「まさか堕天使たちを捕縛するだけじゃなく、それとは別に弟君が言ってたアーシア・アルジェントさんっていうシスターを保護する目的もあったなんて」
「まぁ、そう言う訳だ」
イッセーが別行動する事になった俺は、木場と一緒に目的地の教会へと向かっていた。そこへ向かってる最中、イッセーが余計な事を口走った所為で木場にシスターの保護について説明している。
本当ならグレモリーには黙っておきたかったが、その眷属である木場の耳に入ってしまった以上教えるしかなかった。あそこまでデカイ声で言って聞かれたら誤魔化しの仕様がないために。
全くあの愚弟ときたら……。シスターを助けたい気持ちは分かるが、もうちょっと後先考えて欲しいもんだ。
「けど、どうして先輩達がそのシスターを保護するんですか? 弟君があそこまで必死な声を出して探そうとしてるから、何か相当込み入った事情があると思うんですが……」
「あ~、それは……悪いが秘密だ」
「…………………………」
俺が秘密と言った途端、木場が無言でジロッと睨むように見てくる。
「安心しろ。別に木場やグレモリーたちに被害が及ぶような事じゃないから。それは約束する」
木場の睨みに俺は怯むことなく弁明はするが、それでも木場の疑心は晴れない様子だった。
「……先輩の仰ってる事は嘘ではないと思いますが、リアス部長が聞いたら多分……」
「絶対に俺を問い詰める、ってか?」
「……はい」
俺の予想を聞いて頷く木場。
まぁグレモリーの性格を考えれば絶対に俺を問い詰めるだろう。今回の契約内容は堕天使捕縛する為に向かってる筈が、グレモリーに教えてない事をやろうとしてるからな。
多分アイツの事だから「領主の私に隠し事をするなんて随分いい度胸してるわね」、等と言って頬を引き攣らせながら全身に魔力を迸らせるだろうな。
「う~ん、俺としちゃ出来れば木場がこのまま黙ってくれると嬉しいんだけどなぁ」
「………僕はリアス部長の眷属で、貴方の監視役でもあります。いくら先輩の頼みと言えども――」
「黙っててくれたら、木場とはまた剣の手合わせに付き合ってあげるんだけどなぁ」
「ええっ!?」
俺が思いもよらない台詞を言ったと思ったのか、木場は驚いた表情をする。
にしても、たかが剣の手合わせ程度でそこまで驚かなくても良いと思うんだが。
「い、いきなり何を……」
「いくら木場が後輩だからと言って、悪魔相手に何の代価も無しに黙ってくれだなんて虫がいいにも程があるからな。だから木場に代価として今度の休みに、俺と剣の手合わせで手を打とうとしたんだが……ダメか?」
「………さ、さっきも言いましたが僕はリアス部長の眷属です。部長の
とか言ってる割にはさっき凄く迷ってる顔してたな。しかもすっごく嬉しそうな感じだったし。
まぁグレモリーに忠誠を誓っている木場には、あの程度じゃ簡単に了承してくれそうにないか。だったらもう一押ししてみるとしよう。
「ふ~ん、そうかそうか。残念だなぁ。折角今度の土日休みの二日分は君の時間が許すまで、ずっと相手してあげようと思ったんだがなぁ」
「………………………」
あ、木場が滅茶苦茶揺れてる。グレモリーに報告するか、このまま黙って俺と剣の手合わせをするかの選択肢に。
「まぁ君がグレモリーの
俺と一緒に歩いていながらも、迷っている表情をしている木場。
さてさて、木場の返答は如何に――
♪~♪
ん? こんな時間にメール?
