遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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*今回設定上の都合により、あるカードの効果が原作効果となっています(デッキ的には弱体化しています)ご了承ください。

13/02/28
感想によりご指摘を頂いたので一部修正しました。


第28話 再戦 ~爆発と駆け引き~

前日の夜  シティ  ダイモン・エリア

 

「うわあああ!」

 

LP:1900→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

 

「おらアンティルールだ! とっととカード全部置いて失せろ!」

 

敗者の男に勝者の男が恫喝すると、敗者の男は怯えながらデッキをその場に置くと、一目散に逃げて行く。

勝者の男がそのデッキを拾い上げ、中身を見る。

 

「くそっ! 屑カードばかりじゃねーか!」

 

男はそう言うと、拾い上げたデッキを投げ捨てる。

デッキは空中で分解し、カードはバラバラに舞い落ちる。

 

「もっと強ぇカードを……強ぇカードを寄越しやがれ! そして……ぶっ潰すんだよ……負けた屈辱を晴らす為……傷の恨みを晴らす為……ぶっ潰すんだよ」

 

男の顔には無数の傷が見える。

顔だけではない、服で分からないが体中に暴行を受けた傷がこの男にはある。

 

「近衛 遊伸をぶっ潰すんだよ!!!」

 

男は夜のダイモン・エリアで吼える。

吠えた後暫く息を荒くしていると、後ろから近づいて来る足音を聞く。

 

「…惨めな獣が喚いているな」

 

足音の方向から声が聞こえると、男は振り向く。

 

「…何だテメェら!」

 

男が振り向いた先には三人、一人が前に出ていて、残りの二人が後ろに控えている。

先程の声は前の一人が発したようだ。

 

「敗者が喚く様、これ程見苦しい物は無いだろう……だがその闘争心、嫌いではないぞ?」

 

「何ぶつくさ言ってやがる! とっとと…」

 

失せろ、そう言おうとすると、前の一人の一言がそれを遮る。

 

「くれてやろうか? その近衛 遊伸と言う男に勝てるカードを」

 

この言葉に男の表情が変わる。

この男は元々強力なレアカードへの執着が強い。

さらに遊伸に勝てると言われれば食いつかずにはいられない。

 

「な、何だと!? おい! 本当にそんなカードがあるのか!」

 

「…あのカードを渡せ」

 

前の一人が後ろの二人の内の一人に命じる、前にいる一人はリーダー格のようだ。

命じられた一人が前に進み出て男にカードを差し出す。

 

「どうぞ、受け取りなさい」

 

声からして女性のようだ。

男はカードを受け取り、カードを見る。

 

「!? こ、こいつは…」

 

「それは”闇のカード”だ……ダイモン・エリアで生きる人間なら聞いた事があるだろう?」

 

男は驚き顔を上げる。

 

「闇のカード!? 勿論知ってるぜ……へへへ、こいつさえあれば……」

 

男は闇のカードを前にして気分を高揚させていたが、ふと冷静になる。

 

「…おい、俺にこのすげぇカードを渡して、何が目的だ?」

 

男がそう聞くと、リーダー格の男は笑みを浮かべながら答える。

 

「理由は二つ、一つ目は先程も言ったが、敗者が喚く様、これ程見苦しい物は無い……不愉快なのだよ、喚かれると」

 

その言葉に男は怒りを覚えるが、闇のカードの事があるので堪える。

 

「二つ目、これも先程言ったな、その闘争心、嫌いではない。 見せて貰おうか、お前のその”闘争心”を」

 

「…ふん、何でもいい、とにかくこれはもらって置くぞ」

 

そう言って男が立ち去ろうとすると、女が呼び止める。

 

「待ちなさい、これを…」

 

女は黒いガラスの板を男に渡す。

 

「ああ? 何だそれ?」

 

「お守りよ……もし近衛 遊伸に闇のカードを使っても勝てないと思ったら、これをデュエル中に叩き割りなさい、きっと勝つ事が出来るわ」

 

「はあ? そんな事して何になんだよ!」

 

「いいから……受け取って」

 

よく見れば女は相当な美人である。

女が男に言い寄ると、男は少しうろたえながらガラス板を受け取る。

 

「し、仕方ねえな……貰って置いてやる」

 

「ふふ……ありがとう、それと、近衛 遊伸は明日デュエルアカデミアに行くはずよ」

 

それを聞くと男はにやりと笑い、女に礼を言うとその場を去る。

 

「…よろしいのですか? あの様な者に闇のカードを授けてしまって……」

 

今まで黙っていたもう一人が口を開く、男の声だ。

 

「あら? ”王様”のする事が信用出来ないのかしら?」

 

女がそう言うと、男は女を睨み付ける。

 

「黙れ! 信用出来ないのは貴様ら姉妹だ! 貴様の姉は先月無断でデュエル研を襲撃したそうではないか! 何が目的だこの女狐め!」

 

「…あら? そんな事があったの? 姉さんもお戯れが好きねぇ」

 

男が女を問い詰めるが、女はすました態度で笑う。

 

「騒ぐな、光円寺姉妹が他で何しようと俺の知ったことではない」

 

リーダー格の男が二人に言うと、男はリーダー格の男に頭を下げ、女――光円寺 月子は勝ち誇った様な顔をし、鼻で笑う。

 

「だが光円寺……それが俺の妨げとなるのなら……解っているな?」

 

「…滅相もございませんわ、”王”に逆らうなんて……ああ恐ろしい」

 

「ぐぐ……貴様…!」

 

わざとらしく恐縮する月子に男は腹を立て、歯軋りをしている。

 

「フン、まあいい、行くぞ、この様な場所に長居は無用だ」

 

そう言うとリーダー格の男は二人を引き連れ、暗い夜の道に消えていった。

 

 

* * *

 

 

現在  シティ内陸部  デュエル・アカデミア  体育館前

 

