遊戯王~Truth of Satellite~   作:鬼柳高原

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第4話 原点 ~空と一陣の風~

「空じゃねーか、ここ一週間か? 事務所来ないで何やってたんだ?」

 

「テスト期間に入るからしばらくお休みするって言ったじゃん! ちゃんと聞いてた?」

 

「そうだったか?」

 

「(空…鋼貴がさっき言っていたのは人の名前のことだったのか…それにしても、最後の一人って女の子だったんだな)」

 

遊伸は鋼貴と話している空を見る。

小柄で身長は150台有るか無いか。

長い茶髪の後ろ髪を一本に編んで背中に下げている。

 

遊伸には、この様な少女がデュエルチームの一員で、時には危険な依頼をこなしていく姿を想像出来なかった。

 

遊伸がそんなことを考えていると空がこちらに気づく。

 

 

「あ! あなたが遊伸?」

 

「え、僕の事知ってるの?」

 

「うん! さっきここ来る前に事務所でグレイグから聞いたよ! 昨日は大変だったみたいね」

 

「そんなことまで聞いてたのか(グレイグの奴、俺の失態とか話してねーよな…)」

 

「うん、…さて」

 

空は遊伸に向き合い、背筋を伸ばし、両手を自分の後ろ腰辺りに回す。

 

 

「私は西野 空(にしの そら)! デュエルアカデミア高等部1年生で、マーシャル・レッドではアルバイトとしてメンバーやらせて貰ってます! よろしくね!」

 

そう言うと空はぺこりと頭を下げる。

遊伸も応じようとすると

 

 

「はい! 次は遊伸! どうぞ!」

 

空は右手を差し出して促す。

 

「え! えと…ぼ、僕は近衛 遊伸! マーシャル・レッドで…新人です! こちらこそよろしく!」

 

遊伸は空と同じポーズをとったつもりであったが、焦ったせいか膝が曲がり、体を反らせたせいで応援団の掛け声の時のような体勢になっている。

 

 

「…アハハ! ノリいいね!」

 

「ただの自己紹介なんだから、わざわざ同じ様にしてやらなくてもいいんだぞ」

 

「そ、そうなの?」

 

この遊伸、常識知らず以前に天然である。

 

「ここにいるってことはデュエルしに来てたんでしょ! 私も混ぜて! 実技ならともかく、筆記の普通科目だったから一週間デュエルやってないんだもん」

 

「そうだ! 遊伸、空に見て貰えよ」

 

「空に?」

 

「悔しいがな、空の方が俺よりデュエルセンスが上だ…空ならもっと旨く指摘してくれるぜ」

 

話が解らない空はキョトンとしている。

 

「何の話?」

 

「ああ、実はこの遊伸がな…」

 

 

 

空にさっきのデュエルの話と、遊伸がシティに来てからのデュエルの記録を見せる。

 

 

 

「なるほどね…」

 

「どうだ、空」

 

「大体解ったけど、やっぱり一回デュエルしてみたい、遊伸いい?」

 

「良いよ、僕もまだ、納得出来てないから」

 

「意外と信用ねーな…」

 

鋼貴が少しムッとする。

 

「鋼貴の言い方も、的を射ているけどあんまり良くないよ、遊伸だって何年もデュエルを真剣にやってきてるんだから、経験不足、とか解ってない、とか言われるとそりゃムッとするよ、私だって言われたらする」

 

空は頬を膨らまして見せる。

 

「わ、悪かったよ、昔からこうなんだよ俺は、遊伸も根に持たないでくれよ! 悪気ねーんだ!」

 

「こっちもごめん、鋼貴なりに欠点を指摘してくれたのに…感謝はあっても根に持ったりはしないよ、空もありがとう」

 

「ん! それじゃ始めようか!」

 

空が決闘場の向かい側に行く。

 

「遊伸」

 

「何だい?」

 

鋼貴は言い辛そうに口を開く。

 

「もし空がおかしな事とか言ったり、したりしても…気にすんなよ?」

 

「え? それってどういう…」

 

鋼貴はそそくさと後ろに下がる。

 

「(なんだ?)」

 

「それじゃあいくよ! 元気に掛け声! せーの!」

 

「え! わっ!」

 

 

 

 

「「デュエル!!!」

 

 

 

 

先攻 空

 

 

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:5+1

 

「そうだねぇ…モンスターセット、カードを二枚セットでターンエンド!」

 

フィールド

 

― ― S ― ―  

― ― S S ―

LP:8000

手札:3

 

・セットモンスター

 

・伏せ二枚

 

 

「僕のターン! ドロー!」

 

遊伸 手札:5+1

 

「僕は「X-セイバー ウルズ」を召喚!」

 

場に甲冑と毛皮のマントを纏い、双剣を逆手に持った獣人、狼の顔をした戦士が現れる。

 

ATK:1600

 

「いくぞ! バトル! ウルズでセットモンスターに攻撃! 「暗狼剣・十字斬り」!

