遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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第26話 速さ ~破壊と再生~

空と強盗のアニキ分のデュエルが始まった。

先攻は空。

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:5+1

 

「(マスクとサングラス掛けてるからよく分からなかったけど、多分さっき笑ってたよね)」

 

笑っていた、つまり自信があるという事。

空は警戒し、手堅く布陣を敷くことにする。

 

「私はモンスターをセット、カードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:4

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

アニキ 手札:5+1

 

「俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:3

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

 

「(攻めてこない…)」

 

空の予想と反して、アニキは守りに入る。

 

「アイツ怖気づいてるぜ! 大した事ないんじゃねーか?」

 

晴男がそう言うと、アニキは晴男に振り向く。

 

「へっへっへ! そこの兄ちゃん、その通りだ」

 

「え? 本当に怖気づいてるの?」

 

愛雨が意外そうにアニキに向かって言う。

アニキはサングラスとマスク越しだが顔がニヤついているのが雰囲気で分かる。

 

「ああ、相手は決闘者、しかも将来デュエルで飯食っていこうと毎日デュエルの腕磨いて、さらに強力なレアカードを持っているアカデミア生だ、俺みたいなゴロツキがまともにやり合って勝てる相手じゃねーからな」

 

「ふん! 勝負する前から弱腰とは! これでは勝負にならんな!」

 

「(本当にそうかしら…)」

 

雷蔵がアニキの弱腰を見て空の勝利を確信した様だが、雪江は違った。

アニキの言葉に何か引っ掛かる物を感じている。

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:4+1

 

初手で攻撃出来る権利がある後攻にも関わらず、相手は攻撃せず、守りの態勢、十中八九罠であろう。

だが攻めなければLPを削ることは出来ない、空は動く。

 

「そっちが来ないならこっちから行くよ! 私は《ガスタの希望 カムイ》を反転召喚!」

 

セットされていたモンスターが表になると、そこからカムイが飛び出してくる。

ウィンダやカームに似た格好をしており、髪を後ろで縛り、首には黄緑のマフラー、そして手には他のガスタ達と比べて小さい杖を持っている。

これまでの空のデュエルではまともに場に出れなかったので、本人は気合十分といった様子である。

 

ATK:200

 

「お、気合十分! 頼むよ! カムイのリバース効果! デッキから《ガスタ》と名の付いたチューナーを1体特殊召喚するよ! 来て! 《ガスタ・ファルコ》!」

 

空の場にイグルともガルドとも違うガスタの鳥獣が現れる。

カムイがファルコを呼び寄せると嬉しそうにカムイの側に舞い下りる。

 

ATK:600

 

「そして手札から《ガスタの静寂 カーム》を召喚!」

 

続けてカームが現れる。

カムイがカームに向かって両手を広げて振ると、カームも静かに笑って手を振り返す。

 

ATK:1700

 

「行くよ! レベル2《ガスタの希望 カムイ》に、レベル2《ガスタ・ファルコ》をチューニング!」

 

ファルコが舞い上がり、自らを2つの光輪で囲う。

カムイはファルコに杖を向けて詠唱を始める。

レベルによって差があるのかカムイが詠唱する呪文はウィンダの物より短い。

詠唱を終えると杖の先から光球を二つ飛ばし、それが光輪の中に入ると光の柱となる。

 

「偉大なる一族の希望よ! 大いなる翼を御して、一族に光を! シンクロ召喚!」

 

光の柱から大きなファルコが現れると、カムイはそれに飛び乗る。

 

「ガスタの守護神鳥《ダイガスタ・ファルコス》!」

 

ATK:1400

 

「ファルコスの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、場の全ての《ガスタ》と名のついたモンスターの攻撃力を600ポイントアップするよ! 《希望の追い風》!」

 

ファルコスの上のカムイが杖を振り上げると、背後から暖かい風が吹く。

 

ダイガスタ・ファルコス ATK:1400→2000

ガスタの静寂 カーム  ATK:1700→2300

 

「おお! パワー2000以上が2体も並んだぞ! よし攻めろー!」

 

「待ってください、あれはどう見ても罠ですよ! 慎重に行くべきです!」

 

晴男がそう言うが雲太郎は不安そうな顔で意義を唱える。

 

「でも攻めなきゃ倒せねーんだぞ!」

 

「晴男の言う通りだ! 弱腰の相手など恐れるに足らん! やってしまえ空!」

 

雷蔵も晴男に同調し、空に向かって攻撃を促す。

相手がこのまま守りの態勢でいるという保障はない、もしかしたら何かの準備をしているのかもしれない、空は罠に臆さず攻めることにする。

 

「バトル! カームでセットモンスターを攻撃! 《サイレント・ウインド》!」

 

カームが杖を構え、静かに詠唱すると、セットモンスターの周りに静かな風が吹き始める。

詠唱が終わり、カームが目を見開き、杖を相手につき付けると、風がセットモンスターを切り刻む。

セットモンスターが姿を現すと、それは一匹の大きなイモムシ、頭部には角の様な炎が燃え盛っている。

姿を現した瞬間、カームの風によって破壊される。

 