「ナンバーズ展示会面白かったね!」

 

前を歩く空がそう言うと、後ろの遊伸が頷く。

 

「そうだね、でもよかったのかな? 僕達だけで見に来て」

 

「だって私達もうやれる事無かったし、マイルさんにも行くって約束してたからいいの! 皆もその内見に来るでしょ」

 

空がそう言うと、遊伸の後ろを歩いている鋼貴が口を開く。

 

「そうそう、逆に邪魔になっちまうぜ俺達。 それにしてもナンバーズ……ゴールドラットみたいなのもちらほらあったけどよ、それ以上にスゲーカードだらけだったな! 逆に遊伸みたいにゴールドラットに当たる方が難しいんじゃねぇか?」

 

鋼貴は笑いながら遊伸の背を突く。

 

「ゴ、ゴールドラットだって悪くないよ……手札交換とか…」

 

「おお……本当にいやがった、おい!」

 

突然後方から遊伸達を呼ぶ声が聞こえる。

遊伸達は一斉に声の方向へ向くと、傷だらけの顔の男が立っていた。

 

「会いたかったぜぇ……近衛 遊伸」

 

目の前の男、遊伸にとって、因縁のある男。

シティで一番初めにデュエルした相手であり、二度打ち倒した男。

 

「獏葉……獏葉 剛! な、何でここに……そしてその傷は……」

 

遊伸が驚きの表情で尋ねると、獏葉は笑いながら答える。

 

「お前をぶっ潰しに来たんだよ。 …あの時、俺はダイモン・エリアのルールを破り、そしてその制裁を受けた……それがこの傷だ!」

 

獏葉は自分の顔を親指で指し示す。

 

「今度こそ……今度こそ俺が勝つ! ぶっ潰してやる!」

 

獏葉がいきり立ちそう言うと、鋼貴が前に出てくる。

 

「おいお前! 久しぶりだな!」

 

「うん? …誰かと思えばコントの兄ちゃんじゃねぇか、まだやってんのか?」

 

「あれはコントじゃねー!」

 

獏葉に馬鹿にされ、鋼貴もいきり立つ。

 

「…今はそんな事どうでもいい! おい、話は遊伸から聞いてるぞ! その傷は自業自得だろうが! 逆恨みもいいとこだぜ! それに今の遊伸はダイモン・エリアの時よりずっと強いんだ! お前じゃ遊伸に勝てねぇよ!」

 

鋼貴がそう獏葉に言い切るが、獏葉の表情は崩れない。

 

「フン! 外野がつべこべ言うな! 俺は近衛 遊伸に勝負を持ちかけてんだ、さあどうだ? まさか逃げたりしねぇよな?」

 

獏葉が遊伸にそう言うと、遊伸も前に出る。

 

「…僕も決闘者だ、挑まれたデュエルは受ける!」

 

「くっくっく……そう言うと思ったぜ!」

 

獏葉は決闘盤を展開しようとすると、遊伸が呼び止める。

 

「まって! ここじゃ迷惑がかかる。 移動しよう」

 

「…まあいい、テメーさえぶちのめせればどこだっていいからな」

 

遊伸達は人通りの少ない場所へ移動を始める。

空もそれに続こうとすると、後ろから呼び止める声が聞こえる。

 

「空、一体どうしたの?」

 

空が振り向くと、後ろに雪江が立っていた。

 

「あ、雪ちゃんどうしてここに? 作業は?」

 

「今日の分は殆ど終わったわよ、愛雨が最終チェックしてて、男子達が決闘場で試しにデュエルしてるわ。 私はその間にナンバーズ展示会を見てようと思ってここに来たんだけど……何なのあのガラ悪い人」

 

どうやら雪江は一部始終を見ていた様である。

 

「これから遊伸があの人とデュエルするの、一緒に来る? 詳しい話は歩きながらで」

 

空が雪江を誘うと、雪江は少し考えてから頷く。

 

「行く、遊伸さんのデュエルを見てみたいし、ナンバーズはまた後でも見れるから」

 

「オッケー、じゃ行こ」

 

空と雪江は遊伸達に続いて移動した。

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部  デュエル・アカデミア  図書館前

 

遊伸達は人通りの少ない図書館前に来ていた。

遊伸と獏葉は適当な距離を取り、お互い向き合って決闘盤を展開する。

 

「空の話通りなら、遊伸さんは有利ね、その《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に気を付ければいいんだから」

 

「その通りだ、それに遊伸はもうダイモン・エリアの時とは比べもんにならねぇ程成長してる! XX-セイバーだってあるんだ、負けやしねぇ!」

 

雪江の言葉に、鋼貴も同調する。

 

「二人とも、そうとは限らないよ」

 

雪江と鋼貴の見解に空が異議を唱える。

 

「私はあの人のデュエルを直接見た事無いからはっきり言えないけど、あの人もう2回も遊伸とデュエルしてるんでしょ? 流石に同じ戦術じゃないんじゃないかな。 それにあの人の表情、余裕そうでしょ? きっと何か勝算があるんだよ」

 

「…まあ、そうじゃなきゃ挑んでこねぇよな普通」

 

「成る程…」

 

二人は空の意見に納得した。

雪江は空の顔を見る、真剣な顔付きであった。

遊伸が有利であるという事に反論したが、その顔に心配の色は無く、遊伸が負けるかもしれない、などという不安は見られない。

遊伸は勝利する、迷い無くそう信じているのである。

 

「(ホントデュエルになると人が変わるわこの子、ここだけ見てると、学校の重大イベントを度忘れする子にはとても見えないわね)」

 

雪江は空の顔を見ながらそう思った。

 

一方遊伸達のデュエルも始まろうとしていた。

 

「行くぞ!」

 

「ぶっ潰してやる!」

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

先攻 獏葉

 

「俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:5+1

 

「魔法カード《おろかな埋葬》を発動! デッキからモンスター、《サモン・リアクター・AI》を墓地に送る!」

 

