遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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第31話 希望 ~カードと絆~

前回から翌日  シティ内陸部  マーシャル・レッド事務所付近

 

遊伸は昨日の事を考えながら事務所へと向かっていた。

テオドールに敗北した後、鋼貴、獏葉は病院に搬送された。

獏葉は分からないが、鋼貴は無事である。

何と鋼貴はその日の晩に遊伸のアパートを訪ねに来たのだ。

 

……

…………

………………

……………………

 

昨日の夜  シティ内陸部  遊伸のアパート

 

「こ、鋼貴!? 体は大丈夫なのかい…?」

 

「おう! まだちょいと痛むが、あれ位でやられる程柔な体してぇよ! 丈夫なのが俺の取り得だからな!」

 

こんなところまで兄弟そっくりだ、遊伸はそう思いながら鋼貴を部屋へ上げる。

 

「うし……遊伸、俺がのびてた間の事を教えてくれ」

 

「ああ……」

 

遊伸は鋼貴にあの後の事を話す。

まずはテオドールとのデュエルの結果。

 

「くそ……舐めやがって、試練だと! それで明日本当に獏葉みてぇな奴が来るんだな?」

 

「うん……僕に出された試練だけど、流石にこの事はセキュリティに報告したよ。 強盗まで起きているんだ、もう僕らだけの問題じゃない」

 

この事に関して、セキュリティは藤堂 鋼牙率いる部隊によって、アカデミアの警備に付いてくれるという。

 

「流石にアカデミア内で2度目の強盗、セキュリティが見張ってた状態で、さらに盗られたもんが最新鋭のナンバーズとなっちゃセキュリティも本気だな、兄貴まで駆り出す位か」

 

「うん、それと、高尾さんも明日の仕事キャンセルして警備に加わるって……」

 

……

…………

………………

……………………

 

 

遊伸は高尾や雪江に問い質され、全ての事を話した。

高尾は今度は自分も戦うと言い、遊伸はそれを断った。

命に危険がある事である、出来るだけ巻き込みたくない。

しかし高尾は引かない。

 

「お前の話を聞けば危険だという事は解る! 危険は承知だ! 何より……お前達が……友があんな目にあったんだ! 見過ごせるか!」

 

「高尾さん……」

 

そう言った高尾の眼は真剣そのもの、信念をぶつけ合った者同士として、遊伸には高尾が絶対に引かない事を悟った。

 

「遊伸さん、空のお姉さんの話は、私も空から聞いています。 私は未だに信じられません……あの男の話は本当なんでしょうか……」

 

空を抱いたまま、不安気な顔で雪江が遊伸に尋ねる。

 

「……雪江さん、きっと……きっと七海さんは生きてる、僕は……そう信じたい」

 

「…そうですね」

 

雪江は俯く。

 

「雪江さん、今日は空の側にいてあげてほしいんだ……お願いしていいかな」

 

「はい……」

 

 

……………………

………………

…………

……

 

 

「そうか……空は今日起きなかったのか?」

 

「うん……多分、今も寮で雪江さんが様子を見ててくれてると思う」

 

暫く二人の間に沈黙が続く。

 

「…解った、それじゃ俺は帰るよ、邪魔したな」

 

そう言って鋼貴は立ち上がる。

 

「さっき体が少し痛むって言ってたけど、大丈夫かい? 鋼貴のアパートはここから遠いし、無理しないで泊まっていってもいいよ」

 

「おう、悪いな。 だけどいいや、ちょっと一人で考えたい事があるんだ、じゃあな」

 

そう言って鋼貴は部屋から出て行った。

 

……………………

………………

…………

……

 

 

「おはようございます」

 

遊伸は事務所の扉を開ける。

 

「よお、遊伸」

 

「来たか、何時もは一番なのに今日はおせぇじゃねーか、また寝坊か?」

 

鋼貴とグレイグが出迎える。

 

「すいません、昨日は何だか寝付けなくて……」

 

「遊伸、グレイグにも全部話しておいたぞ」

 

「ああ、聞いたぞ、まったく……遊伸、こういう事は最初にリーダーである俺に報告しておけってんだ!」

 

グレイグは文句を言いながら仕事のリストをソリッドビジョンで投影する。

 

「す、すいません……」

 

「ああ、そういえばグレイグがこのチームのリーダーだったっけか?」

 

「…鋼貴、給料下げられてぇのか?」

 

「悪かったよ、冗談だって」

 

目の前で懐かしいやり取りがされている中、遊伸はグレイグに尋ねる。

 

「あの、グレイグさん、僕は…」

 

「心配するな、その試練とやらは出来るぞ、見ろ」

 

グレイグがある依頼状を表示させる。

依頼元はセキュリティ、セキュリティから”カイザー”のデュエルチームへの依頼である。

遊伸がそれを見ると、内容はデュエル・アカデミアの警備であった。

 

「ようやくカイザーらしくなってきたぞ、今回は俺も行く、誰がリーダーか、セキュリティにも教えとかなくてはな」

 

「珍しくやる気になってると思ったら、思いっきり動機が不純じゃねーか……まあいいや、時間までまだあるから準備しとけよ」

 

「うん、解った……!?」

 

遊伸は突然事務所の扉をすり抜け、飛び入ってくるものを見た。

翠の羽毛をした鳥獣、ガスタ・ガルドである。

ガスタ・ガルドは事務所に入るなり事務所内を飛びまわり、遊伸を見つけると、その上を旋回し始める。

 

「(な、何だ!? どうして空のガスタ……精霊が……)」

 

「おい遊伸、どうしたんだよ? 天井に何かあるのか?」

 

驚いた表情でガスタ・ガルドを見上げる遊伸、精霊は空と遊伸以外には見えない、鋼貴にとっては遊伸が天井を見上げながら驚いている様にしか見えない。

ガスタ・ガルドは遊伸目掛けて一気に降下する。

 

「わっ!?」

 

「うおっ!? どうしたんだよいきなり!?」

 

ガスタ・ガルドが遊伸をすり抜ける。

遊伸は驚いて声を上げると、鋼貴はその声に驚く。

遊伸をすり抜け扉の方へ飛んだガスタ・ガルドが一回遊伸を振り向き、再び扉をすり抜けて出て行ってしまう。

 

「(もしかして付いて来い、って言いたいのか?)」

 

「お、おい遊伸、さっきからどうした? 様子が……」

 

「ごめん鋼貴! グレイグさん! 先に行きます!」

 

遊伸は慌ててガスタ・ガルドを追って外へ出る。

 

「な、何だ…? 遊伸の奴……」

 

鋼貴は呆然としながら扉を見ていた。

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部  デュエル・アカデミア

 

ガスタ・ガルドを追って10分程、遊伸はデュエル・アカデミアへと辿り着く。

 

「やっぱりここか……もしや空に何か!?」

 

遊伸はアカデミア内に入ってもひたすらガスタ・ガルドを追う。

 

「あっ!? 遊伸さん!」

 

追って辿り着いたのは女子寮の前、そこには晴男、雲太郎、雷蔵の3人がいた。

 

「君達! どうしてここに? 今生徒は登校禁止になってるはずだけど…」

 

そう、アカデミア内での強盗、そして襲撃予告、これにより学園祭は延期、授業も休学とし、生徒は登校の禁止、寮生は外出禁止とすると、セキュリティの依頼状に記されていた。

 

「いや、まあその通りなんすけど、それどころじゃないんすよ」

 

晴男がそう言うと、雲太郎が不安な顔で続ける。

 

「空が部屋から出てこないんですよ……あ、いやまあ今はそれが正しいんですけど……」

 

「正しい訳あるか! 飯にも挨拶にも、目を覚ましてから一度も出てこないのだ! 遊伸、事情は俺達も聞いている! 何とかならんのか!」

 

雷蔵が声を張り上げて言う。

すると女子寮の方から雪江がやってくる。

 

「! 遊伸さん! よかった! 今事務所まで呼びに行こうかと思ってたところです!」

 

雪江は遊伸を見つけると走り寄る。

 

「お願いします! もう遊伸さんしかいないんです!」

 

「ど、どうしたんだい! 何かあったの?」

 

「…とにかくこちらへ、詳しくは道中で、まずは寮長の佐藤先生のところへ」

 

雪江は遊伸を引っ張る様に連れて行く。

 

「おいおい雪江! 女子寮は男子禁制だろうが、遊伸さん捕まっちまうぞ!」

 

晴男が慌てて雪江に叫ぶ。

 

「だから佐藤先生のところに行くのよ!」

 