突然俺の懐に入ってるケータイからメールの着メロが流れたのを聞いた俺は、すぐに取り出してメールの発信者を見るとイッセーからだった。
そう言えばついさっきアイツ、どこかの家の屋根から俺を見ていたな。その時は手を振って早く探せと口パクしてやったが。
その時からまだ大して時間が経ってないのに何でメールなんか寄越すんだ? いくらイッセーでもあの直後からアーシア・アルジェントを見つけたとは思えないんだが。
現にイッセーはまだアーシア・アルジェントと思われるオーラと接触してる気配はまだ無いし。
まぁアイツが何の意味も無く送ってくるとは思えないから、メールの中身を見てみますか。
「メールですか?」
メールを見ようとする俺に、さっきまで迷っていた木場が怪訝そうに見ながら尋ねる。
「ああ、イッセーからな。どれどれ……何?」
「? どうしたんですか?」
「………木場、悪いが予定変更だ。今すぐイッセーと合流しに行くぞ」
「え? 何故?」
教会へ行く進路を変えてイッセーの気を感じる方向へ身体を向ける俺を見た木場がキョトンとしていたので、理由を教える為にメールの内容を見せようとする。
そのメール文は――
『兄貴、結界を張ってる一軒家を見つけた。しかも何故か途轍もなく嫌な雰囲気を感じるから一応来てくれないか? もしかしたら殺人現場かもしれねぇ』
と言う内容だったから。
「殺人現場って、いくら結界を張ってる家を見付けただけで……」
「アイツの直感は結構当たるからな。特にマイナス方面の事に関しては。とにかく行くぞ」
「……先輩って、弟君を信じてるんですね。ちょっと羨ましいです」
「?」
何か木場が訳の分からん事を言っていたが、取りあえず無視する俺はイッセーの気を感じる方向へと向かっていった。
――――――――――
結界をブチ破った俺が民家に入ってリビングを見た途端、同年代と思われる神父服を纏っている俺嫌いの顔をした美少年が、俺の後輩でマスコットキャラの塔城子猫ちゃんの額に銃口を向けていた。その現場を見た俺は速攻で少年神父の懐に入って顔面パンチをお見舞いし、吹っ飛んだソイツは壁に激突した。
「小猫ちゃん、無事か!?」
うつ伏せ状態で倒れている小猫ちゃんに近づいてみると、彼女の左右の太腿に銃弾を撃たれてて、見てるだけで痛々しい傷があった。
「って、こりゃ酷ぇ……!」
「……大丈夫です。これくらい大したことは」
「そんなケガで大したことねぇ筈無いだろ!? 悪魔だからってやせ我慢しなくて良いって! あ~くそ、こんな時に兄貴から貰った回復アイテム持ってねぇなんて……!」
いつも出掛ける前に常時持っておけって言われてたけど、普段使うほどの敵と遭遇してなかったから時々持ってない事があった。
自分用としてじゃなく、誰かの治療にも使うことを考えてなかったからな。ったく、自分の軽率な行動に思わず腹が立つ。
一応兄貴にメールで来て貰うよう頼んだが……お? 兄貴と木場の
「小猫ちゃん、兄貴が此処に来たら治療するよう頼むから、悪いけどそれまで辛抱しててくれ……って、アーシア!」
「い、イッセーさん……?」
小猫ちゃんから少し離れたところで、俺と兄貴が探していたシスターのアーシアが磔みたく仰向けになって倒れていた。しかもアーシアの頬が殴られたように腫れている。
俺はすぐにアーシアのところに駆けつけて、服の袖を刺している光の剣の柄を掴み、速攻で抜いて放り投げた。そして両腕が解放されたアーシアは自力で上半身を起こして俺を見る。
「どうしたんだアーシア!? その頬は!?」
「イッセーさん、どうして此処に……?」
自分よりも俺の事を訊いてくるアーシア。俺としてはアーシアがどうして殴られてるのかが一番気になるんだが。
そう思ってると、さっき俺に殴られて壁に激突した少年神父が起き上がっていた。頭から血を流しながらも、憤怒の表情をしながら俺に殺気を向けている。
「んの野郎! よくも俺様の顔をぶん殴りやがったなぁ! 殺す殺す殺す!」
「起きたんなら丁度良い、テメェに訊きてぇ事がある」
「あぁ?」
俺の台詞を聞いた少年神父は訳が分からんみたいな顔をしてるが、俺にとっちゃどうでも良い事だから無視だ。
目の前にいる相手を見ながら立ち上がった俺は、少し声を低くしながら尋ねる。
「おい、小猫ちゃんやアーシアにケガさせたのはテメェで良いんだな?」
「んな分かりきったこと訊いてんじゃねぇボケェ! 俺様のお楽しみを邪魔したクソ人間はさっさと首チョンパされて死にやがれぇ!」
そう言いながら少年神父は俺が放り投げた光の剣の柄を右手に持って、ガン○ムのビームサーベルみたいに光の刀身作り出し、そのまま俺に襲い掛かってきた。
「! フリード神父! その人は人間です!」
「知ったことかぁ!!」
と言うアーシアの言葉も聞かず、フリードと呼ばれる少年神父は光の剣で俺の首を斬ろうとしていた。
そして俺が回避や反撃をせず微動だにしてない事によって、光の剣の斬撃は俺の首に当たる。
ガギンッ!
