ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第二十二話

「ちょっとちょっとお姉さん、これどう言う事っすか? 話が違いますよ~?」

 

 突然の裏切りとも言えるエリーの行動を咎めるように問う少年神父。

 

 優勢な状況を不利に変えられてしまったから、彼がそう問うのは仕方ない事だろう。

 

「あ~、ゴメンね~フリード君。此処に来るのはダーリンと弟君だけだと思って、対悪魔用の術式は施さなかったのよねぇ~」

 

 詫びるエリーだが、本当に悪い事をしたと思ってない言い方をしていた。

 

 少年神父が少しばかり頭に来たのか顔を顰めている。

 

「………これが堕天使様の耳に入ったら後で大目玉食らうっすよ?」

 

「フフフフ、そうねぇ~。でも……………正直言って、私は如何でも良いのよ。レイナーレなんて言う単純おバカさんの事なんか」

 

「!」

 

 さっきまでゆったりとした口調をしていたエリーが急に変わり、レイナーレを見下す発言をした。

 

 いきなりの変わりように少年神父が目を見開き思わず視線を向けると、彼女は妖艶な意味を浮かべている。

 

「それはそうとフリード君、君はそろそろ退散した方が良いわ。でないと、君の目の前にいるダーリンの弟君にぶっ飛ばされるわよ?」

 

「へ? っていつのまぶごぉ!!」

 

「戦闘中に余所見してんじゃねぇよ」

 

 イッセーが隙を突くように少年神父の顔面に左拳を食い込ませるよう思いっきり殴り、そのまま後方へ大きく倒れ込んだ。

 

「くそっ、防がれたか。甚振ろうと考えてた松田と元浜の二人分を込めたんだが、もう一発追加しとくか」

 

 残念そうに呟くイッセーは、殴った左拳を右手で摩っていた。それもその筈。

 

 あの少年神父は咄嗟にイッセーの攻撃を防ぐように、持っていた光の剣の柄を楯にして威力を殺したからだ。硬い感触が当たった為に、イッセーは少し悔しそうな顔をしている。

 

 加えて気絶させるまでの威力に至らなかった為、少年神父はよろよろと立ち上がって口からペッと血を床へ吐き出す。

 

 因みに奴の右頬は完全に膨れ上がっていて、剣の柄も(ひび)だらけな崩壊一歩手前状態だった。

 

「……んー。……あらら、クソ人間に殴られたうえ、訳わからんこと言われてますよ、俺ちゃんってば……。――けんなよ」

 

 少年神父は突然怒声を張り上げた。

 

「ふざけんなよっ!! クソがぁぁぁぁっ! 何、悪魔と手を組んだクソ人間の分際でチョーシこいてんだよぉぉぉっ! 殺す! 絶対にだ! ぶち殺す! 徹底的に切り刻みまくって――」

 

「はいはい、落ち着きなさいフリード君」

 

 割って入るかのようにエリーが少年神父の隣に立って宥めるように言い放つ。

 

「悪いけどお姉さん、すっこんでてくれねぇか? 俺あのクソ人間を切り刻みたくて頭ん中が――」

 

「――聞こえなかったのかしら? 私は落ち着きなさいと言ったのよ」

 

「っ!」

 

 懐から新しい光の剣を取り出そうとする怒り爆発中の少年神父だったが、顔を顰めながら目を細めて低い声で言うエリーに冷や水を浴びるように動きを止めた。しかもかなりの殺気も含めて。

 

 少年神父に再び攻撃を仕掛けようと思っていたイッセーも思わず動きを止めていた。

 

「フリード君、言っちゃ悪いけど今の君じゃイッセー君だけじゃなく、そこでコッソリと光の剣を展開してるダーリンの相手にもならないわ」

 

 ………気付いていたか。密かに奴等を包囲するように光の剣を十本以上形成してたが、エリーにはバレバレのようだ。

 

「チッ」

 

 

 パチンッ!

