遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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第29話 混沌 ~闇のデュエル~

「”闇のデュエル”の始まりだァ!!!」

 

「!?」

 

獏葉がそう叫んだ瞬間、デュエルの場を黒い炎の壁が囲む。

 

「な、何だ!? く、黒い炎が!?」

 

「おい遊伸! どうしたんだ!」

 

鋼貴が遊伸に声を掛ける。

 

「鋼貴! この黒い炎が突然……」

 

「く、黒い炎? お前まで何言ってんだ! どこも火なんてついてねぇぞ!」

 

鋼貴の言葉に遊伸は驚く。

 

「(こ、鋼貴にはこの炎が見えないのか!? な、なら……)」

 

遊伸は空の方に向き合う。

 

「空! 空は見えるかい? 僕と獏葉を囲っている炎を!」

 

遊伸がそう聞くと、空は困った様子で辺りを見渡す。

 

「み、見えないよ! 遊伸には炎が見えるの?」

 

「(空にも見えない!? …この中にいる僕だけにしか見えないのか……それに、闇のデュエルって一体…)」

 

遊伸は再び獏葉と向き合うと、獏葉は不気味な笑みを浮かべて立っていた。

 

「くっくっく……力が湧いてくる……もう負ける気がしねぇぜ! 俺のターン! ドロー!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスターを5体デッキに戻し、カードを2枚ドローする!」

 

デッキに戻したカード

サモン・リアクター・AI

トラップ・リアクター・RR

マジック・リアクター・AID

可変機獣 ガンナードラゴン

アンノウン・シンクロン

 

獏葉 手札:0+2

 

「クックックック……アッーハッハッハッハッハ!」

 

獏葉は再び笑い出す。

 

「何だってんだよ! 笑うかデュエルするかどっちかにしろ!」

 

「待って鋼貴! ホントに様子が変だよ!」

 

空が獏葉を指し示す、確かに笑っている獏葉の様子が変である。

とても楽しくて笑っている様には見えず、とても異様な様に見え、狂気すら感じさせる。

また一つ、遊伸の記憶にある言葉がよぎる。

 

「(対戦相手の異様な様子……)」

 

遊伸が再び考えを巡らせるが、すぐに現実へと引き戻される事となる。

 

「…ウオォォォォォォ!!! 召喚!!!」

 

獏葉が2枚の手札から1枚を取り出す。

そのカードは先程の黒いオーラで包まれていた。

間違いなくガラスケースから取り出したあのカードである。

獏葉はそのカードを表側攻撃表示で召喚した。

 

「な……何なんだ……このモンスターは……」

 

遊伸達の前に現れたモンスター、それは”黒い何か”、そうとしか言いようがなかった。

その”黒い何か”は獏葉の場の地面付近でただひたすら渦巻いている。

それが気体なのか、液体なのか、固体なのか、生物なのか、無生物なのか、遊伸達には一切理解する事が出来なかった。

 

ATK:0

 

「お、おい……あれは本当にソリッドビジョンなのか…? お、俺にはとてもそうには見えねぇ…」

 

「何なの……姿形はおぼろげに見えるのに、さっきから感じている……あのモンスターの”存在感”は何なの!?」

 

「嘘よ……あれがデュエルモンスターだなんて……」

 

鋼貴、空、雪江はあの”黒い何か”が放つ恐ろしい程の不快感を感じ取っている、目の前で対峙している遊伸はそれ以上の物を感じていた。

 

「(あれを見ているだけで……心の底から”恐怖”が湧き上がって来るのを感じる……このカードは…危険だ!)」

 

遊伸が目の前の物の結論を出していると、獏葉が動きを見せる。

 

「! 何を…」

 

遊伸が見ると、獏葉は自分の墓地からカードを1枚取り出していた。

そのカードは―――闇のカード、ダーク・フラット・トップ。

獏葉は何とそのカードを”黒い何か”に向かって投げつける。

投げられたカード、ダーク・フラット・トップが”黒い何か”に触れると、”黒い何か”はカードをそのまま取り込んでしまう。

 

