遊戯王~Truth of Satellite~ 作:鬼柳高原
遊伸と空がデュエルを始める頃 西北の決闘場付近 鋼貴
「(兄貴が……兄貴が負けちまうなんて……)」
鋼貴は全速力で西北の決闘場へと向かっていた。
「はぁ…はぁ……よし! 見えてきた……あ! 高尾!」
鋼貴が到着すると、高尾がドームの出入口の前に立っているのが見えた。
「鋼貴! 無事だったか!」
高尾が鋼貴に走り寄る。
鋼貴は息を整えてから高尾に詰め寄る。
「兄貴は!? 相手は!?」
「落ち着け! 俺も訳が解らないんだ! ……来てくれ」
高尾は鋼貴を連れてドーム内へと入って行った。
* * *
西北の決闘場 ドーム内
「……何で誰もいないんだ」
鋼貴はドーム内を見渡す。
目の前にある決闘場以外何も無い空間が広がっている。
「……あっちの反応は2つ、こっちの反応は5つ……だがこちらが2敗したのならあっちの反応が3つなければおかしい……つまり、燃次達か鋼牙さん、どちらかが引き分けて相打ちになった可能性がある」
高尾は自分のPDAを取り出す。
「さっき確認したんだが、俺達がここに来る前に遊伸と空が燃次達の所に辿り着いていた。 そして今もそこにいる……おそらく燃次達を倒した光円寺達とデュエルをしているんだろう……つまり、引き分けたのは鋼牙さんという事になる」
「…兄貴が引き分けたのは分かった……じゃあ何でここに兄貴も相手もいないんだよ! 何処に行っちまったんだよ!」
鋼貴が不安な顔で高尾を問い質す。
「…すまん、俺にも分からないんだ……俺が来た時にはもう……そして決闘場にはこれが1枚落ちていた」
高尾は1枚のカードを取り出す。
白いフレームのドラゴン族モンスター、”オリエント・ドラゴン”。
テオドールの居城に入る為の”鍵”の一つ。
「……くそっ! 兄貴に何かしてみろ! 俺が許さねぇぞ!!!」
鋼貴が大声で叫ぶ。
「……とにかく、今は出発地点に戻ろう。 分からない事が多すぎる、他の誰かが何か知ってるかもしれん」
「…ああ」
* * *
出発地点 ドーム内
「おうお前等、無事に戻ったな……鋼牙はどうした? 何かあったのか!?」
グレイグが北西の決闘場に行っていたはずの鋼貴と高尾が浮かない顔をしているのと、鋼牙がいないのを見て、何事かと下ろしていた腰を上げる。
「グレイグさん、無事でよかったです……実は……」
高尾は鋼貴の分を含め、分かれてからこれまでの話をグレイグにする。
「……鋼牙が引き分けってのも信じられん位だが……向こうは何を考えてやがんだ?」
グレイグは険しい顔で頭を捻る。
「鋼貴、心配ないさ。 鋼牙さんは簡単にやられたりしない、きっと無事だ」
「ああ……」
「おお、忘れてたぜ、悪い事ばかりじゃねぇんだ、お前等、PDA確認したか?」
グレイグがPDAを取り出す。
「いえ、決闘場を発ってからはまだ……」
「なら朗報だ、お前等が来る少し前に敵の反応が一つになった。 そしてゆっくりだが遊伸と空がこちらに向かってる……つまり、あいつ等が光円寺に勝った」
「本当か!? 遊伸の奴、借りを返しやがったんだ!」
仲間の勝利を聞いて鋼貴は顔色を良くする。
「よっしゃ! 迎えに行ってやろうぜ! きっと遅ぇのは燃次と冷次を担いでるからだ! 手伝ってやろうぜ!」
「そうだな、PDAがあるからすれ違いもしないだろうし、グレイグさん、行きましょう」
鋼貴達は遊伸達のいる方向へと向かった。
* * *
約1時間後 出発地点 ドーム内
「あ~やっと着いた、ったくグレイグも途中で代われよってんだ……」
鋼貴と高尾は背負っていた燃次と冷次を床に下ろす。
「何を言う、一番遠くて長いルートを通ったのは俺だぞ、楽をしたっていいだろうが」
「でも驚きましたよ、グレイグさん《地縛神》を3体も相手にしたなんて!」
遊伸はグレイグのデュエルを称賛する。
「あんなの大した事ねぇよ、一番驚いたのは空の不戦勝だ」
「ですよね……誰があんなに早く勝ったのか、なんて思ったら……」
高尾がグレイグの言葉に頷く。
「一番驚いたのは私だよ! 誰か知ってると思ったら誰も知らないし~!」
空が悔しそうに腕を振る。
「…鋼貴、僕も高尾さんの言う通りだと思うよ。 鋼牙さんはそう簡単にやられたりはしない、きっと何か訳があるんだよ」
「ああ、解ってるよ遊伸……早く奴のとこに乗り込んで聞き出してやる!」
鋼貴は右拳を左掌に打ち付ける。
「それじゃ向かうとするか……と、そういえばこいつ等をどうする?」
グレイグが気絶している燃次と冷次を指差す。
「このまま置いておく訳にはいかんだろう、鋼牙の例があるしな」
「じゃあ誰か残るの?」
空が全員を見渡す。
「……まあ遊伸と空は確定だな、この試練を元々受けていたのは遊伸、空は
「グレイグ、俺もだ! 兄貴の事がある!
