遊戯王~Truth of Satellite~ 作:鬼柳高原
「……ふう……大逆転、ってか」
鋼貴はカードと決闘盤を収め、遊伸達の元へと戻る。
「鋼貴! 大丈夫かい!?」
「心配させて! もう!」
遊伸と空がフラフラな鋼貴を支える。
「凄かったぜ! 1ターンキルだ!」
「見事としか言えん」
燃次と冷次が称賛を送る。
「発動しなかったミニマム・ガッツのダメージを入れれば、10800ダメージ、鋼貴の方がダメージが上だな」
グレイグがそう言って鋼牙に笑う。
「ええ、鋼貴、本当に強くなったな! どうやら俺も気が抜けない様だ」
「へへ……俺だってどんどん進むぜ……このデュエルの道をな」
「いやぁ凄かったですね、まさかあの状況から逆転するとは、私も驚きました」
「……だったらもうちょっと驚いた顔しやがれってんだ」
鋼貴が笑っている安藤に突っ込む。
「それではいよいよ最後ですね……準備はいいですか?」
安藤は確認を取る、しかし、その方向は遊伸達ではなく、フードを纏った最後の一人。
「待ちくたびれましたよ、ようやく僕の番ですか……それにしても前6人は情けない、誰一人勝ってないじゃないか」
「……しゃ、喋った……冷次?」
「俺も聞いた……喋った」
燃次と冷次は驚いた顔をしてお互い見合う。
そして遊伸、鋼貴、空、高尾はもっと驚いた顔をしている。
「ねえ……今の声って……」
空が不安そうに聞く。
「ま、まさか!? 嘘だろう!?」
高尾は信じられない、といった様子。
「……アカデミア襲撃の時に見なかったと思ったら、こんなとこで何してやがんだよ」
鋼貴が最後の一人を睨みつける。
「お前は……桐原!」
遊伸が名前を呼ぶと、最後の一人が立ち上がり、フードを脱ぐ。
「……やあ、久しぶりだね、遊伸君、鋼貴君、空君……それと高尾君だったかな? 君はもっと久しぶり」
桐原 聡真、デュエルチーム”ブラックファイア”のエースにしてアカデミア・プロ候補生、エリート主義者で自分より下の者を見下し、未だにサテライト出身者への差別を持っている。
デュエルチーム親交大会の時、初戦で遊伸に破れ、それ以降、遊伸達の間では消息不明であった。
「見れば解るだろ? 第2の試練、最後の相手は僕だよ」
「そうじゃねぇ! 何でお前は正気なんだ! 感情を眠らされてるはずだろ! 何でお前だけ何時も通りなんだよ!」
鋼貴が桐原を指差す。
「簡単な事さ、僕は操る必要がない、僕は彼等の仲間になったからね」
桐原は安藤を指差す。
「はあ? お前が何でそいつ等の仲間になるんだよ!
「知ってるも何も、彼らに実験のモルモットとしてブラックファイアを提供したのは僕さ」
「な…!?」
遊伸達は驚愕する。
第1の試練、アカデミア襲撃事件で桐原の姿が見えなかった事、遊伸達は”桐原は運よく魔の手から逃れた”、そう考えていた。
しかし違った、桐原は事件の首謀者の一人だったのだ。
「お前が……お前が彼等を!?」
遊伸が怒りを顕にして前に出る。
「そもそも”仲間”っていうのが間違いだね、何であんな弱い連中が僕の仲間なんだい? 僕はプロ候補生、あいつ等はタダのアマ、格が違うでしょ? 仲間、だなんて、横一列に並べないで欲しいね」
「ああ! 確かに格が違ぇな! テメェは誰よりも下のクズ野郎だ!」
鋼貴は親指を下に向けて言い放つ。
「何だい、ブラックファイアを実験に使ったからかい? 別にいいじゃないか、君達にとってもどうでもいい存在じゃないのかい?」
桐原は意外そうな顔をする。
「僕にとって格下の人間何てどうでもいい存在だからね、提供してやったよ、リーダーなんか”テオドールに会える”何て言ったらすぐ飛びついてきちゃってさ、随分楽に連れて来れたよ。 あ、そうそう、さっきの6人中3人、アカデミア関係者と重砲は僕が提供したんだ、どいつもこいつもちょっと甘い言葉を言えばついてくるんだから、格下の人間は欲が強くて嫌だ―――」
「もういい」
「…うん?」
遊伸が険しい顔をしたまま俯いている。
「桐原……一つ答えてくれ……お前は何の為にここまでやったんだ?」
「…遊伸君、解ってるくせに、僕の目的は一つ! 君を完膚なきまでに叩きのめして僕の前に跪かせる為さ! 彼等は僕に約束してくれた! 協力すれば誰にも負けない”力”を与えると! そう、君を倒す為の”力”を! だから僕は彼等に忠誠を誓い、そして手に入れた!」
桐原は懐から黒いガラスの板を取り出す。
ファントム・オブ・カオスを保管する為のケースである。
「許されないんだよ! 君みたいな底辺の人間が僕みたいなエリートに勝つなんて事! さあ遊伸君! 僕とデュエルだ! 今こそ! 本当の決着をつけてやろう!」
桐原はここまで言うと心の中で笑う。
「(フン! 忠誠なんて誓うものか! 何れは僕がこのアルカディア・ムーブメントの頂点に伸し上がってやる!)」
遊伸は顔を上げ、桐原を睨む。
「桐原……馬鹿野郎!!!」
遊伸がありったけの力を込めて叫ぶ。
「馬鹿野郎! 臆病者の意気地なし!!! お前は……お前はこんな事の為に何人傷つけた! こんな事の為に何人不幸にした! お前は……こんな事をしなければ僕と戦えなかったのか!!! 頑張って強くなろうと、努力して僕を倒そうと思わなかったのか!!! そこまでして手に入れた”力”じゃなきゃ僕には勝てないと思ったのか!!! この臆病者ぉーーー!!!」
遊伸の叫びが広い空間に響く。
「…好き勝手言ってくれたね、そういう事は勝ってからいいなよ……サテライトのクズがぁ!!!」
桐原はガラスを叩き割ると、ファントム・オブ・カオスが飛び出し、桐原に憑依する。
「……フフフ……アッーハッハッハッハッハーーー!!! 凄い! 力が湧いてくる! これで僕は最強だ! さあ来い!」
桐原と遊伸は互いに決闘場へと立つ。
「遊伸!!! やっちまえ!!! お前は1度勝ってるんだ! そんな奴ぶったおせ!!!」
鋼貴はダメージも忘れて遊伸に声援を送る。
