ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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週に一回の更新は遅いと思われるでしょうが、仕事の関係上で今はこれが精一杯の状態です。どうかご容赦下さい。


第十六話

 グレモリーとその眷属達がいなくなったのを確認した俺――兵藤隆誠は、さっきから呆然と見ているアーシア・アルジェントに近づく。

 

「やぁシスターさん、今朝振りだね。」

 

「えっと、貴方は確か……」

 

「自己紹介し損ねたが、俺は兵藤隆誠。知ってのとおり、イッセーの兄だ。それと今朝は悪かったな、初対面でありながら君に失礼な事を言って」

 

「い、いえ。わ、私は別に……あ、わ、私はアーシア・アルジェントです」

 

 自己紹介と一緒に謝罪する俺に、アルジェントは戸惑った様子を見せながらも俺に倣って自己紹介する。

 

 イッセーや俺だけじゃなく、悪魔のグレモリー達が突然やってきたんだから、彼女がこうなるのは無理ないか。

 

「君とは色々話したいところだが、生憎今は時間が無い。だから一先ず俺の質問にだけ答えてくれ。君はこの後どうするつもりだい?」

 

「ど、どうするって……」

 

「イッセーがぶちのめしたと思われる、あそこで壁にめり込んで気絶してるはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)を連れて教会に戻るか?」

 

「え……?」

 

 質問の意図が分かったアルジェントは、俺が指をさしている気絶中の少年神父を見て迷った表情をする。

 

 彼女は迷っているんだろう。何しろ彼女は少年神父だけじゃなく、隣で逆さまに磔となって無残に殺されたこの家の家主と思われる住民も見ている。

 

 途中から来た俺でも、この家で起きた惨状は何となく予測出来る。恐らくあの家主が少年神父によって殺されるのを見たと思う。でなければ、仲間の少年神父があんな状態になっているにも拘らず介抱して助けようと言う行動をしない訳が無い。

 

 因みにさっき俺が言ったはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)についてだが、本来の悪魔祓い(エクソシスト)は天使からの加護を得て悪魔と戦う。だが、あの少年神父は天使じゃなく堕天使の加護を得ている。その故に悪魔祓い(エクソシスト)としての力を使ってるが、堕天使からの加護を得てる為、『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』と教会側から認定されているって訳だ。

 

「わ、私は……その……」

 

 少年神父の外道な行いを目撃した為にアルジェントはこのまま逃げるか、少年神父を連れて教会へ戻るかを必死に考えている様子だった。

 

 出来ればすぐに逃げると言う選択をして欲しいんだが、優しい彼女にとってはそれが出来ないみたいだ。

 

 そして彼女が迷っている内に、さっき姫島が言っていた堕天使達がもうこの家の付近にやってきていた。

 

「兄貴、堕天使の気配がもう近くに来てるぞ」

 

「分かってる」

 

 堕天使の気配を感じたのは俺だけでなくイッセーも同様だった。

 

 此処に来たのは二人の堕天使だが、以前天野夕麻に扮したレイナーレの気配は感じられない。

 

 奴が此処に来ないって事は、多分あの教会にいるんだろうな。となると二人の堕天使が来たのはアルジェントと気絶してる少年神父の回収、と言ったところか。

 

 そうと分かれば一刻も早くアルジェントを避難させたほうが良さそうだ。

 

「悪いがアルジェントさん、時間切れだから君を強制的に連れさせてもらうよ。こっちとしては君をレイナーレに殺されるわけにはいかないからな」

 

「え? ど、どうして私がレイナーレ様に――」

 

「イッセー、堕天使共の相手は俺がやっとくから、お前は彼女を連れてこの場からすぐに逃げろ」

 

 戸惑うアルジェントを余所に俺がイッセーに指示をする。

 

「おう。じゃあアーシア、悪いがこうさせてもらうよ」

 

「ふぇ? い、イッセーさん!?」

 

 頷くイッセーがお姫様抱っこした事によって、アルジェントは凄く恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

 これがただの日常であれば可愛い女の子にお姫様抱っこ出来たと喜んでるだろうが、今は緊急時なのでそんな様子を一切見せてない。

 

 そしてイッセーはアルジェントを担いだまま家から出ようとすると――

 

「待て、そのシスターを何処へ連れて行く気だ?」

 