「あ、なるほど…」

 

 

 

   ・

   ・

   ・

 

 

 

シティ内陸部  デュエル・アカデミア  女子寮  寮長室

 

「…この人が近衛 遊伸さんです、きっと遊伸さんなら空と話が出来ると思うんです! 佐藤先生、遊伸さんの寮への立ち入りを許可してください」

 

雪江は女子寮長、佐藤に頭を下げる。

 

「…貴方が近衛 遊伸さん、お話は西野さんからよくお聞きしていました……西野さんはとても楽しそうに貴方の事を話してくれます、きっと貴方は特別な人なのでしょう……立ち入りを許可します、どうか西野さんをよろしくお願いします」

 

そう言って佐藤寮長は頭を下げる。

 

「いえ、こちらこそありがとうございます……尽力します」

 

遊伸も頭を下げて返すと、雪江と共に空の部屋を目指す。

話によれば空が目を覚ましたのは昨晩、雪江が看ていたのだが、空は目を覚ますと、一人にして、と言い、雪江を追い出してしまったのだという。

 

「その後部屋から泣き声が聞こえてきました……私は寮長室で泊まらせて貰って、朝にもう一度空の部屋を訪ねたんですけど、一人にして、の一点張りで……晴男達や愛雨を呼んでみたけど、それでも駄目、だから後は遊伸さんか鋼貴先輩しかないと思って、呼びに行こうと思ったんです」

 

「(君達でも無理なのか…?)」

 

遊伸が内心で言った”君達”とは雪江達の事ではない。

遊伸達が進んでいる寮の廊下に点々と立っている”ガスタ”の精霊達に向けたものであった。

皆遊伸に哀願する様に視線を送っている。

 

「こういう時は、そっとしておいた方が良いのかもしれません、でも……私達の我侭だけど……空には落ち込んでいてほしくない……一刻も早く空には笑ってほしい……元気になってほしいんです!」

 

「雪江さん…」

 

「…愛雨、連れて来たわ」

 

雪江がドアの前にいる愛雨に声を掛ける。

どうやら辿り着いたようだ。

 

「あ! 雪江! 早かったじゃない! よかった!」

 

愛雨が一安心した表情になるが、再び不安な顔に戻る。

 

「遊伸さん、お願いします! もう私達じゃどうしようもなくて……」

 

遊伸は愛雨に向かって頷く。

遊伸はドアの前に立つと、空を呼ぶ。

 

「…空? 僕だよ、遊伸だよ」

 

暫くして空の声が返ってくる。

 

「…遊伸?」

 

「ああ、僕だ。 空、ちょっと話をしないかい?」

 

「……ごめん、今は一人にして……」

 

遊伸でも空の態度は変わらない。

後ろの二人は肩を落とすが、遊伸は諦めない、遊伸は強気に出る。

 

「空、入るよ」

 

「ゆ、遊伸さん!?」

 

遊伸は声を掛けてから暫く待つと、ドアノブへと手を掛ける。

幸い鍵は掛かっておらず、遊伸はそのままドアを開け、中に入る

 

「ゆ、遊伸さん……意外と大胆な事するわね…」

 

「…やっぱり遊伸さんに頼んでよかったわ」

 

愛雨が驚いていると、雪江がそう言う。

 

「え? 何で?」

 

「私も同じ様な事やったのよ、そしたら声掛けの時点で入らないで、一人にして、って返されたわ……ちょっと悔しいかも」

 

遊伸は部屋へ入ると、空はベッドに座り、深く俯いている、そのせいで表情が見えない。

 

「空…」

 

遊伸は座っている空の前に立つと、空と目線の高さが同じになる様に屈み、膝を付く。

 

「空、テオドールのいう事なんて信じちゃ駄目だよ、確かに七海さんのロケットを持っていたけど、それは本当に七海さんを殺したなんて証拠にはならないし、それに……えっと……」

 

遊伸は友河とデュエルした事を思い出す。

その時に気付いた、自分は言葉を考えようとすればするほど、上手い言葉が出せない事を。

 

「(く、くそっ! こんな慰めを言いたい訳じゃないのに……)」

 

遊伸は自分を情けなく思う。

一方空は遊伸の言葉に何も反応を示さない、俯いたままである。

 

「そ、空! 七海さんは……空のお姉さんは約束を破ったりしないよ! きっと……きっと帰ってくる、死んでなんかいない!」

 

遊伸は必死に空へ声を掛ける。

すると、ようやく空が口を開く。

 

「……私だって信じたくない……信じない……お姉ちゃんが死んだなんて……」

 

空が少しだけ顔を上げる、よく見ると両手でロケットが握られている。

 

「でも……怖いよ……遊伸……怖いよう……」

 

空は涙を流す。

 

「空……(そうか、空は戦っているんだ…!)」

 

空は今まで七海との約束を信じて生きてきた。

その姉への”信念”は自分の中で何よりも強い”思い”となっていた。

そこへテオドールが突きつけた言葉、姉の死。

それだけなら空の”信念”は揺るがなかったであろう。

しかし10年という長い月日、そして姉に贈ったロケット、この二つがテオドールの言葉に信憑性を持たせ、空の”信念”を揺るがせる。

今、空の中でテオドールの言葉と”信念”がぶつかり合っているのだ。

だが、ある事により、空の”信念”が敗れそうになっていた。

 

「……それに……それに……ガスタ達が……」

 

空は横に置いてある自分の決闘盤、そこに収められているデッキを見る。

 

 

 

「ガスタ達が出て来てくれないの……何も答えてくれないの……」

 

 

 

「……え…?」

 

「ねえ……何で出て来てくれないの? 何で私を無視するの? 答えて! 答えてよ! 私を……私を一人にしないでよぉ……」

 

空が声を上げて泣き出す。

 

「そ、そんな……空……”見え”ないのか……ガスタ達が!?」

 

「見えないよ! どうして出て来てくれないの! 皆答えてよぉ~…」

 

ガスタ達が出て来ていない訳がない、空を無視してもない、今現在、ガスタの精霊達は全てこの部屋に現れていた。

ガスタ達が出てこなくなったのではない、空が”見え”なくなったのだ。

ガスタ達はこの10年間、共に生きてきた”家族”である。

その家族が姿を見せない、何も答えてくれない、この孤独がさらに空の”信念”を揺るがす。

ガスタ達は泣きながら自分達を呼ぶ空の姿に、ある者は共に泣き、ある者は悔しそうに俯き、または天を見上げ、ある者は各々の鳴き声を上げる。

 

「(…そうか……そういう事か……何となく……解ったぞ……)」

 

遊伸は目を瞑り、気持ちを整えると泣きじゃくる空に声を掛ける。

 

「空、聞いてくれ」

 

「お姉ちゃぁん……皆ぁ……」

 

しかし空は泣いたまま、遊伸の声が届いていない。

 

「空! 聞くんだ!!!」

 

遊伸が一喝すると、空は泣くのを止め、遊伸を見る。

 

「ゆ……遊伸……?」

 

「……空、七海さんを信じるんだ、七海さんは生きている、空が七海さんを信じてあげなきゃ! 空が信じなければ……誰が信じるんだ!」

 

「でも……でも……」

 

空は再び俯いてしまう。

 

「空! 怖くなんかない! 七海さんはいなくなったりはしない! 今、目の前に姿が見えなくても、空の”ここ”にはいるだろう? 七海さんが!」

 

遊伸は自分の胸に手を当てる。

 

「……お姉ちゃんが……?」

 

「そうさ! そして七海さんの”ここ”にも同じ様に空がいる! 空と七海さんは”絆”で繋がっているんだ! ”絆”は断ち切れたりはしない! それに……空と七海さんの”絆の証”がそこにあるじゃないか!」

 

遊伸は空の手の中の物と空のデッキを指差す。

 

「…ガスタとロケット……でもガスタは……」

 

「空! ガスタはいなくなってなんかいない! ガスタ達は空と七海さんの”絆”なんだ! 見えなくてもそこにいるんだ! 信じるんだ! 信じれば見えてくる! ガスタが……七海さんとの”絆”が!!!」

 

「遊伸……」

 

「空、これを見て…」

 

遊伸は自分のデッキから1枚のカードを取り出す。

そのカードは――― No.39 希望皇ホープ

 

「昨日話したよね、ガスタが空と七海さんの”絆”なら、僕と僕の父さんの”絆”はX-セイバーだって……大会の後の夜、空が僕に渡してくれたこのカード……僕にとってこのカードが、僕と空を繋ぐ”絆の証”なんだ……」

 

遊伸は空に希望皇ホープをロケットと一緒に手に持たせる。

 

「空、君は一人なんかじゃない、鋼貴、グレイグさん、高尾さん、雪江さん、愛雨さん、晴男君、雲太郎君、雷蔵君、佐藤先生……こんなにも沢山の人、そして僕がいる! 空! 僕もそのホープを通して信じる! 七海さんを、ガスタ達を、そして……空を! だから恐れないでくれ! 負けないでくれ! 信じて諦めなければ……希望を捨てなければ……」

 

 

 

             ”大切な家族”にまた逢える

 

 

 

遊伸のその言葉を聞いた瞬間、空は風が吹くのを感じる。

 

「あ……」

 

そして空は”見る”、何時も一緒だった”家族”を、姉との”絆”を……ガスタ達を。

 

「あ……ああ……! 皆……!」

 

遊伸には聞こえないが、その挙動で分かる、ガスタ達は空が再び自分達を視れる事を知り、歓声を上げた事を。

 

空はデッキを決闘盤から取り出すと、希望皇ホープ、そしてロケットと一緒に胸に当てる。

 

 

 

お姉ちゃん! 大好き!