「遊伸! 頑張って! 桐原なんかに負けないで!」
「お前の信念をあいつに見せてやれ!!!」
空と高尾、二人も鋼貴と同じ様に声援を送る。
「あいつが誰なのかも知らねぇ! あいつと何があったのかも知らねぇ!」
「だが俺達にも解る事がある…」
「「あいつは嫌な奴だ!!! 許せない奴だ!!! 遊伸、俺達の分まで頼むぞ!!!」」
燃次と冷次は怒りのまま叫ぶ。
「…遊伸の奴があそこまで激昂するのは初めて見るな、気持ちは死ぬ程解るが……どうした?」
グレイグが体を震わせている鋼牙に声を掛ける。
「…自分を抑えているんです……話を聞けば、奴を倒すのは遊伸の役目のようですから……俺が邪魔をする訳にはいかない……」
鋼牙は怒りの形相で桐原を睨んでいる。
準備を終えた遊伸と桐原が決闘盤を展開し、構える。
「「デュエル!!!」」
この瞬間、決闘場を黒い炎が囲む。
先攻 遊伸
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:5+1
「僕は《切り込み隊長》を召喚! そして効果発動! 召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚出来る! 続け! 《XX-セイバー エマーズブレイド》!」
遊伸の場に切り込み隊長が躍り出ると、それに続いてエマーズブレイドが現れる。
切り込み隊長 ATK:1200
XX-セイバー エマーズブレイド ATK:1300
「レベル3の《切り込み隊長》と《XX-セイバー エマーズブレイド》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
2体がオレンジ色の光球に変わると、地面に現れた穴に吸い込まれ、赤い閃光を放つ。
「エクシーズ召喚! 異形の戦士! 《M.X-セイバー インヴォーカー》!」
赤い閃光を放ちながら現れたのは黒い戦士。
赤いマントを身に付け、それ以外は殆ど黒い武装。
その武装は機械的なものであり、同じ機械的なフォルトロールやパシウルにも無い特徴を備えている。
ATK:1600
「僕は永続魔法《強欲なカケラ》を発動! カードを2枚伏せてターンエンド!」
LP:8000
手札:1
モンスター
・M.X-セイバー インヴォーカー
(オーバーレイ・ユニット:切り込み隊長、 XX-セイバー エマーズブレイド)
魔法・罠
・強欲なカケラ
・セット
・セット
「遊伸の新しいX-セイバー……お願い、遊伸の力になって……」
空はインヴォーカーに向けて祈る。
「さあ行くよォ! 僕のタァーン! ドロォー!!!」
桐原 手札:5+1
「そんな雑魚出していいのかナァ? 僕が踏み潰しちゃうぞォ! 《アレキサンドライドラゴン》を召喚ッ!」
桐原の場に輝くドラゴンが召喚される……その瞬間―――
「カウンター罠《セイバー・ホール》発動! 自分の場に《X-セイバー》と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を無効にし破壊する!」
インヴォーカーを中心に穴が現れ、桐原の場まで一気に広がると、現れたアレキサンドライドラゴンがその穴深くまで落ちる。
「……やってくれるねぇ……でもその程度でいい気にならない法がいいよォ! 僕はカードを2枚伏せてターンエンドォ!」
LP:8000
手札:3
モンスター
・無し
魔法・罠
・セット
・セット
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:1+1
「僕が通常ドローを行った時、《強欲なカケラ》にカウンターを乗せる」
強欲なカケラ カウンター数:1
「僕はインヴォーカーの効果を発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、自分のデッキから戦士族、または獣戦士族の地属性・レベル4モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する! 《X-セイバー ウルズ》をデッキから特殊召喚! 《セイバーズ・コール》!」
取り除いたユニット:XX-セイバー エマーズブレイド
遊伸の場にウルズが現れ、防御体勢をとる。
DEF:1000
「そして《X-セイバー アナペレラ》を召喚!」
続けて遊伸の場にアナペレラが現れる。
ATK:1800
「行くぞ! レベル4の《X-セイバー ウルズ》と《X-セイバー アナペレラ》をオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
2体がオレンジ色の光球に変わり、現れた穴に吸い込まれる。
その穴からは金色の閃光が放たれ、1体の戦士が自らの名前を叫びながら現れる。
「エクシーズ召喚! 夢と希望の戦士! 《No.39 希望皇ホープ》!!」
遊伸のナンバーズ、 希望皇ホープが現れる。
ATK:2500
「よっしゃー! ホープだ! 奴にモンスターはいねぇ! 攻撃を叩き込んじまえ!」
希望皇ホープの登場に鋼貴が歓声を上げる。
「バトル! 希望皇ホープで直接攻撃! 《ホープ剣・スラッシュ》!」
ホープが剣を構え、桐原に斬りかかる。
「罠カードォ! 《ガード・ブロック》! ダメージを0にして1枚ドロー!」
桐原 手札:3+1
「ならインヴォーカー! 《ミッシング・クロス・ブレイド》!」
今度はインヴォーカーが斬りかかる。
「がァ! ……クッヒッヒッヒ」
桐原 LP:8000→6400
「な、何だ、気持ち悪い笑い方しやがって……」
鋼貴は少し引き気味に桐原を見る。
「…ターンエンド!」
LP:8000
手札:1
モンスター
・M.X-セイバー インヴォーカー
(オーバーレイ・ユニット:切り込み隊長)
・No.39 希望皇ホープ
(オーバーレイ・ユニット:X-セイバー ウルズ、X-セイバー アナペレラ)