「俺のセットモンスターは《ウォーム・ワーム》、破壊された事で効果が発動するが、俺はその効果に罠をチェーン発動! 《ブロークン・ブロッカー》! 自分の場に存在する攻撃力より守備力の高い守備表示モンスターが戦闘によって破壊された場合、そのモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから表側守備表示で特殊召喚する! さらに2体《ウォーム・ワーム》を特殊召喚!」

 

アニキの場に先程と同じイモムシが2体現れる。

 

DEF:1400

DEF:1400

(ATK:600)

 

「ほらみろ! 大したモンスターでもねえ、罠もその大したことねえモンスター出す為のもんだ! 雲太郎が考えすぎなんだよ」

 

晴男が雲太郎にそう言うが、雲太郎は納得していない。

 

「まだ分かりませんよ、さっきあの男は「効果発動」と言ってます、何かありますよ……」

 

雲太郎がそう言うと、アニキが含み笑いをする。

 

「そこのチビ、その通りだ……よお嬢ちゃん、さっき言ったよな? まともにやっても勝てねぇと……ならまともにやり合わなけりゃいいって事よ! ウォーム・ワームのモンスター効果! こいつは破壊された時に相手のデッキの上からカードを3枚墓地へ送るぜぇ!」

 

「!? (これって…)」

 

空は効果通り、デッキの上から3枚墓地へ送る。

 

送ったカード

ガスタの疾風 リーズ

攻撃の無力化

ガスタの神官 ムスト

 

「デ、”デッキ破壊”……あの男の狙いは”デッキ破壊”ですよ!」

 

何かある、雲太郎がそう危惧していた事が、現実となった。

 

「…まともにやり合わない……こういうことだったのね…」

 

同じ様に不安を持っていた雪江はアニキを見ながら呟く。

デュエルにはLPを0にする以外にも勝利条件は2つ存在する。

1つはカード効果による”特殊条件勝利”、もう1つは相手がデッキからカードをドロー出来なくなった場合の”デッキ切れ勝利”である。

”デッキ破壊”は相手のデッキを強制的に削り減らし、相手をデッキ切れに追い込み、”デッキ切れ勝利”を狙う戦術のことである。

 

「テ、テメー! きたねぇぞ! 空とちゃんとデュエルしろぉ!」

 

「ワッハッハ! だから言っただろうが! まともにやり合っても勝てねぇんだよ、仕方ねぇだろ」

 

晴男がアニキに野次を飛ばすが、アニキは笑いながらそう返す。

 

「さあどうする嬢ちゃん、こいつらを破壊するとデッキが減るぜ? さあどう――――」

 

「ダイガスタ・ファルコスで攻撃! 《ホープ・ウインド》!」

 

ダイガスタ・ファルコスが翼を羽ばたかせ、突風を起こすと、ウォーム・ワームの1体を吹き飛ばし、破壊する。

 

「うお! …お、おい! 話聞いてたのか! こいつらを破壊すると……」

 

「平気だもん」

 

動揺しながら再度説明しようとするアニキに空は一言そう言うと、デッキの上から再び3枚墓地に送る。

 

送ったカード

ガスタ・スクイレル

ドラゴン・フライ

霞の谷の祭壇

 

「何やってんだよ! デッキ無くなっちまうぞ!」

 

「あんたこそ何言ってんの、空のデッキがどういうデッキかよく思い出しなさい」

 

「…あっ! そうか!」

 

慌てる晴男に雪江がそう言うと、晴男はカームを見て気付き、雪江の言いたいことを理解する。

 

「バトルフェイズ終了! そしてカームの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地に存在する《ガスタ》と名のついたモンスター2体をデッキに戻す事でカードを1枚ドロー! 《静寂の風》!」

 

戻したカード

ガスタの希望 カムイ

ガスタの神官 ムスト

 

空 手札:4+1

 

「な、何! デッキにカードを戻すだと!?」

 

そう、空の使うガスタは墓地のガスタをデッキに戻し、効果を使用するカテゴリシリーズ。

デッキを削られても墓地のカードをデッキに戻せるので痛手は少ない。

それどころかデッキを削り、墓地にガスタが落ちることでガスタの効果を使い易くなる程だ。

先程の慌て様も忘れて晴男は笑みを浮かべる。

 

「へへっ! 空には何て事のない戦術だったな! 楽勝だぜ!」

 

「いえ、そう言う訳でもありませんよ……」

 

「そうね、これで”五分”ってところかしら…」

 

一旦上げてまた落とす、雲太郎と雪江の言葉に盛大にこける晴男。

 

「どういう事だ、空のガスタの効果を使えばデッキを削り切られる事もなかろう、もう奴のデッキ破壊なんぞ恐れるに足らんはずだ。 なのに何故五分なのだ」

 

まだ倒れたままの晴男に代わり、雷蔵が二人に聞く。

最初に雲太郎が口を開く。

 

「いいですか? 確かに空はカードをデッキに戻す事で相手のデッキ破壊を妨害する事が出来るでしょう。 しかしガスタでは一度に戻せるカードは1~2枚、一方相手は現時点で一度に3枚削るカードを使用してきています。 それに…」

 

雲太郎はアニキのデッキに目を向ける。

 

