遊戯王~Truth of Satellite~ 作:鬼柳高原
最終回は決着編とエピローグの2話構成です。 続けて投稿するのでどうぞ御覧ください。
「進化の光! 《シューティング・クェーサー・ドラゴン》!!!」
ATK:4000
現在の状況
シンオウ
LP:1700
手札:1
モンスター
・Sin トゥルース・ドラゴン(アタック・ゲイナーによりATK:4000)
魔法・罠
・フィールドバリア
・セット
・セット(Sin Force)
・セット
フィールド
・Sin World
遊伸
LP:4000
手札:1
モンスター
・シューティング・クェーサー・ドラゴン
魔法・罠
・無し
暗く広大な宇宙、その全域を照らす程の輝きを放つ竜を、誰もが声を出せずに見上げていた。
その静寂を破ったのはシンオウ。
「どういう事だ…ッ! この様な竜は知らぬ! 一体……一体何処から現れたのだ!?」
シンオウが知るはずが無い、知れたはずが無い。
来伸がどうやって”白紙のカード”の仕組みを創り上げたのかは分からない。
解る事は一つ、そこから遊伸は創り上げた――――――”究極のシンクロモンスター”を―――――”絆”と共に。
「凄い……まるで”神様”みたい……」
「うん? 空、どうやら”情報整理ゲーム”が必要みたいだな」
「え? 何で?」
「言ってたじゃねーか! 遊伸の親父さんがよ、”きっと神様って奴はいるんだ”…ってな! きっとこいつは俺達の”未来”を創る”神様”さ!」
そう言うと、鋼貴は笑みを浮かべてシューティング・クェーサー・ドラゴンを見上げる。
「装備魔法《シンクロ・ヒーロー》を《シューティング・クェーサー・ドラゴン》に装備! 攻撃力を500ポイントアップ!」
ATK:4000→4500
「これが……僕等の”絆”だ!!! バトル! シューティング・クェーサー・ドラゴンで攻撃!」
シューティング・クェーサー・ドラゴンが右腕を後方へ引くと、右掌に光が集まり、強烈な輝きを放つ。
「《天地創造撃 ザ・クリエーションバースト》!!!」
そして右掌をSin トゥルース・ドラゴンに向けて突き出すと、その光は巨大な光線となって放たれる。
「ふざけるな! 何が”絆”だ! 消え失せろ! 罠カード《次元幽閉》を発動! 攻撃モンスターを除外する!」
「シューティング・クェーサー・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、カード効果の発動を無効にし、破壊する事が出来る!」
2体の竜の間に次元の穴が現れるが、シューティング・クェーサー・ドラゴンが放った光はそれを掻き消し、一直線にSin トゥルース・ドラゴンへと向かう。
「な、何だとぉぉぉ!!?」
「いけぇぇぇーーー!!!」
強大な光が決闘場を覆う。
やがて光が収まると、あまりの眩しさに眼を伏せていた鋼貴と空は顔を上げ、眼を開く。
「「あっ!!?」」
鋼貴は驚き、空は思わず手で顔を覆う。
二人が見たものは、合体し、下半身となっていたSin トゥルース・ドラゴンを吹き飛ばされ、上半身だけで中に浮いているシンオウであった。
「ぐ……おお……!」
LP:1700→1200
「……シューティング・クェーサー・ドラゴンの第2の効果! このカードはシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事が出来る! …これで、終わりだ! シューティング・クェーサー・ドラゴンで攻撃!!!」
シューティング・クェーサー・ドラゴンが再び掌に光を集めると、シンオウに向けて放つ。
「ぐ……おおおおお!!!! 罠カード《ガード・ブロック》を発動!!!」
シンオウは満身創痍になりながらも遊伸の攻撃を防ぎ、カードをドローする。
シンオウ 手札:1+1
