ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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だらだらと遅れていましたので、今回はフライング気味で投稿しました。


第二十話

「アハハハハ! まさかこんな簡単にアーシアを取り返せるなんて思いもしなかったわ! あの人間の悔しがる顔と来たら、アハハハッ!」

 

 アーシアと一緒に人質の松田と元浜を教会へ連れ帰ったレイナーレは、一室で得意気な表情で高笑いをしていた。以前虚仮にされた分を返したかのように、手を出せず歯を食いしばいながら必死に耐えてる一誠の顔を思い出しながら。

 

「良かったですねぇ堕天使様。シスターちゃんを奪還する事が出来まして」

 

 高笑いしてるレイナーレの傍に、昨夜現れた銀髪碧眼の美女が賞賛している。さっきまで一室に自分以外誰もいなかった筈だが、気分の良いレイナーレは彼女の出現を咎めようとせずに笑みを浮かべていた。

 

「ええ。貴女のお蔭で、こうも簡単に上手く行ったんだから感謝してるわ。人質なんて詰まんない手だと思ってたけど、まさかあの人間があそこまでお人好しだったなんてね。あのまま見捨てれば私を倒せた筈なのに」

 

「人間と言う生き物ほど、情に脆い存在はいないわ。益してや彼はその人一倍あるから、そこが彼の強みでもあり弱点でもあるのよ。尤も、この手は色々と用心しないと後になってから手痛い竹箆(しっぺ)返しを食らうんだけどね」

 

「それは大丈夫よ。こっちに切り札がある以上、向こうは手を出せないわ」

 

「だと良いんだけど。一応訊いておきたいんだけど、目的が済んだら、儀式が終わった後にあの人質二人はどうするの? ちゃんと返すんでしょうね?」

 

「まさか。用が済んだら死体にして送り返すわ」

 

「………え?」

 

 レイナーレの返答に予想外と言う様な感じで少し目を見開く銀髪の美女。

 

「えっとぉ、堕天使様。私の話を聞いてなかったの? 人質って言う手段は色々と用心しないと後になってから手痛い竹箆(しっぺ)返しを食らうって」

 

「勿論よ。だけどね。あの兄弟には散々邪魔されたばかりか、大事な部下も失っているの。唯でさえ予定を狂わされたんだから、向こうにはそれなりの目を遭わせないとコッチの気が済まないわ」

 

「はぁ……」

 

 レイナーレと会話をしながら呆れた視線を送る銀髪の美女だが、当の本人は大して気にしてない様子。

 

 そして銀髪の美女は――

 

(やれやれ、ちょっと軽い知恵を与えただけで完全に調子に乗っちゃってるわね、このおバカさんは)

 

 後先考えないレイナーレの浅慮に内心蔑んでいた。

 

(まぁ良いわ。この子がどこまで道化に徹してくれるか見物だし。それに……)

 

「それにしても、あの人間が持ってる神器の『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』が危険だなんて、上の方々の考えが全然理解出来ないわね。まぁ今はそんなことどうでもいいけど」

 

(何でか知らないけど、この子思いっきり勘違いしてるし)

 

 一誠の持つ『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』を『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』と間違ってる事に、呆れを通り越して逆に感心していた。

 

(まぁそれはそれで色々と面白い事になりそうね)

 

 『神滅具(ロンギヌス)』と呼ばれてる神器(セイクリッド・ギア)をどうすれば間違えるのかとツッコミを入れたい彼女だったが敢えて言わなかった。

 

 今夜行われる儀式で兵藤兄弟が現れて面白い事が起きる。彼女はそう確信しているから。

 

 銀髪の美女の考えに微塵も気付いてないレイナーレは、彼女にある事を指示しようとする。

 

「エリー、協力してもらってる貴女に悪いけど、フリードと一緒に門番をしてもらえないかしら? 万が一あの兄弟が押し入ってきたら、人質をチラつかせてでも阻止して欲しいの」

 

「ええ、良いわよ。私は堕天使様の手助けをする為に来たから、それ位お安い御用よ」

 

 銀髪の美女――エリーは心にも思ってない事を口にしながらも了承する。彼女の返答を聞いて満足するレイナーレは妖艶な笑みを浮かべた。

 

「助かるわ。今回の件が成功した暁には、貴女を私の正式な側近として迎え入れるわ。貴女はそこら辺の人間共とは違って有能だし」

 

「ふふっ、ありがとう堕天使様」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 ゴンッ!