 

ウルズの双剣が斬りつける。

斬られたセットカードから、一人の少年が飛び出す。

少年はウルズに向かって、自分の口に指を引っ掛け、舌を出すとそのまま消えてしまう。

 

「な、何だ?」

 

「攻撃されたセットモンスターはリバースモンスター「ガスタの希望 カムイ」! カムイの効果でデッキから「ガスタ」と名の付くチューナーを一体特殊召喚できるよ! 私は「ガスタ・ガルド」を特殊召喚! おいで! ガルド!」

 

空の場に一羽の鳥が舞い降りる。

ガスタ・ガルドと呼ばれた鳥は空の右腕に止まる。

 

ATK:500

 

「よしよし! 久しぶりだね! ほれほれ…きゃ! やったな~!」

 

空がガルドを指で突く真似をするとガルドが指を啄ばもうとする。

 

「ソリッドビジョンてあんな事も出来るのか…僕は二枚伏せてターンエンド」

 

 

フィールド

 

― ― A ― ―  

― ― S S ―

LP:8000

手札:3

 

・X-セイバー ウルズ

 

・伏せ二枚

 

 

「よーし! 私のターン! ドロー!」

 

空の腕がドローにより振り上げられると同時にガルドが場に飛び立つ。

 

空 手札:3+1

 

 

「「ガスタ・グリフ」を召喚!」

 

場に一体のグリフォンが現れる。

空の前に降り立つと空は背を撫でる。

 

ATK:800

 

「お願いね…いくよ! 遊伸! レベル2「ガスタ・グリフ」に、レベル3「ガスタ・ガルド」をチューニング!」

 

ガルドだった三つの光輪が グリフを囲い、二つの光、そして柱へと変える。

 

「大いなる風に導かれし翼よ! その名の如く、戦場を掻き乱せ! シンクロ召喚! 逆巻け! 「旋風のボルテクス」!」

 

光の柱から強い旋風が吹き出し、同時にハーピィにも見える女性が飛び立つ。

その背や腕には物々しい武器が見える。

 

ATK:2100

 

「さらに私はフィールド魔法「デザートストーム」を発動! このカードが場にある限り、風属性モンスターは攻撃力500アップ、守備力400ダウンするよ!」

 

遊伸のセイバー・ヴォ―ルトの様な変化は無いが、代わりに決闘場に強い風が吹く様に感じる。

 

「というよりこれ完全に吹いてるような…とっと、カードが」

 

遊伸のカードが危うくとばされるところであった。

 

「気のせい! バトル! ボルテクスでウルズを攻撃! 「チェーン・ダガー」!」

 

ボルテクスの腕から鎖の付いたナイフが投げられる。

 

ATK:2100→2600

 

ウルズに命中し、破壊する。

 

「く…」

 

遊伸 LP:8000→7000

 

 

「私はカードを伏せてターンエンド!」

 

フィールド(デザートストーム)

 

― ― A ― ―  

― S S S ―

LP:8000

手札:1

 

・旋風のボルテクス

 

・伏せ三枚

 

 

「僕のターン(ボルテクスを何とかしないと…)ドロー!」

 

手札:3+1

 

「僕は魔法カード「ワン・フォー・ワン」を発動! 手札から「総剣司令 ガトムズ」を墓地に送り、デッキからレベル1モンスター「X-セイバー アクセル」を特殊召喚!」

 

場に青い鎧と毛皮の腰巻を装備し、鋸の様な剣を持った戦士が現れる。

如何にも荒くれ者という雰囲気を出しており、それは何処と無く「獣」の気配を感じさせる。

 

ATK:400

 

「見た目のわりには攻撃力低いな」

 

「ア、アクセルには攻撃以外の役割があるんだよ…」

 

鋼貴のアクセルに対しての心無い言葉に遊伸が弁護する。

 