「カ、カードを……え?」

 

ソリッドビジョンであるはずのモンスターがカードを取り込むのを見て驚く遊伸であったが、今はもっと信じられない光景を目の当たりにする。

何と”黒い何か”が膨張し、姿を変えていく。

大きく、大きく、そして姿を変えていき、遊伸達の頭上へ飛び上がると、完全に姿を変える。

 

「こ、これは……そんな……”ダーク・フラット・トップ”……」

 

”黒い何か”が変えた姿、それは紛れも無くダーク・フラット・トップ。

このモンスターは自分自身が取り込んだカードに姿を変えてしまったのだ。

色は黒いままだが、その形、放つ威圧感は”本物”とまったく変わりが無かった。

 

「…ダーク・フラット・トップの効果発動ォ! 来い! 《ジャイアント・ボマー・エアレイド》ォ!」

 

黒いダーク・フラット・トップの甲板にジャイアント・ボマー・エアレイドが現れ、出撃する。

 

ATK:3000

 

「嘘!? 効果まで同じだなんて!?」

 

「どうなってんだ!? 何なんだあのモンスターは!?」

 

空と鋼貴が驚愕の声を上げる。

 

「さあ行くぜぇぇぇ!! ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果ァ!! 《デス・ドロップ》ゥ!」

 

墓地に送ったカード

フェイク・エクスプロージョン・ペンタ

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドがヒュンレイに爆弾を投下すると、ヒュンレイは吹き飛ばされ、ビッグバン・シュートの効果により次元の彼方へと消え去る。

 

「ヒュンレイ!?」

 

「ぶっ飛べぇぇぇ!!! 《デス・エアレイド》ォ!!!」

 

続けて遊伸に向かって3発のミサイルを発射する。

 

「く……罠カード《ガード・ブロック》を発動! 戦闘ダメージを1度だけ0にしてデッキから1枚ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「くそおぉぉ!! 小細工をしやがってぇぇぇ!! 俺はターンエンドだァ!!」

 

LP:500

手札:0

モンスター

・ダーク・フラット・トップ?

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

魔法・罠

・無し

 

「……このままじゃ……え?」

 

遊伸が策を練っていると、突然黒いダーク・フラット・トップの形が崩れ、縮んでいき、元の大きさ程に戻ると、再び”黒い何か”となる。

 

ATK:0

 

「も、元に戻っちまった……ホントにこいつどうなってんだ?」

 

鋼貴は心底不思議そうな顔をする。

 

「でもこれはチャンスだよ! 元に戻ったって事はもうダーク・フラット・トップと同じじゃない、つまり効果も使えない! それに攻撃力は0、遊伸が黒いのに攻撃力500以上で攻撃すれば遊伸の勝ちだよ!」

 

空はそう言う、しかし黒いダーク・フラット・トップが、”黒い何か”に戻った事で安心したのか、空は明らかに重要な事を見落としていた。

空より幾らか冷静だった雪江が指摘を入れる。

 

「…空、あれはどうやって突破するのかしら」

 

雪江はジャイアント・ボマー・エアレイドを指差す。

 

「…うう……忘れてた……」

 

空の言う通り、遊伸がモンスターを召喚し、攻撃力0の”黒い何か”を攻撃すれば勝負は付くだろう。

しかし、ジャイアント・ボマー・エアレイドがいる限り、召喚をしてもその効果により破壊されてしまうのだ。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:2+1

 

「(このカードは…! …でも僕の手札にはモンスターがいない……頼む! もってくれ!)」

 

「ターンエンド!」

 

LP:5800

手札:3

モンスター

・無し

魔法・罠

・無し

 

「遊伸!? もう手がないのか!?」

 

鋼貴が焦りの混じった声で叫ぶ。

遊伸は既にジャイアント・ボマー・エアレイドを2度退けている。

だが流石に限界であろう。

強力な展開力を誇るXX-セイバーとて万能ではない。

 

「俺のタァーーン!! ドロォー!!」

 

獏葉 手札:0+1

 