 

 

 仕掛けが気付かれた以上、俺は舌打ちをしながら指を鳴らす。その直後に光の剣の穂先が少年神父とエリーに狙いを付け、そのまま二人目掛けて突進していく。

 

「ゲッ!」

 

「あら怖い怖い♪」

 

 突然の強襲に少年神父は驚くが、エリーは艶やかな笑みを浮かべながら少年神父の肩に手を置き、そのまま奴と一緒に姿を消す。

 

 二人が消えても光の剣はそのまま突進して壁や地面に突き刺さると、目的を達成したように霧散していく。

 

「フフフフ、残念でした♪」

 

「き、危機一髪でございやしたね……」

 

 背後からエリーと少年神父の声が聞こえると、既に感知していた俺とイッセーは驚く事なく振り返り、聖堂の出入り口で二人が立っていた。

 

「これで理解したかしら、フリード君? 君はもう退散なさい。あの二人と戦う際は、魔剣か聖剣クラスの武器でも使わない限り勝てないわよ。それでも戦うと言うのならもう止めはしないけど、どうする?」

 

「………………チッ。ムカつくけど確かにお姉さんの言うとおりっすね」

 

 さっきまで怒っていた少年神父は冷静な顔で状況を理解し武器を仕舞い、エリーから少し距離を取った。

 

「おい。そこのクソ人間……イッセーくんだっけ? 俺、人間のおまえにフォーリンラブしちゃったよ。絶対に殺すから。絶対だよ? 俺の顔を二度殴って調子ぶっこいてるテメェみたいなクソ人間は絶対に許さないよ? んじゃ、はいチャラバ」

 

 そう言いながら少年神父は懐から丸い物体を取り出して、それを床に叩き付けた。

 

 その瞬間、それから眩い光が発すると俺とイッセーは思わず目を閉じる。そして目を開けると、少年神父は僅か数秒で姿を消していた。

 

「あのクソ神父、まだ殴り足りないってのに逃げやがったか……!」

 

「放っておけ。今はあんなザコなんか如何でも良い」

 

 少しばかり悔しそうに言うイッセーだったが、俺はすぐに斬って捨てるように言い放ちながらエリーの方へ視線を向ける。

 

 さて、足枷とも言える少年神父がいなくなったアイツがこの後どう動くかだな。

 

 取り敢えず今は一刻も早くアルジェントを救わなければいけないから、奴がどう動いても対処出来るよう俺が引き止めておくとしよう。

 

「イッセー、お前は先にアルジェントがいる祭儀場に行け」

 

 

 ドンッ!

 

 

 そう言って俺は開いた片手を祭壇に向けて衝撃波を放つ。

 

 祭壇が吹っ飛ぶと、そこには地下へ行く為の隠し階段が現れる。

 

「良いのか兄貴? ソイツを相手するんなら俺も一緒に戦った方が……」

 

「今はアルジェントの救出が優先だ。もし儀式が始まったら手遅れになってしまうぞ」

 

「っ!」

 

 イッセーが儀式の末路を思い出すと、エリーはクスクスと笑い始める。

 

「何が可笑しい?」

 

「その儀式だけど、実はもう始まっちゃってるのよね~」

 

「何だと!?」

 

 エリーの発言に俺だけでなくイッセーも驚愕していた。

 

「バカな! あの儀式を始めるにはまだ時間が……っ。まさか貴様」

 

「正解♪ 儀式の時間を早める為に私がちょっと手を施したの。だから後もう少しで儀式が終わるわ」

 

「イッセー!! 今すぐ全速力で祭儀場に行け!!」

 

「ちくしょうがぁ~~~!!!」

 

 焦るように俺が大声で指示を出すと、さっきまで躊躇っていたイッセーが凄まじいスピードを出して地下へと向かった。

 

「フフフ♪ 果たして間に合うかしらね~」

 

 してやったりと言うように笑みを浮かべるエリー。

 

 ………迂闊だった。コイツがいる時点で儀式がもう始まってる事に気付くべきだった……!