「畜生! 防がれたか! でもすげぇ…! これが”究極のシンクロ・モンスター”か!」
「(お願い”神様”……遊伸に勝利を……!)」
シューティング・クェーサー・ドラゴンは逆転された戦況を再び逆転させ、鋼貴と空の心に再び”希望の炎”を灯した。
シンオウは凄まじい形相でシューティング・クェーサー・ドラゴンを睨む。
「おのれ…!」
「ターンエンド!」
LP:4000
手札:0
モンスター
・シューティング・クェーサー・ドラゴン
魔法・罠
・無し
「おのれぇぇぇ!!! 我のターン! ドロー!!!」
シンオウ 手札:2+1
「速攻魔法《
「させない! シューティング・クェーサー・ドラゴン!!!」
シューティング・クェーサー・ドラゴンが体から光を放つと、シンオウが発動した魔法が光の粒子となって消える。
「そうだ! 無効にするしかあるまい! …だが、その先にある”真実”は”絶望”だ! 魔法カード《ブラック・ホール》を発動! 場のモンスターを全て破壊する!」
決闘場の遥か上空に黒い渦―――ブラック・ホールが現れると、 シューティング・クェーサー・ドラゴンが光の粒子となって徐々に吸い込まれていく。
「ああ!? そんな……シューティング・クェーサー・ドラゴンが……」
「くそー!!! やめろーーー!!!」
空と鋼貴の叫びも虚しく、シューティング・クェーサー・ドラゴンは完全にブラック・ホールに飲み込まれてしまう。
「何が”絆”だ! 我を上回る”力”など存在せん! お前達の”絆”も”希望”も”未来”も……全て断ち切ってやったわ! ハッハッハッハッハ!!! ……!?」
シンオウはある異変に気付く。
ブラック・ホールの中心、そこから僅かに光が洩れている。
「馬鹿な……全てを……光すら飲み込むブラック・ホールから光が!?」
「……”絆”も”希望”も”未来”も……断ち切らせはしない!!! シューティング・クェーサー・ドラゴン最後の効果を発動!!!」
僅かな光が閃光を放つと、ブラック・ホールの中心から一筋の流星が飛び出し、星空を縦横無尽に飛びまわる。
そして遊伸が持っている”シューティング・クェーサー・ドラゴン”のカードが発光すると、2枚のカードに分裂する。
「このカードが場から離れた時、新たに輝く星を生み出す! 現れよ!!!」
飛びまわっていた流星が遊伸の場に降り立つ。
降り立ったのはシューティング・クェーサー・ドラゴンと同様、”スターダスト”の系譜を思わせる竜。
体が白く輝く装甲で覆われた、機械的な姿をしている。
「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!!!」
ATK:3300
「ふざけるな……ふざけるなァ!!! ターンエンド!!!」
LP:1200
手札:1
モンスター
・無し
魔法・罠
・フィールドバリア
・セット(Sin Force)
フィールド
・Sin World
「よっしゃー!!! ”神様”に隙はなかったぜ! やっちまえ遊伸!」
「ああ! 僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:0+1
「バトル! シューティング・スター・ドラゴンで攻撃! 《スターダスト・ミラージュ》!!!」
シューティング・スター・ドラゴンが手足を折り畳み、翼から光り輝く風を噴出させると、星空へと飛び上がり、一度旋回した後シンオウ目掛けて突撃する。
「ウオォォォ!!! 手札から《バトルフェーダー》の効果発動ォ! 手札から特殊召喚! バトルフェイズを終了だ!!!」
シンオウの場にバトルフェーダーが現れ、鐘を鳴らすとシューティング・スター・ドラゴンが軌道を変え、遊伸の場に戻ってきてしまう。
DEF:0
「畜生! 粘りやがるな!」
「通らないなんて…!(何だろう……嫌な予感がする……急いで遊伸!)」