「イヤァァァ!!」
「兵藤先輩っ!」
斬撃が俺の首に当たったのを見たアーシアは顔を背けながら両目を瞑って手で覆い、小猫ちゃんは目を見開きながら珍しく大声を上げている。
因みに斬撃が当たった少年神父は――
「………あれぇ~? ねぇねぇ、何で君の首がチョンパされないのかなぁ~? それになんか硬い感触がするんですけど~?」
「さぁ? 何だろうな?」
俺の首が胴体と分かれてない事に疑問を抱く顔をしながら質問してくる。
答えは簡単。奴が斬りかかってくる直前、俺はすぐに
そしてこの光の剣が俺の
パキィンッ!
あっと言う間に砕けてしまった。
ってか、コイツの光の剣は意外と脆いな。ま、見るからに頭がイカれてる奴で、光の剣自体も堕天使みたく酷く歪んでたから当然か。
人間が持つ光の剣ってのは、所有者の心が澄んでいるほど光の刀身は純白のように輝いて鋭さを増す。もしこれが清らかな神父の斬撃だったら、俺は相応の傷を負っていた。
だが俺が相手してる少年神父は心が歪んでいる所為で、光の剣本来の神聖さが失っている。ただ相手を斬るだけの歪んだ光となって脆くなってる為、俺がちょっと
「……マジですか?」
アッサリと光の剣を砕かれた事に信じられない表情をする少年神父。
「テメェに言いてぇ事は山ほどあるが取り敢えず……平気で女の子を傷付けるテメェはもっぺん歯ぁ食いしばりやがれぇ!!」
ズドンッ!!
「ガアッ!!」
さっきの当てた顔面パンチとは違って、今度は
「これは小猫ちゃんを甚振った分だ! そしてこれが……アーシアの頬を殴った分だぁぁ!!」
ドガァッ!!
「ぶべらっ!!」
次に鋼鉄並みの
今度はただ壁に激突するだけじゃなく、壁にめり込んだ事によって、少年神父は今度こそ気絶する。
「……凄い」
「い、イッセーさん……」
「…………ふうっ。小猫ちゃん、アーシア、もう大丈……」
驚いている小猫ちゃんと起き上がるアーシアを余所に、少年神父が気絶したのを見て安堵した俺は二人の方を見るがすぐに固まってしまった。特にアーシアの方を見ながら。
さっきは気絶したクソ神父に対するの怒りで気に留めてなかったが、今はもうバッチリ気にして凝視していた。
「? イッセーさん?」
俺に“ある物”を見られている事に全く気付いてないアーシアが首を傾げている。しかもそれはプルンとちょっと揺れていた。
このままずっと眺めていたい光景だが、それは流石に不味いと思った俺は制服の上着を脱いで、アーシアに差し出そうとする。
「あ、あのさぁ、アーシア。お、俺としちゃぁすっげぇ嬉しい光景なんだけど、と、取り敢えずコレ着てくれ。そ、その……おっぱい、見えてるよ」
「え?」
俺の指摘にアーシアが自分の今の格好を見る。
アーシアの今の姿は……シスター服の上半身が切り裂かれ、今は発展途上とも言える膨らんだ二つのおっぱいが露になっている。
おっぱいが大好きな俺は、こんな状況でもアーシアの綺麗なおっぱいを瞬時に脳内保存すると言う不謹慎な事をしていた。
だってしょうがないだろ。目の前には俺の大好きなおっぱいがあるんだから!
そして改めて自分の姿を確認したアーシアは一瞬にして顔を真っ赤に染めて、即座に俺が差し出した制服の上着を取っておっぱいを隠し、そのまま膝を付く。
「キャアアァァァァァッ!!」
「……兵藤先輩、最低です。このドスケベ」
「えっ!? お、俺が悪いの!?」
酷ぇよ小猫ちゃん! 助けたのに罵倒するって!
さっきも言ったけどしょうがねぇじゃねぇか! おっぱい見たら凝視するのは男として当然の行動なんだからさ!