鋼貴が手を挙げて主張する。
「グレイグさん、俺も……俺、今回何も役に立ってません、行かせてください」
高尾も鋼貴同様に手を挙げる。
「……分かった、俺が残ろう。 俺がこいつ等を推薦した様なもんだ、俺にも責任があるだろう」
「ありがとうございます、グレイグさん。 行ってきます」
遊伸がグレイグに頭を下げる。
「おう、必ずぶっ倒してこいよ!」
遊伸達は北にあるテオドールの居城へと向かった。
* * *
テオドールの居城 門前
「ここか……」
遊伸達の目の前には大きな城、そして前には大きな門が聳えていた。
「本当に城じゃねーか! 住んでるとこも偉そうにしやがって!」
「鋼貴の家だって城みたいなトップスじゃないか」
高尾が横で笑いながら言う。
「あれは実家だ! もう俺んちじゃねーよ!」
「ハハハ! さて”鍵”はどうやって使うんだ?」
高尾が門を見渡す。
「あ! あれじゃない!」
空が門の右側に窪みを見つける。
丁度カードがはまりそうな窪みであった。
「これか……でも3つしか無いぞ?」
鋼貴が首を傾げる。
「鋼貴! 左側にもう3つがあるよ」
遊伸が左側から鋼貴を呼ぶ。
「おお、本当だ、よし!」
遊伸達はそれぞれの穴にカードをセットしていく。
全てをセットすると、大きな音がなり、扉が開く。
「おお! 開いた! 行こうぜ!」
遊伸達は城内に入って行った。
* * *
テオドールの居城 城内
遊伸達が城内に入ると、すぐ目の前に男が立っていた。
「お待ちしておりました」
男は礼儀正しく礼をする。
「何だお前?」
鋼貴は逆に、無礼に男に尋ねる。
「私はテオドール様に仕える者です。 皆様をご案内するように承っております……こちらへどうぞ」
遊伸達は男に奥へと連れられて行った。
辿り着いた先は大きな広間、それも城の中の謁見の間。
奥には玉座、そこに座っていたのは―――
「テオドール!」
遊伸が玉座に座っている人物に叫ぶ。
「よく来た小僧」
テオドールはそう言って玉座から立ち上がる。
「おいテオドール! 俺の兄貴を何処にやったんだよ! 答えろ!」
鋼貴がテオドールに鋼牙の行方を問い質す。
「兄? ”政府の犬”の事か?」
「やっぱりテメェが関わってやがったか! 言え! 兄貴は何処だ!」
「慌てるな、すぐに逢わせてやる」
鋼貴は怒鳴るが、テオドールはまともに取り合おうとしない。
「さて……俺以外のセブンスターズを倒したか、見事と褒めてやろう……これで第3の試練は合格だ……約束通り、戦ってやる」
「テオドール! その前に聞きたい事がある!」
遊伸が前に出る。
「いいだろう、お前はこの俺に何が聞きたい?」
「”大いなる力”って一体何なんだ! ファントム・オブ・カオスを通じてあんなに恐ろしいカードを創り出す……お前達が求める全ての元凶の事だ! ”お前には解らない”は無しだ! 答えろ!」
遊伸は怒りを込めてテオドールを問い質す。
「……他ならぬ”協力者達”の頼みだ、教えてやろう」
「何だって!?」
テオドールの言葉に4人は驚く。
「協力者ってなんだよ! 俺達はお前に何か協力した覚えなんかねーぞ!」
鋼貴はテオドールに向かって怒鳴る。
テオドールはそれを無視して遊伸達を案内した男に命令をする。
男がある装置のボタンを押すと、玉座の後ろの幕が上がる。
そこには機械が取り付けられた巨大な水槽の様なケース、その中には―――
「ファントム・オブ・カオス!?」
「で、でけぇ!? 元の何倍あるんだ!?」
遊伸達は驚愕する。
目の前のケースの中には大きな”黒い何か”。
それは遊伸達がデュエルした時に見た物よりも大きく、人一人は軽く飲み込めそうな程の大きさである。
「これがファントム・オブ・カオスの本体、”大いなる力”だ」
「これが!?」
テオドールが”大いなる力”について話し始める。
「お前達も知っているだろう? ”大いなる力”、そして欠片であるファントム・オブ・カオスが齎す”力”を……俺はその”完全な力”を手に入れる事が目的だ」
「”完全な力”…? なら今は”不完全”なの?」
空がテオドールに問いかける。
「その通り、ここにある”大いなる力”は不完全だ。 ”デュエルエナジー”が足りないのだ」
「”デュエルエナジー”…? デュエルエナジーって何だ?」
鋼貴が疑問に思って3人を見渡すが分からないのは皆一緒。
「デュエルエナジー……アルカディア・ムーブメントがサイコ・デュエルの研究の過程で見つけたデュエルによって人間から発生するエネルギーの事だ……これはサイコ・デュエリストのみならず、普通の人間からも発生するものだ」
「じゃ、じゃあ俺達が何時もデュエルしてる時にそのエナジーってやつが出てるって事か!?」
鋼貴が自分の体を見回す。
「そうだ、そして”大いなる力”はそのエナジーを吸収し、”完全”へと近づく。 ”大いなる力”がファントム・オブ・カオスという分身を作り出し、憑依させてデュエルさせるのはそのエナジーを集める為だ。 デュエルを通し、デュエルをする者からエナジーを吸収する……”闇のデュエル”のダメージは攻撃を受けているのではない、垂れ流している物だけでなく、体に眠るデュエルエナジーまでファントム・オブ・カオスに吸収されているのだ……死に至るまでな」
「そうか……あの心が削られるような寒くて痛い感覚……あれは僕等の中のエナジーを奪われていたからだったのか……」
遊伸は自分の胸を押さえ、その時の感覚を思い出す。
「……そうか……成る程、だから”協力者”かっ……!」
高尾が悔しそうにテオドールを睨む。
「ど、どうしたんだ高尾!」
鋼貴が高尾に尋ねる。
「……”大いなる力”はファントム・オブ・カオスを通してデュエルしている者のデュエルエナジーを吸収し、”完全”に近づく……俺達は第1から第2の試練まで、ずっとファントム・オブ・カオスとデュエルしてきた……」
高尾の言葉の意味を遊伸達は理解する。
「気付いたようだな、俺はお前達に”俺との再戦”を餌に試練という名目でファントム・オブ・カオスとデュエルさせ、エナジーを吸収させていた。 第3の試練もそうだ、ファントム・オブ・カオスが無くとも”大いなる力”があるこの本拠でデュエルをすれば、”大いなる力”が発生したエナジーを直接吸収するからな」
「全部この為か…!」
遊伸は愕然とする。
全てテオドールの計画通り、自分達はまんまと彼の野望の手伝いをさせられていたのだ。
「そうだ、お前達も、セブンスターズも、この”大いなる力”の餌に過ぎないのだ。 感謝するぞ、お前達の奮闘のおかげで”大いなる力”の完成は目の前だ……後の目的は一つ、近衛 遊伸、お前が持つ竜、”スターダスト・ドラゴン”だ」
「何だって!? どうして僕の”スターダスト・ドラゴン”が必要なんだ!」
遊伸にとって”スターダスト・ドラゴン”は父から直接手渡された最後のカード、父との最後の思い出、渡せる訳がなかった。
「聞きたいのは俺の方だ……小僧、どうやってお前はそれを手に入れた? それはお前の様な小僧が持っていていいカードではない、さらに……」
テオドールは1枚のカードを取り出し、遊伸に見せる。
「!? セイヴァー・ドラゴン!? どうしてお前がそれを持っているんだ!?」
「それは俺の台詞だ、どうしてお前がアルカディア・ムーブメントで創られたカードを持っている?」
「これはデュエル研で創って貰ったカードだ! 何でアルカディア・ムーブメントで創れるんだ!」
この時遊伸は知らなかった。
セイヴァー・ドラゴンは外部からデュエル研にもたらされた物だという事を。
「(デュエル研……誰か情報を流した裏切り者でもいたのか? まあいい……) それも俺の台詞だ……小僧、お前が持つ”スターダスト・ドラゴン”が何の為に創られたカードか知っているか?」
遊伸は自分のデッキから”スターダスト・ドラゴン”を取り出す。
「教えてやろう、その”スターダスト・ドラゴン”と……」
テオドールは自分のデッキから”レッド・デーモンズ・ドラゴン”を取り出す。
「この”レッド・デーモンズ・ドラゴン”はアルカディア・ムーブメントで創られたカードだ」
「何だって!?」
遊伸は動揺する。
何故父がアルカディア・ムーブメントで創られたカードを持っていたのか。
「そして創られた目的……それは”大いなる力”に対抗する為だ」
「”大いなる力”に……」