「人間風情が勝手にレイナーレ様の所有物を持ってかないで欲しいんすけど~?」

 

 リビングの上から二人の女性と思わしき声が聞こえた。

 

 俺とイッセーが聞こえた方へ視線を向けると、そこから空間が歪むように紫色の渦みたいな物から堕天使と思われる二人が出てきた。

 

 片は青色のロングヘアをした女で、胸元が大きく開いたスーツを着用しミニスカートを履いてる。もう一人は黒のゴスロリ衣装を纏い、青い瞳に金髪のツインテールをした少女。

 

 見るからに美女や美少女のカテゴリーに入ってイッセー好みの部類だが、肝心の弟は現在アーシア優先状態によりスケベな気配を出してなかった。

 

 純心無垢で優しい金髪美少女のシスター、歪んだ心を持った堕天使の美女と美少女。イッセーがどっちを選ぶかなんて訊くまでもないな。

 

「か、カラワーナ様、ミッテルト様……」

 

 イッセーにお姫様抱っこされてるアルジェントが顔を青褪めながら二人を見ている。

 

 ふむふむ。青髪の女はカラワーナで、ゴスロリ女はミッテルトか。ドーナシークから聞いた情報と一致したな。

 

 名前を呼ばれた堕天使二人はジロリとアルジェントを睨む。

 

「アーシア、貴様まさかレイナーレ様を裏切るつもりか?」

 

「しんっじらんない! 路頭に迷ってたアンタをレイナーレ様が拾ってくれたのにぃ~。その恩を仇で返すんだ~? 元聖女様が聞いて呆れるっすわ~」

 

「わ、私は……」

 

 アルジェントは二人の睨みにまるで金縛りにあったかのように怯えている。

 

「おいイッセー、早くアルジェントさんを連れて行け。それと一応玄関前で待っててくれ」

 

「分かった」

 

 俺とイッセーは堕天使二人を無視する行動に、向こうは気分を害したかのように顔を顰めていた。

 

「はぁ~? 勝手に持ってくなって……言ってんすけど~!」

 

「逃がさんぞ!」

 

 家から出ようとするイッセーに光の槍を投げるカラワーナとミッテルト。

 

 そして光の槍はイッセーの背中に当たろうとするが、即座に俺が二本の光の槍を出現させて相殺する。

 

「なっ、光の槍だと!?」

 

「ちょっとちょっと~、これどういうことっすか~? 何で人間がアタシたちと同じ光の槍を出せるんすか~?」

 

 俺が光の槍を出して相殺した事に驚く二人を余所に、イッセーはアルジェントを連れて逃走に成功する。

 

 しかしカラワーナとミッテルトは逃げられた二人より、完全に俺の方を注視していた。

 

「貴様、何者だ? 何故人間が我等と同じ光の槍を使える?」

 

「さぁ、何でだろうな?」

 

「あのさぁ、こっちが質問してんのに質問で返さないんで欲しいんすけど~?」

 

「なら逆に問うが、敵の俺が素直に答えると思うか、下級堕天使さん?」

 

 さっきの光の槍を相殺した際、コイツ等の力も探ってみたが、それほど大した事はない下級堕天使だった。俺やイッセーは勿論の事、グレモリー達の敵じゃない。

 

「ねぇカラワーナ、コイツ半殺しにして良いっすか? 堕天使のアタシ達に舐めた態度取る人間にお仕置き必要だと思うんすけど~」

 

「……そうだな。堕天使の我等を下級と罵る無礼極まりない人間には罰が必要のようだ」

 

 しかもプライドが高く本当の事を言われるとすぐにキレる短気な連中だった。おまけに俺の力を探ろうとはせず、完全に俺を舐めている。

 

 まぁ悪魔や堕天使の大半は、人間は自分より下と見下してる連中が多いからな。コイツ等の反応はある意味当然とも言えるだろう。

 

 けどなぁ下級堕天使さん、確かに人間はアンタ等より劣る存在かもしれない。が、あんまり見下してると手痛い竹箆(しっぺ)返しを食らう事になるぞ。目の前にいる俺とか。

 

「人間、貴様が何故光の槍を使えるかは知らんが」

 

「先ずその生意気な口を塞ぐ為に、磔にしてやりま~す♪」

 

 二人がそう言いながら光の槍を俺目掛けて投げ飛ばそうとしてくる。

 