魔法・罠
・強欲なカケラ(カウンター数:1)
・セット
「僕のタァーン! ドロォー!!!」
桐原 手札:4+1
「僕は魔法カードォ《手札抹殺》を発動ォ! お互いに手札を全て捨てェ! 捨てた分ドロォー! 僕は4枚捨て4枚ドロォー!」
桐原が捨てたカード
黒竜の雛
洞窟に潜む竜
真紅眼の飛竜
サファイア・ドラゴン
桐原 手札:0+4
「僕は1枚捨てて1枚ドロー!」
遊伸が捨てたカード
X-セイバー アクセル
遊伸 手札:0+1
「ヒャー! まだまだァ! 魔法カードォ《トレード・イン》を発動ォ! 手札のレベル8のモンスターを1体捨てて2枚ドロー!」
捨てたカード
タイラント・ドラゴン
桐原 手札:2+2
「僕は《ミンゲイドラゴン》を召喚ッ!」
桐原の場に珍妙なドラゴンが現れる。
おそらくその名の通り何処かの”民芸品”をモチーフにしているのだろう。
ATK:400
「さらに魔法カードォ《
桐原は突然嬉しそうに笑い始める。
「フーハッハッハッハーーー!!! さあ見ろォ! これが僕の美しく気高いマイ・フェイバリットカードォ! 《
ミンゲイドラゴンが消えると、その場に真紅眼を持った黒い竜が現れる。
桐原が愛して止まない
ATK:2400
「おお! かっちょいいドラゴンだ! 何であんな奴があんなかっちょいいドラゴン持ってんだ!?」
「まあ単体の性能は置いといて、本当だよな、何であんな奴にあんなカードが渡ったんだろうな」
真紅眼の黒竜を見て興奮する燃次の言葉に、鋼貴が頷く。
「さあバトルゥ! まずはその忌々しい効果を持った戦士を攻撃! 《
真紅眼の黒竜がインヴォーカー目掛けて口から黒い火球を放つ。
「希望皇ホープの効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いてモンスターの攻撃を無効にする! 《ムーンバリア》!」
取り除いたユニット
X-セイバー アナペレラ
ホープがインヴォーカーを庇う様に前に出ると、翼を展開し、前面に構えて障壁とする。
障壁は黒炎を弾き、攻撃を無効とする。
「ムガァァァーーー!!! 君のモンスターは全て忌々しいィ!!!」
「なあ高尾さん、あいつは何時もあの調子なのか? あれが憑依してるからってちょっと興奮し過ぎのような……」
「そうだぜ、俺達がデュエルしたブラックファイアの連中が大人しく見える位だ!」
「アカデミア生時代から喜怒哀楽は激しかった覚えはあるが……確かにさっきから興奮が激しいな……」
冷次と燃次、高尾が言う様に、桐原のテンションは上がってきている。
これは桐原の”心の闇”の大きさが関係している。
桐原の”心の闇”の大半が”遊伸への憎しみ”である。
同様の”心の闇”をリアクター使いの獏葉も持っていたが、桐原とは比べ物にならない程の差があった。
獏葉の遊伸への憎しみはデュエルに負けた事での憎しみである。
しかし桐原はそれに加え、”遊伸”そのものが憎い。
エリートである自身より強いサテライト出身の底辺、その存在自体が憎いのである。
その憎しみが遊伸と対峙する事で益々湧いてくる。
その度にファントム・オブ・カオスが表に噴出させているのだ。
これからデュエルが長引く程、桐原は興奮を高めていくだろう。
「バトル終了ォ! 僕はカードを伏せるッ! そして伏せていた速攻魔法ォ《超再生能力》を発動ォ! 発動したターンのエンドフェイズ時ィ! このターン自分が手札から捨てたドラゴン族及びィ! このターン自分が手札・場からリリースしたドラゴン族の枚数分だけ自分のデッキからカードをドローするゥ!」
「捨てた枚数とリリースした枚数…!」
「フッフッフ……さあァタァーンエンドォ!! 超再生能力の効果ァ! 捨てたドラゴンの枚数は手札抹殺で4枚ィ! トレード・インで1枚ィ! そしてリリースがミンゲイドラゴンで1枚ィ! よって僕は6枚ドロォー!!! アッーハッハッハッハッハ!!!」
桐原 手札:0+6
LP:6400
手札:6
モンスター
・真紅眼の黒竜
魔法・罠
・セット
「6枚…!?」
これには遊伸も驚きを隠せない。
「……なんつーコンボだ、鋼貴から話は聞いていたが、伊達にエースを名乗っちゃいねぇって事か……」
グレイグも思わず舌を巻く。
「て、手札が多いから何だ! 使えなきゃ意味がねぇ! 必要最低限ありゃいいんだよ! 行け! 遊伸! 負けんなー!」
鋼貴は士気を上げようと遊伸に声援を送る。
遊伸は振り向き、頷く。
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:1+1
「通常ドローをした事で、《強欲なカケラ》にカウンターを乗せる」
強欲なカケラ カウンター数:2
「《強欲なカケラ》の効果発動! カウンターが2つ以上乗っているこのカードを墓地へ送る事で、 カードを2枚ドローする!」
遊伸 手札:2+2
「インヴォーカーの効果を発動! 《X-セイバー ガラハド》をデッキから特殊召喚! 《セイバーズ・コール》!」
遊伸の場にガラハドが現れると、先程のウルズの様に防御体勢をとる。
DEF:800
「そしてチューナーモンスター《X-セイバー パシウル》を召喚!」
続けてパシウルが遊伸の場に現れる。
ATK:100
「レベル4《X-セイバー ガラハド》に、レベル2《X-セイバー パシウル》をチューニング!」
パシウルが自身を2つの光輪へと変え、ガラハドを囲い、4つの光、そして光の柱へと変える。
「十の剣に名を連ねし新たな戦士よ! 華麗なる技を持って戦場に舞え! シンクロ召喚! 切り開け! 《XX-セイバー ヒュンレイ》!!」
光の柱から現れたのはヒュンレイ。
場に降り立つと剣を鞘から抜き放ち、構える。
ATK:2300
「ヒュンレイの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、場の魔法・罠を3枚まで選択して破壊出来る! 僕はお前の伏せカードを破壊! 《クロス・ソードダンス》!!」