「そうだ、お前と俺が持つ《セイヴァー》は”大いなる力”の”模倣”の力に対抗する為の物だ……”大いなる力”が完全な物となった時、俺は”大いなる力”を屈服させる為にこの”レッド・デーモンズ・ドラゴン”と、その対となる存在の”スターダスト・ドラゴン”が必要なのだ……渡して貰うぞ、小僧」
テオドールが不敵な笑みを浮かべる。
「お前なんかに”スターダスト・ドラゴン”は渡さないぞ!」
「ならばデュエルで叩きのめし、奪い取るまでよ……それでは最後のデュエルを始めるとしよう」
「待って! テオドール、その前に私の質問に答えて!」
空が姉の七海について聞く為にテオドールを呼び止める。
「…またお前か、お前の姉は死んだ、俺から言えるのはそれだけだ」
「10年前にお姉ちゃんと何があったの? 答えて!」
空が怒りを言葉に込めてテオドールを問い質す。
「それを知りたければ俺に勝つ事だ……デュエルはタッグデュエル、お前達から二人選べ」
「はぁ!? タッグぅ~!? お前のパートナーは何処だよ! セブンスターズは全員倒したぞ! それともあれか? またそっちは一人とかか? 舐めんじゃねーぞ!」
「(鋼貴の言う通りだ、何故タッグデュエルなんだ?)」
高尾は訝しげにテオドールを睨む。
「こちらも二人だ、特別ゲストがいるものでな……俺のパートナーはこの男だ」
テオドールが合図をすると、広間の床が開き、下から決闘場が上がってくる。
上がってくる決闘場の相手側に立っている人物は―――
「あ……兄貴!!!」
そこにいたのは紛れも無く鋼牙。
だが様子がおかしい。
第2の試練の対戦相手の様に目が虚ろである。
「テメェ! 兄貴に何しやがったんだよ!!!」
鋼貴が声を張り上げて怒鳴る。
「この男は俺と戦い、敗れた」
「兄貴がお前と!? 何でだよ!」
「退屈しのぎにだ、そしてこの男は”政府の犬”にしておくのには勿体無い程の力を持っている……だから俺の”僕”として使ってやる事にしたのだ……さあ、どうする? お前達は俺とこの男相手に戦えるか?」
テオドールは不敵な笑みを浮かべる。
「そんなの決まっている! テオドール……お前程卑劣な人間を僕は見た事が無い! 僕はお前みたいな奴を”王”だなんて絶対に認めない! 絶対にお前を許さない! ここで決着をつける!」
遊伸が決闘場へと入る。
「二人共! 俺に行かせてくれ! あいつだけは……あいつだけは許せねぇ! 絶対に兄貴を助けてみせる!」
「…ああ! どうやら俺が出ていい勝負じゃない、何も出来ないのは悔しいが……頼んだぞ!」
「頑張って遊伸! 鋼貴!」
決闘場に入った遊伸と鋼貴に、高尾と空が声援を送る。
「一つ言っておこう、この男のデッキには”ファントム・オブ・カオス”が入っている」
「何だと!?」
「そ、それじゃ鋼牙さんは!?」
鋼貴と遊伸は驚く。
それが本当なら遊伸達はテオドール、鋼牙を相手に”闇のデュエル”を行う事になる―――が。
「安心するがいい、憑依はされていない、”心の闇”が弱いからな。 だが”大いなる力”の方はこの男に興味を持ったようだ」
「どういう事だ! 兄貴に一体何があったんだよ!」
鋼貴がテオドールを問い質す。
「この男には第2の試練の連中と同様に感情を眠らせてある。 俺の思うままに動く様にな……そして”ファントム・オブ・カオス”を試しにこの男のデッキに入れてみたのだ。 するとこの男のデッキは瞬く間に”大いなる力”に侵食されていった……俺の僕に相応しいデッキとなったぞ?」
テオドールは笑いながら鋼牙を見る。
「あ、兄貴のデッキを……”魂”をよくも!!! 遊伸、行くぞ!!!」
「ああ!!!」
「「「デュエル!!!」」」
「……デュエル」
とうとうテオドールとの決戦が始まった。
先攻はテオドールから順に遊伸、鋼牙、鋼貴。
「俺のターン、ドロー」
テオドール 手札:5+1
「俺はモンスターをセット、カードを伏せてターンエンドだ」
LP:8000
テオドール 手札:4
鋼牙 手札:5
モンスター
・セット
魔法・罠
・セット
「(テオドールにしては大人しい初手だ……何かあるのか) 僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:5+1
「相手の場にのみモンスターが存在する場合、このカードはレベル4扱いで特殊召喚する事が出来る! 《レベル・ウォリアー》を特殊召喚!」
遊伸の場にレベル・ウォリアーが現れる。
場に立つと、胸部と頭部の星のマーク全てが点滅する。
ATK:300
「レベル・ウォリアーをリリース! 《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚!」
レベル・ウォリアーが消えると、その場にサルベージ・ウォリアーが現れる。
ATK:1900
「サルベージ・ウォリアーの効果発動! アドバンス召喚に成功した時、手札、または墓地からチューナーを1体を特殊召喚出来る! 手札から《X-セイバー エアベルン》を特殊召喚!」
サルベージ・ウォリアーが遊伸の手札に向かって鎖を放り投げると、遊伸はそれに合わせて場にカードを置く。
すると鎖が遊伸に到達する前に現れた穴の中に鎖の先が入ると、サルベージ・ウォリアーが一気に鎖を引く。
鎖の先にはエアベルンが掴まっており、鎖を離して場に降り立つ。
ATK:1600
「行くぞ! レベル5《サルベージ・ウォリアー》に、レベル3《X-セイバー エアベルン》をチューニング!」
エアベルンが自身を3つの光輪へと姿を変えると、サルベージ・ウォリアーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。
「集いし願いが、新たに輝く星となる……光さす道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ! 《スターダスト・ドラゴン》!!」
光の柱からスターダスト・ドラゴンが現れ、舞い上がる。
ATK:2500
「来たか! すぐにこの俺の手中に収めてやる……」
「そんな事は絶対にさせない! バトル! スターダスト・ドラゴンでセットモンスターに攻撃! 《シューティング・ソニック》!!」
スターダスト・ドラゴンがセットモンスター目掛けて口から衝撃波を放つ。
セットモンスター:デルタフライ DEF:900
テオドールのセットモンスター、デルタフライは吹き飛ばされる。
テオドールらしくない布陣、罠でもない、守備力が高いモンスターでもない、遊伸は不気味に感じた。
「……カードを伏せてターンエンド!」
LP:8000
遊伸 手札:2
鋼貴 手札:5
モンスター
・スターダスト・ドラゴン
魔法・罠
・セット
「……俺のターン……ドロー」
鋼牙 手札:5+1
「(兄貴……くそ! 絶対に許さねぇぞ…!)」
鋼貴は感情を眠らされ、操り人形となった兄の姿に心を痛める。
「……俺は《サイバー・ダーク・キール》を召喚……」
鋼牙の場に見た事も無い、邪悪な気配を感じさせる機械龍が現れる。
サイバー・ドラゴンの様に長い胴体を持つが、それよりも細く、暗い青色の体をしている。
ATK:800
「な、何だこいつ!? あ、兄貴の《サイバー》にはこんな奴はいねぇ! それにこの感じ……」
「”大いなる力”…!?」
鋼貴と遊伸は目の前の機械龍、サイバー・ダーク・キールに驚く。
「黒い機械龍……一体どんな力が……」
「攻撃力がレベルにしては低すぎるね……きっと何か能力があるよ」
高尾と空が緊張した様子でサイバー・ダーク・キールを見る。
「サイバー・ダーク・キールの効果発動……召喚に成功した時…自分の墓地のレベル3以下のドラゴン族1体を選択し…装備カード扱いとしてこのカードに装備する……墓地の《デルタフライ》を装備……」
鋼牙の場にデルタフライが現れると、サイバー・ダーク・キールが胴体から6本のワイヤーの様な物を伸ばし、デルタフライに巻きつける。
「……このカードの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力分アップする……」
ATK:800→2300
「攻撃力が下級のラインを超えた!?」
遊伸はテオドールがデュエル前に言っていた事を思い出す。
俺の僕に相応しいデッキとなったぞ?