空……私もよ……空

 

 

空、私は必ず帰ってくるから……どんなに遠くに行ったって、必ず空のところに帰ってくるから、だから……それまで挫けちゃ駄目よ

 

 

 

「……お姉ちゃん……皆……遊伸……感じる……感じるよ、”絆”を……」

 

空はそう言って再び涙を流す。

今度の涙は恐怖や孤独からの涙ではない、暖かい、嬉しさの涙であった。

 

「そうだよ空……”絆”は何時だって、皆を繋いでいるんだ……」

 

その瞬間、アカデミア全体に警報が鳴り、その後放送が入る。

 

[アカデミア内に拘束装置を持った多数の不審人物が侵入、現在数名の隊員がデュエルに入っています。 各エリアに就いている隊員は見つけ次第、デュエルで拘束してください]

 

「多数!? 一人ではないのか!? (それともテオドールとは違うのか?)急がないと……」

 

「遊伸待って!」

 

遊伸が立ち上がり、現場へ向かおうとすると、空も立ち上がる。

 

「何があったかは知らないけど、私も行く! いっぱい相手がいるんでしょ! 私はもう大丈夫だから私も連れて行って!」

 

涙を拭いて見せたその笑顔は、明るく元気な、いつもの空の笑顔であった。

 

「……ああ! 解った! 一緒に行こう!」

 

「うん! あ、遊伸、ホープ…」

 

空は遊伸に希望皇ホープを渡そうとするが、遊伸は首を振る。

 

「今は空に持っていてほしいんだ、きっと空の力になる、そんな気がするんだ」

 

「…うん! 解った! じゃあ暫く借りるね!」

 

空は決闘盤を装着し、デッキをセット、エクストラデッキに希望皇ホープを入れると、遊伸と共に部屋の外へと飛び出す。

廊下に出ると雪江と愛雨がいなかった。

 

「先に避難したのかな?」

 

「アカデミアの皆にも後で謝らなくちゃ、特に雪ちゃんには」

 

遊伸達は急いで外へと出ると、晴男達がまだそこにいた。

 

「遊伸さん! あ! 空!」

 

「心配したんですよ~!」

 

「だがその様子、どうやら心配は要らなかったようだな!」

 

それぞれが空に声を掛ける。

 

「皆! 心配掛けてごめんね! もう大丈夫! もう危ないから3人とも女子寮へ入って! 騒ぎにならない様にこっそり佐藤先生の所にね!」

 

「お、おい! 空はどうすんだよ!」

 

晴男が慌ててそう言うと、空は笑って返す。

 

「私これでもデュエルチーム、”カイザー”ことマーシャル・レッドの一員だよ! だからお仕事! いってきまーす!」

 

空が駆け出すと、遊伸もそれを追う。

この時雲太郎が大声で遊伸に叫ぶ。

 

「遊伸さーん! さっき鋼貴さんと強面のおじさんが駆けて行くのを見ました! 気をつけてくださーい!!!」

 

「(鋼貴達ももう来てるのか!) ありがとーう!!!」

 

遊伸は大声で礼を言い、空を追いかける。

 

「…と言っても女子寮って、緊急事態と解ってても入り難いな…」

 

晴男がそんな事を言っていると、雪江と愛雨が寮から出てくる。

 

「あんた達まだそんなとこいたの!? こっち来なさい! 佐藤先生の所行くわよ!」

 

「おーすまねぇ雪江、俺達だけじゃ入り難……ってなんでちょっとべそかいてんだお前等」

 

 

* * *

 

 

シティ内陸部  デュエル・アカデミア  図書館付近

 

遊伸と空はガムシャラに走っていた。

辺りを見渡すと、セキュリティと不審人物と思われる相手があちらこちらでデュエルしているのが分かる。

遊伸は道中、軽く今回の事を空に説明した。

 

「こんなに多いなんて……テオドールは”ファントム・オブ・カオスを取り付かせた人間を放つ”って言ってたけど……もしかしてこの中に混じっているのか? それとも……もしや全員!?」

 

「でも遊伸、そんなに沢山あのカードがあるのかな? あのカードを集めるのが目的だって言ってたし……もしかして探すのもその試練なのかもね」

 

「そんなまさか……それにしても空、セキュリティが戦っている相手の服装……どこかで見た事なかった?」

 

遊伸に言われて空は不審人物の服装を見る。

黒いロングコートにズボン、そして胸に書かれた”BF”のマーク。

 

「あれ”ブラックファイア”のユニフォームじゃん! 何でブラックファイアがアカデミアを襲ってるの!?」

 

ブラックファイアとは遊伸達と色々と因縁のあるデュエルチームである。

そのリーダーは空、遊伸に敗北し、エースの桐原は遊伸に初戦で敗北、さらにはチームでの横暴な態度などの不名誉を繰り返し、とうとう”カイザー”の称号を剥奪されてしまったチームである。

 

「どうして……!?」

 

その時、カードの破壊音、その後に聞き覚えのあるアラームが聞こえる。

デュエル終了のアラームだ。

近くでデュエルの決着がついた様である。

 

「遊伸!」

 

「ああ!」

 

遊伸達は音の方へと向かう。

そこへ辿り着くと、セキュリティが二人程倒れている。

その前には二人の男が笑いながら決闘盤を構えている。

 

「あ、あなたは!?」

 

遊伸はその男の一人を見て驚く。

なんとブラックファイアのリーダーであった。

もう一人は知らない顔、だが服装は同じなのでおそらくチームメイトであろう。

 

「おおお!!! 近衛 遊伸! 西野 空! 探したぞぉぉぉ!!!」

 

「オオオオォォォ!!!」

 

二人の様子はまさにファントム・オブ・カオスに取り憑かれた獏葉の様になっていた。

 

「この感じ……間違いない! 獏葉と同じだ!」

 

遊伸がそう確信した瞬間、遊伸、空、そしてBFリーダーとそのチームメイトを黒い炎が囲む。

 

「これが遊伸の言ってた炎…?」

 

「ああ、そして僕らはこの”闇のデュエル”に勝たなければならない! やろう空! タッグデュエルだ!」

 

「うん!」

 

 

「「「「デュエル!!!」」」」

 

 

マーシャル・レッド対ブラックファイアのデュエルが始まった。

決闘盤がランダムに順番を決める。

順番は遊伸から順にBFリーダー、空、チームメイト。

 

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:5+1

 

「(さて、テオドールとの勝負を除けば久しぶりのタッグ戦だ……どう動こう)」

 

遊伸はまず人を見る。

自分が知っているのは2名、パートナーの空と相手のBFリーダー。

BFリーダーのデッキはパワーインセクトデッキ、大型昆虫族モンスターで相手を圧倒し、攻め潰す、本人曰く、”自分が出来る王者(テオドール)のデュエル”。

一方、空は相手の攻撃を受け止めつつ、墓地を肥やし、反撃に移るカウンター型のデッキ。

空にとってBFリーダーは戦いやすい相手らしく、心配はない様に見える。

 

「(問題は向こうのパートナーだけど……考えても仕方ないな……リーダーの方はパワーデッキ、下手な布陣じゃ押し切られる、なら僕もパワーだ!)」

 

「僕は《切り込み隊長》を召喚! そして効果発動! 召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚出来る! 来い! 《X-セイバー エアベルン》!」

 