攻撃が通らないからか、それとも空だから”何か”を感じたのか、空は異様な不安を感じる。
「ターンエンド!」
LP:4000
手札:1
モンスター
・シューティング・スター・ドラゴン
魔法・罠
・無し
「(”力”だ! ”力”を!!!) 我のターン!!! ドロー!!!」
シンオウ 手札:0+1
「(違う! これではない!) カードを伏せてターンエンド!!!」
LP:1200
手札:0
モンスター
・無し
魔法・罠
・フィールドバリア
・セット(Sin Force)
・セット
フィールド
・Sin World
「へへ! もう防戦一方じゃねぇか! このまま押し切れるぜ!」
「(お願い……そうなって!)」
「僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:1+1
「バトル! シューティング・スター・ドラゴンで攻撃! 《スターダスト・ミラージュ》!!!」
再びシューティング・スター・ドラゴンが突撃し、バトルフェーダーを打ち砕く。
「おのれ…! おのれ近衛 遊伸!!!」
「カードを伏せてターンエンド!」
LP:4000
手札:1
モンスター
・シューティング・スター・ドラゴン
魔法・罠
・セット
「(こんな事が……こんな事があって堪るか!!! 頂点は我……最強は我の”力”だ! ”絆”などであっていいはずが無い!!!)」
シンオウは認めなかった。
自身が追い求めて、ようやく手にした”力”を上回る”力”―――遊伸達の”絆”を。
「(もっとだ! 何でもいい! ”力”を! 我に”力”を!!!)」
平静を無くし、尋常ではない様子のシンオウを見て、空の不安はますます大きくなる。
そして――――――その不安は現実となる。
「……お前に出来て、我に出来ぬはずが無い!!!」
「え…?」
「やってやる…! ”力の創造”を! ウオォォォーーー!!!」
その瞬間、シンオウのデッキが黒く光る。
「我のターン!!! ドロォーーー!!!」
シンオウ 手札:0+1
「魔法カード《
墓地へ送ったカード
・フィールドバリア
・Sin Force
・龍の鏡
・Sin World
シンオウ LP:1200→5200
Sin Worldが消滅した事により、周りの風景が通常の物に戻る。
「げっ! LPが遊伸を上回っちまったぞ! でもあのフィールド魔法から使ってない罠まで送っちまうとは……そんなに回復したかったのか?」
「……そんな事言ってる場合じゃないよ鋼貴! あれ!」
空がシンオウの場を指差すと、黒い渦の様なものが渦巻いている。
先程発動した魔法のようだ。
「創ってみせる……真の……”最強の力”を!!!」
シンオウは墓地から5枚のカードを取り出し、その渦へと放り投げる。
・Sin トゥルース・ドラゴン
・Sin パラドクス・ドラゴン
・Sin レインボー・ドラゴン
・Sin 青眼の白龍
・Sin 真紅眼の黒竜
「今こそ我が”力”を一つに! 現れよ! 融合召喚! 《
黒い渦の中からとてつもない気配が溢れてくる。
その瞬間、黒い渦から五頭一体の怪物が這い出てきた。
「な!? 何だよこいつはッ…!?」
「嫌……嫌ぁ!!!」
それはシンオウの”力”への”欲望”――――――ただ”力”だけを求めた結果生まれた、醜悪な化け物。
Sin トゥルース・ドラゴンと同様、黄金の巨体を持った竜――――――それだけならよかった。
その5本の首、外の左右はそれぞれ青眼の白龍、真紅眼の黒竜。
内の左右はレインボー・ドラゴン、パラドクス・ドラゴン。
そして中央の首はトゥルース・ドラゴン、その頭頂部に再びシンオウが合体する。
まったく体に不釣合いな5本の首はそれぞれ勝手に動き回り、あるものはこの状態から逃れようと、あるものは遊伸に襲い掛かろうと、必死に首を動かしたり、奇声を上げたりする。