「(こういう事か…!)」
「……永続魔法《マシン・デベロッパー》を発動……機械族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする……」
ATK:2300→2500
「スターダスト・ドラゴンと並ばれた!?」
「…バトル……サイバー・ダーク・キールでスターダスト・ドラゴンを攻撃……《ダーク・ウィップ》」
サイバー・ダーク・キールがスターダスト・ドラゴンに向かって飛び掛かる。
「相打ち狙いか! 《シューティング・ソニック》!」
スターダスト・ドラゴンが返り討ちにしようとサイバー・ダーク・キール目掛けて衝撃波を放つが、サイバー・ダーク・キールはワイヤーで巻きつけていたデルタフライを盾にすると、デルタフライは破壊され、今度はスターダスト・ドラゴンをそのワイヤーで捕らえ、締め上げて破壊する。
「そんな!? 何故スターダスト・ドラゴンだけ……」
「……サイバー・ダーク・キールの効果……戦闘によって破壊される場合…代わりにこのカードの効果で装備したモンスターを破壊する……戦闘によって相手モンスターを破壊した場合…相手LPに300ポイントダメージを与える……」
ATK:2500→1000
「そんな効果が……」
MR LP:8000→7700
幸い”闇のデュエル”ではない為、遊伸達のデュエルエナジーが直接毟り取られる事はなかった。
だが”大いなる力”の前でデュエルする事で、遊伸達から自然に放出されているエナジーは確実に”大いなる力”に流れていた。
「……カードを伏せてターンエンド」
LP:8000
テオドール 手札:4
鋼牙 手札:3
モンスター
・サイバー・ダーク・キール
魔法・罠
・セット(テオドール)
・マシン・デベロッパー
・セット(鋼牙)
「よし! 俺に任せろ遊伸! 俺のターン! ドロー!」
鋼貴 手札:5+1
「兄貴! 必ず助けてやるからな! 俺は《マシンナーズ・ギアフレーム》を召喚!」
鋼貴の場にマシンナーズ・ギアフレームが現れる。
場に現れたギアフレームは目を光らせ、起動音を鳴らす。
ATK:1800→2000
「へへ! 俺のモンスターもマシン・デベロッパーの恩恵を受けるぜ! ギアフレームの効果発動! 召喚に成功した時、自分のデッキから《マシンナーズ・ギアフレーム》以外の《マシンナーズ》と名のついたモンスター1体を手札に加える事が出来る! 俺は《マシンナーズ・フォートレス》を手札に!」
鋼貴 手札:5+1
「手札から《マシンナーズ・フォートレス》の効果発動! 合計レベル8になるように機械族を捨てて手札、または墓地から特殊召喚する! 《マシンナーズ・ピースキーパー》と《マシンナーズ・フォートレス》を捨てて、墓地から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚!」
鋼貴の場に鋼貴のエースモンスター、マシンナーズ・フォートレスが現れる。
その青いボディを輝かせ、キャノン砲を構える。
ATK:2500→2700
「よし! 鋼貴お得意の攻めの流れだ!」
高尾が握り拳を掲げる。
「装備したドラゴンがいなきゃ怖くないぜ! バトル! ギアフレームでサイバー・ダーク・キールを攻撃! 《マシンナーズ・ショット》!」
ギアフレームがサイバー・ダーク・キールに光線を放ち、破壊する。
「…サイバー・ダーク・キールが破壊された事により…マシン・デベロッパーにカウンターが2つ乗る……」
マシン・デベロッパー カウンター:2
「続けてフォートレス! 《マシンナーズ・キャノン》!」
フォートレスが鋼牙に向けて砲撃を放つ。
「……罠カード《ドレインシールド》を発動……攻撃を無効にし…そのモンスターの攻撃力分だけ自分のLPを回復する……」
フォートレスの砲撃が鋼牙の決闘盤に吸収され、LPへと変換される。
SS LP:7000→9700
「な!? くそ…! バトル終了! カードを3枚伏せてターンエンド!」
LP:7700
遊伸 手札:2
鋼貴 手札:1
モンスター
・マシンナーズ・ギアフレーム
・マシンナーズ・フォートレス
魔法・罠
・セット(遊伸)
・セット(鋼貴)
・セット(鋼貴)
・セット(鋼貴)
「俺のターン、ドロー!」
テオドール 手札:4+1
「相手の場のみモンスターが存在する場合、このカードの元々の攻守を半分にして特殊召喚出来る……《バイス・ドラゴン》を特殊召喚」
テオドールの場に邪悪な雰囲気のドラゴンが現れる。
ATK:2000→1000
「そして《ダーク・バグ》を召喚」
続けて蜘蛛の様な脚を生やした小さい5つの正六面体ブロックの塊が現れる。
ATK:100
「ダーク・バグの効果発動……召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3チューナー1体を選択して特殊召喚する。 来い、《デルタフライ》!」
さらに墓地からデルタフライが現れる。
ATK:1500
「次はこちらの番だ、レベル5《バイス・ドラゴン》に、レベル3《デルタフライ》をチューニング」
デルタフライが自身を3つの光輪へと姿を変えると、バイス・ドラゴンを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。
「王者の鼓動、今ここに列をなす……天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚! 我が前に姿を現せ! 紅蓮魔竜! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!」
光の柱から現れたのは紅蓮魔竜、レッド・デーモンズ・ドラゴン。
遊伸達に向かって恐ろしい程の咆哮を上げる。
ATK:3000
「きやがったか!」
鋼貴はレッド・デーモンズ・ドラゴンを負けじと睨む。
「魔法カード《
テオドールの場に救世竜 セイヴァー・ドラゴンが現れる。
ATK:0
「そのカード……まさか!?」
遊伸が鋼貴の後ろから叫ぶ。
「俺がこのカードだけしか持ってないとでも思ったのか? レッド・デーモンズ・ドラゴンとスターダスト・ドラゴン、この2体は対を成す存在だ……救世竜によって力を得るのはスターダスト・ドラゴンだけではない! 行くぞ! レベル8《レッド・デーモンズ・ドラゴン》と、レベル1《ダーク・バグ》に、レベル1《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》をチューニング!」
救世竜 セイヴァー・ドラゴンがその体を大きく広げていく。
やがて大きくなったセイヴァー・ドラゴンが、レッド・デーモンズ・ドラゴンとダーク・バグの2体と重なると、2体を9つの光へ、そして光の柱へと変える。
「研磨されし孤高の光……真の覇者となりて大地を照らす! 覇道の先を照らせ! シンクロ召喚! 大いなる魂! 《セイヴァー・デモン・ドラゴン》!」
光の柱の中から”レッド・デーモンズ・ドラゴンの力の可能性”、セイヴァー・デモン・ドラゴンが現れる。
ATK:4000
セイヴァー・デモン・ドラゴンが発する”力”の威圧感により誰も言葉をすぐに発する事が出来なかった。
「どうした? さっきまでの意気込みは? この”セイヴァー・デモン・ドラゴン”を目の当たりにして戦意など消し飛んでしまったか? ハッハッハッハ!」
テオドールが高らかに笑う。
「こ、これは……”闇のカード”、”大いなる力”……どちらでもないのに……この威圧感……空?」
高尾が隣にいる空が少し震えているのに気付く。
「……恐い……遊伸のドラゴンの光はあんなに暖かくて優しかったのに……このドラゴンの光は恐い……恐いよ」
「カードを伏せる……そしてセイヴァー・デモン・ドラゴン効果発動! 1ターンに1度、エンドフェイズ時まで相手の場に表側表示で存在するモンスター1体を選択、その効果を無効にし、そのモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップする! 《パワー・ゲイン》!」
セイヴァー・デモン・ドラゴンが光をフォートレスに向けて放つと、その光を通してセイヴァー・デモン・ドラゴンがフォートレスの力を吸収する。
ATK:4000→6700
「ろ、6700!? (効果を使う前に手札を0にしやがった……フォートレスの効果を知ってやがる……)」
「これが貴様の兄を葬った力だ……この決闘場には第3の試練にあった仕掛けはない、このまま攻撃すればあの時と同じダメージだ……再び無様な姿を晒すがいい、バトル! セイヴァー・デモン・ドラゴンでマシンナーズ・フォートレスを攻撃! 《アルティメット・パワーフォース》!!!」