遊伸の場に切り込み隊長が躍り出ると、その後ろから続けてエアベルンが現れる。

 

切り込み隊長       ATK:1200

X-セイバー エアベルン ATK:1600

 

「行くぞ! レベル3《切り込み隊長》に、レベル3《X-セイバー エアベルン》をチューニング!」

 

エアベルンが自身を3つの光輪へと変えると、切り込み隊長を囲い、3つの光、そして光の柱へと変える。

 

「大地より生まれし勇敢なる騎士よ! 今こそ大地を駆け抜き、己の信念を貫き通せ! シンクロ召喚! 《大地の騎士ガイアナイト》!」

 

光の柱から現れたのはガイアナイト。

蹄の音を鳴らし、両腕のランスを構える。

 

ATK:2600

 

「僕はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

遊伸 手札:3

空 手札:5

モンスター

・大地の騎士ガイアナイト

魔法・罠

・セット

 

「俺のターンッ! ドロォー!」

 

BFリーダー 手札:5+1

 

「俺は魔法カード《クロス・ソウル》を発動ッ! このターン、リリースを行う時、自分のモンスター1体の代わりに相手モンスターを1体をリリースしなければならないッ! …逆に言えば貴様のモンスターをリリースに使う事が出来るのだァーーー!!! 《大地の騎士ガイアナイト》をリリースッ!」

 

「しまった!?」

 

遊伸の場からガイアナイトが消滅する。

 

「《ヴァリュアブル・アーマー》をアドバンス召喚ッ!」

 

BFリーダーの場に巨大なカマキリが現れる。

赤い眼を光らせ、静かに、その大きな鎌で遊伸の首を狙っているようだ。

 

ATK:2350

 

「(しまった……父さんの問題でも出てきた魔法だ……大型モンスターで牽制するはずが、大型モンスターを召喚させるチャンスを与えてしまった……考えが逆に仇となってしまった……!)」

 

「クロス・ソウルを使用したターンはバトルフェイズを行えない……俺はカードを伏せてターンエンドォ!」

 

LP:8000

BFリーダー 手札:3

チームメイト 手札:5

モンスター

・ヴァリュアブル・アーマー

魔法・罠

・セット

 

「遊伸、まだデュエルは始まったばかりだよ! 落ち込んでちゃ駄目、元気出せ出せ! らしくないよ!」

 

空はそう言って遊伸の前に出る。

 

「空……(そうだ、まだ始まったばかりだ! ……何を弱気になっているんだ僕は!)」

 

遊伸は内心で自分を叱咤する。

遊伸自身は意識していなかった様だが、どうやら遊伸はテオドール戦で負けた事を引きずっており、そのせいで弱気になっていた。

 

「(人の事を言えないな……空に怖がるなと言っておきながら、僕が怖がってるじゃないか……空の様に勇気を出せ! カードを信じるんだ!)」

 

遊伸の眼にようやく何時もの火が灯る。

 

「(お姉ちゃん…)」

 

空はロケットを取り出す。

よく見ると首に掛ける為の紐が切れている。

おそらく切れたせいで七海の首から落ちたのだろう。

 

「(お姉ちゃん……今凄くお姉ちゃんを近くに感じるよ……これが”絆”なんだね……)」

 

空は切れた部分を結び、ロケットを自分の首に掛ける。

 

「(お姉ちゃん、ガスタの皆、遊伸……私と一緒に戦って!) 私のターン! ドロー!」

 

空 手札:5+1

 

「私はモンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

遊伸 手札:3

空 手札:3

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「へっへっへ……捻り潰してやる……俺のタァーン! ドロォー!」

 

チームメイト 手札:5+1

 

「ヴァリュアブル・アーマーはデュアルモンスター! 通常召喚扱いとなる再度召喚を行い、通常モンスターとして扱われていたこいつを効果モンスターへと変える! 《ヴァリュアブル・アーマー》を再度召喚ッ!」

 

ヴァリュアブル・アーマーが眼を光らせると、両の鎌を勢いよく振り上げる。

 

「(再度召喚!? そんな物まであるのか!? 一体どんな効果が……)」

 

遊伸は後ろにいながらも、ヴァリュアブル・アーマーに対して身構える。

 

「行くぜェ! ヴァリュアブル・アーマーでセットモンスターを攻撃ィ! 《グラス・チョッパー》!!」

 

ヴァリュアブル・アーマーが空のセットモンスターに鎌を振り下ろす。

攻撃により、セットモンスターが姿を現す。

 

「《ガスタの希望 カムイ》のリバース効果発動! デッキから《ガスタ》と名の付いたチューナーを特殊召喚するよ! 来て! 《ガスタ・ガルド》!」

 

ガスタ・ガルドが場に現れるのと同時に、カムイが破壊される。

 

ガスタの希望 カムイ DEF:1000

ガスタ・ガルド DEF:500

 

「(ありがとう……そしてごめんねカムイ)」

 

「甘いんだよォーーー!!! ヴァリュアブル・アーマーの効果ァ! 相手のモンスター全てに1回ずつ攻撃出来るんだよォ!! 行けェ!! ヴァリュアブル・アーマー!!!」

 

「馬鹿ッ! やめろッ! それ以上攻撃するなッ!!!」

 

BFリーダーが叫ぶのを無視し、ヴァリュアブル・アーマーが再び動き始めると、今度はガスタ・ガルドに向かって鎌を振り上げ、切り裂く。

 

「ガルド!? …私はガスタ・ガルドの効果発動! 場から墓地に送られた時、デッキからレベル2以下の《ガスタ》を特殊召喚出来るよ! 私は《ガスタの巫女 ウィンダ》を特殊召喚!」

 

空の場にウィンダが現れる。

空に振り向き、笑顔で笑いかけると、防御体勢をとる。

 

DEF:400

 

「(ごめんねウィンダ、ガスタ達……でも耐えて! 必ず繋ぐから!)」

 

「幾ら出したって無駄なんだよォ!! ヴァリュアブル・アーマーで攻撃ィ!!」

 

ヴァリュアブル・アーマーがウィンダに鎌を振り下ろし、破壊する。

 

「ウィンダの効果発動! 相手からの戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから《ガスタ》と名の付いたチューナーを特殊召喚するよ! 来て! 《ガスタ・イグル》!」

 

空の場にガスタ・イグルが現れ、同じ様に防御体勢をとる。

 

DEF:400

 

「がァァァ~~~!!! しつけェ~~~!!!」

 

「それ以上攻撃するなと言っているのが解らないのか貴様ァ!!!」

 

「ああァ!? モンスターが残ってたら大型呼ばれるだろうがァ! 大体あんな雑魚を攻撃しない方が馬鹿だぜェ! 攻撃ィ!!!」

 

同じ様にガスタ・イグルを破壊する。

 

「ガスタ・イグルの効果発動! 戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の《ガスタ》を特殊召喚するよ! 来て! 《ガスタ・サンボルト》!」

 

今度は空の場にガスタ・サンボルトが現れる。

一声吠えると、防御体勢をとる。

 

DEF:1200

 

「くそがァ!! ふざけんなァ!! 意味の無ぇ事しやがってェ!! 攻撃ィ!!!」

 

ガスタ・サンボルトが破壊される。

チームメイトはまた出てくるのではないかと身構えるが、空が何も宣言しないのを見ると、笑い声を上げる。

 

「へっ! ようやく終わりかよォ! 手間掛けさせやがってェ……俺はカードを3枚伏せ―――」

 

「待って、カードを伏せる、っていう事は、バトルフェイズ終了ね? ガスタ・サンボルト効果発動!」

 

空が再び宣言をすると、男は怒りの奇声を上げる。

 

「戦闘によって破壊され墓地に送られたバトルフェイズ終了時、墓地の《ガスタ》を1体除外して、デッキから守備力1500以下の風属性、サイキック族を1体特殊召喚出来るよ! 私は墓地の《ガスタ・サンボルト》を除外して、デッキから《ガスタの賢者 ウィンダール》を特殊召喚!」

 

空の場にウィンダールが現れる。

何時もの様に空へ一瞥すると、手に持った杖を構える。

 

ATK:2000

 

「見ろッ! 貴様が俺の言葉を無視するから相手の墓地が肥えた上に、上級モンスターまで召喚されたではないかッ!!!」

 

「喧しいィ! リーダーだからって偉そうにするんじゃねぇよタコォ!!!」

 

「…何だか仲悪いね、向こう……同じチームなんだから仲良くすればいいのに……」

 

「空……”闇のデュエル”がそうさせているんだよ、きっと……」

 