あまりにも凄惨な光景に、鋼貴は呆然とし、空は泣き出してしまう。
ATK:5000
「なんて……なんて事を……」
「フフフ……ハッハッハッハッハ!!! どうだ”遊戯王”! これが我が”力”よ!」
遊伸は怒りの眼でシンオウを睨む。
「シンオウ! 聞こえないのか! ドラゴン達の悲鳴が! あれじゃもうドラゴンじゃない! …いや、デュエルモンスターですらないよ!」
「黙れ! これは我の”力”だ! 我が”最強”だ! バトル! F・G・Dでシューティング・スター・ドラゴンを攻撃!」
シンオウが攻撃宣言を行うと、5本の首は一斉に、シューティング・スター・ドラゴンに向けてそれぞれの技を繰り出す。
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! 自身をゲームから除外して攻撃を無効にする!」
シューティング・スター・ドラゴンが粒子となって消えると、F・G・Dが放った攻撃は外れ、全て宇宙の彼方へと消える。
「逃したか! だがこれでお前のモンスターは消えた! 次で終わりにしてやる! ターンエンド!」
LP:5200
手札:0
モンスター
・F・G・D
魔法・罠
・無し
シューティング・スター・ドラゴンは攻撃を無効にした後、エンドに帰還する能力を持つ。
だが幾らシューティング・スター・ドラゴンでも、蘇生制限を満たさなければ特殊召喚は不可能。
ダメージは防げたが、シューティング・スター・ドラゴンを失う事に変わりはない。
「……僕のターン! ドロー!」
遊伸 手札:1+1
「(頼む……僕のデッキ。 ドラゴン達を救う為の”力”を僕に!)罠カード《無謀な欲張り》を発動! カードを2枚ドロー!」
遊伸 手札:2+2
「手札から速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動! 除外されている《シューティング・スター・ドラゴン》を墓地に戻す!」
「無駄だ! 何をしようが我が”力”の集結体を倒す事など出来ん!(そして我は更に創り出す! 奴を”絶望”に叩き落すカードをな!)」
シンオウは遊伸を見下ろしながら笑うと、それに反応する様にシンオウのデッキが黒く光る。
おそらくは遊伸に止めを刺すカードを創り上げたのであろう。
シンオウの”力”は、既に”神”に等しいのかもしれない。
遊伸はそんなシンオウを見上げながら、手札の1枚を取り出すと、その1枚が白く光り輝く。
「(僕のカード達……最後まで僕と共に!) シンオウ! これが僕の……最後の”切り札”だ!!! 魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動!!!」
遊伸の場に、”龍の鏡”の時とは正反対の白い渦が現れる。
「墓地の《シューティング・クェーサー・ドラゴン》と《CNo.39 希望皇ホープレイ》を融合!!!」
白い渦に二つの光が吸い込まれると、その渦の中心から波紋が広がり、中から1体の竜が姿を現す。
「待ってたぜ! やっぱり……遊伸といえばこいつだ!」
「うん! ずっと一緒に戦ってきた……遊伸の”切り札”!」
その竜が遊伸の場に降り立つと、その大きな槍をF・G・Dに向かって構える。
遊伸に残された最後の切り札―――
「《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!!!」
ATK:3200
「何を出すかと思えば……同じ融合召喚なら何とか出来るとでも思ったのか!」
「同じなんかじゃない! 僕は……”絆”でモンスター達を繋ぐ! 魔法カード《破天荒な風》! さらに速攻魔法《イージー・チューニング》をチェーン発動! 墓地のチューナーモンスター《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を除外して、攻撃力を2900ポイント、そして《破天荒な風》の効果で1000ポイント、合計3900ポイント攻撃力をアップ!」