ヒュンレイが桐原の場に躍り出ると、 剣を振るい、伏せカード、《メタル化・魔法反射装甲》を真っ二つにする。
「な、何ィィィーーー!!!」
「(攻撃力の高いホープの前に無防備でいさせる訳が無いと思ったら、大当たりだったみたいだ) バトル! ホープで真紅眼の黒竜を攻撃! 《ホープ剣・スラッシュ》!」
ホープが真紅眼の黒竜目掛けて斬りかかると、真紅眼の黒竜は真っ二つにされ、破壊される。
「………」
桐原 LP:6400→6300
「ヒュンレイで直接攻撃! 《ダブルクロス・スラッシュ》!」
次はヒュンレイが桐原に斬りかかる。
「………」
桐原 LP:6300→4000
「インヴォーカーで直接攻撃! 《ミッシング・クロス・ブレイド》!」
最後にインヴォーカーが斬りかかる。
「………うう」
桐原 LP:4000→2400
「僕はカードを伏せてターンエンド……桐原?」
LP:8000
手札:2
モンスター
・M.X-セイバー インヴォーカー
・No.39 希望皇ホープ
(オーバーレイ・ユニット:X-セイバー ウルズ)
・XX-セイバー ヒュンレイ
魔法・罠
・セット
・セット
遊伸は桐原の様子がおかしい事に気付く。
「…ううう……うわぁぁぁ~~~!!! 僕のッ! 僕のレッドアイズがァァァーーー!!! うおォォォ~~~ン!!!」
桐原がデュエル中にも関わらず、大声を上げて泣き出す。
「き、桐原……」
遊伸は子供の様に泣き喚く桐原に動揺する。
「おいおい!? 何であいつガキ見たいに泣き喚いてんだ!? モンスターが倒されただけだろ!」
鋼貴が呆れながら桐原を見る。
「あ、あんなにショックを受けるなんて……確か大会の時は……僕のレッド・アイズがぁ~! …って叫んだだけだったのに……」
空が大会の時の桐原の真似をして頭を抱える。
「ファントム・オブ・カオスのせい……そう思いたいな」
高尾が微妙な顔をしながら言う。
他の者も同様に、桐原の思いがけない行動に目を丸くする。
「ギギギギギ……許さないィ……許さないぞサテライトのクズがァ!!! 僕のタァーン!! ドロォー!!!」
桐原 手札:6+1
「魔法カードォ《地砕き》発動ォ! 相手の場に表側表示で存在する守備力が一番高いモンスター1体を破壊するッ! 消え去れェーーー!!!」
桐原の魔法が発動され、破壊されたのは守備力の一番高いホープ。
ホープが地面が砕ける程の威力で叩きつけられ、破壊される。
「ホープ!?」
「まだまだァ!!! 魔法カードォ《黙する死者》発動ォ! 自分の墓地に存在する通常モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚するッ! さあ僕の元に再びィーーー!!! 《真紅眼の黒竜》!!!」
桐原の場に再び真紅眼の黒竜が現れ、防御体勢をとる。
DEF:2000
「何だよ! また出せるんなら泣くんじゃねぇ!」
鋼貴が苛立ちながら叫ぶ。
「ふふ……フフフ………アァーーーッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
「うわ! また笑い出した!? 今度は何だよ!」
燃次はウンザリした様子で桐原を見る。
「レッドアイズ……エリートにだけ持つ事が許される……僕の為にある最高のレアカードォ……今こそォ……新たな姿にィ!! 真紅眼の黒竜をリリースしィ!! 《
場の真紅眼の黒竜を”黒い何か”が覆うと、真紅眼の黒竜は”黒き闇の竜”へと姿を変える。
「(こ、これは……”大いなる力”……黒、いや、そんな色じゃない! あれは……あれは”闇”の色だ!)」
遊伸はそのドラゴンを見て戦慄する。
黒よりも”黒い”その体、そして翼や脚に埋め込まれている紅い宝石はまるで眼の様に見え、遊伸を睨み、光を放つ。
真紅眼の闇竜は恐ろしい咆哮を上げて、空間を震わす。
ATK:2400
「素晴らしいィーーー!!! 素晴らしいぞォォォ!!! これがッ! これがレッドアイズの! 僕の力だァーーー!!! 真紅眼の闇竜の効果ァーーー!!!」
突然、桐原の墓地から黒いオーラが流れ出すと、真紅眼の闇竜がそれを吸収する。
ATK2400→4800
「!? 真紅眼の闇竜の攻撃力が倍に!?」
「真紅眼の闇竜は墓地のドラゴン族の数×300ポイント攻撃力をアップさせるゥ!!! 墓地のドラゴンは8体ィ! 攻撃力2400アップだァァァ!!! バトルゥ!!! 真紅眼の闇竜で攻撃ィ!!! 《ダークネス・ギガ・フレイム》ゥァァァーーー!!!」
真紅眼の闇竜が黒竜だった時とは比べ物にならない程の火球をヒュンレイに向けて放つ。
火球がヒュンレイに直撃すると、ヒュンレイは一瞬で蒸発する。
「うわぁぁぁ!!!」
遊伸 LP:8000→5500
「遊伸!?」
「遊伸!? くそ! あの真紅眼の黒竜がここまで強力なモンスターになっちまうなんて!」
空と鋼貴が同時に叫ぶ。
「ヒャーハッハッハッハッハッ!!! どぉーだぁーーー!!! これがエリートである僕の力だァーーー!!! タァーンエンドォ!!! ここで墓地の《
桐原の場に再び真紅眼の黒竜が現れ、2体のレッドアイズが並ぶ。
真紅眼の黒竜 ATK:2400
真紅眼の闇竜 ATK:4800→4200
LP:2400
手札:4
モンスター
・真紅眼の闇竜
・真紅眼の黒竜
魔法・罠
・無し
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:2+1
「(今の僕の手札じゃ……) 僕はインヴォーカーを守備表示に変更、カードを伏せてターンエンド!」
DEF:500
LP:5500
手札:2
モンスター
・M.X-セイバー インヴォーカー
魔法・罠
・セット
・セット
・セット
「ヒャーハッハッハッハッハッ!!! 僕のレッドアイズ達の前に何も出来ないかァーーー!!!