「くらいやがれぇぇぇ!!! 《デス・エアレイド》ォ!!!」

 

再び遊伸に向かって3発のミサイルを発射する。

 

「(よし! 後続は無い! これで次に繋がっ…!?)」

 

ミサイルが遊伸付近で爆発する。

 

「うわぁぁぁーーーー!!!」

 

遊伸 LP:5800→2800

 

「くそっ! でかいの貰っちまった! だがこのターン凌いだぞ! これで態勢を…」

 

「待って!? 遊伸の様子がおかしいよ!?」

 

空が鋼貴にそう言って遊伸を指差す。

 

「ぐ……ぐぁ……」

 

遊伸が膝をつき、苦しそうに胸を押さえている。

 

「!? 遊伸! どうした!? 何があった!」

 

鋼貴が必死に遊伸に呼びかける。

 

「(こ……これは……サイコ・デュエルでの痛みとは違う……痛みなんてものじゃない、”僕自身の心”が削り取られた様な感覚だ……)」

 

「遊伸どうしたの! しっかりして! …あの様子、サイコ・デュエルか闇のカードの!?」

 

「だ、だが獏葉はサイコ・デュエリストじゃねぇし、ジャイアント・ボマー・エアレイドだって闇のカードじゃねぇ! …くそっ! 遊伸! しっかりしろ!」

 

鋼貴と空は遊伸の苦しみの原因が分からず、とにかく遊伸に呼びかける。

遊伸は得体の知れない痛みの中、自分の頭の中でパズルの様に記憶を繋ぎ合わせる。

自分が今まで聞いてきた情報を、今子の目で、体で知った情報を、一つ一つ繋ぎ合わせ、組み上げていく。

 

……

…………

………………

……………………

 

 

ランディは舞台の高さが元に戻ると突然笑い出し、そのまま会場から逃げ去った。

 

 

その乗り込んできた男は突然笑い出し、決闘盤を展開すると近藤に向かって拘束装置を使用したのだという。

 

 

それは余りにも”異様”なデュエルであったという。

まずは相手のリーダー、彼は目が血走っていて、常に興奮した様子だった。

一方、近藤はダメージを受ける度に苦しそうにし、デュエルが進むに連れてどんどん弱っていった。

 

 

ある異変が起きる、近藤が倒れたのだ。

相手のリーダーは高笑いをすると走り去ったそうだ。

 

 

異様な様子の相手と同様、そいつは異様なカードを使っていたか? 一言で言えば”形容し難いカード”だ。

 

 

アーノルドが突然後方へよろめき倒れ、そのまま舞台から落下したのである。

救護班が駆けつけ、すぐに病院に運ばれたが、手遅れだったという。

 

 

…リーダー……息してなくて。

 

 

……………………

………………

…………

……

 

「(分かった……分かったぞ……ランディ・ベルタンも、正兄のリーダーを殺した犯人も……持っていたんだ! あのカードを!)」

 

遊伸は”黒い何か”を睨む。

 

「(アーノルド・フラナガンも、正兄のリーダーも、僕と同じ”闇のデュエル”をしたんだ。 同じ様に痛みを受けて、そして負けて……死んだ)」

 

遊伸は服の胸辺りを握り閉める。

 

「(このデュエル……負ける訳にはいかない! ここで逃がせば他の人を襲うかもしれない……そんな事させちゃいけない! そして何より……勝たなければ……)」

 

 

                    僕が死ぬ

 

 

 

「俺はこいつを守備表示に変更してターンエンドだァ!!」

 

DEF:0

 

LP:500

手札:1

モンスター

・???