遊伸と空は、口喧嘩をしているブラックファイアの二人の様子を見てそう思った。

ようやく終わると、チームメイトがデュエルを進める。

 

「俺はカードを3枚伏せてターンエンドォ!」

 

LP:8000

BFリーダー 手札:3

チームメイト 手札:3

モンスター

・ヴァリュアブル・アーマー

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

・セット

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:3+1

 

「僕は《X-セイバー アナペレラ》を召喚!」

 

遊伸の場にアナペレラが現れる。

アナペレラはヴァリュアブル・アーマーを見据え、蛇腹剣を振り上げ構える。

 

ATK:1800

 

「頼むよ! ウィンダール!」

 

遊伸がウィンダールに声を掛けると、ウィンダールは遊伸に一瞥し、杖を構え直す。

 

「ありがとう、バトル! ウィンダールでヴァリュアブル・アーマーを攻撃!」

 

ウィンダールが詠唱を始めると、辺りに風が吹き始め、ウィンダールはそれを掌に集めると、ヴァリュアブル・アーマー目掛けて一気に放つ。

しかしヴァリュアブル・アーマーは動じず、そのまま風を突っ切りながらウィンダールへと向かう。

 

「馬鹿がァ! こっちの方が上だァ!! やっちまえェ!!」

 

「ダメージステップ時に伏せていた速攻魔法《イージーチューニング》を発動! 自分の墓地からチューナーを1体除外する事で、自分の場のモンスター1体の攻撃力を、除外したチューナーの攻撃力分アップする! 僕は《X-セイバー エアベルン》を除外して、ウィンダールの攻撃力を1600ポイントアップする!」

 

ウィンダールの体を3つの光輪が囲むと、ウィンダールが放っていた風の勢いが強くなる。

 

ATK:2000→3600

 

それにより、ヴァリュアブル・アーマーは風に耐え切れず、吹き飛ばされ、破壊される。

 

「ぐおおお! 畜生ォ!」

 

BF(ブラックファイア) LP:8000→6750

 

「ウィンダールの効果発動! ウィンダールが戦闘によってモンスターを破壊し、墓地へ送った時、墓地のレベル3以下の《ガスタ》を1体表側守備表示で特殊召喚出来る! 来てくれ! 《ガスタ・ガルド》!」

 

ウィンダールは再び詠唱し、隣を杖で指し示すと、そこにガスタ・ガルドが現れる。

 

DEF:500

 

「行け! アナペレラ! 直接攻撃! 《クロス・バイパー》!」

 

アナペレラが蛇腹剣を舞わせると、BFチームメイトを斬りつける。

 

「ぐあぁぁぁ!!!」

 

BF LP:6750→4950

 

「バトルフェイズ終了、行くぞ! レベル4《X-セイバー アナペレラ》に、レベル3《ガスタ・ガルド》をチューニング!」

 

ガスタ・ガルドが自身を3つの光輪へと変えると、アナペレラを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし剣の輝きが、希望の活路を照らし出す、光差す道となれ! シンクロ召喚! 切り開け! 《セブン・ソード・ウォリアー》!」

 

光の柱からセブン・ソード・ウォリアーが現れる。

金色の剣と鎧を輝かせ、場に躍り出ると二本の大剣を構える。

 

ATK:2300

 

「そして手札から、装備魔法《神剣-フェニックスブレード》をセブン・ソード・ウォリアーに装備! そしてセブン・ソード・ウォリアーの効果発動! 1ターンに1度、装備カードが装備された時、 相手のLPに800ポイントダメージを与える!」

 

セブン・ソード・ウォリアーがフェニックスブレードを手に取ると、それに反応するようにセブン・ソード・ウォリアーが体から閃光を放つ。

 

ATK:2300→2600

 

「ぬあァァァ!」

 

BF LP:4950→4150

 

「僕はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

遊伸 手札:1

空 手札:3

モンスター

・ガスタの賢者 ウィンダール

・セブン・ソード・ウォリアー

魔法・罠

・セット

・セット

・神剣-フェニックスブレード(セブン・ソード・ウォリアー)

・セット

 

「無駄にダメージを受けやがってッ!! 俺のターンッ! ドロォー!」

 

BFリーダー 手札:3+1

 

「俺は魔法カード《おろかな埋葬》を発動ォ! デッキからモンスターを1体墓地へ送るッ! 俺は《インフェルニティ・ビートル》を墓地へッ! そして速攻魔法《サイクロン》ッ! 《神剣-フェニックスブレード》を破壊だッ!」

 

遊伸の場に突風が起こると、セブン・ソード・ウォリアーが持っていたフェニックスブレードが吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ……(相手の場にモンスターがいないから破壊効果を使えない…)」

 

「そしてカードを伏せる……フッフッフッフ……さあ気が高まってきたぞ……」

 

突然、BFリーダーの雰囲気が変わる。

この感覚、遊伸は覚えがあった。

 

「…まさか!? あのカード!?」

 

「…行くぞぉぉぉーーー!!! 召喚ッ!!!」

 

BFリーダーがモンスターを攻撃表示で召喚する。

その姿、いや、これを姿といっていいのかは分からない、混沌とした”黒い何か”、《ファントム・オブ・カオス》が現れる。

 

ATK:0

 

「このカード、この感じ……間違いない! 獏葉と同じ!」

 

「遊伸……」

 

空が後ろから不安そうな声をかける。

流石に空でもあのモンスターには慣れず、不安を感じる様だ。

空は姉のロケットを握り締める。

 

「…大丈夫さ、僕らは絶対に負けない! そうだろう?」

 

「…うん!」

 

遊伸が笑みを浮かべてそう言うと、空も釣られて笑顔を浮かべる。

BFリーダーは墓地からカードを取り出し、ファントム・オブ・カオスに投げ込む。

ファントム・オブ・カオスは変形すると、大きいカブトムシへと姿を変える。

 

ファントム・オブ・カオス(インフェルニティ・ビートル)の効果発動ッ! 手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、デッキから《インフェルニティ・ビートル》を2体まで特殊召喚するッ!」

 

ファントム・オブ・カオス(インフェルニティ・ビートル)が姿を消すと、本物のインフェルニティ・ビートルが2体姿を現す。

 

インフェルニティ・ビートル ATK:1200

インフェルニティ・ビートル ATK:1200

 

「そして今伏せた魔法カード《アリの増殖》発動ォ! 自分の場の昆虫族モンスター《インフェルニティ・ビートル》を1体リリースし、自分の場に《兵隊アリトークン》を2体特殊召喚するッ!」

 

場に2匹の巨大なアリが現れる。

 

兵隊アリトークン DEF:1200

兵隊アリトークン DEF:1200

 

「さあ見るがいい! 俺の……新しい切り札をッ! レベル4《兵隊アリトークン》に、レベル2《インフェルニティ・ビートル》をチューニングッ!」

 

インフェルニティ・ビートルが2つの光輪に姿を変えると、兵隊アリトークンを囲い、4つの光に変わった途端、それらが黒くなり、漆黒の柱へと変わる。

 

「闇と闇重なりし時! 冥府の扉は開かれる! 光なき世界へッ!! シンクロ召喚!! 来いッ! 《地底のアラクネー》!!!」

 

漆黒の柱から姿を現したのは巨大な蜘蛛。

その胴体の上には恐ろしげな女性の上半身が生えている。

上の女性が不気味な笑い声を上げると、遊伸も空の背筋が寒くなるのを感じる。

 

ATK:2400

 

「こ、これは……”闇のカード”!?」

 

「私にも解る……遊伸、ファントム・オブ・カオスに、闇のカードっていう事は…」

 

「ああ! 間違いない! ”第1の試練”の相手はこの人だ!」

 

遊伸はそうと分かると、身を引き締める。

 

「さあ行くぞォ! 地底のアラクネーの効果発動ッ! 1ターンに1度、相手の表側表示で存在するモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに1体のみ装備する事が出来るッ! さあアラクネー! 《ガスタの賢者 ウィンダール》を捕らえろォーーー!! 《トワイナー・スレッド》!!!」

 

地底のアラクネーの蜘蛛の口からウィンダール目掛けて糸を吐き出すと、ウィンダールは糸に絡め取られ、BFリーダーの場に連れ去られてしまう。

 

「ウィンダール!?」

 

「嘘!? ウィンダール!?」

 

遊伸と空は同時に叫ぶ。

 

「バトルッ!! 地底のアラクネーでセブン・ソード・ウォリアーを攻撃ッ! 《ダーク・ネット》!!!」

 