解ったかいィ? これがエリートである僕とサテライトのクズである君との差だァ! 僕のタァーン!
ドロォー!!!」
桐原 手札:4+1
「バトルゥ! 真紅眼の黒竜で攻撃ィ!! 《
真紅眼の黒竜がインヴォーカーに向かって黒い火球を放つと、インヴォーカーは焼き尽くされ、破壊される。
「アッーハッハッハッーーー!!! さあくらえェ! 真紅眼の闇竜! 《ダークネス・ギガ・フレイム》ゥァーーーアッーハッハッハッーーー!!!」
真紅眼の闇竜が遊伸に向けて黒い大火球を放つ。
「罠発動! 《波動再生》!! 相手の直接攻撃宣言時、その攻撃モンスターのレベル以下の レベルを持つシンクロモンスター1体を自分の墓地から選択、そしてその時の戦闘ダメージは半分になり、そのダメージステップ終了時に選択したシンクロモンスターを自分の墓地から特殊召喚する! 僕は《XX-セイバー ヒュンレイ》を選択!」
大火球が遊伸に命中する。
「うわぁぁぁーーー!!! ……ぐっ! 《XX-セイバー ヒュンレイ》を特殊召喚!」
遊伸 LP:5500→3400
遊伸の場に再びヒュンレイが現れる。
ATK:2300
「足掻くのはよしなよォォォーーー!!! 君は僕に負ける宿命なのさァーーー!!! タァーンエンドォ!!!」
LP:2400
手札:5
モンスター
・真紅眼の闇竜
・真紅眼の黒竜
魔法・罠
・無し
「桐原……君は―――」
「おおっとォ! 遊伸クゥン! 前みたいな演説でもするのかぁいィ? 残念ながら君は負けるんだよォ! 御託は結構ォ! 潔く僕に倒されろォーーー!!!」
「遊伸! そいつの言う通りだ!」
グレイグが突然声を張り上げて言う。
「グレイグ!? 何であいつの言う事を肯定するんだよ!」
「鋼貴、俺は別にあいつの戯言を肯定した訳じゃない、遊伸! そんな奴にもう何を言っても無駄だ! そいつはもうお前を倒す事しか見えてねぇ! だから遊伸! どうしても語りたいなら……こいつで語りな!」
グレイグは自分の決闘盤を前に出す様に構える。
「遊伸! 俺と最初にあった時の名言、覚えてるか?」
「……宝月 仁曰く、”デュエルは口以上に物を語る”……」
遊伸はそう呟くと、決意を固めた様な表情になる。
「よし! よく覚えていた! 行け遊伸! お前の全てを、デュエルであいつにぶつけてやれ!」
「はい! 僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:2+1
「僕は罠カード《身剣一体》を発動! このカードは場に《X-セイバー》が1体のみ存在する場合に発動出来る! このカードは装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる! ヒュンレイに装備!」
ATK:2300→3100
「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスターを1体墓地に送る事で、手札、デッキからレベル1モンスターを1体特殊召喚する! 僕は手札の《XX-セイバー フォルトロール》を墓地に送って、デッキから《XX-セイバー レイジグラ》を守備表示で特殊召喚!」
遊伸の場にレイジグラが現れる。
DEF:1000
「レイジグラの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する《X-セイバー》と名のついたモンスター1体を手札に加える事が出来る! 僕は《XX-セイバー フォルトロール》を手札に!」
遊伸 手札:1+1
「自分の場に《X-セイバー》と名の付くモンスターが2体以上いる場合、このカードを手札から特殊召喚する事が出来る! 来い! 《XX-セイバー フォルトロール》!!」
続いて現れたのはフォルトロール。
大剣を振り上げ、構える。
ATK:2400
「そしてフォルトロールの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地からレベル4以下の《X-セイバー》と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する事が出来る! 墓地から《X-セイバー パシウル》を特殊召喚! 《セイバー・リライブ》!」
フォルトロールが地面に大剣を突き刺すと、隣にXの文字が現れ、そこにパシウルが現れる。
ATK:100
「行くぞ! レベル6《XX-セイバー フォルトロール》に、レベル2《X-セイバー パシウル》をチューニング!」
パシウルが自身を2つの光輪に変え、フォルトロールを囲い、6つの光、そして光の柱へ変える。
「集いし願いが……新たに輝く星となる! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ! 《スターダスト・ドラゴン》!!」
光の柱からスターダスト・ドラゴンが現れ、舞い上がる。
ATK:2500
「それがどうしたって言うのさァ! 君程度のモンスターにはこの真紅眼の闇竜は倒せないィ!」
「バトル! ヒュンレイで真紅眼の闇竜を攻撃! 《ダブルクロス・スラッシュ》!」
「馬鹿めェ! 《ダークネス・ギガ・フレイム》ゥァーーー!!!」
斬りかかるヒュンレイを返り討ちにしようと真紅眼の闇竜は黒い大火球を放つ。
「手札から速攻魔法《禁じれれた聖杯》を発動! 対象モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる代わりに、効果を無効にする事が出来る! 僕は《真紅眼の闇竜》の攻撃力は400アップし、効果は無効化させる!」
「な、何だとォォォーーー!!?」
真紅眼の闇竜の頭上に聖杯が現れると、聖杯が傾き、中の液体がこぼれると、その液体は粒子となり、真紅眼の闇竜に降り注ぐ。
すると真紅眼の闇竜が吸収した墓地のドラゴンのオーラが全て抜けていく。
ATK:4200→4600→2800