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

魔法・罠

・無し

 

「あっ!? 守備表示に!」

 

「これじゃダメージが通らねぇ!」

 

空と鋼貴が焦った様に叫ぶ。

これでは獏葉に戦闘ダメージを負わせる事が出来ない。

獏葉に勝利する為の近道が閉ざされてしまった。

ここで遊伸がようやく立ち上がる。

 

「おお! 遊伸大丈夫か! 何があったんだ!」

 

鋼貴は立ち上がった遊伸に声を掛ける。

 

「…鋼貴、空……聞いてくれ……」

 

遊伸が前を向いたまま鋼貴と空に呼びかける。

 

「ど、どうしたの遊伸? 改まって……」

 

空は遊伸の言葉から不安を感じる。

 

「…攻撃を受けて、分かった……今の獏葉は、ランディ・ベルタンと同じなんだ」

 

「な、何!? 何で今ランディが出てくるんだ!」

 

思わぬ人物の名前が出て来た事に対して、鋼貴が遊伸に聞く。

 

「…おそらくだけど、ランディもあのカードを持っていたんだ」

 

遊伸は”黒い何か”を指差す。

 

「そして僕はさっきの攻撃で、サイコ・デュエル以上に命の危険を感じた…」

 

「そ、それってどういう事なの? 遊伸の受けたのはサイコ・デュエルの力じゃないの?」

 

今度は空が遊伸に聞く。

 

「間違いなく違う……そして間違いなくこの力の元凶はあのカード! アーノルド・フラナガンを殺したのも……あのカードだ!」

 

遊伸の言葉に二人は驚く。

 

「ほ、本当なのかよ!? 遊伸!」

 

「…鋼貴、思い出してくれ……ランディや前に話した正兄の事件の犯人の様子を……今の獏葉はそっくりだろ?」

 

遊伸に言われて鋼貴は思い出す。

 

「た、確かに……カードが原因なんて信じられねぇが……目の前の”あれ”を見ちまったら本当にそうだと思えちまう…!」

 

鋼貴は”黒い何か”に目をやる。

ここで空が気付く、そのカードの持ち主とデュエルし、敗北した者の末路に。

 

「待ってよ! それじゃあ今デュエルしている遊伸は……」

 

「…負ければ、多分僕も死ぬ……」

 

「嘘!? 嫌ぁ!! 遊伸引いて!!」

 

「遊伸!!!」

 

空が叫ぶと同時に、鋼貴も叫び、決闘盤を構えて前に走り出る。

バトルロイヤルモードで割り込むつもりなのであろう。

 

「!? 鋼貴危ない!!」

 

遊伸にだけ見える黒い炎に鋼貴が触れると、鋼貴は弾かれたように後ろへと飛ばされる。

 

「ぐあっ! …な、何だ!? 弾かれたぞ!?」

 

「…鋼貴、僕の周りにはデュエルしている本人にしか見えない黒い炎が囲っているんだ。 だから誰もこのデュエルに割り込めないし、僕も引く事が出来ない……デュエルに勝つしか助かる方法が無いんだ」

 

鋼貴は歯を食いしばる。

 

「遊伸……勝てるよな? お前は死なねぇよな?」

 

鋼貴が悔しさで体を震わせながらそう言う。

 

「…鋼貴、空、そして雪江さんにもお願いがあるんだ」

 

遊伸は前を見据えたまま言う。

 

「僕が勝てるかどうかは、次のドローにかかっている……でも、僕はドローするのが怖い……死ぬのは怖い……まだ果たしていない”約束”が沢山あるんだ……」

 

遊伸の頭に鈴、友河、そして父の姿が浮かぶ。

 

「……皆、僕を信じてくれ! 皆が信じてくれれば……僕は勇気を出せる! 戦える! 僕の……背中を押して欲しいんだ!」

 

「…分かった、行け遊伸! お前なら2回でも3回でも引き当てられるぞ! 逆転のカードをな!」

 

「遊伸! 大丈夫だよ! 私達が後ろにいるから!」

 

「遊伸さん! 頑張って!」

 

3人が遊伸に声援を送る。

遊伸はその声を聞き、自分のデッキを見る。

 

「(ありがとう、皆……不思議だ、さっきまで恐怖で遠く見えていたデッキが、今はちゃんとここに見える……皆が僕を信じてくれる、僕は……デッキを信じる!)」

 

「おい! ウダウダとさっきから何やってんだ! 手が無ぇならとっととドローして、この俺に止めを刺されるんだなァ!!」

 