「リアクター…… ジャイアント・ボマー・エアレイドのパーツ…」

 

遊伸は緊張により気が引き締まるのを感じる。

ジャイアント・ボマー・エアレイド、かつて苦しめられた獏葉の切り札、それを召喚する為の3体のパーツ、それが《リアクター》なのである。

 

「さらに魔法カード《死者蘇生》を発動! 《サモン・リアクター・AI》を墓地から特殊召喚だ! 来い!」

 

獏葉の場にサモン・リアクター・AIが現れる。

眼に付いたライトを光らせ、両肩のプロペラを回す。

 

ATK:2000

 

「《トラップ・リアクター・RR》を召喚!」

 

続けて獏葉の場にトラップ・リアクター・RRが現れる。

 

ATK:800

 

「まだだぜ! 魔法カード《二重召喚》を発動! このターン俺はもう一度通常召喚が出来る!」

 

「もう一度……まさか!?」

 

遊伸が驚いた様に言うと、獏葉は笑みを浮かべる。

 

「そのまさかよ! 《マジック・リアクター・AID》を召喚!」

 

場にマジック・リアクター・AIDが現れる。

場に3体のリアクターが並び、3体が一緒に共鳴音を鳴らし、眼を光らせる。

 

ATK:1200

 

「合体だ! 場のリアクター3種類を墓地に送り、デッキから《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を特殊召喚するぜ!」

 

場の3体が変形、合体すると、巨大な爆撃機であるジャイアント・ボマー・エアレイドが現れる。

 

ATK:3000

 

「し、しまった……こんなに早く出てくるなんて……」

 

遊伸はジャイアント・ボマー・エアレイドを見上げながらそう言う。

この早さでの登場は遊伸にとって予想外であった。

 

「へっへっへ……最初に出しちまえば、お前は思う様に動けねぇぜ」

 

獏葉は勝ち誇った様に笑う。

 

「何だよ空! 変わってねーじゃんか!」

 

鋼貴がそう言うと、空はまたしても異議を唱える。

 

「使ってるモンスターは一緒だけど、戦術が違うよ。 …これ、遊伸が私に使った戦術と似てるね」

 

獏葉が行った戦術は、相手の遊伸が大会の時、空へ使った戦術、除去のし難い大型モンスターを初ターンで召喚し、相手の動きを牽制する戦術である。

遊伸の場合、スターダスト・ドラゴンをシンクロ召喚し、大型モンスターによる威圧、効果破壊と空が使用するフィールド魔法《デザートストーム》への牽制を行っている。

獏葉の場合、それをジャイアント・ボマー・エアレイドで行った。

ジャイアント・ボマー・エアレイドは3000という高い攻撃力に加え、自分のターンに手札一枚を墓地に送り、相手の場のカードを破壊する効果と、相手のターンに一度、召喚、特殊召喚、セットされた時、そのカードを破壊し、800ポイントのダメージを与える効果を持つ。

上手く使いこなせば、その制圧力はスターダスト・ドラゴンを凌駕するのだ。

 

「俺はカードを伏せてターンエンドだ」

 

LP:8000

手札:0

モンスター

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

魔法・罠

・セット

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:5+1

 

「ここで永続罠《魔封じの芳香》を発動! こいつが場にある限り、お互いに魔法はセットしなければ使えず、セットしたカードは次の自分のターンまで発動出来ない! …これで魔法も封じたぜ」

 

魔封じの芳香、ダイモン・エリアでも獏葉が終盤で使用したカードである。

これによりジャイアント・ボマー・エアレイドが防ぐ事が出来ず、即座に使用出来る魔法カードをセットさせる事で、ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果で破壊する、という戦術である。

 

「くっそー……悔しいほど理想的なコンボだぜ……遊伸、何とか突破してくれよ…」

 

鋼貴が悔しそうにジャイアント・ボマー・エアレイドを見上げた後、遊伸を見て呟く。

 

「(勝負は……獏葉次第だ!) 相手の場にのみモンスターが存在する場合、このカードはレベル4扱いで特殊召喚する事が出来る! 《レベル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

遊伸の場にレベル・ウォリアーが現れる。

場に立つと、胸部と頭部の星のマーク全てが点滅する。

 

ATK:300

 

「…破壊はしねぇ、続けろ」

 

獏葉はレベル・ウォリアーを破壊しなかった。

ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果は1ターンに一度、破壊するカードは慎重に選ばなくてはならない。

獏葉が狙っているのは通常召喚モンスター、またはチューナーモンスターである。

前者は基本1ターンに一度のみの召喚方法、先程のレベル・ウォリアーの様に単体で特殊召喚出来るモンスターは少なく、これを潰してしまえば召喚の手はほぼ無くなる。

後者は獏葉が最も危惧しているモンスター、スターダスト・ドラゴンをシンクロ召喚される可能性があるからである。

スターダスト・ドラゴンが現れた時点でジャイアント・ボマー・エアレイドの効果は封殺されたも同然であり、遊伸は以降のターンで魔法・罠を駆使してジャイアント・ボマー・エアレイドを破壊しに来る、獏葉はそう考えていた。

 

「(レベル4のチューナーなら確実に潰す! どちらか片方でも潰す、他のシンクロでもモンスター・エクシーズでも厄介な奴がいる可能性はある、出させてから破壊して、蘇生制限をクリアさせて蘇生されても面倒だしな)」

 

獏葉がそう考えていると、遊伸が手札からカードを一枚取り出し、召喚する。

 

「僕はレベル4の《XX-セイバー ボガーナイト》を召喚!」

 

遊伸の場に逞しいゴブリンの騎士が現れる。

四本の角の付いた兜と赤いマントを身に付け、腕には光り輝くレイピアを持っている。

名前の通り騎士なのだが、ゴブリンなのであまり騎士らしい精悍さは感じられない。

 

ATK:1900

 