「まだあの男のデッキは未知数です、もしかしたらウォーム・ワームを上回るカードがあるかもしれません。 下手をすれば空のデッキ供給を上回り、押し切られてしまう可能性があるのです!」

 

雲太郎の話が途切れると、今度は雪江が口を開く。

 

「それだけじゃないわ、あの男、さっきからしつこく何て言っているか覚えてるわよね?」

 

「えーと……まともにやり合っても勝てねぇ! …だったよね?」

 

愛雨がアニキの様な低い声を真似て答える。

 

「そう、つまりあの男は一切、空のLPを削りに来ないわ、逆に今より守りを固めて、デッキを削りにくる。 空はその守りを突破して、相手のLP8000を削り切らなければならないの」

 

雪江は空のデッキに目を向ける。

 

「それに加えて空のデッキは強力なモンスターでごり押しするパワーデッキでも、数で押し切る展開力特化のデッキでもなく、相手の攻撃を防ぎ、隙を突いて反撃するのが基本のカウンターデッキよ。 守りに入られるのは逆に戦い難いはず…」

 

「そ、そんな……空は大丈夫なの?」

 

愛雨が雪江に不安そうに聞く。

 

「…戦い難いというだけで、空の戦術が封じられた訳じゃないわ、後は空次第よ。 …どちらにも不利があるこのデュエル……”速さ”が全てを決めるわ」

 

アニキがデッキを0にするのが先か、空がLPを0にするのが先か、まだ展開の読めないこの状況、雪江達は何とも言えない不安を抱えてデュエルを見守る。

 

「私はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:4

モンスター

・ガスタの静寂 カーム

・ダイガスタ・ファルコス

魔法・罠

・セット

・セット

 

「ふん! そんなんで止められるか! 俺のターン! ドロー!」

 

アニキ 手札:3+1

 

「俺は《手札断札》を発動! お互い手札を2枚墓地に送り2枚ドロー!」

 

アニキが送ったカード

シールド・ワーム

共鳴虫

 

空が送ったカード

ガスタの賢者 ウィンダール

ヴァイロン・スフィア

 

アニキ 手札:1+2

空 手札:2+2

 

「あ~また空のデッキを……ねえ雲太郎! 今空のデッキ何枚なの?」

 

「え~と……ちょっと待ってください」

 

愛雨にせがまれて雲太郎が決闘盤の観戦機能で確認する。

 

「…25枚です」

 

その枚数に愛雨は驚く。

 

「ええ!? もう半分近いじゃない! 40枚って意外に少ないのね…」

 

手札断札によって新たに手札に加わったカードを見てアニキは見えない顔を綻ばせる。

 

「おいチビ聞こえたぞ! 残り25だってな! ならもっと追い詰めてやるよ! まずは《地雷蜘蛛》を召喚だ!」

 

アニキの場に現れたのは巨大な蜘蛛。

だが普通の蜘蛛とは違い、脚は六本、そして腹部が非常に大きい。

 

ATK:2200

 

「魔法カード《死者蘇生》を発動! 俺の墓地から《シールド・ワーム》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

アニキの場にウォーム・ワームとは別のワームが現れる。

腹部に装甲の様な物があり、体をL字の様に持ち上げ、大きく発達した前足六本を左右に広げ、空の前に立ちふさがる。

 

ATK:800

 

「この瞬間にシールド・ワームの効果が発動されるが、俺はその効果にチェーン発動! 速攻魔法《地獄の暴走召喚》! 相手の場に表側表示でモンスターが存在し、自分の場に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時、その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から 全て攻撃表示で特殊召喚する! …アカデミア生ならこの先も知ってるよな? さあ選択しろ!」

 

「…私はダイガスタ・ファルコスを選択」

 

「うん? そっちのはもうデッキにねえってか? まあいい、俺は《シールド・ワーム》をデッキから2体特殊召喚!」

 

アニキの場にさらに2体のシールド・ワームが現れる。

 

ATK:800

ATK:800

 

「さあお待ちかねだ! シールド・ワーム効果発動! 召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になるぜ!」

 

場のシールド・ワームが全てが守備表示となる。

 

DEF:2000

DEF:2000

DEF:2000

 

「さらに! 自分の場に表側表示で存在する昆虫族の数だけ相手のデッキの上からカードを墓地へ送る! 俺の場の昆虫族は5体! シールド・ワームの数は3体! 合計15枚のカードをデッキから墓地送りだ!」

 

15枚、現在の空のデッキの半分以上を削る枚数である。

これには雪江達は動揺を隠せない。

 

「じゅ、じゅ、15枚だぁ~!? ふざけんな!」

 

「も、もしかして私が枚数ばらす様な事聞いちゃったから!?」

 

晴男は野次を飛ばし、愛雨は自分の責任だと思い込み、青ざめている。

 

「安心して、愛雨のせいじゃないわよ……ここまでやるなんて」

 

雪江は悔しそうにアニキを睨む。

しかしそんな様子の外野とは違い、空は特にリアクションを見せず、デッキから15枚のカードを墓地へと送る。

何のカードが墓地に送られたか確かめる為、雲太郎が観戦機能で確かめようとする。

 

「うわわわ! 墓地に送ったカードが多すぎて決闘盤がデータを拾えてないですよ! これでは何が墓地に送られたのか分かりません…」

 

