遊戯王~Truth of Satellite~ 作:鬼柳高原
遊伸と桐原の決着と同時刻 シティ内陸部 治安維持局 デュエルモンスターズ研究所
「遊伸君達、無事でしょうか……」
友河が不安そうにマイルに尋ねる。
「心配は要らんさ! 彼らにはナンバーズ、遊伸君には君のドラゴン、私達が作り上げた”秘密兵器”がある! …それと少々不安だが……”煌く星の竜”もある」
「”煌く星の竜”……セイヴァー・スター・ドラゴンの事ですね」
「ああ……それにしても、私達にこれを提供した”不届き者”は一体何者なんだろうな?」
マイルは一冊のスケッチブックを手に持つ。
それを捲ると、描かれているのは救世竜 セイヴァー・ドラゴン、そしてセイヴァー・スター・ドラゴン。
「ええ、あの時は本当に驚きましたよ、数日前、突然”僕の仕事部屋の開けてある窓に向かって外から放り込まれた”んですからね」
友河は胸を押さえている。
相当驚いたようだ。
「襲撃事件以来、防犯設備を強化したはずなのに、一体どうやって入り込んだんだ……正直、君がそれをカードにしたいと言った時は驚いたよ、そんな怪しい物を……」
マイルはその時の事を思い出し、苦笑いする。
「ですが所長、スケッチブックにはデザインだけでなく、名前からテキストまで全て書いてありました……これ、何処かであった事ではありませんか?」
「……XX-セイバーの事か、成る程、セイヴァー・スター・ドラゴンは遊伸君だけが持つスターダスト・ドラゴンをシンクロ素材としている事から、おそらく遊伸君と近しい人物によるもの……そう考えて、これをカードにしようと思ったのかい?」
「……はい、どうして投げ込んだ人が姿を現さないのかは解りませんが、きっと遊伸君の為にした事のはずです……遊伸君の力になるはずです」
友河は窓の外を見る、その方角の先にはサテライト、友河はその方角に向かって遊伸達の無事を祈った。
* * *
サテライト B.A.D地区 第2の試練場
「…遊伸、もう大丈夫か?」
「はい……すいませんでした……もう大丈夫です、グレイグさん」
遊伸達は現在、決闘場で円を作るように立っている。
「うし! それじゃあ”情報整理ゲーム”始めるぞ」
「またやるのかよ……しかもそんな名前だったのか……」
鋼貴がウンザリそうな顔をしてグレイグに言う。
「いいじゃねぇか、それに今回は少ないから全員にすら回らん、行くぞ! テーマは”現在の状況”! 一つ目! 遊伸!」
グレイグが遊伸を指差す。
「……僕等は全員で勝利して、”第2の試練”を突破しました」
「その通りだ、次二つ目! 空!」
グレイグは頷いた後、空を指差す。
「遊伸が勝ってから10分位たったね」
空は自身の決闘盤に内臓されている時計機能を使って時間を見る。
「そうだな、次最後! 鋼貴!」
グレイグは鋼貴に振り向いて指差す。
「安藤の野郎が何時の間にかいなくなってやがった、俺達を放りっ放し……何で司会進行がいなくなってんだよ!」
鋼貴が怒って叫ぶ。
[心配しなくても大丈夫ですよ]
突然、何処かにあるスピーカーから安藤の声が聞こえてくる。
「あ! おいテメェ! どこ行きやがったんだよ!」
[準備ですよ、”第3の試練”の為のです。 前のモニターを御覧ください]
安藤がそう言うと、上からモニターが下りてくる。
そこの映っているのは―――
「テオドール!?」
[また会ったな、小僧……いや、第2の試練を突破した事を評して”近衛 遊伸”と呼ばせて貰おう]
テオドールが何時もの不敵な笑みを浮かべる。
「テオドール! 第2の試練は突破した! 第3の試練は何だ!」
[慌てるな、説明は安藤がする……お前達のデュエル、見させて貰った。 精々、第3の試練も奮闘する事だな……だが近衛 遊伸、”第3の試練”を行わずとも、お前と俺は再び戦う運命にあるようだ……]
「何だって!? どういう事だ!」
遊伸はテオドールの思わせ振りな言葉を問い質そうとする。
[知りたければ勝ち抜いて見せろ]
そう言ってモニターのテオドールは姿を消す。
[という訳で、第3の試練の説明をさせて頂きます、まずは皆さん、奥のエレベーターにお乗りください]
安藤がそう言うと、何かが起動する様な音がする。