セイヴァー・デモン・ドラゴンが炎を全身に纏い、フォートレスに突進する。
「鋼貴!!」
「心配すんな遊伸! 俺は……俺は負けねぇ!!!」
セイヴァー・デモン・ドラゴンがフォートレスを粉砕する。
「うおぉぉぉーーー!!!」
MR LP:7700→3700
マシン・デベロッパー カウンター:2+2
「鋼貴!!!」
鋼貴はあの時の様に吹き飛ばされる。
遊伸は鋼貴を受け止めるが、共に吹き飛ばされ、遊伸は背中から地面に落ちる。
「うわっ…! …こ、鋼貴」
「…す、すまねぇ遊伸……またクッションにさせちまってよ……」
「!? 鋼貴! よかった!」
鋼貴はあの攻撃を受けても意識を保ち、遊伸に助けられながら立ち上がる。
「ほう……耐えたか」
「俺はあの時とは違う……甘く見るなよ!」
成長しているのは遊伸だけではない。
鋼貴も3つの試練を通して、心身共に強くなっていた。
「そして足元を見な!」
セイヴァー・デモン・ドラゴンの真下に爆弾が一つ転がっている。
「マシンナーズ・フォートレス効果発動! 戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、 相手の場に存在するカード1枚を選択して破壊する! 《セイヴァー・デモン・ドラゴン》を破壊! 《アサルト・ボム》!」
爆弾が起爆すると、セイヴァー・デモン・ドラゴンが黒煙に包まれる。
「やったか!?」
だがしかし、黒煙の中からセイヴァー・デモン・ドラゴンが再び姿を現す。
「残念だったな小僧、セイヴァー・デモン・ドラゴンはカード効果では破壊されない」
「な!? くそ! 何でもありかよ……」
セイヴァー・デモン・ドラゴンの破壊に失敗し、落胆する鋼貴。
「いや鋼貴! 大丈夫! あれが僕のセイヴァー・スター・ドラゴンと対を成すのなら、同じ欠点があるはずだ!」
「欠点?」
鋼貴が後ろの遊伸に振り向く。
「小僧、それは”エンドフェイズ時にエクストラデッキに戻り、進化前の形態を墓地から特殊召喚する”効果の事か?」
テオドールが不敵な笑みを浮かべる。
「残念ながらそうはいかん……俺はターンエンド、そしてエンドフェイズ時に永続罠《ステイ・フォース》を発動! LPを1000払う事で”場からデッキに戻る”効果を無効にする! よってセイヴァー・デモン・ドラゴンはこの場に止まり続ける!」
SS LP:9700→8700
セイヴァー・デモン・ドラゴン ATK:6700→4000
「そんな!? 《セイヴァー》の弱点を!?」
LP:8700
テオドール 手札:0
鋼牙 手札:3
モンスター
・セイヴァー・デモン・ドラゴン
魔法・罠
・ステイ・フォース
・マシン・デベロッパー
・セット(テオドール)
「さあ、このセイヴァー・デモン・ドラゴンを……”王者”を前にしてどう足掻く?」
「僕はお前を”王者”だなんて認めない! 僕は……越えて見せる! 僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:2+1
「魔法カード《星屑のきらめき》を発動! 自分の墓地に存在するドラゴン族シンクロモンスター1体を選択! そのモンスターのレベルと同じレベルになるように自分の墓地に存在するモンスターをゲームから除外し、選択したモンスターを墓地から特殊召喚する! 墓地から《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
除外したカード
レベル・ウォリアー
サルベージ・ウォリアー
遊伸の場に煌く粒子が降り注ぐと、それが集まり、スターダスト・ドラゴンとなる。
ATK:2500
「そして《XX-セイバー レイジグラ》を召喚!」
続けて遊伸の場にレイジグラが現れる。
ATK:200
「レイジグラの効果発動! 召喚、特殊召喚に成功した時、墓地の《X-セイバー》を1体手札に戻す! 僕は《X-セイバー エアベルン》を手札に!」
遊伸 手札1+1
「鋼貴が伏せた魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札のモンスター1体を墓地に送る事で、手札、またはデッキからレベル1モンスターを特殊召喚出来る! デッキから《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》を特殊召喚!」
墓地へ送ったカード
X-セイバー エアベルン
遊伸の場にセイヴァー・ドラゴンが現れる。
ATK:0
「よし、遊伸! お前も見せてやれ!」
鋼貴が握り拳を突き出す。
「来るか……フフ……」
「レベル8《スターダスト・ドラゴン》と、レベル1《XX-セイバー レイジグラ》に、レベル1《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》をチューニング!」
救世竜 セイヴァー・ドラゴンがその身に宿した”進化の可能性”を大きくするように、その体を大きく広げていく。
やがて大きくなったセイヴァー・ドラゴンがスターダスト・ドラゴンとレイジグラの2体と重なると、2体を9つの光へ、そして光の柱へと変える。
「集いし星の輝きが……新たな奇跡を照らし出す! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 進化の先へ! 光来せよ! 《セイヴァー・スター・ドラゴン》!!!」
光の柱からセイヴァー・スター・ドラゴンが現れる。
セイヴァー・スター・ドラゴンとセイヴァー・デモン・ドラゴンは互いに咆哮と光を放ちあう。
ATK:3800
「来た! 遊伸の切り札だ! 行け遊伸!」
「うん、この光……セイヴァー・スター・ドラゴンの光……遊伸! 頑張って!」
高尾と空が遊伸に声援を送る。
「セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、相手の場に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、その効果をエンドフェイズ時まで無効に出来る! 《サブリメイション・ドレイン》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが体から光を発すると、セイヴァー・デモン・ドラゴンの光を掻き消していく。
「鋼貴が伏せた魔法カード《受け継がれる力》を発動! 自分の場のモンスター1体を墓地に送り、そのモンスターの攻撃力分だけ自分の場のモンスター1体の攻撃力をアップする! 《マシンナーズ・ギアフレーム》を墓地に送り、《セイヴァー・スター・ドラゴン》の攻撃力を1800ポイントアップする!」
ギアフレームが光の粒子となり、セイヴァー・スター・ドラゴンへと吸収されると、セイヴァー・スター・ドラゴンがその輝きを増す。
ATK:3800→5600
「これでセイヴァー・デモン・ドラゴンを上回った! バトル! セイヴァー・スター・ドラゴンで攻撃! 《シューティング・ブラスター・ソニック》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが光を纏い、セイヴァー・デモン・ドラゴンに向かって突撃する。
「小僧、見事だと褒めてやろう……だがこの俺はその先を行く! 罠カード《次元幽閉》を発動! 攻撃モンスターを除外する!」
「な、何だと!? さっき伏せた罠か!? くそっ!」
鋼貴が自身の膝を叩く。
「セイヴァー・デモン・ドラゴンの様にカード破壊の耐性を持っていようとも、除外を防ぐ事は出来ん! 残念だったな小僧! ハッハッハッハ!」
「……お前が僕の先を行くのなら……セイヴァー・スター・ドラゴンはその上を行く! セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動! 相手が魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし、相手の場のカードを全て破壊する! 《スターダスト・フォース》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが消滅すると、そこから光の波紋が一気に広がり、テオドールのセイヴァー・デモン・ドラゴンを含め、テオドールの場のカードを全てを消し飛ばす。
破壊されたカード
セイヴァー・デモン・ドラゴン
ステイ・フォース
マシン・デベロッパー
次元幽閉
「何だと!?」