 

 

 部室に叩く音がした。音の発生源は俺――兵藤隆誠の弟のイッセーの額からだった。

 

 別にイッセーは誰かに叩かれてはいない。理由は簡単。俺の目の前でグレモリー達の目も憚らず、床に頭を思いっきり当てながら土下座していたからだ。

 

「……取り敢えず頭を上げろ、イッセー」

 

「すまねぇ兄貴……! 俺が付いていながらアーシアを……!」

 

 電話でイッセーからアルジェントが攫われた事を聞いた俺は、一度学校へ来るよう言って、事の詳細を聞いた。

 

 詳細を聞いた直後、イッセーは速攻で土下座をしたって訳だ。

 

 いきなりの展開に聞いていたグレモリー達は呆気に取られているが、イッセーは気にせず俺に謝り続けていた。

 

 何度も頭を上げろと言っているんだが、当の本人は自分が許せないのか、一向にそれをしようとする様子が無い。

 

「別にお前だけの所為じゃない。まさかあの女堕天使がアルジェントを取り返す為に、松田と元浜を人質にするなんて言う外道な手を使わないだろうと高を括ってた俺にも非があるからな」

 

「堕天使が私の学園の生徒を利用するなんて……!」

 

 報告を聞いていたグレモリーが非常に腹立たしい思いで忌々しそうに口にしていた。

 

 当然だろう。自分の領地、且つ自分が通ってる学園の生徒を人質とされちゃ黙ってはいない。

 

 俺としても、『聖書の神(わたし)』と決別して敵対してるとは言え、自分の娘が外道な真似をしてるのを聞いて黙っちゃいられないからな。

 

 加えて、イッセーの友人である松田と元浜は今回の件とは全く関係無いにも拘らず巻き込んでしまった為、俺が全力を挙げてでも助けなければいけない。

 

 一先ず今は土下座中のイッセーを何とかするとしよう。いつまでも人様に見せていい光景じゃないからな。

 

「イッセー、いい加減にしろよ? 自分に非があるのを認めて俺に土下座なんかしてもアルジェントは戻ってこない。今はそんな事してるより彼女を助けるのが先決だろうが。それはアルジェントを助け出した後にいくらでも聞いてやるから、さっさと頭を上げろ」

 

「…………………………」

 

 俺の言葉を聞いてもイッセーは立ち上がろうとしない。

 

「いつまでそうして――」

 

「ねぇ兵藤君。さっきから気になってたんだけど、貴方たちが言ってるアーシアって子は一体何者なの? もしかして昨夜見たシスターの事かしら?」

 

 俺が力付くで立たせようとイッセーの胸倉を掴もうとすると、急にグレモリーが割って入るかのように訪ねてきた。その問いに俺は思わずイッセーから視線を外してグレモリーの方を見る。

 

 アルジェントを知らないだと? どう言う事だ? 俺達が彼女を保護する事を木場から聞いてないんだろうか。

 

 ちょっとした疑問を抱きながらチラッと木場の方を見る。

 

「…………………」

 

 俺からの視線に木場は言い辛そうな感じで目を逸らす。

 

 ………何だ、グレモリーに教えなかったんだな。

 

 俺との手合わせをしたかった為に言わなかったか、俺が塔城を助けた手前もあって黙ってくれていたのかは知らないが、どっちにしろ木場には今度の土日に剣の手合わせをするとしよう。

 

 しかしまぁ、俺やイッセーが此処で彼女の名前を出してしまった以上、グレモリー達に教えるしかないな。

 

「グレモリーのお察し通り、アーシア・アルジェントとは昨夜のシスターの事だ。俺達は訳あって彼女を家に保護しようと決めたんだ」

 

「保護ですって? どうして貴方達が堕天使側のシスターに対してそこまでするの? それに訳って一体何なの?」

 

「そう矢継ぎ早に質問しなくてもちゃんと教えるよ。彼女は――」

 

 そして俺はグレモリーに全て話した。アルジェントの持つ神器(セイクリッド・ギア)――『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の事、そしてレイナーレがこの町に来た目的を包み隠さず。

 

 それらを聞いたグレモリーと木場を除く眷属達は驚愕を露にしていた。特にアルジェントが持つ『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の性能を。

 

 彼女達の反応は当然とも言えるだろう。何しろアルジェントの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は人間や天使だけでなく、悪魔や堕天使をも治癒する事が出来る滅多に存在しない希少な回復系の神器(セイクリッド・ギア)だからな。

 

「………成程。道理で堕天使が人質を使ってまで取り返そうとする訳ね」

 

「だがその手は却って悪手だ。俺たち兄弟や領主のアンタにも喧嘩を売っただけじゃなく、自分が独断で動いてるって事を証明したも同然だからな」

 

「そうね。私の町でそんな事をした堕天使には、私が消し飛ばさないと気が済まないわ」

 

 予想通りと言うべきか、グレモリーは笑顔と裏腹に瞳を真紅色に染めていた。相当キレかかっている証拠だ。

 

 まぁ、かく言う俺もグレモリーと同じくレイナーレの行動に少しばかり頭に来ている。奴にもミッテルトやカラワーナと同様にケジメを付けさせないといけない。

 