 

「イッセー君が間一髪でシスターちゃんを助けるか、あのおバカさんが先にシスターちゃんの神器(セイクリッド・ギア)を奪うか……どっちにしても私にとっては面白い事になるわね♪」

 

「………まさかとは思うがエリー、『面白そうだから』等と言う理由でレイナーレに協力したのか?」

 

「逆に訊くけど、私がどう言う女かダーリンは知ってる筈よね?」

 

「……………」

 

 …………そうだったな。コイツは自分にとって面白い事があれば、すぐに首を突っ込みたがる奴だった。

 

 自分より弱い存在には手を差し伸べるように助力するフリをして人形のように操り、逆に自分と同等もしくは強い存在がいたら俺みたいにちょっかいをかけようとする。

 

 いつもの俺なら悪趣味だと顔を顰めながら言うが、今回ばかりはそうならなかった。

 

 今の俺は少しばかりコイツのやってる事に頭に来てた。堕天使のレイナーレを助力してる事でなく、無関係な人間である松田と元浜を巻き込ませてるだけでなく、平然とアルジェントの命を奪おうとしてるエリーを。

 

「その顔を見た感じだと思い出したみたいね」

 

「ああ、思い出したよ。貴様が根っからの享楽主義者って事をな!」

 

 俺が声を荒げながら、両手から光の剣を形成すると同時に全力の殺気をエリーにぶつける。

 

「あんっ! 良いわぁ、その殺気……ゾクゾクしちゃう♪」

 

 俺の殺気にエリーは怯むどころか快感を味わうかのように身体を震わせ、両手を交差して肩を掴みながら顔を赤らめ笑みを浮かべていた。

 

 人が本気で怒ってるってのにこの女は……相変わらずふざけた奴だな。

 

 『聖書の神(わたし)』だった頃の俺なら顔を顰める程度だが、人間の身となった今ではコイツのやる事は酷く癇に障る。ここまで俺を怒らせたのはコイツが初めてだ。

 

「悪いがエリー、今回ばかりは貴様を……この場で滅してやる」

 

「あらあら、どうやら本気で私を殺す気のようね。だったら……この姿のままでダーリンと戦うのは失礼に当たるから、私も久しぶりに本気でやらせてもらうわ」

 

 そう言いながらエリーはさっきまで纏っていた服が破れて全裸になる。

 

 そして新たな服が形成されていくように、胸元が大きく肌蹴たハイレグ状の黒いレオタードを纏い、下半身は赤いタイツとヒールの聞いたハーフブーツを着用する。最後には奴の頭部の左右に二本の角、背中からは一対の悪魔の翼、腰辺りから尻尾が出てきた。

 

 エリーの正体は夢魔(サキュバス)。眠っている男性に淫らな行為をさせる夢を見せ、精気を根こそぎ吸い取って殺すと言う最悪な悪魔。男にとっては嬉しい存在であると同時に命を奪われる恐ろしい存在でもある。

 

 だがコイツはそこら辺のサキュバスとは違う。享楽主義者だが、戦闘でも快楽を得ようとする戦闘(バトル)好きでもあった。それ故にコイツは俺にちょっかいを掛けるだけじゃなく、戦いも仕掛けてくる。

 

「さぁダーリン、私が勝ったらすぐに私の夫になってもらうわよ。その時は閨でジックリと……ウフフフ、考えるだけで身体が疼いてくるわ♪」

 

「丁重にお断りさせてもらう。それに夫と言っても、貴様からすれば精気を吸い取る為の食い物に過ぎないだけだろうが」

 

「失礼ね。私は本当にダーリンを愛してるのよ。もう他の男なんかの精気は二度と吸わない、貴方だけを愛するって誓ったんだから」

 

「悪いが他を当たってくれ。俺は貴様のような女は……願い下げだ!!」

 

 

 ザンッ!

 

 

 一瞬で突進して行く俺は両手に持っている光の剣で攻撃すると、エリーは即座に飛翔して回避する。

 

「そこまで私を拒絶する男はダーリンが初めてよ!」

 

 そう言ってエリーは片手を前に出すと大きめな魔法陣が現れた。そこからは夥しい数の赤い魔力弾が出てきて、俺目掛けて狙ってくる。

 

「ッ!」

 

 

 ドドドドドドドォンッ!!!