レベル4、そう聞いた獏葉はすかさず効果を発動させる。

 

「それだぁ! ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動! 撃ち抜けぇ! 《シャープ・シューティング》!」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドがボガーナイトに反応、捕捉すると、ボガーナイトがいる地上に機銃を乱射する。 弾はボガーナイトごと地上を撃ち抜き、ボガーナイトは爆散する。

 

遊伸 LP:8000→7200

 

「へっ、シンクロもエクシーズもさせねぇよ……ん?」

 

獏葉がボガーナイトが爆散して出来た爆煙をよく見ると、そこに何かが立っていて、鋭い眼光を獏葉に向けている。

 

「な、何だ!? モンスターは破壊したはず……」

 

「ありがとう……そしてすまない、ボガーナイト」

 

煙幕が消えると、そこにはパロムロが立っていた。

遊伸は小声でボガーナイトに礼を言うと、この状況の説明を始める。

 

「獏葉、僕はボガーナイトの効果発動していた! ボガーナイトは召喚に成功した時、手札からレベル4以下の《X-セイバー》と名のついた モンスター1体を自分の場に特殊召喚する事が出来る、僕はその効果により、手札からチューナーモンスター《X-セイバー パロムロ》を特殊召喚したんだ!」

 

ATK:200

 

「ば、馬鹿な、特殊召喚だと…」

 

予想外な事に獏葉は動揺している。

 

「レベル4かチューナーを破壊しに来るのは読んでいたよ、だから僕はレベル4で、比較的能力が高いボガーナイトを囮にして、本命のチューナーを特殊召喚したんだ」

 

「おし! 上手いぞ遊伸! 駆け引き勝ったぜ!」

 

鋼貴が遊伸に称賛を送る。

 

「行くぞ! レベル4《レベル・ウォリアー》に、レベル1《X-セイバー パロムロ》をチューニング!」

 

パロムロが1つの光輪へと姿を変え、レベル・ウォリアーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣に名を連ねし銃士よ! 立ち塞がる敵を討ち、勝利の号砲を上げよ! シンクロ召喚! 荒野の英雄、 《X-セイバー ウェイン》!!」

 

光の柱からウェインが現れる。

腰の二丁銃剣を抜き放ち構える。

 

ATK:2100

 

「ウェインの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、手札からレベル4以下の戦士族モンスターを一体特殊召喚することが出来る! 僕は手札から《XX-セイバー フラムナイト》を特殊召喚する!! 《セイバーズ・テキサス》!!」

 

ウェインが空に向かって号砲を上げると、場にフラムナイトが現れる。

 

ATK:1300

 

「これでX-セイバーが場に2体! このカードは場に2体以上《X-セイバー》がいる時、特殊召喚する事が出来る! 来い! 《XX-セイバー フォルトロール》!」

 

続けて遊伸の場にフォルトロールが現れる。

ゴーグルが発光すると剣を振り上げ、構える。

 

ATK:2400

 

「フォルトロールの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地からレベル4以下の《X-セイバー》と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する事が出来る! 墓地から《XX-セイバー ボガーナイト》を特殊召喚! 《セイバー・リライブ》!」

 

フォルトロールが地面に大剣を突き刺すと、隣にXの文字が現れ、そこからボガーナイトが現れる。

 

ATK:1900

 

遊伸の場に4体のモンスターが並んだ。

 

「凄い……魔法も罠も使えない、さらには召喚モンスターを破壊する大型モンスターがいる、そんな状況でこれだけ場にモンスターを並べるなんて……」

 

雪江が驚いていると、獏葉は突然笑い出す。

 

「くっくっく……それがどうしたってんだ? 何が出てくんのかと思えば、全部攻撃力がジャイアント・ボマー・エアレイドより下じゃねーか! 手札も後1枚、それでどうするつもりだ? 次以降の俺のターンで蹴散らしてやる!」

 

「そうだった! X-セイバーは全体的に攻撃力が低い! 遊伸は魔法と罠でそれを補っていた! だが今は使えないし……遊伸! どうするんだ!」

 

鋼貴は思わず遊伸に問いかけると、遊伸は振り向き笑ってみせる。

 

「大丈夫だよ、僕には”最強の(X-セイバー)”があるから」

 

「さ、”最強の(X-セイバー)”…? そりゃ一体……うおっ!」

 

鋼貴がさらに聞こうとすると、空が先程鋼貴が遊伸にやった様に鋼貴の背中を突く。

 

「遊伸は大丈夫だってさ、心配なのは解るけど、もうちょっと遊伸を信じようよ」

 

「…そうだな、悪ぃ、信じてなかった訳じゃないんだが……ついな」

 

鋼貴はようやく落ち着きを見せる。

 

「ほーう? そんなもんが本当にあるのか?」

 

話を聞いていた獏葉がにやけ面で遊伸に聞くと、遊伸は再び獏葉に向き直る。

 

「ああ、そして今! その”剣”を召喚出来る!」

 

「何!?」

 

獏葉は驚く、ここからさらにモンスターを召喚するのか、と。

 

「行くぞ! レベル6《XX-セイバー フォルトロール》に、レベル3《XX-セイバー フラムナイト》をチューニング!」

 

「くそっ! そのチビがチューナーか!」

 

フラムナイトが自身を3つの光輪へと変え、フォルトロールを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣を束ねし長よ、今こそ先陣へと立ち、X-セイバーの名の下にて剛剣を振るえ! シンクロ召喚! X-セイバー最強の剣《XX-セイバー ガトムズ》!!」

 

光の柱から姿を現したのはX-セイバーを指揮する総剣司令ガトムズ。

しかし以前感じた”総剣司令”としての荘厳な威圧感は無く、感じられるのは戦いに赴く”一人の戦士”の決意、その決意によって定められた信念による気迫であった。

 

ATK:3100

 