「そして永続罠「リビングデットの呼び声」を発動! 自分の墓地から「総剣司令 ガトムズ」を復活!」

 

場にそのモンスターが現れると、アクセルが跪き、礼をする。

白銀の鎧に赤いマント、大剣を振るい、彼が現れるだけで味方は奮い立ち、敵は恐れ戦く、 X-セイバーを束ねる司令官、「総剣司令 ガトムズ」である。

 

ATK:2100

 

「そして手札から「X-セイバー パロムロ」を召喚!」

 

場にパロムロが現れる。

アクセルと同様、 ガトムズに礼をする。

 

ATK:200

 

「いくぞ! レベル1「 X-セイバー アクセル」と、レベル6「総剣司令 ガトムズ」に、レベル1「X-セイバー パロムロ」をチューニング!」

 

ガトムズが剣を振り上げ、号令すると、アクセルがガトムズの側に控え、パロムロが光輪に変わり、二体を囲む。

二体は七つの光、そして柱となる。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる。光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!「スターダスト・ドラゴン」!!」

 

場に スターダスト・ドラゴンが現れる。

スターダスト・ドラゴンはデザートストームの風に乗り、勢いをつける。

 

「スターダスト・ドラゴンは風属性! デザートストームの効果を受ける!」

 

ATK:2500→3000

 

「あっちゃ~…そう来たか」

 

「スターダスト・ドラゴンでボルテクスを攻撃! 「シューティング・ガスト」!」

 

スターダスト・ドラゴンはデザートストームの風が追い風になるように立ち回ると、ボルテクスに向かって翼を羽ばたかせ、突風を起こす。

ボルテクスはその突風に耐え切れず吹き飛び、地面に叩きつけられ破壊される。

 

 

「うう…!」

 

空 LP:8000→7400

 

「ボルテクスの効果発動! 戦闘破壊されて墓地に送られた時、デッキからレベル4以下の鳥獣族を特殊召喚出来るよ! 来て! 「ガスタ・イグル」!」

 

場にガルドの様な一羽の鳥が舞い降りる。

しかしガルドよりも一回り大きく、空の腕に止まるのはきつそうだ。

 

ATK:200

 

「僕はこれでターンエンド」

 

フィールド

 

― ― A ― ―  

― ― T S ―

LP:7000

手札:1

 

 

・スターダスト・ドラゴン

 

・リビングデットの呼び声

・伏せ

 

 

「私のターン! ドロー!」

 

手札:1+1

 

「私は永続罠「リミット・リバース」を発動! 墓地から攻撃力1000以下のモンスターを特殊召喚するよ! 私は「ガスタの希望 カムイ」を復活!」

 

場にカムイが元気よく飛び出してくるが…

 

「(ごめんね)そしてリリース!」

 

再び消えていく。

不満に満ちた顔で、空の方を見ながら。

 

「「ガスタの賢者ウィンダール」をアドバンス召喚!」

 

場にフードを被り、その下に民族衣装の様な装束を着た男が、独特な形の杖を携えて現れる。

 

ATK:2000

 

ウィンダールは空に一瞥するとすぐに相手に向き合う。

 

「頼りにしてるよ、レベル6「ガスタの賢者ウィンダール」に、レベル1「ガスタ・イグル」をチューニング!」

 

何時ものようにシンクロ召喚が行われると思いきや、チューナーであるイグルは光輪にならず、自らの周りに輪を作り出す。

一方素材であるウィンダールはイグルに向かって呪文を唱えている。

詠唱が終わると杖を突き出し、杖から六つの光球が飛び出す。

光球がイグルがいる輪の中に入ると光の柱となる。

 

「偉大なる一族の賢者よ! 大いなる翼を御して長としての責を全うせよ! シンクロ召喚!」

 

光の柱から巨大なイグルが現れると、ウィンダールはそれに飛び乗る。

 

「ガスタの守護神鳥「ダイガスタ・イグルス」!!」

 

ATK:2600→3100

 

「スターダスト・ドラゴンを上回った!?」

 

「ダイガスタ・イグルスでスターダスト・ドラゴンを攻撃! 「ダイガスタ・ウインド」!」

 

「く…「シューティング・ガスト」!」

 

スターダスト・ドラゴンが風を起こして応戦するが、ダイガスタ・イグルスが起こした風がそれすら巻き上げ、スターダスト・ドラゴンを襲う。

スターダスト・ドラゴンは悲鳴を上げ、消滅する。

 