ドラゴエクィテスの周りに強風が吹き始めると、その背後にライフ・ストリーム・ドラゴンが現れる。
ライフ・ストリーム・ドラゴンは自身を黄金に輝く8つの光輪へと変え、ドラゴエクィテスを囲む。
ドラゴエクィテスがその光輪を吸収すると、ドラゴエクィテスの体が黄金に輝き始める。
ATK:3200→7100
「F・G・Dの攻撃力を上回っただと!? …だが無駄だ! 我がLPは十分にある! さらにF・G・Dは戦闘では破壊されん! お前に我を倒すことは不可能だ!」
「変えてみせる! ”不可能”を”可能”に! ドラゴエクィテスの効果発動! 墓地に存在するドラゴン族シンクロモンスター1体をゲームから除外し、エンドフェイズ時までそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る事が出来る! 《シューティング・スター・ドラゴン》を除外してその名と効果を得る! 《エフェクト・シンクロ》!!!」
遊伸の墓地から光の粒子が飛び出すと、それをドラゴエクィテスが吸収する。
「そして
「マジかよ!? …遊伸のデッキのチューナーって後何枚だ?」
「…幾ら遊伸のデッキがシンクロ中心の構築だとしても、デッキに入るチューナーの数は10にも満たないよ……シンオウのLP、そしてドラゴエクィテスの攻撃力から考えて、遊伸が引き当てなきゃならないチューナーの数は……3枚!」
遊伸のデッキに入っている全てのチューナーの内、既に半分近くは墓地に置かれてしまっている。
デッキ自体少なくなってきているとはいえ、3枚引き当てるのは難しい。
「”絆”だけではなく”運”にまで縋るか! 見下げたぞ!」
「これは”運”なんかじゃない! 僕には解る! 必ずデッキは応えてくれる! 僕は……カードを信じる! 1枚目!!!」
チューナーモンスター《X-セイバー パロムロ》
「ありえん! デッキが応えるだと? 勝利を呼び寄せるのは己の”力”だ!!!」
「2枚目!!!」
装備魔法《ビッグバン・シュート》
「カードを信じれば……”奇跡”は起きる! 3枚目!!!」
チューナーモンスター《X-セイバー エアベルン》
「ふざけるな! そんな……そんな”奇跡”など…!」
「4枚目!!!」
罠カード《聖なるバリア―ミラーフォース―》
「起こしてみせる! それが……”絆の力”だ!!! 5枚目!!!」
チューナーモンスター
《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》
「ば、馬鹿な!!!?」
「いけぇ!!!
「ぐおぉぉぉ!!!」
シンオウ LP:5200→3100
「2回目の攻撃! 《スラッシュ・ウェーブ・フォース》!!!」
続けて
その波動が中心のトゥルース・ドラゴン以外の首を全て切り落とした。
「があぁぁぁ!!!」
シンオウ LP:3100→1000
「これが……最後の攻撃!!! 《スターダスト・ミラージュ》!!!」
「あってたまるかァーーー!!!! 最強の! 最強の”力”を手に入れたはずの我が! 敗れるなど―――」
「ぐあぁぁぁーーー!!!」
シンオウ LP:1000→0
槍に貫かれた事で、シンオウの体がF・G・Dから切り離される。
「……よっしゃあーーー!!! 勝った!!! 遊伸が勝ったぞ!!!」
「よかった……よかったよぉ~…遊伸」
だがその瞬間、地響きが鳴り始め、小島が崩壊を始める。
「な、何だ!?」
「あれ見て!?」
見ると”力”を制御していた主を失ったF・G・Dの中の”力”が暴走を始め、この空間ごと消滅しようとしていた。
「や、やべぇ!? このままじゃ……!?」
すると突然、鋼貴と空の体が浮き上がる。