「こ、攻撃力3100だとぉ…!?」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドを上回る攻撃力に獏葉は驚愕する。

 

「こ、こいつ……デザイン画で見た時は元の奴の絵違い位に思ってたが……まるでちげぇ」

 

「うん……ステータスとか、所々違いはあるけど、一番違うのは雰囲気……これがあの”ガトムズ”なの?」

 

鋼貴と空は総剣司令とのあまりの違いに驚いている。

 

「…総剣司令ガトムズは人々を、そして仲間を守る為、”総剣司令”ではなく、”一人の(X-セイバー)”として前に立ち、戦う事を選んだんだ! 行くぞ! XX-セイバー ガトムズでジャイアント・ボマー・エアレイドを攻撃!」

 

ガトムズは鉄仮面の奥の眼を光らせると、鎧中にその光と同じ光のラインが走る。

そして剣を手にジャイアント・ボマー・エアレイドに斬りかかる。

 

「《ダブルクロス・セイバー》!!!」

 

ガトムズが剣を横に振るうと、ジャイアント・ボマー・エアレイドの胴体が真っ二つ、地面に落下し、爆発する。

 

「うおおお! お、俺のエアレイドが……」

 

獏葉 LP:8000→7900

 

「続けてウェイン、ボガーナイトで攻撃!」

 

ガトムズに続いてボガーナイトがレイピアで獏葉を突き、ウェインは獏葉に狙いを定め、弾丸を放つ。

 

「ぐおおお!!」

 

獏葉 LP:7900→6000→3900

 

「僕はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:7200

手札:0

モンスター

・X-セイバー ウェイン

・XX-セイバー ボガーナイト

・XX-セイバー ガトムズ

魔法・罠

・セット

 

「よっしゃあ! もう遊伸の勝ちが決まったんじゃねぇか?」

 

「鋼貴先輩、授業で習いませんでしたか? 「デュエルは最後まで分からない」、私も遊伸さんが負けるとは思っていませんが、見てる側も気を緩めたら駄目ですよ」

 

浮かれている鋼貴を雪江が窘める。

 

「おぅ……後輩に言われちまった……」

 

「中等部で習うよね? 後輩の私達ですら知ってるのに、差がついちゃったねぇ、鋼貴」

 

以前鋼貴に言われた事を根に持っていたのか、空が得意げな顔で、殆ど同じ事を鋼貴に言う。

 

「く、くそう……だが雪江ちゃんの言う通りだ、アイツに油断は大敵なんだ」

 

「? どういう事ですか」

 

雪江が鋼貴に問いかける。

 

「遊伸がアイツと最初にデュエルした時だったんだがな、アイツ、ピンチの時に妙に引きがよかったりするんだよな……もしかしたら今回も……」

 

獏葉は焦る、こんなにもあっさりと切り札を倒されるなど思っても見なかった。

まだ”闇のカード”も使っていない、このまま終わるのは我慢出来ない。

 

「(くそが……まだ、終われるかよ!) 俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「俺はカードを伏せてターンエンド」

 

LP:3900

手札:0

モンスター

・なし

魔法・罠

・魔封じの芳香

・セット

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「バトル! ガトムズで直接攻撃! 《ダブルクロス・セイバー》!」

 

ガトムズが獏葉に斬りかかろうと構える。

 

「永続罠《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》を発動! レベル4以上は攻撃が出来なくなるぜ!」

 

遊伸の場に重力の網が現れると、遊伸の場のX-セイバー達全員が動けなくなる。

 

「ちくしょう! 今回もかよ!」

 

鋼貴が悔しそうに言う。

 

「でも決して遊伸が不利になった訳じゃないよ、動けないのは相手も一緒、遊伸だって戦力を整えておけるよ」

 

空が場を見ながら鋼貴を宥める。

 

「…まあそうだな、遊伸! 速いとこ突破しちまえ!」

 

鋼貴がそう言うと、遊伸は振り向いて頷く。

 

「僕はこれでターンエンド!」

 

LP:7200

手札:1

モンスター

・X-セイバー ウェイン

・XX-セイバー ボガーナイト

・XX-セイバー ガトムズ

魔法・罠

・セット

 

「俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「…俺はカードを伏せてターンエンド」

 

LP:3900

手札:0

モンスター

・なし

魔法・罠

・魔封じの芳香

・グラヴィティ・バインド-超重力の網-

・セット

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「…カードを伏せてターンエンド」

 

LP:7200

手札:1

モンスター

・X-セイバー ウェイン

・XX-セイバー ボガーナイト

・XX-セイバー ガトムズ

魔法・罠

・セット

・セット

 

「くそ~じれって~どっちも動けねぇのかよ~」

 

「何だか今日の鋼貴落ち着きがないね……」

 

空が鋼貴に呆れた様子で言う。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

 

「(…このままだと奴の戦力が増える一方だ……一か八か、賭けてやる!)」

 

獏葉は引いたカードを手札に加えると、伏せていたカードを発動する。

 

「魔法発動! 《マジック・プランター》! 自分の場の永続罠1枚を墓地へ送ってデッキからカードを2枚ドローだ! 俺が送るのは《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》だ!」

 

獏葉 手札:1+2

 

「(自分からグラヴィティ・バインドを!? 何故魔封じの芳香じゃないんだ? グラヴィティ・バインドが無くなって不利になるのは自分なのに…)」

 

遊伸は獏葉の思いがけない行動に驚いていると、獏葉の顔に笑みが広がり、笑い出す。

 

「…アッーハッハッハッハッハ! 流石は俺だ! ここでこの手札とは!」

 

「な、何だ…?」

 

突然笑い出した獏葉に遊伸が動揺していると、獏葉が遊伸を指差す。

 

「見てな! 俺の新しい切り札……”闇のカード”を見せてやる!!」

 

「や、闇のカード!?」

 

獏葉の”闇のカード”という言葉に遊伸達は戦慄する。

 