「スターダスト・ドラゴンが…」

 

LP:7000→6900

 

「ターンエンド、そしてエンドフェイズにダイガスタ・イグルスの効果発動! 自分の墓地の風属性モンスターを一体除外して、相手のセットされたカードを破壊するよ! 墓地から「ガスタ・グリフ」を除外して、対象はその伏せカード!「闇払いの風」!」

 

ダイガスタ・イグルスの上のウィンダールが詠唱し、突風を遊神の伏せカードに放つ。

 

破壊されたカード:ガード・ブロック

 

「これで本当にターンお仕舞い!」

 

フィールド(デザートストーム)

 

― ― A ― ―  

― S S T ―

LP:7600

手札:1

 

・ダイガスタ・イグルス

 

・リミットリバース

・伏せ二枚

 

 

「くう…(場にモンスターもいない、手札も少ない、早くダイガスタ・イグルスを何とかしなきゃ…)僕のターン! ドロー!」

 

 

手札:1+1

 

「…来た! 僕は「X-セイバー ガラハド」を召喚! そして手札から魔法カード「ミラクルシンクロフュージョン」を発動! 場のガラハドと、墓地のスターダスト・ドラゴンを融合!」

 

「このタイミングで…!」

 

「遊伸の切り札か!」

 

空と鋼貴は遊伸の引きの強さに驚く。

 

「融合召喚! 現れろ! 「波動竜騎士 ドラゴエクィテス」!」

 

場にドラゴエクィテスが現れる。

 

ATK:3200→3700(デザートストームにより)

 

「いけ!  ドラゴエクィテス! ダイガスタ・イグルスを攻撃! 「スパイラル・ジャベリン」!」

 

「カウンター罠発動! 「攻撃の無力化」! バトルフェイズを強制終了させるよ!」

 

ドラゴエクィテスの槍が動きを止め、手元に戻る。

 

「通らない…! …僕はターンエンド…」

 

フィールド

 

― ― A ― ―  

― ― T ― ―

LP:6900

手札:1

 

・波動竜騎士 ドラゴエクィテス

 

・リビングデットの呼び声

 

「私のターン! ドロー!」

 

空 手札:1+1

 

「…うん、もう解ったかな。 遊伸、いくよ!」

 

「!」

 

「私は「ガスタの巫女 ウィンダ」を召喚!」

 

場に一人の少女が現れる。

緑のポニーテールに袂が付いたコート。

顔にはどこかウィンダールの面影を感じさせる。

 

ウィンダは振り向くと、空に笑って左手を振り、上空にいるウィンダールに向くと、右手に持った杖を振ってなにやら叫ぶように声をかけている様に見える。

 

「細かいなぁ、ソリッドビジョン」

 

「そして永続罠「リビングデットの呼び声」を発動! 私は墓地から「ガスタ・ガルド」を復活!」

 

ガルドが場に舞い戻り、ウィンダの腕に止まる。

 

「(大丈夫だよね…ウィンダ)レベル2「ガスタの巫女 ウィンダ」に、レベル3「ガスタ・ガルド」をチューニング!」

 

ダイガスタ・イグルスの時と同じように、ガルドが自身を囲うように光輪を三つ出す。

そしてウィンダールのように、ウィンダも詠唱を始める、が、ウィンダは途中で詠唱を噛む。

慌てて詠唱を続けるウィンダに、空は頑張れと小声で何度も言い、ウィンダールは顔を顰めている。

詠唱が終わると、ウィンダは杖から光球を二つガルドに向けて放ち、ガルドは光の柱となる。

 

「偉大なる一族の巫女よ! 大いなる翼を御して己の使命を果せ! シンクロ召喚!」

 

光の柱から巨大なガルドが現れると、ウィンダの前に降り立ち、ウィンダはそれに乗る。

 

「ガスタの守護神鳥「ダイガスタ・ガルドス」!!」

 

ATK:2200→2700

 

ウィンダが一息つく様な仕草を見せると、遊伸が笑いを堪えているのが見えた。

ウィンダは顔を赤くしてなにやら喚いているが、空に練習サボったからだよ、と言われ、大人しくなる。

 