 そう思ってると、イッセーがいつの間にか立っていて、俺を見ながら何かを決意してるような目で言おうとしてくる。

 

「…………兄貴、俺……今回ばかりは絶対にアイツを許せねぇ!!」

 

「同感だ。その怒りを愚か者(レイナーレ)に思いっきりぶつけてやれ。赤龍帝のお前に下らん手を使った事を地獄の底から後悔させる為にな」

 

 あと『聖書の神(わたし)』を怒らせた事も思いっきり後悔させてやる、と内心付け加えながらイッセーの肩にポンッと手を置く。

 

「と言う訳でグレモリー、俺は早退させてもらう。悪いけどウチの担任に上手く言っといてくれないか?」

 

「待ちなさい。まさかこんな昼間から教会に行くつもりなの?」

 

「まさか。行くのは夜からだよ」

 

「なっ! ちょ、ちょっと待ってくれよ兄貴! 何をそんな悠長な……!」

 

「阿呆。今行ったところでアルジェントを取り返す前に人質となってる松田と元浜が殺されるだろうが」

 

 あと俺が万全な状態で戦える為に、一旦準備をする必要があった。

 

 昨夜に使った『聖書の神(わたし)』の能力――“終末の光”と“安寧の光”――を使ってかなり消耗していた為に、俺の身体は未だに回復しきってない。

 

 あとレイナーレが行う儀式は、ドーナシークから聞いた話だと真夜中に行うらしい。だからそれまではアルジェントや人質となってる松田と元浜は無事な筈。それ故に準備をする時間があるって訳だ。

 

 尤も、儀式が終わった後に神器(セイクリッド・ギア)を抜かれたアルジェントは死んでしまい、松田と元浜が無事に生きて返される保証は無い。何としても儀式が始まる前に助けにいかないとダメだがな。

 

「なら私たちも同行するわ。堕天使が私の学園の生徒に手を出したんだから、これ以上黙ってる訳にはいかないわ」

 

「良いのか? あの女堕天使が独断で動いてるとは言え、悪魔のアンタが堕天使と対峙したら後々面倒な事になると思うぞ?」

 

「構わないわ。この際だから、堕天使が誰に喧嘩を売ってるのかをいい加減に教えないと気がすまないのよ」

 

 さいですか。

 

「だったらグレモリーと眷属達は教会前で待機しといてくれないか? 逃がすつもりは毛頭無いんだが、堕天使が逃げないよう教会周囲を監視してくれると助かる」

 

「今の私に黙って見てろと? こっちは此方側と一切無関係な学園の生徒が囚われているのよ。そんな事出来ないわ」

 

「まぁ取り敢えず聞いてくれ。一応俺たち兄弟は今もアンタに依頼を任されてる身だ。その途中で依頼主のアンタが俺たちと一緒に同行して、万が一もしもの事が遭ったら依頼がご破算になっちまう。だから同行するにしても、俺達が教会で事を終えるまで見守って欲しいんだ。勿論人質も俺たち兄弟が必ず取り返す。んで、その後からはアンタの出番で、レイナーレに止めを刺すって言う美味しい所を譲るって寸法なんだが……ダメか?」

 

 グレモリーには悪いが、松田と元浜が人質にされてる以上は大人数で突入するのは正直避けたい。

 

 もしグレモリー達と一緒に教会を襲撃でもしたら、完全に不利と分かったレイナーレが人質を楯にし続けて逃走でもされたら困る。

 

 それをさせない為に少人数で行った方が却って好都合だ。

 

「………はぁっ、了解したわ。貴方が律儀な上に、私の身と立場を考えてくれてるなら何も言えないわ。但し、言ったからには必ずやり遂げるのよ」

 

「当然」

 

 人質の松田と元浜を取り返すのは勿論、儀式で犠牲とされるアルジェントも取り返す。

 

 もし三人が死傷するような事があったら、『聖書の神(わたし)』の力を全て使ってでも必ず救う。

 

「ああ、そうそう。グレモリーと眷属達は教会前で待機してくれと言った手前申し訳ないんだが、『騎士(ナイト)』の木場だけを連れて良いか? 一応俺達の監視役継続って事で」

 

「……構わないけど、そう言う事は先に言いなさい。祐斗、良いかしら?」

 

「勿論です」

 

 少々呆れた顔をしてるグレモリーの問いに、木場は即座に了承の返事をする。

 

 それを聞いた俺は木場に集合場所と時間を教え、教会に襲撃する準備の為にイッセーを連れて学校を早退した。

 

 しかし何故だろうか。今夜行くあの教会を考えてると、妙に警戒感が募っている。必ず万全な状態で行かないとダメだと。

 

 あの教会には堕天使のレイナーレなんかより遥かに手強く、あんまり会いたくない存在がいるような気がしてならなかった。

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