二人の体は虹色の光に包まれており、二人の背後には―――――
「レインボー・ドラゴン!? 無事だったのね!」
ドラゴエクィテスの一撃により、シンオウとF・G・Dの呪縛から解放されたレインボー・ドラゴンが現れた。
レインボー・ドラゴンは二人を背に乗せると、地上を目指して飛び上がる。
「待ってレインボー・ドラゴン! まだ遊伸が……遊伸ーーー!!!」
空の叫びを無視してレインボー・ドラゴンは飛び続ける。
そして―――F・G・Dを中心に、”記憶の間”は光に包まれた。
・
・
・
「……こ、ここは…?」
遊伸が目を覚ますと、そこは何も無い空間。
見渡す限り全てが白い世界。
「僕は……シンオウとのデュエルに勝って……」
遊伸はぼんやりとした意識を覚醒させ、もう一度辺りを見渡す。
何も無い空間、そこには自分と―――もう一人。
「何故だ…! 何故勝てなかった…!?」
そこには見た事も無い民族衣装を着た、荘厳な姿の男が項垂れていた。
「……シンオウ?」
それは間違いなく遥か昔に、まだ人の姿をしていた頃のシンオウであった。
「これがお前の言う”絆の力”なのか…? ”絆”が我の”力”を上回るというのか…?」
シンオウは力に任せて地面を殴りつける。
この様な空間では、そこが地面なのかすら分からない。
「認めん! 認めて堪るか! そんなものが”最強の力”などど認めてしまったら……我が求めた”最強の力”とは何だったのか!!!」
シンオウは勢いよく遊伸に振り向く。
「”絆”とは一体なんなのだ!? 宝月は……お前は……”遊戯王”は何故ここまでの”力”を持っているのだ! 答えろ!」
シンオウは遊伸に掴みかかるが、突然脱力した様に手を離す。
「……聞いたところで、我には到底理解できん……我は……お前達には敵わんのか…!」
「……僕達が持っていて、シンオウが持っていないもの……”絆”がこのデュエルの勝敗を分けた……だけど、実はそれだけじゃないんだ」
「何だと!? まだ”力”があったと言うのか!?」
シンオウが再び遊伸に掴みかかると、遊伸は少し困ったような表情をする。
「いや、その……”力”というか……」
「何だ! 言ってみろ!」
シンオウに迫られ、遊伸は意を決して語り出す。
「……僕は最初、お前の事が憎くてしょうがなかった。 自分の野望の為に多くの人々を不幸にしてきた、全ての元凶……今でもその気持ちは変わらない……でも!」
遊伸は突然決闘盤を構え、目を閉じる。
さっきまでのデュエルを思い出しているようだ。
「あんなに憎いはずだったのに……悲しくて、辛くて、命と世界の”未来”を賭けたデュエルだったはずなのに……僕はあの時……心の奥底ではとても”楽しい”と感じていた!」
「”楽しい”……だと……」
「ああそうさ! …やっぱり僕は”決闘者”なんだ! デュエルが好きなんだ! そしてあの時、とてつもなく強いお前を前にして、僕の”心”は燃え上がっていたんだ!」
遊伸は自身の胸に手を当てる。
そこで燃えている”火”を確かめるように。
「きっとシンオウが相手じゃなかったら……この”熱い気持ち”がなかったら……”絆”があっても、僕はここまで”力”を出せていなかったと思う。 シンオウが相手だったからこそ、僕は勝つ事が出来たんだ! ……さっきまであんな戦いをしていた相手に、こういう事を言うのは変かもしれないけど、言わせて欲しい―――」
楽しいデュエルを、ありがとう―――――
遊伸はシンオウに頭を下げる。
「……フフ……ハハハ……そうか、”楽しい”……成る程……だから”遊戯王”か……」
シンオウは何かを悟った様な表情で笑う。
先程までの葛藤は既に無い。
「……近衛 遊伸、我は冥府へと旅立つ」
「え!?」
「我が我である限り、何度復活しようともお前には勝てん……だから”0”からやり直す。 そして再びこの世に生を受け、”学習”し、覇を称える……”遊戯王”よ、お前の言う”絆”を”最強の力”と信じるならば、誓え―――」
