 

鋼貴の場に赤い歯車、レッド・ガジェットが現れる。

 

ATK:1300→1500

 

「レッド・ガジェットの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《イエロー・ガジェット》を手札に加える!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:6900

手札:2

モンスター

・レッド・ガジェット

魔法・罠

・セット(ミラーフォース)

・セット(次元幽閉)

・マシン・デベロッパー

・セット

 

「私のターン! ドロー!」

 

板垣 手札:2+1

 

引いたカード:ライトニング・ボルテックス

 

「この闇の貴公子相手に何時まで持つかな? フィッツジェラルドで攻撃! 《ブリザード・ストライク》!!」

 

フィッツジェラルドの氷柱の一撃に、レッド・ガジェットが貫かれ、一部の氷柱が鋼貴を襲う。

 

「うおおおお!!!」

 

鋼貴 LP:4400→3400

マシン・デベロッパー カウンター数:4

 

「これで私はターンエンド!」

 

LP:2450

手札:3

モンスター

・氷結のフィッツジェラルド

魔法・罠

・なし

 

「俺のターン! ドロー!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「…おい、闇の貴公子さんよ、お前はそれで本当に楽しいかよ?」

 

鋼貴が板垣に尋ねる。

板垣は鋼貴の質問の意図を掴めず、聞き返す。

 

「ん? どういうことだ?」

 

「そのままの意味だ、いいか? デュエルってのはな、40枚以上のカードに自分の魂ぶっこんで作って、試行錯誤しながら強くなって行く……そう言うもんだろうが! なのにお前はそんなどこで拾ったかわからねぇインチキカード使って強くなった気で偉そうにしてるのがそんなに楽しいか、って聞いてんだよ!」

 

鋼貴の言葉に板垣は顔を怒りで赤くする。

 

「な、何だと! 氷結のフィッツジェラルドをインチキカードだと! このカードは闇の女神から授かった最強のカードだ! それに楽しいかだと! ああ楽しいさ! このカードさえあれば俺は負けない! このカードがあれば俺は無敵だ!」

 

板垣は鋼貴の言葉にムキになったのか闇の貴公子を演じるのも忘れて素の顔が見え始めている。

 

「…そうかい、なら俺が言えることは一つ……デュエル舐めてるガキに俺が負けるかよ!!!」

 

鋼貴はそう言うと自分の伏せカードを発動する。

 

「永続罠《血の代償》を発動! このカードはターン中に通常召喚を行っていても、LPを500払うごとに通常召喚が出来るようになるカードだ! 行くぜ! まずは《イエロー・ガジェット》を召喚!」

 

鋼貴の場に黄色の歯車、イエロー・ガジェットが現れる。

 

ATK:1200→1400(マシン・デベロッパーにより)

 

「イエロー・ガジェットの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《グリーン・ガジェット》を手札に加える!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「そして《血の代償》効果発動! LPを500払って手札の《グリーン・ガジェット》を通常召喚!」

 

鋼貴 LP:3400→2900

 

鋼貴の場に緑の歯車、 グリーン・ガジェットが再び現れる。

 

ATK:1400→1600

 

「そして効果で《レッド・ガジェット》を手札に加える!」

 

鋼貴 手札:2+1

 

「そして《血の代償》効果発動! LPを500払って手札の《レッド・ガジェット》を通常召喚! 場が埋まるまでこれを繰り返す!」

 

鋼貴はこの作業を淡々と繰り返す、結果……。

 

鋼貴 LP:2900→2400→1900→1400

フィールド

・イエロー・ガジェット

・グリーン・ガジェット

・レッド・ガジェット

・イエロー・ガジェット

・グリーン・ガジェット

 

手札:2+1

 

「そんな雑魚を並べたところで、私のフィッツジェラルドに勝てまい……諦めるんだな、これも宿命だ」

 

何時の間にか闇の貴公子に戻ってる板垣。

 

「そのインチキカードに現を抜かしてるからこんな簡単な事も解らねぇんだよ! レベル揃いのモンスターでやる事と言ったらこれだ! レベル4の《イエロー・ガジェット》と《グリーン・ガジェット》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