「な、何でテメーがそれを持ってやがるんだ!!」

 

鋼貴が獏葉に向かって怒鳴る。

 

「喧しい! テメーには関係ねぇよ! 大人しく見てな! 俺は《アンノウン・シンクロン》を特殊召喚!」

 

獏葉の場にアンノウン・シンクロンが現れる。

鋼貴も使用したチューナーモンスターである。

 

ATK:0

 

「こいつはさっきのお前のモンスターと同じだ、相手にいて自分にいない時に特殊召喚出来る、そして《可変機獣 ガンナードラゴン》を通常召喚!」

 

続いて獏葉の場に機械の竜の頭と尻尾を付けた戦車が現れる。

 

ATK:2800

 

「ガンナードラゴンはレベル7だがリリース無しで召喚する事が出来る! その代わり攻守が半分になるが……そんな物は関係ねぇ!」

 

ATK:2800→1400

 

「レベル1チューナー、レベル7……シンクロ召喚か!」

 

遊伸は思い出す、今までの闇のカードは全てシンクロモンスターである事を。

 

「その通りよ! 行くぜ! レベル7《可変機獣 ガンナードラゴン》に、レベル1《アンノウン・シンクロン》をチューニング!」

 

アンノウン・シンクロンが自身を一つの光輪へと変え、 ガンナードラゴンを囲い、7つの光に変わった途端、光が黒くなり、漆黒の柱となる。

 

「暗闇の底より聞こえし慟哭よ! 死神の鎧をまとい……姿を現せ! シンクロ召喚! きやがれ! 《ダーク・フラット・トップ》!!」

 

漆黒の柱から現れたのは巨大な空飛ぶ戦艦、空母である。

その空母は闇のカード特有の威圧感を放ち、遊伸達の頭上で制止している。

 

DEF:3000

 

「お、大きい……何なんだこの船は…」

 

遊伸は驚きながらダーク・フラット・トップを見上げる。

 

「空……この感じ……前の強盗の時とは少し違うけど……同じ不正カード?」

 

雪江が不安そうに空に尋ねる。

 

「うん、そうみたい……大丈夫だよ、きっと遊伸が倒してくれるから」

 

空はそう言うと不安そうな雪江に寄り添う。

 

「さあ……ダーク・フラット・トップ! 効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地に存在するレベル8の機械族を一体、召喚条件を無視して特殊召喚出来る! 来い! 《ジャイアント・ボマー・エアレイド》!」

 

ダーク・フラット・トップが自身の甲板にエネルギーを集中させると、そのエネルギーからジャイアント・ボマー・エアレイドが現れ、ダーク・フラット・トップから出撃する。

 

ATK:3000

 

「そ、そんな……ジャイアント・ボマー・エアレイドが復活するなんて…」

 

ダーク・フラット・トップの能力に、遊伸は再び戦慄を感じる。

総力を挙げて倒したジャイアント・ボマー・エアレイドを容易く蘇生させてしまったのだ。

 

「嘘だろ……大抵の合体モンスターには厳しい蘇生制限が掛けられている、それだけ強ぇからだ。 高尾のXYZにだって”墓地からの特殊召喚が出来ない”って制約がある、あのジャイアント・ボマー・エアレイドにだってそういう制約があるはずだ! なのにそれを無視して特殊召喚だとぉ! インチキ効果もいい加減にしろ!」

 

「インチキ効果? ああそうさ、それが闇のカードなんだよ」

 

獏葉は鋼貴を軽くあしらうと再び遊伸に向き合う。

 

「さあ行くぜ! ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動! 手札を1枚墓地に送り、相手のカードを1枚破壊する! 破壊するのは当然《XX-セイバー ガトムズ》! くらえ! 《デス・ドロップ》!」

 

墓地に送ったカード

リボルバー・ドラゴン

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドが飛び立ち、 ガトムズの上に大きな爆弾を落とすと、 ガトムズは爆発により吹き飛ばされて消滅してしまう。

 

「ガトムズ!?」

 

「まだ終わりじゃねぇぞ! ジャイアント・ボマー・エアレイドでX-セイバー ウェインを攻撃! 《デス・エアレイド》!」

 

今度はミサイルを3発ウェインに向かって放つと、ガトムズと同様にウェインも吹き飛ばされてしまう。

 

「くうう! ウェイン……ここで墓地のパロムロの効果発動! 自分の場の《セイバー》と名の付くモンスターが戦闘破壊され墓地に送られた時、LPを500払う事でこのカードを特殊召喚する事が出来る! パロムロを守備表示で特殊召喚!」

 

遊伸 LP:7200→6300

 

遊伸の場にパロムロが現れると、防御体勢を取る。

 

DEF:300

遊伸 LP:6300→5800

 

「これでターンエンドだ! 思い知ったか! 俺と闇のカードの力をな!」

 

LP:3900

手札:0

モンスター

・ダーク・フラット・トップ

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

魔法・罠

・魔封じの芳香

 

「おいやべぇぞ……遊伸はこの状況を突破出来るのか?」

 

鋼貴の言う様に、遊伸にとっては厳しい状況である。

ダーク・フラット・トップがいる限り、ジャイアント・ボマー・エアレイドは何度でも蘇生される。

遊伸は守備力3000のダーク・フラット・トップを倒しつつ、残ったジャイアント・ボマー・エアレイドも倒さなければならない。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「(駄目だ、今の手札じゃ…) 僕はボガーナイトを守備表示に変更してターンエンド」

 

DEF:1000

 

LP:5800

手札:2

モンスター

・XX-セイバー ボガーナイト

・X-セイバー パロムロ

魔法・罠

・セット

・セット

 

「手が尽きたようだな! 俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動! 手札を墓地に送り、《XX-セイバー ボガーナイト》を破壊だ! 《デス・ドロップ》!」

 

墓地に送ったカード

ダークシー・レスキュー

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドが飛び立つと、ボガーナイトに爆弾を落とし、爆発させて破壊する。