「ううっ、主に捧げた身なのに、イッセーさんに見られちゃいました……もうお嫁に行けません」
「い、いや、いくらなんでもそれは大袈裟じゃ――」
「何をしてるんだ、イッセー?」
「って兄貴!?」
いつのまにか呆れ顔の兄貴が来ていた。
相変わらず神出鬼没に現れてくるな、この兄貴様は。
俺の狼狽を気にしないような感じで、兄貴は周囲を見渡していると木場も来た。
「小猫ちゃん!」
「……取り敢えず状況は後で聞かせて貰おう。今は……そこで倒れているグレモリー眷族が最優先だな」
驚いてる木場がすぐ小猫ちゃんに駆けつけると、兄貴も木場と同じく小猫ちゃんに近づいて膝を付く。
「……すみません祐斗先輩、監視の邪魔をしてしまって」
「そんな事は気にしなくて良いから。今は小猫ちゃんの方が重要だよ。酷い怪我だ」
「この怪我から見て銃弾を受けた傷だな。しかも悪魔にとって最悪な祓魔弾ときた。やっかいな物を受けたな」
小猫ちゃんが怪我した両腿を見て分析するように言う兄貴。
ちょっと診ただけで分かるなんて相変わらず凄ぇな。
「兄貴、治せそうか?」
「一応な。ってかイッセー、お前に回復アイテムを持たせていたから、それを使ってすぐに治療出来たと思うんだが?」
「悪ぃ、このところ全然使ってなかったから今は家に置きっぱなしで……」
「………常に持ってろって言ったろうが、全く」
俺が持ってない理由を聞いた兄貴が呆れた表情をしながら、懐から小さな小瓶を取り出す。
「っ! それはまさか!」
「……何故、貴方がソレを……」
その小瓶を見た木場と小猫ちゃんが驚いた顔をする。
「今そんな事気にしてる場合じゃないっての。ほれ」
驚く二人を余所に、兄貴は小瓶の蓋を開けて、小瓶の中に入ってる液体をポタポタと垂らして小猫ちゃんの患部に当てる。
その直後、液体が当たった小猫ちゃんの患部は見る見るうちに傷が塞がって、まるで何事も無かったかのように完治していった。
「よし。これで治ったと思うが……立てるか?」
「………はい」
傷が治った小猫ちゃんは直ぐに起き上がり両足で立つ。
「小猫!」
「無事ですか、小猫ちゃん!」
すると突然、真紅の魔法陣が現れた。そこからリアス先輩と姫島先輩が姿を現す。
そしてすぐにリアス先輩がさっき立った小猫ちゃんに駆け寄ってそのまま抱きしめる。
「無事で良かったわ。ごめんなさい。貴女の魔力が急に消えたから、すぐに駆けつけようとしたのだけど、結界の所為で転移出来なかったの」
「……ご心配をお掛けしてすいません」
「おお、グレモリーと姫島か。丁度良い時に来てくれた」
「え? ……って貴方たち!? どうして此処に!?」
小猫ちゃんに意識を向けていたリアス先輩が俺達に気付いて、驚きながら見ていた。
「……私がはぐれ
「そうだったの。ごめんなさい二人とも、小猫を助けてくれたのに私としたことが」
「あ、いや……俺は別に気にしてませんから」
「ま、この状況でアンタが俺達を疑うのは無理もないからな」
謝罪してくるリアス先輩に、俺と兄貴は大して気にしないように言う。
ってか兄貴、もうちょっと言い方ってもんがあると思うんだが。
「それはそうとグレモリー、悪いが今夜教会に行く予定だったが、また今度にさせてくれ。あと早く眷属達を連れて、すぐに此処から立ち去ったほうが良い」
「? どう言う事?」
兄貴の発言にリアス先輩だけでなく、木場や小猫ちゃんが怪訝そうな顔をしていたが――
「! 部長、彼の言うとおりです。この家に堕天使らしき者たちが複数近づいてきますわ」
「「「っ!」」」
堕天使の気配を察知した姫島先輩がそう言うと、三人はすぐに察した。
三大勢力が未だ睨みあってる三竦み状態とは言え、もし此処で悪魔のリアス先輩達と堕天使達と戦うような事になれば、戦争再来の切っ掛けになる恐れがあるからな。その為さっき兄貴がリアス先輩達に立ち去るように言った訳だ。
「と言う訳だ。だから早く去らないと、アンタたち悪魔にとってすっごく面倒な事になるからな」
「……どうやらそれが賢明ね。皆、一先ず戻るわよ!」
俺と兄貴と呆然としてるアーシアを見るリアス先輩だったが、今は自分達の状況を最優先しようとする。
「一応訊くけど、兵藤君たちはそこのシスターをどうするつもりなの?」
「それは後日教えるから、アンタ達は早く逃げろ」
そう言う兄貴にリアス先輩は何か疑うような表情をするが、すぐに転移しようとした。
「兵藤先輩、兵藤君、二人ともどうか無事に逃げて下さい」
「お二人とも、小猫ちゃんを助けてくれてありがとうございます。どうかご無事で」
「……兵藤先輩方、助けてくれて本当にありがとうございました」
転移する際、リアス先輩眷属達の木場・姫島先輩・小猫ちゃんがそう言って姿を消す。
「ふうっ。取り敢えず逃げてくれて良かった。後は……」
そしてリアス先輩達がいなくなったのを確認した兄貴は少し安心したような表情をしながら、そのままアーシアに近づこうとしていた。