テオドールは遊伸達に初めて驚きの顔を見せる。
「おっしゃー! ざまぁみやがれ!」
鋼貴が歓喜のあまり跳び跳ねる。
高尾と空も同様な様子である。
「……いい気になるなよ小僧」
テオドールが遊伸を睨み付ける。
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:3700
遊伸 手札:0
鋼貴 手札:1
モンスター
・無し
魔法・罠
・セット(遊伸)
・セット(鋼貴)
・セット(遊伸)
「……俺のターン……ドロー……」
鋼牙 手札:3+1
「……魔法カード《貪欲な壺》を発動……墓地からモンスターを5体デッキに戻してシャッフル……2枚ドロー……」
デッキに戻したカード
デルタフライ
サイバー・ダーク・キール
バイス・ドラゴン
救世竜 セイヴァー・ドラゴン
ダーク・バグ
鋼牙 手札:手札3+2
「……魔法カード《サイバーダーク・インパクト!》を発動……自分の手札・場・墓地から…《サイバー・ダーク・ホーン》…《サイバー・ダーク・エッジ》…《サイバー・ダーク・キール》をそれぞれ1体ずつデッキに戻し…《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》1体を融合召喚する……」
鋼牙が手札の3枚をデッキに戻すと、戻した3枚のカードが場に現れる。
サイバー・ダーク・キールの他は、大きな頭と角を持った機械竜、そして鋭い刃の様な翼の機械。
その2体がそれぞれサイバー・ダーク・キールの頭部と背部に取り付くと、1体の機械竜となる。
ATK:1000
「が、合体した!?」
「融合して1体にはなるけどよ……合体する《サイバー》なんて兄貴のデッキには無ぇぞ!?」
遊伸達は驚きながらその機械竜を見上げる。
「フォントム・オブ・カオス、そして”大いなる力”は”学習能力”を持つ……デュエルをする毎に学んでいくのだ。 そして得た知識を元にカードを創造する……1番影響を受けているのはお前達のデュエルの様だぞ?」
テオドールは笑みを浮かべながらサイバー・ダーク・ドラゴンを見る。
「成る程……第2の試練……俺の”VWXYZ”と”マグネット・バルキリオン”の合体モンスターを元にしているのか……」
高尾が納得しながら見上げる。
「サイバー・ダーク・ドラゴンの効果発動……特殊召喚に成功した時……自分の墓地に存在する ドラゴン族1体を選択し…装備カード扱いとしてこのカードに装備する……《セイヴァー・デモン・ドラゴン》を装備……」
鋼牙の場にセイヴァー・デモン・ドラゴンが現れると、その背にサイバー・ダーク・ドラゴンが取り付く。
「装備したモンスターの攻撃力分と…自分の墓地のモンスター一体につき100ポイント攻撃力がアップする」
ATK:1000→5100
「サイバー・ダーク・キールとほぼ同じ効果……だけどパワーが尋常じゃない…!」
「畜生……倒したと思ったらまたヤベェのが……くそ!」
遊伸と鋼貴は気圧されそうな自分を内心で叱咤し、身構える。
「(この能力……私と剣先輩、遊伸と桐原のデュエルを見てドラゴン族のパワーに眼をつけたのかな?)」
空はサイバー・ダーク・ドラゴンを見ながらそう考えた。
「……バトル……サイバー・ダーク・ドラゴンで攻撃……《フル・ダークネス・バースト》」
サイバー・ダーク・ドラゴンがセイヴァー・デモン・ドラゴンからエネルギーを吸収し、それを口から放つ。
「速攻魔法《ハーフ・シャット》! モンスター1体の攻撃力をエンドフェイズ時まで半分に! 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》を選択!」
ATK:5100→2550
攻撃が遊伸に直撃する。
「うわぁ!!!」
MR LP:3700→1150
遊伸は攻撃を受けた後、片膝をつく。
「遊伸!? どうした!?」
遊伸の様子を見て鋼貴が声をかける。
「…このデュエルは”闇のデュエル”じゃないけど……この”サイバー・ダーク・ドラゴン”は僕の”デュエルエナジー”を奪うみたいだ……!」
「何だと!? くそ! 早く倒しちまわねぇと……」
「……カードを伏せてターンエンド」
ATK:2550→5100
LP:8700
テオドール 手札:0
鋼牙 手札:0
モンスター
・鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン
魔法・罠
・セイヴァー・デモン・ドラゴン(鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン)
・セット
「お前達のLPはもはや風前の灯……この”王”が一息吹き付ければ消える程のな。 さあ、精々足掻いて見せろ」
「(強ぇ……俺達も強くなったはずなのに……その上向こうには兄貴がいる……畜生…!)」
歯を食いしばり、俯く鋼貴。
「鋼貴、心配要らないよ」
ターンプレイヤーを交代する為に後ろに来た遊伸が鋼貴に声をかける。
「僕等は1度テオドールに負けた……だけど僕等はまた立ち上がれたじゃないか! 立ち上がって強くなって……試練を乗り越えてまた強くなった! 鋼貴、僕等は強くなったんだよ!」
「遊伸…」
遊伸は鋼貴の肩を叩く。
「後は……カードを信じるだけさ!」
「…ああ! 任せろ遊伸! 必ず繋いでやる!」
鋼貴は前に出る。
「俺のターン! ドロー!!!」
鋼貴 手札:1+1
「俺に力を貸してくれ! 魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地から《セイヴァー・スター・ドラゴン》を特殊召喚!!!」
鋼貴の場に眩い光を放ちながらセイヴァー・スター・ドラゴンが現れる。
ATK:3800
「何だと!?」
「どうだ! 風を受けて燃え上がってやったぜ! 手札からレベル8の《パーフェクト機械王》を捨てて墓地から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚!」
鋼貴の場にマシンナーズ・フォートレスが現れる。
ATK:2500
「セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動! 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》の効果を無効にするぞ! 《サブリメイション・ドレイン》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが体から光を発すると、サイバー・ダーク・ドラゴンは力を失っていく。
ATK:5100→1000
「バトル! セイヴァー・スター・ドラゴンで攻撃! 《シューティング・ブラスター・ソニック》!!!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが光を纏い、サイバー・ダーク・ドラゴンへと突撃する。
サイバー・ダーク・ドラゴンはセイヴァー・スター・ドラゴンに貫かれ、バラバラに吹き飛ぶ。
「…」
SS LP:8700→5900
「続けてフォートレス! 《マシンナーズ・キャノン》!!!」
フォートレスが鋼牙に向かって砲撃する。
「…」
SS LP:5900→3400
「ターンエンド! そしてエンドフェイズ時! セイヴァー・スター・ドラゴンはエクストラデッキに戻り、墓地から《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚する!」
セイヴァー・スター・ドラゴンが輝く粒子となって消えると、その一部の粒子が集まり、スターダスト・ドラゴンとなる。
ATK:2500
LP:1150
遊伸 手札:0
鋼貴 手札:0
モンスター
・マシンナーズ・フォートレス
・スターダスト・ドラゴン
魔法・罠
・セット(遊伸)
・セット(鋼貴)
「よし! 形勢逆転だ! 場をひっくり返したぞ!」
「凄い! 二人のエースモンスターが揃っちゃった! そのまま行っちゃえー!」
高尾が勢いよく拳を掲げ、空は跳びはねる。
「……調子に乗るのはそこまでだ、俺のターン! ドロー!」
テオドール 手札:0+1
「俺は僕が伏せた罠カード《無謀な欲張り》を発動! この先ドローフェイズを2回スキップする事で2枚ドロー!」
テオドール 手札:1+2
「魔法カード《星屑のきらめき》を発動! 墓地からレベル8の《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》を除外し、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を特殊召喚する!」