「そんな事はどうでもいい! それよりデッキがたったの10枚になってしまったぞ! さらに奴の場にはモンスターが5体! その中にはウォーム・ワームも存在する! このままでは空のデッキが先に0にされてしまうぞ! 余裕そうな顔をしているがどうするつもりだ空!」

 

雷蔵が空に問いかける。

残り10枚のデッキ、相手の5体のモンスター、そして1ポイントも削れていないLP。

このピンチの状況で空は雷蔵の言う通り、こんな状況なんて何でもない、そう言いたげな顔をしていた。

 

「…おい嬢ちゃん、もう少し反応してくれてもいいんじゃねーか? それとも動揺で逆に何も喋れないのか?」

 

アニキは空の反応が無い事が少しつまらない様子。

 

「だから平気だって言ってるでしょ」

 

空がそう返すと、アニキは呆れた様にして言い返す。

 

「かっ! 残りたった10枚! それのどこが平気なんだよ! 俺はこれでターンエンド!」

 

LP:8000

手札:0

モンスター

・ウォーム・ワーム

・地雷蜘蛛

・シールド・ワーム

・シールド・ワーム

・シールド・ワーム

魔法・罠

・セット

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:4+1

 

「あああ~これで9枚、空大丈夫かよ~」

 

晴男がそうこぼすと、空が5人に振り返る。

 

「大丈夫! 平気だって言ってるじゃん!」

 

「へ、平気って……何か根拠があるんですか?」

 

雲太郎が空にそう尋ねると、空は自信有り気に笑う。

 

「勿論! それにこのガスタ達は私の大切な人から貰ったカード…」

 

空は脳裏に姉の姿を映し出す。

 

「そしてこのデッキは私の思いを込めて作ったデッキ! 枚数が10枚でも、1枚でも……必ず答えてくれる!」

 

空は再びアニキに向き合う。

 

「私は負けないよ! カームの効果発動! 《静寂の風》!」

 

デッキに戻したカード

ガスタ・ガルド

ガスタ・イグル

 

空 手札:5+1

 

「私は魔法カード《ガスタの交信》を発動! 自分の墓地の《ガスタ》と名のついたモンスター2体をデッキに加えてシャッフル!」

 

デッキに戻したカード

ガスタ・サンボルト

ガスタの希望 カムイ

 

「その後相手の場に存在するカード1枚を選択して破壊するよ! 私は《シールド・ワーム》1体を破壊!」

 

アニキの場のシールド・ワーム1体が風に包まれると、そのまま消滅する。

 

「ふん! 効果は使ったからもう用無しだ!」

 

「さらに永続罠《リミット・リバース》を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスター、《ガスタの巫女 ウィンダ》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

空の場にウィンダが現れる。

ウィンダは空に振り返り手を振ると、隣にいるカームに挨拶し、ダイガスタ・ファルコスの上にいるカムイにも手を振る。

 

ATK:1000

 

「続いて手札から《ガスタ・ガルド》を召喚!」

 

空の場にガスタ・ガルドが現れると、羽ばたきながらゆっくりと降下し、ウィンダの腕に止まる。

 

ATK:500

 

「行くよ! レベル2《ガスタの巫女 ウィンダ》に、レベル3《ガスタ・ガルド》をチューニング!」

 

ガルドはウィンダの腕から飛び立つと、自分を囲うように光輪を3つ出す。

それに合わせてウィンダも詠唱を始める。

詠唱を終えると2つの光球を杖の先からガルドに向けて飛ばし、光輪の中へと入ると光の柱となる。

 

「偉大なる一族の巫女よ! 大いなる翼を御して己の使命を果せ! シンクロ召喚!」

 

光の柱から巨大なガルドが現れると、ウィンダの前に降り立ち、ウィンダはそれに乗る。

 

「ガスタの守護神鳥《ダイガスタ・ガルドス》!!」

 

ATK:2200

 

「ダイガスタ・ガルドスの効果発動! 自分の墓地の《ガスタ》と名の付くモンスターを2体デッキに戻すことで相手の表側表示モンスターを1体破壊するよ! 対象は2体目の《シールド・ワーム》!  《ダイガスタ・デストラクション》!」

 

デッキに戻したカード

ガスタの巫女 ウィンダ

ガスタ・ガルド

 

ダイガスタ・ガルドスの上にいるウィンダが、杖に念を集中する。

その杖の先から電撃のような念動波をシールド・ワームを粉砕する。

 

「う……な、何かやな流れじゃねえか?」

 

「まだだよ! 墓地から風属性モンスターを除外して手札から《風の精霊 ガルーダ》を特殊召喚!」

 

除外したモンスター

ドラゴン・フライ

 

空の場にガルーダが翼を羽ばたかせ、場に舞い降りる。

体は人間、頭は鳥獣のモンスターである。

 

ATK:1600

 

「罠カード《ゴッドバードアタック》を発動! 自分の場の鳥獣族1体をリリースしてカード2枚を選択、 選択したカードを破壊するよ! 私はガルーダをリリースして最後の《シールド・ワーム》と《地雷蜘蛛》を破壊!」

 