「させない! 罠発動……!?」

 

遊伸は罠の発動ボタンを押すが、罠が発動しない、地底のアラクネーの攻撃が始まる。

先程の効果とは違い、今度は女性の口からセブン・ソード・ウォリアーに向かって糸を吐き出すと、セブン・ソード・ウォリアーを巻きつけ、そのまま締め上げ破壊する。

 

「うわぁ!!」

 

M・R(マーシャル・レッド) LP:8000→7900

 

「遊伸!? 大丈夫!?」

 

「(たった100ポイントなのに……”闇のカード”による物理的痛み、そして”闇のデュエル”による精神的な痛み……体を突き破って直接心臓に当たっている様な気さえする……同時に受けるのは危険だ! そして……)」

 

遊伸は振り返り、空を見る。

 

「(これを空が受けるのはもっと危険だ! 空はどちらの痛みも経験したことが無い、もし大きいのを受けてしまったら……) 空! 気を付けるんだ! 絶対にあの攻撃を受けてはいけない!」

 

「う、うん! それと遊伸、今罠を発動しようとしてたみたいだけど……」

 

「ああ、あれは恐らく鋼貴が戦った《氷結のフィッツジェラルド》と同じ効果を持っているんだ」

 

遊伸の言う通り、この地底のアラクネーには氷結のフィッツジェラルドと同様、攻撃時にダメージステップ終了時まで魔法・罠の発動を封じる効果を持っていた。

 

「俺はこれでターンエンドだッ!」

 

LP:4150

BFリーダー 手札:0

チームメイト 手札:3

モンスター

・兵隊アリトークン

・地底のアラクネー

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

・セット

・ガスタの賢者 ウィンダール(地底のアラクネー)

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:3+1

 

「空! 僕が伏せたカードは好きに使ってくれ!」

 

遊伸が後ろから空に言う。

 

「うん! (遊伸はあの”闇のカード”は危険だって言ってた……伏せカードは気になるけど……一刻も早くあのモンスターを倒さなきゃ! …遊伸とのタッグならあのカード…!)」

 

「私は遊伸が伏せた魔法カード《戦士の生還》を発動! 墓地から戦士族を1体手札に加える! 私は《X-セイバー アナペレラ》を手札に!」

 

空 手札:4+1

 

「そして《X-セイバー アナペレラ》を召喚!」

 

空の場にアナペレラが現れる。

 

ATK:1800

 

「続けて墓地から風属性モンスターを1体除外して、手札から《風の精霊 ガルーダ》を特殊召喚!」

 

除外したカード

ガスタの希望 カムイ

 

続けて空の場にガルーダが舞い降りる。

 

ATK:1600

 

「行くよ! レベル4の《X-セイバー アナペレラ》と《風の精霊 ガルーダ》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

空の場のアナペレラとガルーダがそれぞれオレンジ、緑の色をした光球になると、現れた穴に吸い込まれる。

その穴から赤い閃光が放たれ、一人の輝く戦士が現れる。

 

「エクシーズ召喚! 輝くガスタの守護戦士! 《ダイガスタ・エメラル》!」

 

その戦士は体全体が輝くエメラルドで出来ており、背中には大きな翼、体にはガスタの鎧を身に付け、両腕にはガスタの紋章が刻まれた盾を構えている。

 

ATK:1800

 

「新しいガスタ! よし、空! 頼んだよ!」

 

「任せて! ダイガスタ・エメラルの効果発動! オーバーレイ・ユニットを取り除き、自分の墓地から効果モンスター以外のモンスター1体を選択して特殊召喚するよ! 私が特殊召喚するのは《大地の騎士ガイアナイト》!」

 

取り除いたオーバーレイ・ユニット

X-セイバー アナペレラ

 

ダイガスタ・エメラルが光球を一つ取り込むと、眩い光を放つ。

その光に全員が眼を瞑り、開けると何時の間にかダイガスタ・エメラルの横にガイアナイトが佇んでいた。

 

ATK:2600

 

「凄い! ガイアナイトが蘇った! 行けるぞ!」

 

遊伸は空の後ろでガッツポーズをする。

何より自分のカードが空の役に立ったのが嬉しかった。

 

「行くよ! バトル! ガイアナイトで地底のアラクネーを攻撃!」

 

ガイアナイトが一直線に地底のアラクネーへと突きかかる。

ガイアナイトはランスを引き、そして突き出す―――

―――しかし地底のアラクネーを破壊する事は出来なかった。

 

「…う、嘘……ウィンダール……」

 

ガイアナイトがランスで貫いたもの、それは糸で捕らえられていたウィンダールであった。

地底のアラクネーは不気味な声で愉快そうに笑っている。

そう、地底のアラクネーが攻撃を受ける瞬間、捕らえていたウィンダールを盾にしたのだ。

ウィンダールは力尽きるとそのまま消滅する。

 

「フハハハハ! 見たかッ!! これがアラクネーの能力! 戦闘によって破壊される場合、代わりに効果で装備したモンスターを破壊する事が出来るのだァ!!」

 

BF LP:4150→3950

 

「そ、そんな効果まで……」

 

遊伸は地底のアラクネーの恐ろしい効果に愕然とする。

 

「そんな……こんなのって……くっ……ダイガスタ・エメラルで兵隊アリトークンを攻撃! 《ダイガスタ・ウインドカッター》!」

 

ダイガスタ・エメラルが両腕の盾に風を集めて高速で回転させる。

その風を兵隊アリトークンに向かって飛ばすと、兵隊アリトークンは真っ二つとなる。

 

「私はカードを伏せてターンエンド!」

 

LP:7900

遊伸 手札:1

空 手札:2

モンスター

・ダイガスタ・エメラル

・大地の騎士ガイアナイト

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「俺のタァーン! ドロォー!」

 

チームメイト 手札:3+1

 

「さあてェ……俺も”切り札”を呼ぶぜェーーー!!!」

 

「!?」

 

空と遊伸は感じ取る、とても嫌な予感を。

 

「まずは《暗黒の狂犬(あんこくのマッドドッグ)》を召喚だァ!!」

 

場に板垣も使用した獣族モンスター、 暗黒の狂犬が現れる。

板垣の使っていたものと同じ様に遊伸達を威嚇している。

 

ATK:1900

 

「俺は伏せていた魔法カードォ《死者転生》を発動ォ! 手札を1枚捨てる事で自分の墓地のモンスター1体を手札に加える! 俺は《インフェルニティ・ビートル》を手札にィ!」

 

捨てたカード

キング・オブ・ビースト

 

チームメイト 手札:2+1

 

「さらに伏せていた魔法カードォ《二重召喚(デュアルサモン)》を発動ォ! このターンもう一度通常召喚が出来るぜェ……! 俺は《インフェルニティ・ビートル》を召喚だァ!」

 

再びインフェルニティ・ビートルが場に現れる。

 

ATK:1200

 

「そして俺が伏せた最後の魔法カードォ! 《スター・チェンジャー》を発動ォ! こいつは場のモンスターのレベルを1つ、上げるか下げるか出来るぜェ! 俺はインフェルニティ・ビートルのレベルを上げるぞォ!」

 

インフェルニティ・ビートル レベル2→3

 

「(あの人の伏せカードは全部罠ではなかったな……それにしても、パートナーにも使える様に伏せたのだろうに、結局自分で使う事になったんだな……僕の《戦士の生還》は上手くいったけど、伏せる物によっては、パートナーの助けにならない事もある……か)」

 

こんな時にだが、遊伸はタッグデュエルの奥深さをまた一つ知る。

 

「覚悟するんだなァァァーーー!!! レベル4《暗黒の狂犬》に、レベル3になった《インフェルニティ・ビートル》をチューニング!!」

 

インフェルニティ・ビートルが3つの光輪に姿を変えると、暗黒の狂犬を囲い、4つの光に変わった途端、それらが黒くなり、漆黒の柱へと変わる。

 

「暗黒より生まれし者ォ……万物を負の世界へと誘う覇者となれェ! シンクロ召喚!! きやがれェ!! 《猿魔王ゼーマン》!!!」

 

漆黒の柱から現れたのは杖を持った猿。

その出で立ちは宛ら人間の王者の様であり、その鋭い眼光で遊伸達を威圧する。

 

ATK:2500

 

「そんな……この感じ……”闇のカード”!?」

 

「2体も……嘘でしょ……」

 

新たな闇のカードの登場に、遊伸と空は驚愕する。

 