 下級堕天使のカラワーナ、そしてミッテルトよ。

 

 知らないとは言え、『聖書の神(わたし)』を相手にして無事で済むとは思わないことだ。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 アーシアを連れて行くのを兄貴に命じられてる俺は、屋根を飛び越えながら家に戻っていた。

 

 流石にこんな深夜の真夜中に歩道でアーシアを担ぎながら走るのは色々と不味いからな。

 

「い、イッセーさん! すぐに戻ってください! いくらイッセーさんのお兄さんでも堕天使のカラワーナ様とミッテルト様には――」

 

「大丈夫だって。あの程度の堕天使二人は兄貴の敵じゃねぇよ。それよりアーシア、こんな状態で喋ると舌噛むぞ」

 

 俺にお姫様抱っこをされてるアーシアは引き返すよう言ってくるが、すぐに問題ないと言い返す。

 

 一応兄貴は赤龍帝の俺より数段強いから、あの堕天使程度じゃ兄貴の相手にならず、速攻で倒される未来を容易に想像できる。

 

 現に以前、十人以上の堕天使相手に一人で撃退してた事があったし。「俺を倒したければブレイザー・シャイニング……じゃなくて、総督のアザゼルでも連れて来い」なんて冗談交じりで言ってたし。

 

 そういや今思ったんだが、兄貴は途中変な事を言ってたな。ブレイザー・シャイニングって言った途端言い直してたが、アレ一体なんだったんだ? 堕天使総督の異名か何かか?

 

 そう考えながら屋根の上で大ジャンプをして家を跳び越えてると、下を見たアーシアがすぐに悲鳴をあげる。

 

「はうっ! ま、まだ続くんですか~!?」

 

「あともうちょっとだ。それまで辛抱してくれ」

 

 って、今は兄貴の台詞よりアーシアを家に送らないといけないな。

 

 よしっ、もう一踏ん張りと行きますか!

 

 ……………って、今更気付いたんだが、アーシアを家に保護する為に父さんと母さんを説得するって兄貴が言ってたけど、まさかこんな深夜にやるつもりじゃないよな?

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「んで? 何か言い残す事はあるか?」

 

「馬鹿な……何故……!」

 

「あ、ありえないし……。どうして……アタシたちが人間如きに……!」

 

 光の槍を投げ飛ばしてきた堕天使のカラワーナとミッテルトは、ほんの数分でうつ伏せとなって倒れていた。相手の実力を測ろうと少し手を抜いていたんだが、やはりそれほど大した相手じゃない。

 

 コイツ等の攻撃は単純に持っている光の槍をただ投げると言う行動のみだった。最近の下級堕天使は随分と腑抜けたもんだ。『聖書の神(わたし)』が生きていた頃は、ここまで弱く無かったんだがな。

 

「確かにアンタ等から見れば人間は弱いよ。けどなぁ、人間だって必死に努力すれば人外な存在を越える事が出来るんだ」

 

 尤も、俺は人間に転生した『聖書の神』だがな。

 

「さて、ドーナシークから粗方の目的を聞いてはいるが――」

 

「ど、ドーナシークだと!? まさか貴様……!」

 

「あ、あのオッサン、全然戻ってこないと思えば、アンタの仕業だったか……!」

 

 いやいや。ドーナシークを倒したのは俺じゃなくて、俺の知り合いのローズさんだけどな。

 

 尤もあの堕天使はローズさんによって新たな扉を強制的に開かされただけでなく、色々な意味で更正されてるが。

 

「今はソイツの事なんかどうでもいい。それよりも、レイナーレが今回やろうとしてる事はアザゼルやシェムハザに近づく為の独断行動で、アンタ等はそれが成功した暁にレイナーレから上の地位を与えられるのを約束されてるみたいだな」

 

「き、貴様、そこまで知って……」

 

「自分達の出世欲の為にあの無垢な少女を利用するだけじゃなく平然と使い捨てにするとは……あの愚か者は近い内に悪魔のグレモリーに裁かれるが、お前達は私自ら断罪するとしよう。堕天使とは言え、嘗ては私の娘達だ。親として責任を取らないとな」

 

 そう言って俺はミッテルトに開いた右手を向ける。

 

「は、はぁ? あ、アンタ何言ってんすか? いきなり喋り方が変わっただけじゃなく、アンタはアタシ等の親なんかじゃ――」

 

「“終末の光”よ」

 

 

 カッ!!!