「遊伸も笑っている場合じゃないよ! ダイガスタ・ガルドスの効果発動! 自分の墓地の「ガスタ」と名の付くモンスターを二体デッキに戻すことで、相手の表側表示のモンスターを破壊するよ! 墓地から二体デッキに戻し、ドラゴエクィテスを破壊! 「ダイガスタ・デストラクション」!」

 

戻したカード

・ガスタ・イグル 

・ガスタ・ガルド

 

ダイガスタ・ガルドスの上にいるウィンダが、杖に魔力を集中する。

杖に電流の様な魔力が走ると、それをドラゴエクィテスに放つ。

ドラゴエクィテスはそれをまともに受け、消滅する。

 

「そ…そんなまさか…」

 

ウィンダが勝ち誇った様に遊伸に向けて胸を張る。

 

「さらに魔法カード「死者蘇生」発動! 墓地から「旋風のボルテクス」を復活!」

 

ボルテクスが場に現れる。

 

ATK:2100→2600

 

「それ! 一斉攻撃!」

 

空のモンスターがそれぞれ攻撃を放つ。

遊伸には、場にも手札にも墓地にも防御手段が残されていなかった。

 

「…」

 

空 LP:6900→4300→1200→0

 

デュエルが終了し、ソリッドビジョンが消える。

 

空が決闘盤を収め、遊伸に走り寄る。

 

「遊伸、私とデュエルしてみて、何か解った?」

 

「…空と鋼貴が強いとしか…」

 

「うーん、遊伸、私がどういう風にデュエルしてたか解る?」

 

「え…? シンクロモンスターが多かったかな?」

 

「違う違う、使ってたけどね」

 

空は鋼貴と自分を交互に指差して言う。

 

「私はね、鋼貴と同じ様にデュエルしたの」

 

「鋼貴と?」

 

遊伸は鋼貴を見る。

 

「鋼貴、遊伸とはどんなことを意識してデュエルした?」

 

空が鋼貴に振り向き聞く。

 

「うん? …そうだな…俺は遊伸のデュエル見てよ、何と言うか…「奇襲性」があると思ったんだよな、「フュージョン」とか、ダメージステップ強化とか」

 

鋼貴は遊伸のデュエルを思い出していくように続ける。

 

「だからとにかく意識したのは「奇襲を受けても戦線を維持」することだったな」

 

「そう、鋼貴はそう考えてやった、私も鋼貴と同じ様に考えたからそうしたの」

 

再び遊伸へ向き合う。

 

「さっき私は鋼貴の言葉を非難したけど、同時に的を射てるとも言ったよね、それはこの事なの」

 

「経験不足の話?」

 

「うん、私と鋼貴は遊伸のデュエルを見て、遊伸と戦う為のデュエルスタイルを定めたの、でもね」

 

空は人差し指を立てる。

 

「遊伸は鋼貴、私と立て続けで同じスタイルの相手とデュエルしたのに、まったく戦法が変わってなかったの」

 

「え…?」

 

「あー! そうか! そうだよ! やっとスッキリしたぜ! 逆になんで気付かなかったんだ!」

 

鋼貴が掌を叩いて納得する。

 

「どういうこと…?」

 

「俺がお前を経験不足って思ったのはな、お前の戦法が「ワンパターン」だったからだ」

 

「そ、それが僕の欠点…」

 

空が考える様にしてから原因を推理する。

 

「多分遊伸のデュエル環境が原因だと思うの。 遊伸、遊伸の周りの人って皆「パワーデッキ」じゃなかった?」

 

「…」

 

 

…

……

…………

………………

……………………

遊伸 孤児院での記憶

 

「ワーハハハ!!「スパイラルドラゴン」召喚! どうだ遊伸! スゴイぞーカッコイイぞー!!」

 

「よーし! もっとすごいモンスターで倒してやるぞ!」

 

……………………

………………

…………

……

…

 

 

「そう…その通りだ」

 

遊伸のいた孤児院は貧しく、カードを滅多に買うことが出来ない。

その為、子供達はあちらこちらでカードを拾ってくる。

子供達が必死で集めたカードは、戦略性よりも単体能力が優先されていた。

とにかく強いカードが欲しいのだ。

なのでデッキも自然とパワーデッキになっていた。

 

「でしょ? パワーデッキに有効な戦術の一つで、勝利の要素にもっとも実力が絡むのは、同じパワー戦法のごり押しよ。遊伸は周りの子よりも強かっただろうし、単純に相手より強力なモンスターを出せればそれで倒して、がら空きになった相手をそのまま攻めていけるからね」