「邪魔者はすっこんでろォ!! 地底のアラクネーの効果発動ォ! 《大地の騎士ガイアナイト》を装備だァ!! 《トワイナー・スレッド》!!!」

 

アラクネーがガイアナイトを糸で絡め、捕まえると自分の場に連れ去る。

 

「ガイアナイト!?」

 

「へっへっへっへ……行くぜェ! 猿魔王ゼーマンでダイガスタ・エメラルを攻撃ィ!! 《カースド・フレア》ァ!!!」

 

ゼーマンが杖の先から紫の炎を放つ。

 

「…くっ……罠発動…!? (嘘!? このモンスターも!?」

 

「空!? まずい! このままではダメージが! 空、空ーーー!!!」

 

遊伸が必死に叫ぶも、攻撃は確実に空へと迫る。

空は決心して身構える。

 

「(お姉ちゃん……皆……)」

 

そしてゼーマンの炎がダイガスタ・エメラルに命中する―――その時。

 

「う……あれ……?」

 

M・R LP:7900→7200

 

「空! 無事…!?」

 

空のLPは削られた、しかし空自体にダメージはなかった、”闇のカード”の物理的ダメージ、”闇のデュエル”の精神的ダメージ、どちらも空には無かった。

そして今、空の目の前にいる”精霊”―――

 

「…ダイガスタ・エメラル」

 

ゼーマンの一撃により破壊されたはずのダイガスタ・エメラルが両腕の盾を構え、空の前に立っていた。

 

「…あん? 何だァ…? 何であの女は平然としてんだァ…? こいつの攻撃をくらった奴は皆もがいてたのによォ……」

 

「貴様の闇のカードが不良品なだけだッ! とっとと続けろォ!!」

 

BFリーダーが後ろから怒鳴る。

 

「ああァ!? だったらテメェのも試してやるよォ!! 地底のアラクネーで直接攻撃だァ!! 《ダーク・ネット》!!!」

 

地底のアラクネーが空目掛けて糸を吐き出す。

糸が空に届く直前にダイガスタ・エメラルが糸を弾く。

 

「ダイガスタ・エメラルが……私を守ってくれてる」

 

M・R LP:7200→4800

 

「ハハッ! 何だよォ! テメェのだって不良品じゃねぇかァ!」

 

「黙れッ! 西野 空が痛みを感じない程図太いだけだッ! 早くターンを終わらせろッ!」

 

「うるせぇなァ! 俺はこれでターンを終了だァ!」

 

LP:3950

BFリーダー 手札:0

チームメイト 手札:3

モンスター

・地底のアラクネー

・猿魔王ゼーマン

魔法・罠

・セット

・大地の騎士ガイアナイト(地底のアラクネー)

 

「どういうことなの……エメラルに精霊は宿ってなかったのに……」

 

今はもう姿が無いダイガスタ・エメラルがいた場所を見ながら、空が呟く。

 

「でも一つだけ解る事があるよ……ダイガスタ・エメラルは、空を守ってくれる……ありがとう、ダイガスタ・エメラル、空を頼んだよ」

 

遊伸はそう言って前に出る。

 

「遊伸…」

 

「(これで僕は……安心して戦える!) 僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:1+1

 

「僕は魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地からモンスターを5体デッキに戻しシャッフル、そして2枚ドロー!」

 

戻したカード

切り込み隊長

X-セイバー アナペレラ

セブン・ソード・ウォリアー

風の精霊 ガルーダ

ガスタ・ガルド

 

遊伸 手札:1+2

 

「僕はモンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:4800

遊伸 手札:0

空 手札:2

モンスター

・セット

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

・セット

・セット

 

「フンッ! 幾ら罠を張ろうと無意味だッ! 俺のターンッ! ドロォー!」

 

BFリーダー 手札:0+1

 

「クックック……この時をどれ程待った事かッ! 今ッ! この手でッ! 近衛 遊伸と西野 空に負けた屈辱をはらす事が出来るッ!! だがそのモンスターが邪魔だッ! もっと数を揃えてやるッ! 罠カード《無謀な欲張り》を発動ッ! この先2ターンドローフェイズをスキップする代わりに、カードを2枚ドローするッ!」

 

BFリーダー 手札:1+2

 

突然の手札補充に、遊伸と空は息を呑み、そして願った、この布陣を突破されない様に、と。

 

「…チッ! 俺は装備魔法《メテオ・ストライク》をゼーマンに装備ッ! このカードが装備されているモンスターの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていればその数値だけ相手LPに戦闘ダメージを与えるッ! 行けッ! ゼーマンッ! 《カースド・フレア》ッ!!!」

 

ゼーマンが杖の先から炎を遊伸のセットモンスター目掛けて放たれる。

遊伸は貫通ダメージが通ると分かると、ダメージに備えて身構える。

 

「(このままじゃ遊伸が!? ダイガスタ・エメラル! お願い! 遊伸を助けて!)」

 

空は自分の墓地に眠るダイガスタ・エメラルに祈る。

 

セットモンスター:ガスタ・ガルド DEF:500

 

ゼーマンの炎が遊伸のセットモンスター、ガスタ・ガルドを焼き払い、そのまま遊伸を襲おうとした――――その瞬間。

 

「くっ……!? ダイガスタ・エメラル!?」

 

M・R LP:4800→2800

 

遊伸と炎の間にダイガスタ・エメラルが割って入り、風で炎を吹き飛ばす。

 

「地底のアラクネー!! 《ダーク・ネット》ッ!!!」

 

続いて地底のアラクネーが糸を遊伸に向けて糸を吐き出すと、遊伸に当たる直前に、ダイガスタ・エメラルが先程と同じ様に弾く。

 

「くっ……! …助かったよ、ありがとう!」

 

M・R LP:2800→400

 

「ど、どうなっているッ!? 近衛 遊伸までッ……ターンエンドッ!」

 

LP:3950

BFリーダー 手札:2

チームメイト 手札:3

モンスター

・地底のアラクネー

・猿魔王ゼーマン

魔法・罠

・大地の騎士ガイアナイト(地底のアラクネー)

・メテオ・ストライク(猿魔王ゼーマン)

 

「おいテメェ! 何倒し損ねてんだァ!! 次ドロー出来ねぇじゃねぇかァ!!!」

 

「黙れッ! ドローなど必要ないッ! 2枚の”闇のカード”があればなッ!」

 

ブラックファイアが喧嘩しているその時、遊伸は空にプレイヤーを交代する。

 

「空、何とか繋げたよ……後は頼んだよ!」

 

「うん! 私……絶対勝って見せるから!」

 

空はそう言って笑うと、相手に向き合う。

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:2+1

 

「(遊伸が残した伏せカード……そして私の手札……)」

 

空の脳裏に勝利への道筋が浮かび上がる。

 

「行くよ! これがラストターン! 私は罠カード《ガスタへの祈り》を発動! 自分の墓地の《ガスタ》をデッキに2体戻してシャッフル、そして墓地から《ガスタ》を1体特殊召喚するよ! 来て! 《ガスタの巫女 ウィンダ》!」

 

デッキに戻したカード

ガスタ・ガルド

ガスタ・イグル

 

空の場にウィンダが現れる。

空に振り向き、共に笑い合うと再び相手に向き直り、杖を構える。

 

ATK:1000

 

「続いて《ガスタの静寂 カーム》を召喚!」

 

ウィンダに続けてカームが場に現れる。

空、ウィンダに笑顔を向けると、ウィンダと同様に相手に身構える。

 

ATK:1700

 

「カームの効果発動! 自分の墓地の《ガスタ》をデッキに2体戻して1枚ドローするよ! 《静寂の風》!」

 

デッキに戻したカード

ガスタの賢者 ウィンダール

ダイガスタ・エメラル

 

空 手札:2+1

 

「そして魔法カード《共振装置》を発動! 自分の場の同じ属性、種族のモンスター2体を選択、選択した2体の内、1体のレベルをエンドフェイズ時までもう1体のレベルと同じになる! 私は風属性、サイキック族の《ガスタの巫女 ウィンダ》を、同じく風属性、サイキック族の《ガスタの静寂 カーム》と同じレベル4に変更するよ!」

 

ガスタの巫女 ウィンダ レベル2→4

 

「(遊伸と、私の”絆”……) レベル4の《ガスタの巫女 ウィンダ》と《ガスタの静寂 カーム》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

2体が緑の光球に変わり、現れた穴に吸い込まれる。

その穴からは金色の閃光が放たれ、1体の戦士が自らの名前を叫びながら現れる。

 

「エクシーズ召喚! 夢と希望……そして”絆”の戦士! 《No.39 希望皇ホープ》!!!」

 