ガルーダが炎を纏い、アニキの場に突っ込む。

《シールド・ワーム》と《地雷蜘蛛》はその炎に巻き込まれ、破壊される。

 

「お、俺のモンスターがウォーム・ワームだけに…」

 

「バトル! ダイガスタ・ファルコスで攻撃! 《ホープ・ウインド》!」

 

ダイガスタ・ファルコスが翼を羽ばたかせ、突風を起こしウォーム・ワームを吹き飛ばし、破壊する。

 

「ぬぬぬ…! ウォーム・ワームの効果だ! 3枚墓地に送れ!」

 

「解ってるよ! …さあ! ダイガスタ・ガルドス、カームで直接攻撃!」

 

墓地に送ったカード

ガスタ・ガルド

ガスタの神官 ムスト

ガスタのつむじ風

 

ダイガスタ・ガルドスが突風を巻き起こすと、それに合わせてカームが詠唱、ダイガスタ・ガルドスが起こした突風がカームの力により強化され、アニキを襲う。

 

ダイガスタ・ガルドス  ATK:2200

ガスタの静寂 カーム ATK:2300

 

「ぐおおお!? ば、馬鹿な! こんなはずでは…」

 

アニキ LP:8000→3500

 

「よっしゃー! 何だよ雪江! 空簡単に突破したじゃねーか!」

 

「予想出来なかったわ、空が夏休みの間にこんなにもに強くなってたなんて…」

 

晴男は掛け声と共に飛び上がり、雪江は空の成長に驚いている。

 

「これであの男のLPが半分を切りました! さらに手札が0! モンスターも0! それに対して空のデッキはまだ11枚あります! これは勝ちが見えてきました!」

 

雲太郎もこの逆転に興奮を隠し切れない様子である。

 

「私はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:3

モンスター

・ガスタの静寂 カーム

・ダイガスタ・ファルコス

・ダイガスタ・ガルドス

魔法・罠

・リミット・リバース

・セット

 

「ぐぐぐ…! くそお! 俺のターン! ドロー!」

 

アニキ 手札:0+1

 

「(こ、これじゃ駄目だ、くそ! …ん? いやまて!)」

 

アニキは自分の魔法・罠ゾーンにある伏せカードを見る。

 

「(忘れてたぜ、とりあえずブラフで伏せたカード……今なら使える!) 伏せていた魔法カード《貪欲な壷》を発動! 墓地の5体のモンスターをデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

デッキに戻したカード

ウォーム・ワーム

ウォーム・ワーム

ウォーム・ワーム

シールド・ワーム

シールド・ワーム

 

アニキ 手札:1+2

 

「! よし、モンスターをセット! そして魔法カード《太陽の書》を発動! セットしたモンスターを表に!」

 

「わざわざセットしたモンスターを攻撃表示に~? なら最初から攻撃表示で出せば…」

 

「い、いけません! あのコンボは!」

 

晴男はアニキの意図を掴めていない様だが、雲太郎は気付いたようである。

アニキの場のセットモンスターに太陽光が降り注ぐと、そのセットモンスターが姿を現す。

大きな壷であり、その中には不気味な一つ目と口がこちらを見ている。

 

「セットモンスターは《メタモルポット》! リバース効果発動! お互いの手札を全て捨て、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする!」

 

「!?」

 

アニキが捨てたカード

ゾンビキャリア

 

空が捨てたカード

ガスタ・コドル

ライフ・コーディネイター

スピッド・バード

 

アニキ 手札:0+5

空 手札:0+5

 

メタモルポットは現環境では最大級のドローソースであるが、相手にもドローを許してしまうのが欠点である。

本来ならば空もこのドローはかなりの助けになったはず。

しかし今の状況ではこれが空の首を絞める事となる。

 

「あの男の手札が一気に増えたわ……こっちも手札を増やせるけど、デッキも大幅に削られたわね……不味いわね」

 

「で、でも空の場にはモンスターが3体もいるんだ! そうそう防げるかよ!」

 

雪江の呟きに晴男が反論する。

アニキは新しい手札を見ると、全身が揺れ動くほどの含み笑いをする。

 

「…よっぽどいい手札みたい…」

 

愛雨はアニキを見て頭を抱えながらそう言う。

 

「行くぜ! 魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》を発動! 俺はこのターンもう一度通常召喚する!  《ニードルワーム》を召喚!」

 

アニキの場に大きな3本の刺を頭部につけた紫色のワームが現れる。

頭部程ではないが尻尾や胴体の側面にも刺が見られる。

 

ATK:750

 

「あれ? おかしいですね…」

 

「どうしたのだ雲太郎、あの雑魚モンスターがどうかしたか?」

 

アニキが召喚したモンスターをおかしいと呟く雲太郎に雷蔵が声を掛ける。

 

「妙なんです、ニードルワームはリバースモンスターで、リバースした時に相手のデッキからカードを5枚墓地に送るカードなんです。 セットしてリバースすれば空のデッキをさらに5枚削れるはずなんです……セットしてこそ生きるカードなのに……何故?」

 

ニードルワームを召喚したアニキは手札からカードを一枚選び、デッキの上に置く。

 

「墓地のチューナーモンスター《ゾンビキャリア》の効果発動! 手札を1枚デッキの一番上に戻し、このカードを墓地から特殊召喚する!」

 