テオドールの場に輝く粒子が降り注ぐと、その粒子は突然噴出した炎に掻き消され、炎の中から レッド・デーモンズ・ドラゴンが現れる。
ATK:3000
「くそ! ここでか! だがこっちは2体だ! 巻き返せる!」
鋼貴は自分の場の2体のエースモンスターを見る。
「《黒翼の魔術師》を召喚」
続けてテオドールの場に黒く大きい翼を持った女性が現れる。
ATK:1300
「カードを伏せる……小僧共、貴様等相手に”もう一つの力”を使う事になるとは思わなかったぞ」
「もう一つの…!? レッド・デーモンズ・ドラゴンにはまだ何かあるのか!?」
遊伸が後ろから叫ぶ。
「その反応を見ると、”もう一つの力”は小僧の手に渡っていない様だな……レッド・デーモンズ・ドラゴンだけではない、本来スターダスト・ドラゴンにも備わっている力だ。 それを今見せてやる……黒翼の魔術師の効果! 場に存在する限り、《バスター・モード》をセットしたターンに発動出来る! 罠カード《バスター・モード》を発動!」
テオドールが罠を発動すると、レッド・デーモンズ・ドラゴンが炎に包まれる。
その炎は鎧となり、レッド・デーモンズ・ドラゴンに装着される。
「レッド・デーモンズ・ドラゴンをリリースし、デッキから《レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK:3500
「レ、レッド・デーモンズ・ドラゴンが……!?」
遊伸はレッド・デーモンズ・ドラゴンを見上げる。
鎧を装備しただけであるにも関わらず、強大な力を感じさせる。
「これぞ”大いなる力”に対抗する為に《セイヴァー》と共に創られた”もう一つの力”、《/バスター》だ! 《セイヴァー》が”模倣”の力に対抗する為に創られたのなら、この《/バスター》は”強化”の力に対抗する為に創られた物だ……その力! 受けてみろ!」
テオドールがバトルフェイズへと入る。
「バトル! レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターでスターダストドラゴンを攻撃! 《エクストリーム・クリムゾン・フォース》!!!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターが腕から強大な炎の光線を放つ。
光線はスターダストドラゴンを一瞬で消滅させる。
「うわぁ!!!」
MR LP:1150→150
スターダストドラゴンを消し去った光線が鋼貴を掠める。
「鋼貴!?」
「これで終わりだと思うな! レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの効果発動! このカードが攻撃した場合、ダメージ計算後にこのカード以外の場のモンスターを全て破壊する! さあ弱者ども! 消え去れ! 《クリムゾン・ジ・エンド》!!!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターが咆哮を上げ、体から大火炎を決闘場全体に放つと、自身の横にいた黒翼の魔術師、そして鋼貴のマシンナーズ・フォートレスを一瞬で蒸発させる。
「ふざけんな……最後の最後でこれかよ……」
光線を掠めた際に倒れた鋼貴が立ち上がる。
「ターンエンド! フハハハハ! これが”王者”の力だ!!!」
LP:3400
テオドール 手札:0
鋼牙 手札:0
モンスター
・レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター
魔法・罠
・無し
「くそぉ! これが……これが”決闘王”の力…!」
高尾は悔しそうにレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターを睨む。
「(お願い……ガスタ達……お姉ちゃん……遊伸達に力を…!)」
空は首に提げているのロケットを握り締め祈る。
「遊伸……すまねぇ……だが、お前なら勝てる! 頼んだぞ遊伸!」
「ああ! 僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:0+1
「…小僧、何だその眼は……未だにこの俺に勝てるとでも言わんばかりのその眼は!」
遊伸は恐怖も焦りも無い、真っ直ぐな眼で前を向いていた。
テオドールは怒りの形相で遊伸に怒鳴る。
「不愉快なんだよ! 小僧如きが俺に対してそんな眼を向けるのは! 小僧は小僧らしくこの”王”に跪いていればいいのだ!」
「鋼貴が伏せた罠カード《無謀な欲張り》を発動! 2枚ドロー!」
遊伸 手札:1+2
「…テオドール、僕はお前を”王”とは認めない! 確かにお前は強かった! だから”決闘王”になれたんだろう! だけど……お前は自分の為にデュエルを使って多くの人達を不幸にした! 多くの人に痛みを与えて! 多くの人を悲しませた! お前は”決闘王”以前に”決闘者”ですらない! 僕はそんな奴には絶対に負けない! 絶対に勝つ!」
遊伸は手札からカードを取り出す。
「《切り込み隊長》を召喚!」
遊伸の場に切り込み隊長が現れる。
ATK:1200
「魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! 場の《切り込み隊長》と墓地の《スターダスト・ドラゴン》を融合! 現れろ! 融合召喚! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!!!」
場に歪みが現れ、歪みから波紋が広がると、その中心からドラゴエクィテス が現れる。
ATK:3200
「馬鹿な!? そのドラゴンは!?」
テオドールが眼を見開き、驚愕した表情でドラゴエクィテスを見上げる。
「ドラゴエクィテスの効果発動! 1ターンに1度、墓地に存在するドラゴン族シンクロモンスター1体をゲームから除外し、エンドフェイズ時までそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る事が出来る! 僕はお前の墓地の《セイヴァー・デモン・ドラゴン》を除外して名前と効果を得る! 《エフェクト・シンクロ》!!!」
テオドールの墓地から セイヴァー・デモン・ドラゴンが発する光が放たれると、それをドラゴエクィテスが吸収、そして同様の光をドラゴエクィテスが放つ。
「この光……さっきまでのセイヴァー・デモン・ドラゴンの光とは違う……暖かくて、頼もしさを感じる……これが本来のセイヴァー・デモン・ドラゴンの光!」
空が胸に手を当てながらセイヴァー・デモン・ドラゴンの光を感じている。
「
ATK:3200→6700
「何故だ……何故だ!?」
「罠カード《炸裂突破》を発動! 行くぞ! バトル!
槍はレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの鎧を砕く。
「うおぉぉぉーーー!!!」
SS LP:3400→200
遊伸はサイコ・デュエリストではない。
なのでテオドールには物理的ダメージは通らない。
なのにテオドールは凄まじい叫び声をあげる。
これは”痛み”による叫びではなく、”怒り”による叫び。
それは遊伸に追い詰められた事による怒り。
そして―――自分の中で信じられない、ありえない事が起きた事への怒り。
鎧が砕かれた事により、レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターは通常のレッド・デーモンズ・ドラゴンへと戻る。
ATK:3000
「レッド・デーモンズ・ドラゴンが……だけどテオドール、僕の勝ちだ。 攻撃前に発動した罠、《炸裂突破》は自分のモンスターが1体だけの時、自分の場に存在するモンスター1体が相手の場に存在するレベル8以上のモンスターを破壊して墓地へ送った場合、攻撃力を800ポイントダウンし、もう一度攻撃する事が出来る」
ATK:6700→5900
「…テオドール?」
遊伸はテオドールの様子がおかしい事に気付く。
ドラゴエクィテスを凄まじい形相で睨んでいる。
「……何故、何故貴様がこれを持っている小僧ぉーーー!!!」
「え!?」
テオドールは遊伸へと顔を向けると、突然大声で叫ぶ。
「あるはずがない! あの男の……”ディー”のカードが!!!」
「ディー…?」
テオドールは完全に取り乱してしまっている。
「あの男は……あの男は死んだのだ!!! 10年前に―――」
西野 七海と共に俺が葬ったはずだァーーー!!!