 

 

 魔力弾から回避する為に俺が躱すと、地面に当たったエリーの魔力弾は複数の穴を開けた。

 

 てっきり爆発すると思ってたが、どうやらアレは貫通するだけの魔力弾か。

 

「アハハハッ! どこまで避けきれるかしら!?」

 

 躱した俺を再び狙うように魔力弾を当てようとするエリー。

 

「嘗めるなっ!」 

 

 迫ってくる無数の魔力弾に俺は動かず、両方の光の剣を交差し思いっきり振った。そこからはエックス型の様に交差した光の斬撃が出て、迫ってくる魔力弾を全て弾き、そのままエリーに向かって行く。

 

「っ! まずいっ!」

 

 光の斬撃で魔力弾が弾かれてる事により、それが無意味と分かったエリーは撃つのを止めて舌打ちしながら素早く横へ回避する。

 

 そして光の斬撃は聖堂の屋根を突っ切って、大きな空洞が出来てしまい、そこから月明かりの夜空が見えた。

 

「チッ、避けたか……」

 

「ふうっ……。今のはちょっと危なかったわ。いくら私でも、アレをまともに食らったら唯じゃ済まないわね。流石はダーリン、あの状況で即座に反撃するなんて恐れ入ったわ」

 

「お前に褒められても嬉しくねぇよ」

 

 躱されたなら尚更な、と付け加える俺は再び構える。

 

 エリーと戦闘を始めてまだ1分も経ってないが、それでも聖堂の周囲は結構荒れてしまった。エリーの無数の魔力弾、俺の光の斬撃によって。

 

 戦闘が終わった後は絶対に俺の方で修繕しようと内心考えてると、さっきまで飛んでいたエリーが地面に着地する。

 

「やっぱりダーリン相手だと遠距離戦は止めた方が良いわね。接近戦でやる事にするわ。こう見えて私、接近戦も結構得意なのよねぇ」

 

「ほう? 良い度胸だ。ならばその判断が間違いだった事を後悔させてやる」

 

 接近戦は俺も大得意だ。

 

 アニメのドラグ・ソボールを見た影響の所為か、接近戦もかなり好きになってしまったんだよな。

 

 人間は色々と知的好奇心が高く、その興味対象にどんどん嵌って行くと言うが、正にその通りだった。

 

 昔の『聖書の神(わたし)』では考えられない事だったが、それはそれで悪くないと思っている。好きな物に嵌っていくのは人間として当然の行為だからな。

 

「フフッ、いっそ接近戦でダーリンを押し倒して、そのまま貞操を頂くのも悪くないかも♪」

 

「………さっきから思ってたが、貴様いい加減にTPOを弁えろ」

 

「生憎、そんな物は私にとって関係無いわ。何処であろうとその場ですぐ楽しむのが、私のポリシーだから」

 

 嫌なポリシーだ。

 

 エリーの考えに顔を顰めてると、祭儀場に続く地下の隠し階段から誰かが上がってくる音が聞こえた。

 

 その音を聞いた俺とエリーが思わず視線を向けると、そこにはアルジェントをお姫様抱っこしたイッセーが現れた。

 

「はあっ! はあっ! はあっ!」

 

「イッセーか。アルジェントは無事………」

 

 問おうとする俺だったが途中で言葉を噤んでしまった。

 

 何故なら彼女は――

 

「あらあら、どうやら間に合わなかったみたいね。今は辛うじて生きてるみたいだけど、死ぬ一歩手前ってところかしら?」

 

 エリーの言うとおり、神器(セイクリッド・ギア)を抜かれてるアルジェントは死に瀕していた。

 

「兄貴ぃ! アーシアを、アーシアを助けてくれぇ!!」

 

 涙を流しながら悲痛な叫びをするイッセーが縋るかのように俺に近づきながら助けを求めてきた。

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