アニキの場に一体のゾンビが現れる。

その体には様々な動物のパーツが見られる。

 

ATK:400

 

「ふっふっふ……悪いな嬢ちゃん、だが楯突いたのが悪いんだぜ? …見せてやる! ”闇のカード”を!!」

 

「闇のカード!?」

 

アニキの言葉に空は驚く。

板垣と同じ、あの闇のカードをこの男が持っている。

それだけで空の緊張が高まる。

 

「行くぞぉ! レベル2《ニードルワーム》に、レベル2《ゾンビキャリア》をチューニング!」

 

ゾンビキャリアが2つの光輪に姿を変え、ニードルワームを囲い、2つの光に変わった途端、それらが黒くなり、漆黒の柱へと変わる。

 

「闇と闇重なりし時、冥府の扉は開かれる……光なき世界へ! シンクロ召喚! きやがれ俺の切り札! 《漆黒のズムウォルト》!」

 

漆黒の柱から現れたのは怪しい仮面を付けた一人の魔術師。

赤と青のローブを纏い、手にはガスタ達の様に特徴的な杖を持つ。

この様な魔術師的な姿をしているが、このモンスターは悪魔族。

そうには見えないが、このモンスターが放つ”闇の気”は悪魔そのものであった。

 

ATK:2000

 

「な、何あれ……何だか……こ、怖い……」

 

愛雨が自分の両肩を抱えて震え出す。

 

「おいおい……ソリッドビジョンがやたらリアルなのは知ってるけどよ……何ていうか、存在感がハンパねぇぞあいつ…」

 

「見た事も無い……何なの……あれは」

 

晴男や雪江、他の2人も漆黒のズムウォルトが唯のカードではないことを感じている。

 

「(愛ちゃん、皆……本物の闇のカード、早く倒さなきゃ……)」

 

空が緊張した顔で身構えると、アニキは笑いながら喋り出す。

 

「ハッハッハ! どうだ! これは闇のカードっつてな、裏の世界じゃちょいと話題になっているカードさ! この”デッキ破壊”デッキとこいつを手に入れられた時は本当についてたぜ! さあ行くぞ! 漆黒のズムウォルトでダイガスタ・ガルドスを攻撃! 《ダーク・ドラッグ・ダウン》!」

 

ズムウォルトが浮き上がり、杖をダイガスタ・ガルドスへと向ける。

 

「攻撃力が高いガルドスに攻撃……」

 

空はおかしいと感じつつも気を抜かない、相手は闇のカードなのである、何があってもおかしくない。

 

「漆黒のズムウォルトの効果発動! 攻撃宣言時、攻撃対象の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも高い場合、攻撃対象の攻撃力をバトルフェイズ終了時までこのカードと同じ数値にする! そしてズムウォルトは戦闘では破壊されねぇ! 行け!」

 

ズムウォルトの杖の先から黒い波動が放出される。

ダイガスタ・ガルドスは突風を起こして反撃するが、波動は突風をすり抜け、ガルドスに命中し、破壊する。

 

「ガルドス!!」

 

「そして漆黒のズムウォルト第3の効果! 戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る!」

 

墓地に送ったカード

ガスタの希望 カムイ

ガスタ・イグル

ガスタ・サンボルト

 

「バトル終了、俺は永続魔法《墓守の使い魔》を発動! このカードがある限り、相手はデッキトップのカードを一枚墓地に送らなければ攻撃出来ない! 考えて攻撃するんだな! …俺はカードを伏せターンエンド!」

 

LP:3500

手札:0

モンスター

・メタモルポット

・漆黒のズムウォルト

魔法・罠

・墓守の使い魔

・セット

 

「勝負が見えてきたな嬢ちゃん」

 

空のデッキは後3枚、アニキは勝利を確信していた。

この自信は闇のカードを召喚したことで気持ちが昂っている事もあるが、彼は幾つかの備えをしている。

漆黒のズムウォルトは戦闘では破壊されない、このカードがいる限り、自分のライフが削り切られる事は無いだろう。

しかしフィッツジェラルドにもあった様に、ズムウォルトにも弱点はある。

ズムウォルトは戦闘耐性はあるが、その他の除去には耐性が無い。

破壊能力のあるガルドスを倒したが、それと同様にズムウォルトを破壊する効果のカードがもう出てこないという保障は無い。

そこでアニキが伏せたカード、《ドレインシールド》。

相手1体の攻撃を無効にし、その攻撃力分だけ自分のLPを回復する罠カード。

ズムウォルトが除去されても、これを使って大幅にLPを回復することで、空はLPを削り切るのに更なる攻撃が必要となる。

墓守の使い魔がある限り、空はデッキ枚数分しか攻撃出来ない。

現在その枚数3枚、ドローして2枚、カームの効果を使ってもまた3枚である。

今の空の布陣ではとても3回では削り切れないだろう、アニキはそう考えていた。

 

「…ねえ、おじさんはさあ」

 

空が唐突にアニキに話しかける。

 

「私達とまともにやり合って勝てない、って言うけど、本当に勝てないって思ってるの?」

 

唐突な質問に一瞬うろたえるが、アニキは答える。

 