するとこの空間の相手側後方の壁が開き、そこはエレベーターとなっていた。
「おい、この上は何処に繋がってんだ? 俺達はここまでかなり歩いて来た、さっきの入り口じゃないだろ?」
グレイグが安藤に尋ねる。
[ええ、その通りです。 そのエレベーターは”第3の試練”の場へ上がる為の物です]
「……解った、それじゃあ中で説明して貰おうか」
グレイグがそう言うと、遊伸達は全員エレベーターへ乗り込む。
エレベーターが起動し、上へ上がり始める。
[第3の試練は第2の試練同様、7対7の総力戦です]
「じゃあまた同じ様な7人がこの上で待ってんのか?」
鋼貴がウンザリして安藤に尋ねる。
[それは違います、第3の試練は我々、”セブンスターズ”がお相手させて頂きます]
「マジかよ! へへっ、ようやくテオドールに近づいて来たじゃないの!」
鋼貴の顔にやる気が広がる。
[詳しいルールは到着後に……っと、着きましたね]
エレベーターが止まると、扉が開く。
遊伸達がエレベーターから出ると、そこはドームの様な建物の中、目の前の出口には扉が無く、外には大量の瓦礫が見える。
どうやらまだ B.A.D地区の中にいる様だ。
「何だここ! 誰もいねぇじゃねーか!」
「隠れているのか?」
燃次と冷次が辺りを見渡す。
[皆さん、外に出てみてください]
安藤が遊伸達を促す。
遊伸達はそれに従い、外に出る。
「!?」
遊伸達が外に出ると、驚くべき物が見えた。
自分達が出てきたドームのすぐ側に、巨大な穴が空いていた。
「な、何なんだこれは……こんな大きな穴……見た事がない……」
「隕石が落ちたみたい……」
遊伸と空は大穴を見ながら驚く。
[そこにある大きな穴は”ゼロ・リバース”の発生地……かつて”モーメント”があった場所です]
「モーメントがあそこに!?」
遊伸は再び目の前の大穴を見る。
「で、どうしろって言うんだ? まさかあそこでやるとか言いだすんじゃないだろうな?」
グレイグが親指で大穴をを指差す。
[いえいえ、あれは単なる目印です、どうぞ中へお戻りください、モニターで説明します]
「出ろだの戻れだの面倒な事させやがって……」
鋼貴が愚痴を言いながらドームへ戻っていく。
全員がドームに戻ると、ドーム内に取り付けられているモニターに地図が表示される。
[よろしいですか? まずこの中心部の大半を占めているのが先程の”ゼロ・リバースによって出来た大穴”、その北側の小さい隣接した施設がこのドームです。 そして”大穴”を中心とした8方位の離れた位置にある決闘場、ここに我々”セブンスターズ”が一人ずつ配置に就いています]
「読めたぞ、俺達もバラバラに分かれてデュエルしに行くんだな」
グレイグが安藤の声が聞こえてくるスピーカーを指差す。
[ご名答です、ただ注意点を2つ程、我らが王、テオドールさんの居城は北にあります。 しかしその扉は硬く閉ざされています]
「あ! 解った! 他の6人を倒さなきゃ開かない! でしょ?」
空が自信有り気に答える。
[またまたご名答です、王であるテオドールさんを除く我々6人がその扉を開ける為の”鍵”を持っています。 その鍵とは……これです]
モニターの地図が消え、そこに1枚のカードが表示される。
しかし、イラストは何も描かれておらず、名前もテキストも書かれていない。
ただフレームの色が白いカードがそこに映されていた。
「シンクロモンスター…?」
遊伸がそう呟く。
カードのフレームが白い物はシンクロモンスター、遊伸達も愛用している馴染みの深いカードである。
[はい、我らが王のテオドールさんはドラゴン族使い、そしてテオドールさんに仕える我ら6人も、それぞれドラゴン族のシンクロモンスターを1枚ずつ所持しています]
「つまり、お前等を倒してそれをぶんどれって事か?」
[その通りです、グレイグさん、でしたね? 貴方は理解が早くてよろしい]
「そりゃどうも」
グレイグは素っ気なく返す。
[そして二つ目は―――]
「おいちょっと待て! ちょいと気になったんだけどよ……」
鋼貴が安藤の言葉を遮る。
「8方位……って言ったけどよ、今の話だと6組ずつ戦うんだよな? 光円寺の奴らも燃次と冷次みたいに二人で一人何だろ? つまりそれだと……場所と決闘者が一つと一人余るじゃねーか!」