イエロー・ガジェットとグリーン・ガジェットがオレンジ色の光に変わり、地面に現れた穴に吸い込まれる。

 

「エクシーズ召喚! 来い! 2体目の《ギアギガント X》!」

 

穴から赤い閃光が放たれると、ギアギガント Xが全身の歯車を回転させ、現れる。

遊伸とアームズ・エイドで交換した2体目のギアギガント Xである。

 

ATK:2300→2500

 

「効果発動! 墓地から《グリーン・ガジェット》を手札に!」

 

取り除いたユニット:イエロー・ガジェット

 

鋼貴 手札:3+1

 

「そして手札から《グリーン・ガジェット》と《レッド・ガジェット》、合計レベル8を墓地に送り、《マシンナーズ・フォートレス》を墓地から特殊召喚!」

 

鋼貴の場に再びマシンナーズ・フォートレスが現れる。

 

ATK:2500→2700

 

「…いい加減見苦しいぞ、それでもフィッツジェラルドを倒せるのはマシンナーズ・フォートレスと ギアギガント Xのみではないか! 私の手札は3枚、突破は不可能だ!」

 

そして返しのターンでライトニング・ボルテックスで一掃してやろう、板垣はそう考えていた。

板垣がそう言うと鋼貴は笑う。

 

「誰がこれで終わりって言ったよ? まだガジェット残ってんだろうが」

 

鋼貴は自分の場の3色の歯車を指差す。

 

「フン! もう一体ギアギガントでも出すのか? それでも突破は不可能だ!」

 

その言葉に鋼貴は鼻で笑う。

 

「ちげーよ……さあ! 行くぜ! レベル4の《レッド・ガジェット》、《イエロー・ガジェット》、《グリーン・ガジェット》をオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

レッド・ガジェット 、イエロー・ガジェット、グリーン・ガジェットの3体がオレンジ色の光に変わり、地面に現れた穴に吸い込まれる。

 

「これが俺の「ナンバーズ」だ! エクシーズ召喚!」

 

その穴から金色の閃光が放たれ、一体のモンスター・エクシーズが現れる。

 

「無慈悲な法の番人! 《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》!!」

 

完全に現れたそれは機械族にも見えるが種族は天使族。

体の形から鳥にも見え、その頭部のくちばし部分には不気味な仮面の様な顔がついている。

その体の右側に他のナンバーズ同様自身の番号、「16」の数字が書かれている。

 

ATK:2300

 

「ナ、ナンバーズ!?」

 

板垣も流石に知っていたようで、動揺を見せる。

 

「その通り! そしてこいつが勝利の鍵だぜ! ショック・ルーラー効果発動! 1ターンに1度、このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、 カードの種類を宣言する! 次の相手ターン終了時まで、宣言した種類のカードをお互いに発動できない! 俺は「モンスター」を宣言!」

 

取り除いたカード:イエロー・ガジェット

 

鋼貴が宣言すると、ショック・ルーラーが辺りを漂っていた光球を一つ取り込むと体色がオレンジ色へと変わる。

 

「さあ、これで俺達はエンドフェイズまでモンスター効果を発動出来ない、これがどういう事か解るか?」

 

鋼貴が板垣にそう言うと、板垣は次第に青ざめていく。

 

「まさか……そんな…嘘だ…」

 

「嘘じゃねーよ! 行くぜ! フォートレスでフィッツジェラルドを攻撃! 《マシンナーズ・キャノン》!」

 

フォートレスがフィッツジェラルドに砲撃すると、フィッツジェラルドは粉々に砕け散る。

フィッツジェラルドの蘇生は墓地で発動するモンスター効果、このターン蘇生することは出来ない。

 

「あああ……フィッツジェラルドが……闇のカードがあああ」

 

板垣 LP:2450→2250

 

「止めだ!  No.16 色の支配者ショック・ルーラーで直接攻撃! 《ジャッジメント・アタック》!」

 

ショック・ルーラーが浮かび上がると、そのまま板垣に体当たりする。

 

「わあああああ!!!」

 