「…そうだな、まともにやり合ったら勝てねぇ、だがする必要がねぇんだよ! そんな事しなくても勝てんだ! この”デッキ破壊”という”秘策”と! ”闇のカード”という”切り札”が有ればな!」

 

空はその返事を聞いて顔を暗くする。

 

「…おじさん、それじゃおじさんは勝てないよ…」

 

「…寝言は寝てから言いな嬢ちゃん、この俺の布陣をどう突破する気だ? 言っとくが次が嬢ちゃんのラストターンだぜ? 次の俺のターンでズムウォルトが攻撃してデッキは0だ」

 

アニキがそう言うと、空は頭を振る。

 

「違うよ、そういう事じゃなくて……どうしておじさんは諦めちゃうの?」

 

「…何?」

 

「だっておじさんのデュエルタクティクス凄いじゃん! 皆もおじさんのデュエル見て驚いてたよ! おじさんはデュエル強いよ! だからナンバーズだって頑張れば貰えたかもしれないし、私とのデュエルだって頑張ってデッキ組めばまともに勝負出来るかもしれないじゃん! そして勝てるかもしれないじゃん! どうして……どうして”無理”だって諦めちゃうの!?」

 

空は真っ直ぐな眼でアニキに訴える。

 

「…ガキには解らねぇだろうがよ……多少上手くても……無理なものは無理なんだよ! 世の中結局は”力”だ! 権力財力暴力……持ってる奴が勝つんだよ! テメェらアカデミアのガキだってそうだろうが! 金に物言わせてカードを手に入れ、デュエルの訓練を受ける……持ってる奴らなんだよ! 無駄な努力をする必要はねぇ! 俺は負けん! 俺は”負けない力”を……このデッキと闇のカードを手に入れたんだ!!!」

 

そう言い切ったアニキは興奮しすぎて肩で息をしている。

 

「(おじさん……頑張る事を諦めて……頑張らないで”負けない力”を手に入れても……それじゃあ”勝て”ないよ……)」

 

空は内心でそう呟くと、決闘盤を構え、カードに指を掛ける。

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:5+1

デッキ:2

 

「私はカームの効果を発動! ガスタを2体デッキに戻して1枚ドロー!」

 

デッキに戻したカード

ガスタ・イグル

ガスタ・サンボルト

 

空 手札:6+1

デッキ:3

 

「おじさん! 行くよ! レベル4の《ダイガスタ・ファルコス》と《ガスタの静寂 カーム》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」 

 

空の場のファルコスとカームが緑の光球になると、現れた穴に吸い込まれる。 その穴から赤い閃光が放たれ、飾られた一振りの刀が現れる。

 

「エクシーズ召喚! 現れて! 《電光千鳥》!」

 

現れた刀に青い雷が落ちる、その雷が刀を覆うと雷は大きな鳥の姿に変わる。

 

ATK:1900

 

「電光千鳥の効果発動! エクシーズ召喚に成功した時、相手の場にセットされたカード1枚を選択して持ち主のデッキの一番下に戻す! 私はその伏せカードを戻すよ!」

 

「何!? だがそれが何だってんだ!」

 

電光千鳥がセットされていたドレインシールドに電撃を放つと、ドレインシールドはデッキの一番下に送られる。

だがまだアニキの布陣は敗れない。

ズムウォルトは健在、さらに空はエクシーズ召喚をしたことでモンスターが減っている。

LPが削り切られる事は無い。

アニキはまだ余裕はまだ余裕の表情だった。

 

「電光千鳥の2つ目の効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて相手の場に表側表示で存在するカード1枚を選択して持ち主のデッキの一番上に戻す! 私が選択するのは《漆黒のズムウォルト》! 」

 

「な!? 何だと!?」

 

電光千鳥は周りを漂っていた緑の光球の一つを体に取り込むと、先程より強力な電撃をズムウォルトに放つと、ズムウォルトは電撃に包まれ、そのまま消えてしまう。

 

「ズ、ズムウォルトが……闇のカードが……くそっ! だがまだだ! 俺のLPは残っている! そいつ1体で削り切れはしねぇ!」

 

「…うん、電光千鳥だけじゃおじさんは倒せない……だからもう1体! 私は《ガスタの巫女 ウィンダ》を召喚!」

 

空の場に再びウィンダが現れる。

 

ATK:1000

 

「さらに永続罠《エンジェル・リフト》を発動! 自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体、攻撃表示で特殊召喚する! 私は《ガスタの希望 カムイ》を特殊召喚するよ!」

 

ウィンダに続いて空の場にカムイが現れる。

カムイはウィンダと顔を合わせると、お互いに頷き合い、詠唱の構えを取る。

 

ATK:200

 

「レベル2の《ガスタの巫女 ウィンダ》と《ガスタの希望 カムイ》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

ウィンダとカムイは詠唱を始める。

詠唱を終えると下に穴が現れ、2人は自らを緑の光球へと変えてその穴に吸い込まれていく。

その穴が赤い閃光を放つと、中から緑の炎を纏った翼竜が現れる。

 

「エクシーズ召喚! ガスタの守護竜《ダイガスタ・フェニクス》!」

 

ATK:1500

 