「!? お姉ちゃんを!?」
空が口元を押さえ、眼を見開く。
「それはどういう事だテオドール!」
遊伸がテオドールを問い質そうとする。
「…貴様だ……一番訳が解らないのは貴様だ小僧ォォォ!!! 貴様は一体何者だァーーー!!!」
「う、うわぁ!!!」
テオドールが遊伸に掴みかかろうとするその瞬間、二人の間に小さな球体が投げ込まれる。
「うお!」
「わっ!」
その球体が突然弾け飛び、中から波動の様な物が決闘場全体に広がる。
すると遊伸達の決闘盤の通信が途絶え、デュエルが強制終了する。
さらにその波動が鋼牙にあたった瞬間、鋼牙は意識を失ったように倒れる。
「あ、兄貴!?」
鋼貴は急いで鋼牙に駆け寄る。
「い、一体どうなっているんだ……?」
遊伸は訳が解らず、辺りを見渡す。
「(今の球体が弾けた瞬間、僕にかけていた精神作用が消えた……そしてデュエルを中断させたのはサイコ・パワーによる物!) だれだ! 出て来い!」
「相変わらずね……テオドール」
突然入口の方向から声が聞こえてくる。
女性の声であった。
「!? き、貴様は!?」
「あ、あなたは…!?」
テオドールと遊伸は入口から現れた女性を見る。
凛とした雰囲気の女性。
身長は高めで170前後はあり、長い茶髪を後ろで一本結びにして背中に垂らしている。
そしてその容姿、大人びているが誰もが分かった事がある、それは―――
「遊伸! 兄貴は無事だ……って、うわ! 何時の間にか知らないネーチャンがいる!? しかも美人だ! ……あれ、でも何か空に似てる―――」
「そこの君! 早く藤堂君の決闘盤から”ファントム・オブ・カオス”を取り出してこっちに!」
女性は鋼貴に指図する。
「え!? お、おう!」
鋼貴は一言謝ってから鋼牙のデッキを取り出し、ファントム・オブ・カオスを探し出す。
「これだ!」
「長く触ってちゃ駄目! 早くこっちへ!」
「う、うおお!」
鋼貴は慌ててファントム・オブ・カオスを女性へと投げる。
幸い上手く飛び、カードが女性へと渡ると、女性は急いで黒いガラスを押し当て、中に収納する。
「ふ~……って、あんた一体誰だよ! 皆……あれ? 皆どうした?」
鋼貴が見渡すと、自分以外の全員が女性を見て固まっている。
そして―――空がゆっくりと前に出る。
「……お、お姉ちゃん? ……私が知ってるよりも大きいけど……七海お姉ちゃん?」
空は震える声で横を向いている女性に尋ねる。
「……空……そうよ……ごめんね、遅くなって……私、あなたに合わせる顔が無い……」
七海は顔を背け、同様に震えた声で答える。
「…お姉ちゃん……こっち向いて」
七海は恐る恐る、ゆっくりと空の方を向く。
「…お姉ちゃん!!!」
「空!!!」
二人は顔を合わせた瞬間、抱き合う。
空は姉の胸の中で、七海は妹を抱きながら、それぞれ涙を流していた。
「七海さん……よかった……生きていてくれて……」
遊伸は思わず顔を緩ませる。
これ以上力を抜けば自分も泣いてしまいそうであった。
「何なんだこれは!!! 一体どういう事だ!!!」
テオドールの叫びにより、全員が元の世界へ引き戻された様に感じた。
「貴様は……貴様は何者だ! いるはずが無い! 西野 七海が……死んだ人間が!」
七海は空を離すと、涙を拭い、再び元の凛とした雰囲気に戻る。
「簡単な事よ、テオドール……私はあの時、死んではいなかった……それだけよ」
「お姉ちゃん! 一体10年間何処に行っていたの? 10年前に何があったの?」
空も涙を拭い、七海に問いかける。
「……ごめんね空、私にはまだやらなくてはならない事があるの……それが終わったら必ず全部話すから……もう少しだけ待ってて」
「うん…」
七海はテオドールに向き直る。
「…テオドール、私とデュエルよ! あの日の……10年前の決着をつけるわ」
七海が自分の決闘盤を展開する。
「…いいだろう小娘! 貴様が生きているなど俺は許さん! ここでもう一度始末してやる!」
テオドールも自分の決闘盤を構える。
「……突然すぎて訳が解らんが……とりあえず忘れもんだ!」
鋼貴は貪欲な壺の効果により鋼牙のデッキに戻っていたテオドールのカードをテオドール目掛けて投げつける。
テオドールはそれを受け取ると自分のデッキに入れ、自分の立ち位置へと歩いていく。
七海は遊伸の立ち位置へと移動し、遊伸と入れ替わる。
「ごめんなさいね、遊伸君。 あなたのデュエルを中断させておいてこんな事……あの時、テオドールのサイコ・パワーが暴発寸前だったの、止めていなかったらあなた達全員、ただじゃ済まなかったから……」
「…いえ、決着はついていましたし、助けて貰ったのなら僕等がお礼を言わなければ……ありがとうございます。 七海さん、お話は空から聞いてました」
「私もよ、遊伸君……それじゃ」
そう言って七海は相手側に向き直る。
「え? ”私も”…?」
「おーい遊伸! こっち来いよ!」
鋼貴が遊伸を呼ぶ。
遊伸は鋼貴の元へ向かった。
「まあ止めをさせなかったのは心残りだったが……やったな! 実質的に俺達の勝ちだぜ!」
「うん! ありがとう鋼貴! 鋼貴がいなければ勝てなかったよ!」
遊伸と鋼貴は腕を組み合わせる。
「遊伸……ありがとう、遊伸の言った通り……信じていたから……諦めなかったから……お姉ちゃん帰ってきたよ……ありがとう……」
空はまた泣きながら遊伸に礼を言う。
「空……本当によかったよ! ホラホラ、泣いてちゃ七海さんが心配しちゃうよ?」
「……うん!」
空は涙を拭って笑う。
「おい鋼貴……肝心の鋼牙さんを決闘場に置いてくるなんてどういう了見だ?」
高尾が鋼牙を背負って歩いてくる。
「あ!? す、すまねぇ高尾、兄貴!」
高尾は鋼牙をゆっくり下ろして遊伸に向き合う。
「遊伸、鋼貴、おめでとう! あんな奴とはいえ”決闘王”を倒してしまうなんてな! …それにしても、まさかこんな事になるなんてな」
高尾が決闘場を見る。
七海とテオドールが準備を終え、デュエルに入ろうとしていた。
「空のお姉さん、何か奴と因縁がありそうだが……それにテオドールに一人で挑むなんて大丈夫か?」
「大丈夫だよ! お姉ちゃんは絶対負けないよ!」
空は姉を信じきっている。
「そうだね、七海さんにもきっと何か考えがあるんだよ……信じよう」
「「デュエル!!!」」
急展開……ちょっと詰め込みすぎたかな……
今回使用したオリカ
アニメ5Dsより
・ステイ・フォース
・炸裂突破