 

「続けて攻撃だ! 《デス・エアレイド》!」

 

次にミサイルを3発パロムロに向かって放ち、破壊する。

 

「X-セイバー達が……」

 

優勢時に4人いたX-セイバーが全て全滅してしまった。

遊伸は改めてジャイアント・ボマー・エアレイドの恐ろしさを知る。

 

「俺の手に掛かればこんなもんだ、ターンエンド」

 

LP:3900

手札:0

モンスター

・ダーク・フラット・トップ

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

魔法・罠

・魔封じの芳香

 

「モンスターが……空、遊伸さん、大丈夫かしら……」

 

雪江が不安そうに空に聞くと、空は笑顔で答える。

 

「大丈夫だよ! だって遊伸の顔、諦めてないもん!」

 

「おー本当だ、雪江ちゃん、安心しろ、遊伸があの顔なら必ず引き当てるぜ……逆転のカードをな!」

 

先程まで無かった鋼貴の確信めいた発言、今まで何度も、そして誰よりも多く遊伸のデュエルを見て来た鋼貴には解る、遊伸の土壇場での引きの強さを。

 

「(後……後一つ、来てくれ!) 僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:2+1

 

「…来た! 僕は伏せていた速攻魔法《禁じられた聖杯》を《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に対して発動!」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドの頭上に聖杯が現れると、聖杯が傾き、中の液体がこぼれると、その液体は粒子となり、ジャイアント・ボマー・エアレイドに降り注ぐ。

 

「な、何だ!? 何をしやがった!」

 

その様子を見ながら獏葉が喚く。

 

「《禁じられた聖杯》は対象モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる代わりに、効果を無効にする事が出来る。 このターン、ジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力は400アップし、効果は無効化される!」

 

ATK:3000→3400

 

「な、何!? ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果を無効にするだと!?」

 

「これで僕は展開を妨害されない! 行くぞ! 墓地に《X-セイバー》が2体以上存在し、自分の場にモンスターが存在しない時、このカードは手札から特殊召喚する事が出来る! 来い! 《XX-セイバー ガルドストライク》!」

 

遊伸の場にガルドストライクが現れる。

腕の曲剣を振るい、咆哮を上げる。

 

ATK:2100

 

「さらにチューナーモンスター《アタック・ゲイナー》を召喚!」

 

続けて遊伸の場に特殊なアーマーを身に付けた少年が現れる。

長く赤い髪を靡かせて、相手に向かって身構える。

 

ATK:0

 

「レベル5《XX-セイバー ガルドストライク》に、レベル1《アタック・ゲイナー》をチューニング!」

 

アタック・ゲイナーが1つの光輪へと姿を変え、ガルドストライクを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「十の剣に名を連ねし新たな戦士よ! 華麗なる技を持って戦場に舞え! シンクロ召喚! 切り開け! 《XX-セイバー ヒュンレイ》!!」

 

光の柱から現れたのはヒュンレイ。

場に降り立つと剣を鞘から抜き放ち、構える。

 

ATK:2300

 

「ここでアタック・ゲイナーの効果発動! シンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、相手の場に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで1000ポイントダウンさせる! 《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の攻撃力を1000ポイントダウン!」

 

ATK:3400→2400

 

「攻撃力を!? くそ! だがまだこっちの方が上だぜ!」

 

そう言いながら獏葉は一つの疑問が浮かんだ。

何故ヒュンレイより攻撃力の高い《大地の騎士 ガイアナイト》をシンクロ召喚しなかったのか、と。

ガイアナイトを出せばジャイアント・ボマー・エアレイドの攻撃力を上回っていたのである。

 

「(プレイングミスか? だとしたらとんだマヌケだぜ)」

 

「さらにヒュンレイの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、場の魔法・罠を3枚まで選択して破壊出来る! 《魔封じの芳香》を破壊! 《クロス・ソードダンス》!!」

 

ヒュンレイが獏葉の場に躍り出ると、 剣を振るい、魔封じの芳香を真っ二つにする。

 

「お、俺の罠をよくも…(これが狙いか!?)」

 

「これで自由に魔法を使う事が出来る! 僕は装備魔法《剣の煌き》を《XX-セイバー ヒュンレイ》に装備!」

 

装備魔法が発動すると、ヒュンレイの剣に光が射し込み、煌く。

 

「バトル! ヒュンレイでジャイアント・ボマー・エアレイドを攻撃! 《ダブルクロス・スラッシュ》!」

 

ヒュンレイがジャイアント・ボマー・エアレイドに向かって跳躍する。

 

「馬鹿め! 返り討ちだ! 《デス・エアレイド》!」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドが向かって来るヒュンレイにミサイルを3発放つ。

 

「ダメージステップ時に罠カード《身剣一体》を発動! このカードは場に《X-セイバー》が1体のみ存在する場合に発動出来る! このカードは装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる! ヒュンレイに装備!」

 

ATK:2300→3100

 

ヒュンレイはミサイルを全て剣で打ち落とすと、ジャイアント・ボマー・エアレイドの上に乗り、剣を突き刺した後引き抜き、上から跳び退く。

するとジャイアント・ボマー・エアレイドは機能を停止し、墜落、地上に激突すると爆散する。

 

「ぐおお! くそっ! だがダーク・フラット・トップがいる限り、ジャイアント・ボマー・エアレイドは不滅だ!」

 

獏葉 LP:3900→3200

 

「ここで身剣一体の効果発動! 装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、カードを1枚ドローする!」

 

遊伸 手札:0+1

 

「そしてもう一つの装備カード、剣の煌きの効果発動! 装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手の場に存在するカード1枚を破壊する事が出来る! 《ダーク・フラット・トップ》を破壊!」

 

「な、何だとぉぉぉ!!!」

 