「な、何が出てくると思いきや攻撃力はたったの1500じゃねぇか! 俺の場にはまだメタモルポットがいる! 削り切れねぇぜ!」

 

アニキが勝ち誇った様に笑う。

 

「ううん、私の勝ちだよ……ダイガスタ・フェニクスの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、自分の場の風属性モンスター1体を選択、このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事が出来る! 私は《電光千鳥》を選択!」

 

フェニクスが周りの光球を一つ取り込むと、電光千鳥の上空へと飛ぶ。

フェニクスが電光千鳥の上に緑の火の粉を振り撒くと、電光千鳥は自分の雷に加え、緑の炎が体を包む。

 

「2回攻撃だと!? ば、馬鹿な!?」

 

「バトル! 電光千鳥でメタモルポットを攻撃! 《電光不死鳥炎》!」

 

墓守の使い魔の効果により デッキ:3→2

 

フェニクスの炎を纏った電光千鳥がメタモルポットに向けて突進する。

メタモルポットは粉々に粉砕され、電光千鳥は纏っていた炎をアニキへと飛ばす。

 

「うおお!」

 

アニキ LP:3500→2200

 

「もう一回! 電光千鳥で直接攻撃! 《電光一閃》!」

 

墓守の使い魔の効果により デッキ:2→1

 

メタモルポットを攻撃時に相手の場を通り過ぎた電光千鳥は旋回し、自らの雷を纏って今度はアニキに突進し、雷撃で切り裂く。

 

「ぐおおお!!!」

 

アニキ LP:2200→200

 

「これで最後! ダイガスタ・フェニクスで直接攻撃! 《ゴッドバード・ウインド》!!!」

 

墓守の使い魔の効果により デッキ:1→0

 

フェニクスが炎をアニキに放ち、突風を起こす。

炎はアニキを襲い、風でさらに燃え上がる。

 

「うおおおお!!!」

 

アニキ LP:200→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

アニキは拘束装置によって倒れ、意識を失う。

 

「よっしゃー!!! 空の勝ちだぁーーー!!!」

 

「凄いよ空! それにあのモンスター初めて見た! 後で見せて!」

 

晴男と愛雨が興奮を抑えず空に走り寄る。

 

「私も始めて見たわ、さっき言っていた大改造ってこれの事ね、あなたはシンクロ主体だったから驚いたわ」

 

「ホントドキドキしましたよ! 勝つと解っていても、デッキが0になった時はもう心臓が飛び出るかと……とにかく良かったです」

 

「見事だ空!」

 

雪江、雲太郎、雷蔵の3人も前の2人の後ろからやってきて称賛を送る。

 

「ありがとう皆! …っと」

 

空は倒れているアニキに近づく。

空はアニキの決闘盤のエクストラデッキを見る。

そこにはたった1枚のカード、闇のカード、漆黒のズムウォルトがあった。

空はそれを取り出す。

 

「…おじさん、無理なんかじゃないよ、おじさんの言う”力”が無くても、頑張る事で強くなった人を私は知ってるから……頑張ればこんなカードに頼らなくても、おじさんは強くなれるよ。 …何時かまたデュエルする事が出来たら、今度はおじさんが頑張って作ったデッキでデュエルしようね…」

 

「空、そのカードをどうするの?」

 

アニキのデッキから闇のカードを取り出した空に雪江が尋ねる。

 

「闇のカードっていうのはね、不正カードの事なの、全デュエルチームに見つけたら回収するように、って通達が来てるんだよ」

 

本当の事を話すと皆が心配するかもしれない、空はそう思って本当の事を話さなかった。

 

「ふーん、不正カードねぇ……じゃあこいつインチキしてたんじゃねーか!」

 

晴男が気絶しているアニキに怒りを顕にする。

 

「それでも勝っちゃったんだから空は凄いよ! …それにしても怖かった~! そのカード、きっと”怨念のカード”ね」

 

「怨念のカード? 闇のカードじゃなくて?」

 

愛雨の言った言葉に空は首を傾げる。

 

「芸術には作者の魂が宿るっていうじゃない? きっとこのカードのデザイナーが怨念を込めながら作ったのよ! だからあんなに怖かったのよ! ヒャ~~~!」

 

愛雨はあの時の感覚を思い出したのかまた両肩を抱えて震える。

あながち間違っていない愛雨の予想に空は笑いそうになった。

 

「それじゃあ皆、私先生と遊伸を呼んで来るからおじさんを見てて!」

 

「早く戻ってきてくれよ! もし起き上がったら空じゃないと多分勝てんからな!」

 

晴男の言葉を背に空は体育館を飛び出していった。

 

「(このカード……マイルさんに調べて貰わなくちゃ)」

 

そう思いながら走っていると、ふと疑問が浮かんだ。

 

「(そういえば今回あのお姉さん出てこなかったね? ばら撒いてるって言ってたし、全部見張れる訳ないかな)」

 

空はそれ以上気にせず、遊伸の元へと急ぐのであった。

 

 

 




作中ではデッキ破壊を”逃げ”の戦術の様に扱っていますが、ocgにおけるデッキ破壊は立派な戦術です。 あくまで作品の中の話という事でご了承ください。
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