板垣 LP:2250→0

 

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

 

 

「そんなぁ……そんなぁ……」

 

板垣は地面に手を付いてべそをかいている。

遊伸達は鋼貴の元へ駆け寄った。

 

「おう、遊伸。 俺も交換して貰ったおかげで勝てたぞ」

 

鋼貴がそう言うと遊伸は笑いながら返す。

 

「じゃあ僕も鋼貴が言ってたことをそっくりそのまま返すよ! そこまでの結果に持ち込めたのは鋼貴の力さ、僕はタダのきっかけさ! もっと誇りなよ!」

 

遊伸がそう言うと2人で大笑いする。

 

「それより鋼貴体大丈夫なの? 痛くない?」

 

空が心配して鋼貴に聞く。

 

「ああ、まだ多少いてぇが平気だ、入院する程じゃねえ。 俺はサイコ・デュエリストとデュエルしたことないからはっきり言えねぇけど、多分本物のサイコ・デュエルの方が威力があるんだと思うぜ。 遊伸、やっぱりお前は大した奴だ……さてと」

 

鋼貴は板垣に近づく。

彼の信者は彼のこの様子を見て失望したのか既にいなかった。

 

「おい! それどこで手に入れたんだ? 闇の女神は無しだぞ! 本当の事言え!」

 

鋼貴は板垣に問い詰めると板垣は泣きながら答える。

 

「ホントなんだよ~…闇の女神様から貰ったんだよ~…」

 

「こいつっ……どうしようもねぇな! とりあえずこれは没収するぞ! 一緒に来い! デュエル研で調べて……」

 

「それはちょっと困るわね」

 

鋼貴が板垣の決闘盤から氷結のフィッツジェラルドを取ろうとすると、突然後ろから声がした、女の声だ。

 

「あ!!! 女神様!!!」

 

いち早く後ろから来た人物を目に止めた板垣はそう叫ぶ。

 

遊伸達は振り向いてその顔を見る。

青色で首あたりまで伸びた短めの髪、顔も類い稀な程美人でスタイルもいい。 モンスターにすら反応する鋼貴でなくても、寄ってくる男は多そうだ……以前にもこれと近い感想を抱いた女性に、遊伸達は会っている。

その女性と瓜二つなのだ。

忘れもしない、あの女性。

 

「こ、光円寺……」

 

「でも髪の色が違うぞ…」

 

遊伸と鋼貴が目の前の女性を見てそう呟くと、その女性は不思議そうな顔をする。

 

「あら、何故私のことを知っているのかしら? …もしかして、あなた達が”姉さん”の言っていた坊や達かしら?」

 

「ね、姉さん!?」

 

鋼貴が驚いた声を上げるとその女性は色っぽく笑う。

 

「お互い始めましてね、私の名前は光円寺 月子(こうえんじ つきこ)、 光円寺 陽子は双子の姉よ」

 

「双子……通りで」

 

空は驚きながらも納得する。

 

「女神様!!」

 

板垣が鋼貴を振り払って月子に縋り付こうとする。

月子はそれを避けると脚払いを掛け、板垣を転倒させる。

月子は倒れた板垣の決闘盤から氷結のフィッツジェラルドを取ると腰に付けているデッキケースに入れる。

 

「め、女神様…?」

 

「闇のカードを扱うのに坊やじゃ力不足だったようね、返して貰うわ……それと、私は坊やといえど惨めな男は嫌いなの、気安く触らないで貰えるかしら?」

 

月子は板垣に対してキツイ言葉を浴びせると遊伸達に向き合う。

 

「さて……あなたが姉さんとデュエルした坊やかしら?」

 

月子が遊伸を見て言う。

 

「…そうです」

 

警戒しながらも遊伸は答える。

 

「そう、私は姉さんと同じくらい強いわよ、その上での警告、この件に関わらないでそのまま忘れて欲しいの、どう?」

 

月子の提案に遊伸は頭を振る。

 

「それは出来ません、それと、僕からも聞きたい事があります」

 

「……何かしら?」

 

遊伸が月子のデッキケースを指差す。

 