ヒュンレイが剣を掲げると、剣にエネルギーが集中し、輝き始める。

ヒュンレイはそのエネルギーを剣先からダーク・フラット・トップに向けて放つ。

エネルギーはダーク・フラット・トップに命中すると、黒煙を上げ轟沈する。

 

「馬鹿な……闇のカードが倒されるだとぉ……」

 

獏葉は轟沈するダーク・フラット・トップを見ながら歯を食いしばる。

 

「僕はこれでターンエンド!」

 

LP:5800

手札:1

モンスター

・XX-セイバー ヒュンレイ

魔法・罠

・身剣一体

・剣の煌き

 

「よっしゃー! 大逆転だ! よくやった遊伸!」

 

鋼貴が腕を振り上げ遊伸を称賛する。

 

「やったやった! 雪ちゃん遊伸やったよ!」

 

「本当に逆転してしまうなんて……」

 

空は驚いて呆然としている雪江の手を取り跳びはねている。

 

「くそっ! うるせーぞ外野ぁ!!! くそ! くそ! くそぉ! 俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「ぐぐぐ……モンスターをセットしてターンエンド!」

 

LP:3200

手札:0

モンスター

・セット

魔法・罠

・無し

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「(ここは畳み掛ける!) 装備魔法《ビッグバン・シュート》を発動! 装備モンスターの攻撃力を400ポイントアップ! そして守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える! ヒュンレイに装備!」

 

ATK:3100→3500

 

ヒュンレイにビッグバン・シュートが装備されると、ヒュンレイの体から目に見える程の闘気が湧き出す。

 

「バトル! ヒュンレイでセットモンスターに攻撃! 《ダブルクロス・スラッシュ》!」

 

ヒュンレイがセットモンスターを斬り付ける。

 

セットモンスター:メカ・ハンター  DEF:800

 

「ぐわぁぁぁ!!!」

 

獏葉 LP:3200→500

 

「モンスターを戦闘破壊した事により身剣一体の効果により1枚ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「僕はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:5800

手札:1

モンスター

・XX-セイバー ヒュンレイ

魔法・罠

・身剣一体

・剣の煌き

・ビッグバン・シュート

・セット

 

「ぐぐぐ……くそ……」

 

また負ける、嫌だ、そんなのは嫌だ、獏葉の中のプライドがそう叫ぶ。

 

「くそぉぉぉぉぉーーーーー!!!」

 

獏葉は思うがままに咆哮を上げる。

 

「おい獏葉! さっきの言葉、そのままそっくり返すぜ! うるせーぞ! それに見苦しいぜ!」

 

「!」

 

鋼貴の「見苦しい」という言葉により獏葉は思い出す、昨晩の事を。

 

 

 

敗者が喚く様、これ程見苦しい物は無い……不愉快なのだよ、喚かれると。

 

 

お守りよ……もし近衛 遊伸に闇のカードを使っても勝てないと思ったら、これをデュエル中に叩き割りなさい、きっと勝つ事が出来るわ。

 

 

 

獏葉は月子の言葉を信じていた訳ではない。

だが獏葉が持つ強大な勝利への執念が獏葉に行動をさせた。

 

「オラァ!!!」

 

獏葉は懐から黒いガラスの板を取り出すと、思い切り地面へ叩きつける。

 

「わっ! また煙幕かっ……て、何だ? ガラス?」

 

鋼貴は獏葉の足元で粉々になったガラスを見る。

 

「何してんだアイツ……ガラスなんてあぶねぇな」

 

「鋼貴! あれ見て! ガラスの所!」

 

鋼貴が空の指差した所を見ると、粉々になったガラスの中にカードが1枚混ざっていた。

どうやらあのガラスの板はケースだったようだ。

 

「何だ? カードかこれ?」

 

獏葉がそのカードを拾い上げようとすると、突然カードが黒いオーラに包まれ、浮かび上がる。

 

「な!?」

 

獏葉だけではない、ここにいる全員が驚愕した。

 

「な、何なんだあれは……」

 

遊伸も警戒して見ていると、突然カード自体が黒いオーラに変わると、獏葉を包み込む。

 

「うおおおおお!!!」

 

「獏葉!?」

 

黒いオーラに包まれもがく獏葉。

やがて獏葉が大人しくなると黒いオーラは獏葉のデッキへと集中し、デッキを覆うとそのまま止まる。

 

「ど、どうしちまったんだアイツ! 動かなくなっちまったぞ!」

 

「そ、空……あれは一体……」

 

「わ、私にも解んない……な、何なの…?」

 

三人も動揺しながら様子を見ている。

遊伸も注意深く獏葉を見ていると、獏葉の体が小刻みに揺れているのが分かる。

 

「獏葉……わ、笑っている…?」

 

「……くっくっく」

 

その笑いは段々と大きくなっていき、遂には高笑いを始める。

 

「アッーハッハッハッハッハッハ!!!」

 

「ば、獏葉……」

 

「な、何だよ!? おかしくなっちまったのか!?」

 

遊伸や鋼貴は呆気にとられる。

遊伸はふと、頭に引っ掛かる物を感じた。

 

「(突然の笑い出し……高笑い……)」

 

遊伸が考えていると、獏葉が高笑いを止め、俯く。

 

「…近衛 遊伸」

 

突然名前を呼ばれ、遊伸は反射的に身構える。

獏葉は顔を上げると、不気味な笑みを浮かべながら叫ぶ。

 

「”闇のデュエル”の始まりだァ!!!」

 




この世界ではダーク・フラット・トップは別に獏葉の為に創られた訳ではないので、エアレイドやリアクター限定だとおかしいと思ったので、ここでのダーク・フラット・トップの効果はダークシンクロのものにさせて貰いました。
リアクター蘇生と誘発効果無くなりましたが、まあ目玉はエアレイドの蘇生なのでいいかな、と。
それにダークシンクロの効果の方がインチキ臭くて”闇のカード”らしいですし。
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