[今その事を言おうと思ってたところですよ、この試練、一箇所だけ”ハズレ”があります。 そこには誰もいません]
「何でそんなもんがあるんだよ……」
[その方が面白そうじゃないですか]
「(ケッ! 舐めやがって……こちとら命懸けだってんのに、向こうは余裕こきやがる!)」
鋼貴は安藤の声が流れるスピーカーを睨む。
[それでは皆さん、モニターの側にある箱を開けてください]
遊伸達がモニター周辺に目をやると、少し大きめの箱が置かれている。
遊伸がそれを開くと、中に色の違うPDAが7つ入っていた。
「何だコリャ?」
「PDAだ……画面にはさっきの地図が表示されているな。 後はよく解らない表示が幾つか」
鋼貴と高尾が幾つか取り出して見る。
[皆さん、お好きな色をお選びください]
「なあ冷次、俺達は二人で一つか?」
「二人で一人だからな、当然だ」
遊伸達はそれぞれPDAを手に取る。
燃次と冷次の分は冷次が持った。
[全員手にしましたね? それは見ての通り、ここの地図です]
「私達がいるドームに集中してる七色の点は何なの?」
空が安藤に質問する。
[それは貴方達の現在位置です。 PDAの色を見てください、自分のPDAの色と同じ色の点、それが自分の現在位置です]
「右上にある7つの白い星は?」
次は鋼牙が質問する。
[それは我々の反応ですね、セブンスターズの一人を倒すと、そこの星が一つ消えます]
「成る程! ここの星全部消せば俺等の勝ち、って訳だ!」
鋼貴は自分のPDAの星の部分を指で叩く。
[ここで重要な事を二つ、まず一つ、我々はファントム・オブ・カオスを使用しません。 さっきの桐原君みたいになるのは嫌ですし、使わなくても強いですからね]
「じゃあ皆が死んじゃう事はもう無いのね! よかった……」
空が胸を撫で下ろす。
[ええ、死にはしないと思いますよ、無事でも済まないでしょうがね]
「(確かに……)」
遊伸は光円寺 陽子戦、そしてテオドール戦を思い出す。
[二つ目、貴方達が”敗北”した場合、PDAに現れている反応が消えます。 なので我々に挑みに行った方の反応が消えるのは、その方の”敗北”を意味します]
「…つまり、そうなっちまったら他の手が空いてる奴が代わりに倒しに行く、って事か」
[その通りですグレイグさん……これで説明は以上です。 因みに我々セブンスターズ側は貴方達が分かる情報を一切知る事が出来ません。 誰が自分の所に向かっているのか分からない様になってます。 一体誰が私の所に来るのか、楽しみにしてますよ……おっと、忘れるところでした、タッグのお二人]
安藤が燃次と冷次に声を掛ける。
[光円寺さん達に貴方達の事は伝えてあります、貴方達が彼女達とデュエルしない理由は無いと思うので、彼女達のいる決闘場をお教えしましょう、彼女達は東の決闘場にいます、それでは……]
そう言って安藤の通信が切れる。
「…お前等、今の説明、解ったな?」
グレイグが確認をとり、全員がそれに頷く。
「それじゃ、誰が何処に行く?」
グレイグが燃次と冷次以外に聞く。
「何処に行くっつっても、俺等は光円寺とテオドール以外の奴のデュエルを見た事ないぜ、ここはクジでいいだろ?」
「待って鋼貴! 誰が何処に行くか決める前に、皆のPDAの色を覚えておこうよ! じゃないと誰が何処にいるのかが分からなくなっちゃう!」
空が自分のPDAを鋼貴に向かって翳す。
最もなので、遊伸達はお互いに自分の色を教え合う。
その後に鋼貴の提案通り、籤引きを行った。
結果―――
東北→空
東→燃次・冷次
東南→遊伸
南→グレイグ
西南→鋼貴
西→高尾
西北→鋼牙
「くっそ……一番遠いじゃねぇか」
グレイグが面倒そうに呟く。
「グレイグさん、そういえばさ、もし自分が勝って、負けた奴がいなかったり、まだデュエルやってたり……助けに行く必要が無かったらどうしてればいいんだ?」
燃次がグレイグに尋ねる。
「その時はここを目指せ、ここにいれば何かあった時にすぐに救援に向かえる。 …よし、お前等! 必ず勝てよ! 解散!」
グレイグが号令を掛けると、遊伸達は各々の相手の場所を目指して駆け出した。