痺れを切らした獏葉が叫ぶ。

 

「すまない! …獏葉、これがラストターンだ! 行くぞ! …ドロー!!!」

 

遊伸 手札:3+1

 

鋼貴達に緊張が走る。

遊伸が引いたカードは―――

 

 

 

 

「…僕は魔法カード《死者蘇生》を発動!!! 僕は自分の墓地から《XX-セイバー ガトムズ》を特殊召喚!!!」

 

遊伸の場に最強のX-セイバー、 ガトムズが再び現れる。

 

ATK:3100

 

「馬鹿がァ!! ジャイアント・ボマー・エアレイドの効果発動ォ! 消し飛べェ!! 《シャープ・シューティング》ゥ!!!」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドがガトムズに向けて機銃を放つ。

 

「速攻魔法《禁じられた聖衣》を発動! エンドフェイズ時まで選択したモンスターは攻撃力を600ポイントダウンする代わりに、カードの効果対象にならず、カードの効果では破壊されない! 僕は《XX-セイバー ガトムズ》を選択!」

 

ガトムズの体を光が覆うと、ジャイアント・ボマー・エアレイドが放った弾丸を全て弾く。

 

ATK:3100→2500

 

「何だとぉぉぉ!!!」

 

「続いてフィールド魔法《セイバー・ヴォールト》を発動! このカードが場にある限り、場の《X-セイバー》の攻撃力は自身のレベル×100ポイントアップする! 《XX-セイバー ガトムズ》のレベルは9! 900ポイント攻撃力をアップする!」

 

周りの風景がX-セイバーの聖地、セイバー・ヴォールトへと変わると、遊伸側の後ろに突き立てられている剣から9つの光が飛び出し、ガトムズの中へと入って行く。

 

ATK:2500→3400

 

「ば、馬鹿なァァァ!!! 攻撃力3400だとぉぉぉ!!!」

 

「バトル!!! ガトムズでジャイアント・ボマー・エアレイドを攻撃! 《ダブルクロス・セイバー》!!!」

 

ガトムズが跳び上がり、ジャイアント・ボマー・エアレイドに剣を突き刺す。

 

「これで最後だ! ダメージステップ時に速攻魔法《禁じられた聖槍》を発動! エンドフェイズ時まで選択したモンスターの攻撃力を800ポイントダウンする代わりに、 選択されたモンスターはこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない! 僕が選択するのは《ジャイアント・ボマー・エアレイド》!!」

 

ジャイアント・ボマー・エアレイドの頭上に槍が現れると、ジャイアント・ボマー・エアレイド目掛けて槍が落下し、突き刺さる。

 

ATK:3000→2200

 

「行けぇぇぇ!!! ガトムズ!!!」

 

ガトムズが剣を引き抜くと、渾身の力を振り絞り、ジャイアント・ボマー・エアレイドの頭部を剣で撥ねる。

ジャイアント・ボマー・エアレイドは電気と火花を散らし、その場で爆発する。

 

「い、嫌だぁぁぁーーー!!! ぐあぁぁぁーーーーー!!!」

 

獏葉 LP:500→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

それと同時に遊伸と獏葉を囲んでいた黒い炎も消える。

 

「か……勝った……」

 

遊伸は全身の力が抜けた様にその場に座りこむ。

 

「遊伸!!!」

 

「遊伸……って雪ちゃん!?」

 

鋼貴が飛びつく勢いで遊伸に走り寄り、空も同じ様に走り寄ろうとすると、横の雪江が遊伸と同じ様にフラフラしていたので慌てて体を支える。

 

「だ、大丈夫雪ちゃん!? どうしたの!?」

 

「ご、ごめん空……緊張が解けた反動と……色々ありすぎたせいで……疲れたわ」

 

雪江は何とか体勢を戻して一人で立つ。

 

「ごめんね雪ちゃん……私が誘ったばっかりに……」

 

「いいのよ、私も行きたいって言ったし、凄いデュエルも見れたから……今度でいいから遊伸さん達と話してた事、私にも教えてね……」

 