我が再び生を受けるその日までに、お前が言った”未来”を創り上げてみせる、と。
「……ああ! 誓う! 創ってみせる!」
シンオウは遊伸の言葉に頷くと、上を見上げる。
「……どうやらお前の迎えが来たようだ」
遊伸が後ろを振り向くと、そこにはレインボー・ドラゴンがいた。
遊伸の体が浮き上がると、レインボー・ドラゴンは遊伸を背に乗せて飛び立つ。
「……さらばだ……次は我が勝つ!」
シンオウは遊伸がレインボー・ドラゴンと共に向かった方向の逆へと歩き始める。
その姿は白い世界へと消えていった。
・
・
・
「遊伸! しっかりして! 遊伸!」
「う……ん……?」
空の呼びかけに反応し、遊伸は目を覚ます。
体を起こして回りを見渡すと、そこには鋼貴や空だけではなく、高尾や七海、フレデリック、そして隠れ家に残ったはずの宝月達全員がいた。
遊伸が目を覚ました場所、それは宝月の隠れ家であった。
「あれ……ここは? 皆…?」
「遊伸!!!」
目を覚ました遊伸に、空が勢いよく抱きつく。
その目には涙が浮かんでいた。
「もう! 心配したんだから……」
「ご、ごめんよ、でも何でここに……僕はあの後……レインボー・ドラゴンに乗って……」
「遊伸も思い出せねぇか、俺等もそうなんだ、レインボー・ドラゴンに乗ったとこは覚えてんだけどなぁ……あれ? ていうか、お前もあの時ちゃんと乗ってたんだな、安心したぜ!」
鋼貴が笑いながら遊伸の背を叩く。
鋼貴の後ろから高尾が進み出て、座ったままの遊伸に手を貸し、立ち上がらせる。
「すまない遊伸、お前の勇姿を見に行けなくて……あの後、さらに増援が来てな、こっちもフレデリックさんが来てくれて、何とか片付けられたんだ」
「その後、私達は階段を下っていったのだけれど……突然、大穴の中が光に包まれたの。 その中にいた私達もね」
七海が不思議そうな表情をする。
それでどうなったのかを、フレデリックが引き継ぐ。
「気付けば私達はこの隠れ家にいました。 倒れていた遊伸君達3人と共に……」
「一番驚いたのは俺達だぞ! 突然レインボー・ドラゴンがドアを突き破って入ってきたと思いきや、お前等を放りだしたんだからな!」
グレイグが胸を押さえながら言う。
そんな事が起こったのだとしたら、流石のグレイグでも驚くだろう。
「! そうだ、レインボー・ドラゴンは!?」
「遊伸……」
遊伸が呼ばれて振り向くと、そこには肖像画ではない、本物の”相棒”のカードを手に持った宝月が涙を流しながら立っていた。
「ありがとう……! 本当に……ありがとう…!」
「宝月さん…! よかった……」
胸を撫で下ろす遊伸の肩を、鋼牙が叩く。
「倒したんだな? ”戦いの覇者”を……」
「はい……もう”戦いの覇者”が復活する事は無いでしょう」
遊伸の言葉に誰もが驚く。
「ゆ、遊伸!? マジかそれ!」
「お前が消滅させたのか? それとも封印か? …どちらにせよ、凄い奴だな」
燃次と冷次が驚きと尊敬の眼差しを遊伸に送る。
「そんなんじゃないさ、僕等は……解り合えたんだと思う。 だから次に現れるとしたら、それは”戦いの覇者”なんかじゃなくて……”ライバルの決闘者”です」
「そうか……君は……奴さえも”動かした”か……来伸、遊芽……君達の息子が繋げたぞ……果てしない”未来”を……」
宝月は再び涙を流す。
宝月から始まった70年の戦いが、今ここに幕を下ろした。
「……皆さん! 全てが終わった事を報せに……そして、新しい”未来”が始まる事を伝えに……帰りましょう―――」
僕等の都市へ! ネオ童実野シティへ!
ようやく決着がつきました。
色々ちゃんと効果を説明していない部分がありますが、テンポを優先させたという事で。
次はエピローグです。 よろしければどうぞ!