ATK:2500

 

「…空、繋がった……繋がった! 勝利まで!」

 

遊伸が現れたホープを見て声を上げる。

確信に満ちた声だった。

 

「ハッハッハッハ! それがどうしたッ!! 高が2500が1体だッ!! 2体の”闇のカード”に敵うものかッ!!!」

 

BFリーダーは笑いながら叫ぶ。

 

「敵わないなら敵わせる! ”大事な物”を信じて諦めなければ……越えられない物なんて何も無いから! 装備魔法《閃光の双剣-トライス》を手札を1枚墓地に送って《No.39 希望皇ホープ》に装備! このカードは攻撃力を500ダウンする代わりにバトルフェイズ中に2回攻撃が出来るよ!」

 

墓地に送ったカード

ガスタの交信

 

閃光の双剣-トライスが発動すると、ホープは両手にトライスを持つ。

 

ATK:2500→2000

 

「…フッハッハッハ!!! 2回攻撃? それが何だ? 攻撃力を下げてまで何がしたい?」

 

「…最強の切り札は、最後まで取っとく物だよ! 遊伸の伏せた装備魔法《最強の盾》を《No.39 希望皇ホープ》に装備! 装備モンスターが攻撃表示の時、元々の守備力分、攻撃力をアップ! ホープの守備力は2000、よってホープの攻撃力は―――」

 

ATK:2000→4000

 

最強の盾が装備されると、ホープのライトウィング・シールドが輝き始める。

 

「ば、馬鹿なッ!!! 攻撃力4000だとッ!!!」

 

「行くよホープ! 地底のアラクネーを攻撃! 《ホープ剣・スラッシュ》!」

 

ホープが地底のアラクネーに対して斬りかかる。

 

「ぐッ……地底のアラクネー効果発動! ガイアナイトを盾にしろッ!」

 

「(ごめんね、ガイアナイト……)」

 

地底のアラクネーがガイアナイトを前に出すと、ホープがそれを右手のトライスで斬りつける。

ガイアナイトは開放され、消滅する。

 

「ぐおお! くそッ!」

 

BF LP:3950→2350

 

「トライスの効果でもう一回! 《ホープ剣・ダブル・スラッシュ》!!」

 

今度は左手のトライスで地底のアラクネーを斬りつけようとする。

 

「…フハハハッ! 残念だったなッ! 西野、さっきの言葉を丸々返してやるッ! 最強の切り札は、最後まで取っとく物、最強と認めはしないが奥の手だッ! 猿魔王ゼーマンの効果発動ッ! 相手モンスターの攻撃宣言時、自分の手札、または場のモンスター1体を墓地へ送る事で、相手モンスター1体の攻撃を無効にするッ! 俺は手札から《ポセイドン・オオカブト》を墓地に送る事で攻撃を無効だッ!」

 

ゼーマンがホープに向けて眼を光らせると、ホープの動きが止まる。

 

「どうだ! これが”闇のカード”の力だッ! 思い知ったかッ!」

 

「……うん、これは凄い誤算だよ―――とっても嬉しい誤算のね!」

 

「な…!?」

 

笑う空に驚くBFリーダー。

 

「遊伸が伏せた速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》を発動! モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスターはこのバトルフェイズ中、もう1度だけ攻撃する事が出来るよ! さらにそのモンスターはダメージステップの間、なんと攻撃力が2倍になるよ! これでホープのダメージステップでの攻撃力は―――」

 

ATK:4000

 

「は……8000になる!?」

 

「ホープで3度目の攻撃! 《ホープ剣・トリプル・スラッシュ》!!!」

 

ホープがトライスを両方振り上げ、地底のアラクネーに振り下ろそうとしている。

 

「(まずいまずいまずい!!! 俺の手札にモンスターは無いッ! これを受けたら……仕方無いッ!) ゼーマンの効果発動! ゼーマン自身を墓地に送り攻撃を無効ッ!」

 

ゼーマンは力を解放し、自身を怨念体へと変えると、ホープに取り憑き、動きを止める。

 

「テメェ!!! よくも俺のゼーマンを墓地に送りやがったなァ!!!」

 

チームメイトが後ろから文句を言う。

 

「黙ってろッ!!! アラクネー1体いれば十分だッ! アラクネーには無敵の効果があるッ! 次でホープを捕まえて終わりだッ!!!」

 

「……これが、最後の一手! 罠カード《イクイップ・シュート》を発動! 自分の場の攻撃表示で存在するモンスターに装備された装備カード1枚を、相手の場に存在する攻撃表示のモンスター1体に装備! そして装備カードを元々装備していた自分のモンスターと、 選択した相手モンスターで強制的にバトルするよ! 《No.39 希望皇ホープ》に装備されている《閃光の双剣-トライス》を《地底のアラクネー》に装備! 4度目の戦闘を行うよ!」

 

「よ……4度目だとぉぉぉーーー!!!」

 

ホープがトライスを地低のアラクネーに投擲すると、見事地低のアラクネーにトライスが突き刺さる。

 

No.39 希望皇ホープ ATK:4000→4500

地底のアラクネー    ATK:2400→1900

 

「これで最後! 遊伸!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

       「「《ホープ剣・クアドラプル・スラッシュ》!!!!」」

 

 

 

 

ホープは自身の剣を両手に持ち、背中のライトウィング・シールドが剣へと変わる。

合計4本の剣で地底のアラクネーを斬りつけ、破壊する。

 

「ぐあぁぁぁーーーーー!!!」

 

BF LP:2350→0

 

ソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。

同時に周りを囲っていた黒い炎も消える。

BFリーダーが倒れた瞬間、チームメイトも倒れる。

 

「……勝った、やったよ遊伸!」

 

「ああ! 僕達の勝ちだ! 空とガスタ達のおかげだよ」

 

遊伸は空を見てから、空のデッキを見る。

 

「えへへ……そうだ!」

 

空はエクストラデッキからダイガスタ・エメラルを取り出す。

 

「エメラル? …やっぱり普段は出てこないのかな?」

 

「空、今まで本当にダイガスタ・エメラルには精霊が宿ってなかったのかい?」

 

「うん、お姉ちゃんがくれたガスタには全部宿っているんだけど、私がガスタを貰ったのは10年前、まだモンスター・エクシーズは作られてなかった頃よ、ダイガスタ・フェニクスとダイガスタ・エメラルはモンスター・エクシーズが作られた後に買い足した物なの」

 

空はダイガスタ・エメラルのカードに目を落とす。

 

「でも精霊が宿ってたなんて……私遊伸と会う前は、精霊がいないと思ってたエメラル達を積極的に使おうとは思ってなかったの、買ったのもシリーズを揃えておきたかっただけで、そもそもエクシーズ自体好んでなかったから……ごめんね」

 

空はダイガスタ・エメラルのカードに謝る。

遊伸はふと周りを見る、見る限り全てのデュエルが終わっていた。

デュエルに勝利し、任務をやり遂げたという充足感を感じているような顔付きのセキュリティもいれば、対戦相手のBFメンバーと共に倒れているセキュリティ、さらには倒れたBFメンバーを不思議そうに見ているセキュリティもいる。

そして全てに共通するのはBFメンバーが全員倒れている。

 

「遊伸気付いてた?」

 

「え? 何がだい?」

 

「私達のデュエルが終わった瞬間、周りのデュエルが終わったの」

 

「…それってどういう事だい?」

 

「んー…」

 

空が顎に指を当てて考える。

 

「…ボスを倒したからかな?」

 

空は倒れているBFリーダーを指差す。

 

「そ、それで一斉に倒れるのかい?」

 

「分かんないよ私にも」

 

空は困った様な表情をしている遊伸に困った様な表情で返す。

 

「…はい、遊伸これ」

 

空が遊伸にホープを手渡す。

 

「ありがとう……空、もう大丈夫かい?」

 

遊伸がそう尋ねると、空は笑顔で返す。

 

「うん! 私には”絆”があるから!」

 

「…その通りさ、あ、そういえば鋼貴達も来ているんだった! 探しに行こう!」

 

「あ! 待って!」

 

遊伸が駆け出そうとすると、空が呼び止める。

 

「何だい空?」

 

「…遊伸、これこの前も言ったけど……私、遊伸に逢えてよかった! あの時よりも、今はずっと強くそう思える! 遊伸のおかげで私、”大切な物”を見失わなかったよ! 遊伸―――」

 

 

 

素敵な”出会い”と、”絆”をありがとう!

 

 

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