一方遊伸と鋼貴、鋼貴は遊伸の肩を叩きながら称賛を送る。

 

「よくやったぞ遊伸! 心配させやがって!」

 

「うん……皆のおかげだよ……そうだ! 獏葉は!」

 

遊伸と鋼貴が獏葉の方へと振り向くと、遊伸が始めてシティにやってきたあの日、初めてシティでデュエルをし、勝利したあの日と同じ様に、獏葉は仰向けになって無様に倒れていた。

 

「…死んじまったのか?」

 

鋼貴が近づき、生死を確かめる。

 

「!? こいつ生きてるぞ! …ホントにタフな奴だな」

 

「よかった…! 話によると、ランディも犯人も生きている様だし、使った本人には影響が無いのかもね…」

 

そう言って遊伸は獏葉の決闘盤を見る。

そこには名称もテキストも書いていない、イラストにはあの”黒い何か”が描かれたカードが置かれていた。

 

「こいつか! 一体何なんだ! よし、持って帰ってマイルさんに調べて貰おうぜ!」

 

鋼貴が獏葉の決闘盤からカードを取ろうとすると、遊伸がそれを止める。

 

「駄目だ鋼貴! 下手に触ると鋼貴まで……」

 

遊伸がそう言うと、鋼貴は血の気が引いた様に青ざめ、手を引っ込める。

 

「そうだな……危なかった、サンキュー遊伸、でもどうすんだ? このままにしてもまずいだろ?」

 

「鋼貴、鋼牙さんを呼べないかな?」

 

「…兄貴? 何で?」

 

鋼貴は微妙に嫌そうな顔をする。

 

「もしランディ達の事件もこのカードの仕業なら、きっとランディを倒した鋼牙さんなら対処法を知ってるはずだよ」

 

「ああ成る程な……まあしょうがねえか、電話するよ」

 

遊伸と鋼貴は空と雪江に振り返る。

 

「おーい! 空か雪江ちゃん! 作業場からロープみたいなもん持ってきてくれ! また逃げられたら堪ったもんじゃねぇからな!」

 

鋼貴がそう言うと、空が振り返る。

 

「うん! 解った……!? 鋼貴遊伸後ろ!?」

 

「「え?」」

 

遊伸達が振り返ると、近くにある、アカデミア敷地内に植えられている木から一人の男が飛び降り、遊伸達の後ろに着地したのだ。

男は遊伸達に目もくれず、獏葉の決闘盤に置かれている”黒い何か”のカードに、獏葉が叩き割ったガラスと同じ物を押し当てると、カードがガラスの中に吸収され、男が持ち去ろうと走り出す。

 

「くそっ! そいつを返せ! デュエルモード強制発動!」

 

鋼貴は男が腕に決闘盤を装着しているのを見つけると、拘束装置を起動する。

しかし、男が鋼貴に振り向き一睨みすると、決闘盤の通信が切断されてしまう。

 

「げっ! こりゃまさか……サイコ・デュエリストの力か!?」

 

男は再び走り出すと、その先には二人の男女がいた。

 

「!? 光円寺 月子!」

 

遊伸がその二人の女の方を見て叫ぶ。

その二人とは獏葉に闇のカードと”黒い何か”のカードを渡した張本人、リーダー格の男と 光円寺 月子であった。

男はリーダー格の男の前に跪く。

リーダー格の男を遊伸は見る。

竜の鬣を思わせる長く赤い髪、そして大きな身長と体格を持ち、佇まいも堂々としていて、遊伸はこの男に大物特有の風格を感じた。

 

「”ファントム・オブ・カオス”……回収完了しました」

 

男は”黒い何か”のカードが入った黒いガラスをリーダー格の男に渡す。

 

「何あの人達……遊伸さんが倒したあの人の仲間なの?」

 

「分かんない……一人は知ってる人だけど……悪い人だよ」

 

雪江と空が遊伸達の側に寄り、様子を見る。

 