ヒュンレイが大火球をかわし、真紅眼の闇竜に斬りかかり、首を落とす。
「ヴァァァーーー!!!」
桐原は声にならない叫びを上げる。
桐原 LP:2400→2100
「身剣一体を装備したヒュンレイが相手モンスターを破壊した事により1枚ドロー! 続いてスターダスト・ドラゴンで真紅眼の黒竜を攻撃! 《シューティング・ソニック》!」
遊伸 手札:0+1
スターダスト・ドラゴンが真紅眼の黒竜に向かって衝撃波を放つと、真紅眼の黒竜はバラバラに吹き飛ぶ。
「アァーーー!!! ウワァーーー!!!」
桐原 LP:2100→2000
「よっしゃー! ざまあ見ろ! これで真紅眼の闇竜を倒した! 勝負が見えてきたぜ!」
「桐原の奴、とてつもなく悲痛な叫びを上げてるぞ……」
遊伸の逆転に鋼貴は跳び上がる。
高尾は遊伸の逆転よりも桐原の様子に驚いている。
「これでターンエンド!」
LP:3400
手札:1
モンスター
・XX-セイバー ヒュンレイ
・XX-セイバー レイジグラ
・スターダスト・ドラゴン
魔法・罠
・セット
・身剣一体
「う、嘘だ……こんな事ォ……こんな事認めるかァ……」
桐原は体を震わせながら大汗を掻いている。
「くそぉ! くそくそくそくそぉ!!! 僕のタァーン! ドロォー!!!」
桐原 手札:5+1
桐原の手札
ドラゴニック・タクティクス
ドラゴンを呼ぶ笛
融合
モンスターゲート
コストダウン
引いたカード
スタンピング・クラッシュ
「(何て手札だ! こ、このままじゃ……くそ! こんなにあるのに……あ)」
手札が多いから何だ! 使えなきゃ意味がねぇ! 必要最低限ありゃいいんだよ!
「……くそぉぉぉーーー!!! 鋼貴君なんかにッ!!! 鋼貴君なんかにィィィーーー!!!」
鋼貴の言った通りになってしまった。
桐原のプライドが悲鳴を上げる。
「な、何だよ!? 俺が何かしたかよ!?」
鋼貴はいきなり名前を叫ばれた事に驚く。
「あってはならないんだ……エリートである僕が! お前達の様な底辺に! やってやる!! 僕が負けるかァーーー!!!」
桐原は意を決して叫ぶ。
「スタンバイフェイズゥ! このカードが墓地に存在しィ! 自分の場にモンスターが存在しない場合ッ! このカードを自分の場に攻撃表示で特殊召喚する事が出来るッ! 《ミンゲイドラゴン》を特殊召喚ッ!」
桐原の場に再びミンゲイドラゴンが現れる。
ATK:400
「魔法カードォ《モンスターゲート》を発動ォ! モンスター1体をリリースゥ!」
桐原が魔法を発動すると同時に現れた穴にミンゲイドラゴンが吸い込まれる。
「通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキを捲りィ! そのモンスターを特殊召喚するッ! それ以外のめくったカードは全て墓地へ送るゥ! 僕が……僕が負けるはずが無いィ……1枚目ェ!」
捲ったカード
死者蘇生
「ぐ……墓地へ送る……2枚目ェ!」
捲ったカード
レアメタル・ドラゴン
「……レアメタル・ドラゴンは通常召喚は出来ない……くそ! くそ! 僕は……こんな……こんな……サテライトのクズに……負けたくないィィィーーー!!!」
その瞬間、一瞬桐原のデッキが黒く光るのを遊伸は見た。
「(!? 何だ今のは……)」
「3枚目ェーーー!!!」
桐原はカードを捲り、確認する。
「!?」
桐原はそのカードを見ると、眼を見開く。
「……これは……愉快だ」
桐原が小刻みに揺れ始める。
大笑いの前兆であった。
「アァーーーハッハッハッハッハ!!! 愉快だ! ”大いなる力”が! 僕の願いを叶えたぞォーーー!!!」
「何!? どういう事!? 桐原は何を引いたの!?」
桐原の打って変わった様子に空は戸惑う。
「成る程、”大いなる力”は彼の”心の闇”と”レッドアイズ”を甚く気に入ったようですね。 新しく”創り上げる”とは」
安藤が静かに笑う。
「捲った3枚目ェ! 通常召喚可能モンスターにしてェ! 僕の新たなる”レッドアイズ”! 今こそ姿を現せ!! 《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》!!!」
モンスターゲートから現れたのは真紅眼の闇竜。
だがゲートから出きった瞬間、体が硬質化していく。
その真紅眼の闇竜は漆黒の体から光沢を放ち、さらに”強力”且つ”凶悪”な咆哮を上げる。
ATK:2800
「2体目の”大いなる力”……!?」
「さあ遊伸クゥン! 僕の新たなる力を思い知るがいいィ! レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動ォ! 1ターンに1度ォ! 自分のメインフェイズ時に手札ァ! または自分の墓地から ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚出来るゥ!!! 僕は《真紅眼の黒竜》を特殊召喚ッ!」
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンが咆哮を上げると、桐原の場に真紅眼の黒竜が現れ、同じ様に咆哮を上げる。
ATK:2400
「嘘だろ!? さっきと同じ状態になっちまった!?」
鋼貴が驚愕して叫ぶ。
「さらに魔法カードォ《スタンピング・クラッシュ》! 自分の場にドラゴン族が存在する時ィ! 場の魔法・罠を1枚破壊してそのコントローラーに500ポイントのダメージを与えるゥ! 《身剣一体》を破壊だァ!!!」
真紅眼の黒竜が遊伸の場へ飛び上がると、身剣一体の上に移動し、踏み潰す。
「ぐうぅ……」
遊伸 LP:3400→2900
XX-セイバー ヒュンレイ ATK:3100→2300
「バトルゥ! 真紅眼の黒竜で忌々しい女を攻撃ィ! 《
真紅眼の黒竜が黒い火球でヒュンレイを破壊する。
「ぐ…」
遊伸 LP:2900→2800
