ノエルがしぬお話。
 少しべぼのえめいているかもしれません。
 苦手な方はご注意下さい。

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 ノエルがしぬお話。
 べぼのえめいているかもしれません。
 諸々、苦手な方はご注意下さい。





それは、永き眠り。

「《13番目の宿主》、」

 白い病室に、小さな電子音が響く。本来、人にとって耳障りで有るはずのそれは、しかし、小さく、控えめで、まるで囁くように聞こえた。

 病室は月の光に沈む。ベッドの上に寝かされた人物は、その周囲を巨大でグロテスクな機械で囲まれていた。

 点滴のチューブが体内に流れ込む無機質な栄養素と酸素を肺に送り込むマスクが、辛うじて彼をこの世界に繋ぎ止めている。

「《13番目の宿主》」

 サングラスの形状をした機械は、また、小さく鳴った。3つの音を綴る。

 彼の名を。

 呼ばれたことに気づいたのか、ベッドの上の青年は薄っすらと目を開けた。それが、衰弱しきった彼に出来る唯一の行為だった。

 やせ衰えても尚、美しい鼻筋。震える睫と髪の色は淡く、その星のような銀色が生まれ持った色である事を伝えている。

 夜空の色をした目にかつての鋭さは無いが、未だその光までは奪われていなかった。

 彼が突然高熱を出し、倒れたのは三月ほど前。その後、肺と喉に致命的な障害が発見されて尚、彼は唄い続けた。そうでもせねば、死んでしまうと言うように。

 繰り返し、繰り返し。

 やがて歩けなくなり、立てなくなり、ベッドの上で身を起こすことも儘ならなくなった。

 しかし、彼は唄い続けた。窓から差す光を見上げ、風に耳を澄ませ。最早、彼にしか聴こえない音楽を、その唇から紡ぎ続けた。

 糊のように重い日々の中で、死にゆく孤独な若者。

 便宜上REVOはそんな彼をずっと見つめ続けていた。

 《13番目の宿主》が、彼を暗い箱の中から掬い出したのが、ずっと遠い日々のように思える。

 

 嗚呼、ワタシは、《この日》をずっと恐れていたのだ。

 

 便宜上REVOはぼんやりと思考する。機械の思考とは、人のそれとは違うのだろうか。彼には分からない。ただ、自らのシステム内を錯綜する単語に身を任せる。

 

 狭義の眠りとは短い死であり、即ち死とは何か。死とは思考の停止、身体の腐敗。瞬間的にして段階的な現象。心に先行してまず身体における感覚から朽ち果てるもの。

 それは即ち……

 謂わば永き死とは、永遠の眠り。

 

 正に、その永い眠りを、彼の宿主は迎えようとしていた。 

 しかし、不思議なことに《13番目の宿主》は死の淵にいながらも、それを恐れては居ないように思えた。

 久遠の闇を覗きながら、彼は、唄い続けていた。

 

「なにゆえ、アナタはいってしまうのでしょうか」

 便宜上REVOは誰にとも無く尋ねる。

 答えは無い。

 それでも、若者が自分の言葉を理解していると、便宜上R.E.V.Oにはわかっていた。

 アナタが紡いできた物語は、終わるのには早すぎる……

 青年の体温が、引いていくのがわかった。彼の身体が、静かにその活動を辞めてしまったのだ。

 しかし、便宜上R.E.V.O.にはなすすべがない。ただ、見守ることしかできない。

 青年の目が、窓から差し込む月光を映す。そして、ゆっくりと、閉じてゆく。

「 《13番目の宿主》。……もう行かれるのですね 」

 

 便宜上R.E.V.O.は静かに鳴った。そして、昔からずっとそうであったように、彼のかつての宿主らが死んだ時と同じように、自分が眠りに落ちるスイッチが入った事を感じた。

 思考が曖昧になっていく。《13番目の宿主》と過ごした日々が目の前に展開してゆく。これは、人の言うところの走馬灯というものだろうか。

 

 嗚呼、まるで、眠るように。

 いや、死とは、本当に、穏やかな、永い、眠りなのだ。

 宿主の眠りは、自分の眠り。かつて、恐れていた、眠り。

 

 けれど、もう怖くないのです。不思議です。

 

 薄れゆく意識の中で、かつて彼と歌った詩が聞こえた気がした。

 

 何かが途切れたような気配がした。

 それきりだった。若者の呼吸も、奇妙なサングラスの稼働も停まった。

 彼らを弔うように、辺りは、ただ月の光に満ち溢れ、役目を失った機械達は葬列に参列する者達の様に、彼らの周りにただ、静かに立ち尽くしていた。

 




 読んでくれてありがとう!
 初めてのストコンは眩草が見た舞台の中で一番美しく、悲しいものでした。

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