「その闇のカードをどうして板垣君に渡したんですか? そのカードは使うと相手に実際のダメージが与えられる危険なカードです。 一体このカードは何なんですか?」

 

「…普通教えて貰えると思う?」

 

挑発的に月子が返す。

 

「思いませんけど、僕達は知らなければいけないんです。 …彼みたいな人を増やさない様にする為に…」

 

遊伸は突っ伏したまま動かない板垣を見る。

 

「…そうね……」

 

月子は暫く考える様にしていると、突然口を開く。

 

「いいわ、少しだけ教えてあげる」

 

「マ、マジかよ!?」

 

思いがけない返答に鋼貴は驚く。

 

「ええ、実はこうして色んな人に闇のカードを渡してテストしているんだけど、それだけじゃデータの集まりが悪いのよ……あなた達、姉さんが言うよりもやれるようだし、それならいっそこの事を教えてその闇のカードと一戦交えて貰った方がいいデータが集まると思うのよ」

 

「板垣君以外にも渡した人がいるの!?」

 

空が驚いて月子に問いかける。

 

「ええ、何人かに」

 

「…闇のカードとは何なんですか?」

 

遊伸は怒りを抑えながら月子に闇のカードについて尋ねる。

 

「闇のカードはその名の通り、表には出てない、非公式のカードよ、治安維持局が不正カードと呼んで探し回っているのもこれね」

 

月子がデッキケースから再び氷結のフィッツジェラルドを取り出す。

 

「他のカードと違うのは普通のカードより幾らか強力なことと、サイコ・デュエルの力が込めてあることね」

 

サイコ・デュエルと言う言葉に3人は反応する。

やはりあのダメージはサイコ・デュエルと関係していた。

 

「サイコ・デュエルの力を込めることによって、普通の人間が使うと擬似的なサイコ・デュエルを行うことが出来るって訳」

 

「どうしてそんな物を…」

 

遊伸がそう聞くと、月子は人差し指を唇に当てる。

 

「ここまでよ坊や、それじゃ私は帰らせて貰うわね」

 

月子は踵を返して帰ろうとする。

 

「あ! 待て! 逃がすか!」

 

鋼貴が決闘盤を構えると、月子が思い出したように振り返る。

 

「坊や達にもう一つサービスしようかしら、姉さんが見せたようだし、私のお気に入りも見せてあげるわ、来なさい! 《月影龍クイラ》!」

 

月子が自分の決闘盤を展開し、カードを一枚置くと、頭上に一体の龍が現れる。

見た目は光円寺姉妹の様にインティとそっくりな龍。

丸い胴体には顔面がついており、側面から四頭の龍の首が伸びている。

ただその胴体はインティが太陽ならクイラは月、陽子と月子、インティとクイラ、このモンスター達はこの姉妹を象徴するモンスターなのかもしれない。

ソリッドビジョンが消え、3人が月子に視線を戻すとそこには既に月子はいなかった。

 

「あ! 結局逃げられた! くそー!」

 

鋼貴は左掌を右拳で打つ。

 

「仕方がないよ、一応最低限の事は分かったし、とりあえず……彼を何とか慰めて家に送ろう、何だか不憫だよ…」

 

遊伸が板垣を見て言う。

板垣はまだ突っ伏して泣いていた。

 

「仕方ねぇな……おい、大丈夫か? 立てるか?」

 

鋼貴がとりあえず声を掛けてみる。

 

「すいません……ありがとうございます……でも今は一人にしてください……」

 

「……だとよ」

 

「板垣君、元気出して、また学校でね……」

 

空も板垣に一言声を掛ける。

板垣の要望通り、遊伸達は後ろ髪を引かれる感覚を残しながらその場を後にする。

 

ランディと類似した殺人犯、セキュリティの不可解な行動。

デュエル研を襲撃した陽子、闇のカードをばら撒く月子。

遊伸達にとって多くの謎が出来た休暇だった。




氷結のフィッツジェラルド→エターナルフォースブリザード
板垣のキャラはこれが理由です。

色々申し訳ありませんでしたOTL
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