 

 

 言葉にした瞬間、俺の右手から放出する光がミッテルトを包むように照らす。

 

 そして光が消えると、先ほどまでいたミッテルトの姿が消失していた。 

 

「み、ミッテルト……! 貴様、ミッテルトに何を……!?」

 

「理解が遅い奴だ。消したんだよ、さっきの“終末の光”でな」

 

 終末の光。嘗て「聖書の神(わたし)」が使っていた能力の一つ。その光に当てられた対象者は肉体が滅びて消失する。

 

 早い話、グレモリーが使う滅びの魔力と似たようなものだ。

 

 尤も、この能力は「聖書の神(わたし)」本来の力の為、人間の身である俺には対象者が一人だけしか当てる事が出来ない。

 

 今の俺の実力だと目の前にいる下級堕天使なら問題無く消失する事は出来るが、自分と近い実力か互角、もしくはそれ以上だったらダメージを負わせる位までしか出来ない。加えて人間の俺が使うにはかなりのオーラを消費するので、あまり好んで使いたくない能力でもある。

 

 けれど目の前にいる堕天使は私利私欲の為に外道な事をしている為、使わざるを得なかった。堕天使になってしまったとは言え、嘗て私が命を与えた天使(むすめ)だからな。親としてのケジメは付けさせてもらう。

 

「終末の光……だと? 馬鹿な、あれは聖書の神にしか使えない筈……はっ! ま、まさか貴様は……!?」

 

「今頃気付いたか、バカ娘。『聖書の神(わたし)』と決別して敵対するだけならまだしも、人間界に来てまで外道な行いをやる事までは見過ごせないな。消えるがいい」

 

「ま、待ってくれ(ちちうえ)――」

 

 俺の存在に気付いて命乞いをしようとするカラワーナを無視して右手を向け――

 

 

 カッ!!!

 

 

 今度は能力名を口にしないで終末の光を出した。

 

 その数秒後、光が消えた先にはミッテルトと同様にカラワーナの姿が消失していた。

 

「…………この期に及んで今更『聖書の神(わたし)』を父呼ばわりするな、バカ娘が」

 

 吐き捨てるように言った俺は次にある方へ視線を向ける。そこには未だに逆さまに磔となっているこの家の家主を。

 

 因みにイッセーがぶちのめして壁にめり込んだ少年神父は、もうこの家にはいない。カラワーナとミッテルトが俺と相手し始めた時から目覚めて、俺が圧勝したのを見た途端に形勢不利と思って気配消しながら逃走していた。自分が不利と分かれば仲間を平然と見捨てるとは、中々良い根性してるよ。

 

 俺がその気になれば逃走を阻止する事は出来たが、奴にはレイナーレにこの状況を知らせるメッセンジャーとさせる為に敢えて逃がした。

 

 さて、今はそんな事よりも目の前の家主を弔わないと。悪魔と契約したとは言え、それが理由で理不尽に殺されては余りにも気の毒だからな。

 

 そう思いながら俺は遺体の両の掌、足、そして胴体の中心に刺さっている太くて大きな釘を抜く。そして釘が抜かれた遺体を、俺は仰向けに横たわらせる。

 

 次に俺はそのまま膝を付き、酷く痛ましい顔をして開いてる遺体の両目を手でそっと閉じらせ、その手から白い光を放出させた。

 

「無宗教、もしくは別宗教に入っているのかは知らないが、『聖書の神(わたし)』が代わりに其方(そなた)を弔おう」

 

 そう言って俺は遺体に十字の光を照らし、こう告げる。

 

「我、聖書の神が告げる。この者に安寧の光を与えん」

 

 

 パァァァァァァッ!!

 

 

 十字の光が遺体を覆うように照らされる。

 

 その光によって切り刻まれていた遺体が段々傷が塞がって行き、さっきまで絶望していた表情も安らかに眠っているような穏やかになった。

 

「すまない。今の私にはこれが精一杯だ。どうか安らかに眠ってくれ」

 

 遺体にそう告げた俺は残りの処理を警察と遺族に任せようと110番通報した後、すぐにイッセーとアルジェントがいる自宅へ戻った。

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