「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン!!! そのクズのドラゴンを攻撃ィ! 《ダークネスメタルフレア》ァァァーーー!!!」
ダークネスメタルドラゴンが凄まじい大火球を放つと、スターダスト・ドラゴンは跡形もなく焼失してしまう。
「くう…! …スターダスト・ドラゴン……」
遊伸 LP:2800→2500
「アァーーーハッハッハッハ!!! どうだァ! 最後の最後で笑うのは僕なんだよォ!!! タァーンエンドォ!!!」
LP:2000
手札:4
モンスター
・レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン
・真紅眼の黒竜
魔法・罠
・無し
「くそぉ…! 桐原め…!」
鋼貴は悔しそうに歯を食いしばる。
「桐原……なんて奴だ……認めたくは無いが……奴の邪悪な”信念”がこの状況を作り上げたのか……くそ!」
高尾が自身の左掌を右拳で打つ。
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:1+1
「……ん? 遊伸クゥン、随分と落ち着いてるじゃぁないかァ! 諦めでも付いたのかいィ? エリートである僕には敵わないってさァーーー! アァーーーハッハッハッハッハ!!!」
「……グレイグさん」
遊伸は振り返らず、グレイグの名を呼ぶ。
「何だ?」
「さっきは無駄だってグレイグさんは言いましたけど……すいません、桐原に言っておきたい事があるんです、いいですか?」
「…無駄だと思うが……お前がどうしてもしたいと言うのなら、好きにしろ」
「ありがとうございます……桐原」
遊伸は真剣な顔を桐原に向ける。
「さっき言わなかったかいィ? 御託は結構、君は負けるんだからねェ! …もしかして、命乞いかいィ? それだったら幾らでも聞いてやるよォ! アァーーーハッハッハッハ!!!」
高らかに桐原は笑う。
もう勝ったつもりでいるのだろう。
「……桐原、考えを変えてみないかい?」
「……何だってェ?」
「これからはエリートだとか、底辺だとか、そういう事は言わないで、僕等と一緒に頑張ってみないか?」
「おい! 遊伸何言ってんだよ! そいつは…!?」
鋼貴の言葉をグレイグは無言のまま手で遮る。
「桐原! ”力”っていうのは、欲しがってすぐに手に入れる物じゃないんだよ! ”越えたい壁”に向き合って……頑張って手に入れる物なんだよ!」
遊伸は必死に桐原に訴える。
「鋼貴は諦めないで頑張って……そして長年の目標だった鋼牙さんに勝った! 鋼貴にとって、鋼牙さんは何時も見上げている”絶対的な壁”だったんだ! だけど……鋼貴はそれを越える事が出来たんだ! 鋼貴だけじゃない! 空も、高尾さんも、燃次と冷次も、鋼牙さんも、グレイグさんも、皆”壁”を越えようと頑張っているんだ! 僕もそうだ!」
遊伸は壁を見上げるように上を向く。
脳裏には光円寺 陽子、そしてその上にはテオドールの姿がある。
「僕は今まで何度も”壁”を越えてきた! そしてこれからも越えて行く! だからこそ強くなれたんだ! …君は逃げたんだ、僕という”壁”から! 認めたくなくて、僕と向き合わなかったんだ! 君はあの時から何も変わっていない! だから僕には勝てない! …だけど桐原、君だって頑張って、真剣に勝とうとすれば、どこまでも強くなれるんだ!」
遊伸は一度呼吸を入れ、真っ直ぐな眼を桐原に向ける。
「桐原、僕達と一緒に……”強く”なろう、僕等と一緒に……”楽しいデュエル”をしよう」
最後に遊伸は自分の1番の”願い”を言い、握手を求める様に、片腕を前に差し出す。
「……遊伸君、さっきも言ったじゃないか」
桐原は口元を吊り上げる。
「御託は結構なんだよォォォーーー!!! どうしてエリートである僕がァ! 君達と仲良し小好ししなくちゃならないんだいィ? ヤダヤダそんな底辺の連中に合わせるなんてェ! それに僕が君に勝てないだってェ? アァーーーハッハッハッハ!!!」
桐原は盛大に笑う。
「君の眼はこのサテライトより暗くて薄汚れているようだァ! 僕の場にはレッドアイズが2体ィ! それに比べて君はしょぼいトカゲ一匹じゃないかァ!」
桐原はレイジグラを見て指を差す。
レイジグラは遊伸と同じ様に、その大きな眼で桐原を見ている。
「はぁーあ……無駄な時間をとらせてくれたねェ! 時間稼ぎはやめて貰おうかァ! とにかくサレンダーか僕に叩きのめされるかァ! どっちか選んでくれよォ!」
遊伸は俯き、全身を震わせる。
やがて震えが止まると、再び桐原を見据える。
「解った……桐原、僕はお前を倒す!!! 伏せていた魔法カード《星屑のきらめき》を発動! 自分の墓地に存在するドラゴン族シンクロモンスター1体を選択! そのモンスターのレベルと同じレベルになるように自分の墓地に存在するモンスターをゲームから除外し、選択したモンスターを墓地から特殊召喚する! 墓地から《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
除外したカード
X-セイバー ウルズ レベル4
X-セイバー ガラハド レベル4
遊伸の場に再びスターダスト・ドラゴンが現れる。
ATK:2500
「アァーーーハッハッハッハ!!! 何を出すかと思ったらァ!! さっきのクズドラゴンじゃないかァ!! そんなんじゃダークネスメタルドラゴンには勝てないよォ!!!」
「確かにスターダスト・ドラゴンだけじゃ倒せない……桐原、覚えておいてくれ……エリートでも、サテライト出身でも、誰でも”進化”する事は出来るんだ!!! 行くぞ!!!」
遊伸はカードを手札から取り出し、召喚する。
「チューナーモンスター《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》を召喚!!!」
遊伸の場に現れたのは赤く輝く、小さな光の竜。
その小さな体には、何よりも大きな”可能性”が秘められている、ここにいる誰しもが、そう感じた。