 

「基本攻撃力を上げてのごり押しだよな、お前」

 

「うん…」

 

遊伸は考える様にして俯く。

 

「遊伸にはその戦法が染み付いちゃってるんだよ、だからこれから色んな戦法の人とデュエルして、ちょっとずつ慣れていけば良いと思うよ!」

 

「いやーよかったな遊伸! 解決してよ! …遊伸?」

 

「…」

 

「…どうしたの?遊伸?…ねえ」

 

「(僕の欠点が分かった…でもそれだけじゃない気がする…何だ…?)」

 

「お、おい! 何まだ悩んでるんだよ、もう解ったろ?」

 

「(この心に引っかかる感じ…思い出せ…もっと…孤児院じゃない…もっと)」

 

「ほんとにどうしたの遊伸! もしかして私のせい!? ねえ遊伸!」

 

「(もっと…僕のデュエルの原点…そうだ…)」

 

 

父さんだ

 

 

 

…

……

…………

………………

……………………

 

 

 

 

 

「負けちゃった…」

 

「勝っちゃった」

 

「どうして勝てないんだろ…強いカードいっぱい選んで作ったのに…」

 

「何でか教えてやろうか?」

 

「うん」

 

遊伸が期待の眼差しを向ける。

 

「カードがお前に懐いてないからだ」

 

「え?」

 

「カードだって負けたくない、上手く使ってくれなきゃそりゃ懐かないさ」

 

「…何いってんの? カードはカードだよ! 生き物じゃないんだから! そう言うならお父さんはお父さんのカードに懐かれてるの?」

 

「餌をねだる飼い犬の如くな」

 

「意味わかんないよー! もういいよっ!」

 

遊伸は怒りながらカードを片付ける。

 

「今解らないならそれでいい、そのうち…」

 

 

解るときがくる。

 

 

……………………

………………

…………

……

…

 

 

「解ったーーー!!!」

 

「「わっ!!」」

 

突然顔を上げて叫んだ遊伸に驚いて飛び退く二人。

 

「と、突然なんだよ!? 塞ぎ込んだと思ったら…」

 

「解った! 解ったんだよ! 全部!」

 

「お…おう、良かったな…(どうしたんだこいつ)」

 

「…ふふっ! よかった!」

 

遊伸は立ち上がり、決闘盤を構える。

 

「もう一回やろう! 今なら二人にも負けない気がする!」

 

「おっ! 言うじゃねーか! それじゃ俺が「ピピピピピッ」っと…残念、仕事の時間だ」

 

鋼貴のケータイから電子音が鳴る。

 

「音声メール? グレイグから?」

 

空が覗き込む。

 

「ああ、流すぜ」

 

鋼貴はケータイの再生ボタンを押す。

 

「鋼貴、依頼だ。 今すぐそこの全員で「ポッポ・タイム」に向かえ。 デュエルでの喧嘩騒ぎが起きているとのことだ、詳しくは依頼主に聞け、時計屋の女主人だ。 グレイグより」

 

 

「と、言うわけだ、そのやる気、そいつらにぶつけてやるとしようぜ!」

 

「うん!」

 

「よし! レッツゴー!」

 

空は駆け出す。

 

「おいおい! あんまり先行くなよ! …と遊伸」

 

「ん?」

 

「デュエル中の空のことなんだけどよ、まああんな感じなんだ。 あんまり気にしなくていいぞ」

 

鋼貴が先程のデュエルのことを言っているのに気付く。

 

「ああ、ソリッドビジョンに話しかけてたことかい? それにしてもすごかったね! 空が話しかけると反応するんだから! 演出で僕の X-セイバーにも特殊な動きは有るけど、あれは本当に会話してるようだったよ!」

 

「え」

 

「え」

 

二人の間に沈黙が生まれる。

 

「まさか…お前も聞こえる、だとか、見える、とか言い出すんじゃねえだろうな…?」

 

「ど、どういうこと? 何の話?」

 

「…いや、忘れてくれ、この話は疲れる…」

 

「おーい! 二人とも早くー! 怒られちゃうよー!」

 

空がデュエルスペースの出口で手を振っている。

 

「おーう、遊伸、行くぞ」

 

「うん…」

 

どこか腑に落ちない遊伸であったが、今は現場に急ぐのであった。

 

 

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