「おい! お前光円寺じゃねーか! そいつらは仲間か! そんなもん盗んでどうする気だ!」

 

鋼貴が指を差しながら言う。

リーダー格の男が鋼貴を見ると、月子に尋ねる。

 

「あれが闇のカードを……今回で3度か、倒した決闘者達か?」

 

「黒髪のお嬢ちゃんを除けば、その通りですわ」

 

「ほう……そうか、ならば挨拶せねばな」

 

リーダー格の男は数歩前に出ると、遊伸に声を掛ける。

 

「近衛 遊伸、だったな? 先程のデュエル、見事だったぞ」

 

「そんな事より質問に答えろ! そのカードを盗んでどうする気だ! 返せ!」

 

鋼貴が尚も指を差して言うと、リーダー格の男が答える。

 

「”ファントム・オブ・カオス”の事か? そもそもこのカードをあの男に授けたのはこの俺だ」

 

「な、何だって!? それじゃあランディや正兄の事件の犯人にもそのカードを渡したのか!?」

 

遊伸がリーダー格の男に問いかける。

 

「違うな、あれらは”魅入られた”のだ、あの男の様にな」

 

リーダー格の男は倒れている獏葉に目をやる。

 

「やはりあの男の”心の闇”は見た通り、相当なものだったな。 ファントム・オブ・カオスが自ら飛びついたのだからな」

 

リーダー格の男は遊伸達に視線を戻す。

 

「近衛 遊伸、お前にはこの”実験”に付き合わせた事の礼を言おう」

 

「実験…? 実験だって!?」

 

遊伸は驚愕する。

獏葉にあのカードを待たせたのはただの実験の為、その為に獏葉や遊伸、もしかすると他の関係の無い人々までの命を落とす危険があったのである。

 

「実験だぁ!? ふざけんじゃねぇ! 危うく遊伸は死ぬとこだったんだぞ!」

 

鋼貴が怒りを顕にして怒鳴る。

 

「それがどうした? 小僧の一人や二人、死んだところで俺が困る事など有りはしない」

 

「テメェこの野郎!!!」

 

「鋼貴!」

 

掴みかかろうとした鋼貴を遊伸が止める。

 

「止めるな遊伸! こいつが今何つったか解ってんのか!」

 

「鋼貴、僕に話をさせてくれ、聞かなきゃならない事があるんだ」

 

真剣な顔の遊伸にそう言われると、鋼貴は一旦怒りを鞘に納める。

 

「分かった、気をつけろよ遊伸」

 

遊伸は頷くと一歩前に出る。

 

「貴方に聞きたい事があります」

 

遊伸は真っ直ぐリーダー格の男を見て言う。

 

「何だ? 言ってみろ」

 

「貴方達は一体何者何ですか? 闇のカードの事や……こんな事をして、何が目的何ですか? そして……その”ファントム・オブ・カオス”というカードは何なんですか!」

 

「あら、随分と欲張りね、闇のカードの事教えてあげたばかりなのに」

 

月子が笑いながらそう言うと、リーダー格の男も笑っている、不敵な笑みだ。

 

「…いいだろう、実験の礼、そして闇のカードとファントム・オブ・カオスとのデュエルに勝利した褒美だ、教えてやろう」

 

「よ、よろしいのですか!? この様な者達に……」

 

先程ファントム・オブ・カオスを回収した男が慌てて進言する。

 

「知ったところでこの俺を相手に何が出来る? …それともお前はこんな小僧が、俺への脅威にでもなると言いたいのか?」

 

「も、申し訳有りません…」

 

リーダー格の男が睨み付けると、男は萎縮した様に頭を下げ、後ろに下がる。

 

「…まずは何者かだったな、教えてやる……」

 

 

俺の名は”テオドール・ハイドフェルド”

アルカディア・ムーブメント、サイコデュエリスト特殊部隊”セブンスターズ”の”長”にして―――

―――最強の”決闘王”だ。

 

 




*この作品に出てくるセブンスターズはGXに登場するセブンスターズとは一切関係有りません。 ご了承ください。
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