ATK:0
「レベル8《スターダスト・ドラゴン》とレベル1《XX-セイバー レイジグラ》に、レベル1《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》をチューニング!!!」
救世竜 セイヴァー・ドラゴンが、その身に宿した”進化の可能性”を大きくするように、その体を大きく広げていく。
やがて大きくなったセイヴァー・ドラゴンが、スターダスト・ドラゴンとレイジグラの2体と重なると、2体を9つの光へ、そして光の柱へと変える。
「集いし星の輝きが……新たな奇跡を照らし出す! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 進化の先へ! 光来せよ! 《セイヴァー・スター・ドラゴン》!!!」
その竜は星の様に煌きながら、彗星の様に現れた。
セイヴァー・ドラゴンが秘めていた”進化の可能性”、それがスターダスト・ドラゴンを進化させた。
研磨された剣の様に光り輝く、星の名を冠する竜、セイヴァー・スター・ドラゴンである。
ATK:3800
「な、な、な……」
桐原は言葉も出ない。
桐原だけではない、ここにいる遊伸を除く全員が、言葉を発せなかった。
それは安藤も例外ではない。
「(何故…!? 何故”あの竜”がこんな所に……!?)」
ここで安藤に目をやれば、彼の驚く顔という珍しいものが見れたかもしれない。
「セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、相手の場に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、その効果をエンドフェイズ時まで無効に出来る! そしてこの効果で無効にしたモンスターに記された効果をこのターン、このカードの効果として1度だけ発動出来る! 僕は《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を選択! そしてその効果をセイヴァー・スター・ドラゴンの効果として発動する! 《サブリメイション・ドレイン》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが体から光を発すると、その光の中から輝く竜が飛翔する。
「僕は自分の墓地から《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
ATK:2500
「魔法カード《破天荒な風》を発動! 選択したモンスターの攻守を次の自分のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップする! 《スターダスト・ドラゴン》を選択!」
スターダスト・ドラゴンの周りを強い風が吹き始める。
ATK:2500→3500
「あ、あ、あ……く、くるなぁぁ!」
桐原は手札を投げ出し、逃げようとする。
だがこれは”闇のデュエル”、逃げ場など何処にも無い。
「桐原……バトル! スターダスト・ドラゴンで真紅眼の黒竜を攻撃! 《シューティング・ソニック》!」
スターダスト・ドラゴンが周りの風を口に集中させ、自身の衝撃波と一緒に放つ。
真紅眼の黒竜は吹き飛ばされ、桐原が逃げようとしている横を通り越し、闇の障壁へ激突、破壊される。
「ひ、ひぃ~! お、お願いします! ”大いなる力”様! ぼ、僕を助けてぇ!」
桐原 LP:2000→900
「セイヴァー・スター・ドラゴンでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃! 桐原……これで最後だぁーーー!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが急上昇し、突撃の構えをとる。
「《シューティング・ブラスター・ソニック》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが光を纏い、標的目掛けて急降下、そのままレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの体を突き破り、桐原に激突する。
「ウギャァァァーーーーーー!!!」
桐原 LP:900→0
黒い炎とソリッドビジョンが消え、デュエル終了のアラームが鳴った。
桐原は泡を吹いて倒れ、遊伸はただ、そこに立って上を見上げていた。
「遊伸!!!」
仲間達が駆け寄ってくる。
「遊伸~! あ~ん! よかったよ~!」
空は泣きながら駆けて来る。
「遊伸!!! よくやったぜ! 最高だ! おい聞いてんのか遊伸…!?」
鋼貴が喜びながら遊伸の前に回りこむ。
遊伸は涙を流していた。
「おい!? どうした遊伸! 何かあったのか!?」
「鋼貴……」
遊伸は震えた声を出す。
「2回もデュエルをしたのに……全てをぶつけたのに……”解って”くれない事が……向き合ってくれない事が……こんなに悲しい事だなんて……思わなかったよ……」
遊伸はそう言うと崩れ落ち、両肘両膝をつく。
鋼貴は遊伸の背を撫でてから立ち上がり、倒れている桐原の方へ向く。
「桐原、もう聞こえねぇだろうが、言わせて貰うぜ! お前はアカデミア時代から口癖の様に言ってやがったな、”僕はエリートだ”、ああそうかよ、それはさぞ良い肩書き何だろうな、だがよ! 俺達はもっと良い肩書きを持ってんだよ! 教えてやる! それはこいつ!」
鋼貴は横の遊伸を指差す。
「”近衛 遊伸の友”である事だ! お前みたいな奴を思って! お前みたいな奴に真剣に接しようとして! お前みたいな奴の為に泣いた! そんな”近衛 遊伸の友”だ! お前はそれになるチャンスを蹴ったんだ! これから病室でも牢屋でも何処でもいい!」
後悔して過ごしやがれ! 馬鹿野郎!!!
桐原のテンションの度合いが難しい……今までの相手が静か過ぎたからかな……