ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第二十五話

「ま、薄汚い欲望を持った堕天使に綺麗な花火なんて期待してなかったけど……あら?」

 

 愉快な笑みを浮かべてるエリーだったが、レイナーレが爆発した位置で淡い緑色の光が浮かんでいた。それはそのまま引き寄せられるように落下していき、エリーの掌の上で止まった。

 

「これが今回話題となったシスターちゃんの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』ね。こんなの取り込んだだけで至高の堕天使になれるだけじゃなく、ダーリン達に勝てると本気で思ってたなんて……救いようのないおバカでお目出度い考えを持ってたのね、あの堕天使は。フフフフ………アハハハハハハハ!」

 

 『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を見ながら死んだレイナーレを思いっきり嘲笑するエリー。

 

 既に死んだに対して悪く言うのはどうかと思われるが、正直言って俺もエリーと同じ事を考えてた。

 

神器(セイクリッド・ギア)を奪う為に外道な手を使い、更にはお目出度い事を考えていたレイナーレにハッキリ言って同情の余地は無い。奴はそれだけの事を仕出かしたからな。

 

 本当ならグレモリーに引き渡すつもりだったが、首謀者の堕天使レイナーレが神器(セイクリッド・ギア)を取り込んでしまってエリーの手で始末された以上、今回の依頼はもう失敗だ。彼女には後ほどお詫びをしないとな。

 

 一先ず今はエリーが持ってる淡い緑色の光――『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を取り返す事が先決だったので――

 

「イッセー! エリーの手に持ってるのがアルジェントの神器(セイクリッド・ギア)だ!」

 

「っ! 悪いがソレは返してもらうぞぉぉ~~!!」

 

 イッセーは俺の言った事が分かったのか、すぐにオーラを全開にして一瞬でエリーに向かっていった。

 

 『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を眺めていたエリーはイッセーが振り翳して来る拳に気付き、すぐさま躱して距離を取った。

 

「ちょっとちょっとイッセー君、女性に襲い掛かるなんて失礼にも程があるわよ。まぁダーリンだったらいつでもOKだけど」

 

「んな事どうでもいいんだよ! さっさとソレを返しやがれ!」

 

 注意しながらも俺に色目を使ってくるエリーにイッセーは無視して返せと叫ぶ。

 

 本当なら俺もイッセーに加勢して神器(セイクリッド・ギア)を取り返したいところだが、アルジェントに『治癒の光』を使っているため無理だった。

 

 今の彼女に聖書の神(わたし)能力(ちから)を解除したら、辛うじて抑えてる衰弱が一気に進行してすぐに死んでしまう。それ故に俺は離れる事が出来ない。

 

「ん~、ダーリンは今シスターちゃんに付きっきりか……。そんな死に掛けの子に力を使うなんて……ダーリンってば人が良いわね」

 

「この子は保護するって決めたからな」

 

「出来ればその愛を私に向けて欲しいんだけどね」

 

「お断りだ。そんな事よりもイッセーの言うとおり、さっさとソレを返して貰いたいんだが」

 

 俺がエリーと話してもイッセーは動かなかった。いや、迂闊に動けないと言った方が正しいか。

 

 エリーは俺と会話をしながらもイッセーの警戒を緩めていない。これが格下の相手なら大して気に留めていないだろうが、今代赤龍帝である(イッセー)相手に一切油断はしてないようだ。

 

「嫌だ、って言ったらどうする?」

 

「………ドライグ、今のイッセーにアレ(・・)の三倍は使用可能か?」

 

『残念ながら今の相棒では二倍が限界だ。まぁ取引をすればソレを使う事は可能だが』

 

「?」

 

 急にドライグに問う俺に、エリーは不審な顔をしてくる。イッセーも最初はエリーと同じ反応をしたが、ドライグの返答を聞いて意味が分かったようだ。

 

 やはり今のイッセーじゃ三倍は無理か。まぁ取り返すだけなら二倍でも大丈夫だろう。

 

「イッセー、アレの二倍を使ってエリーから――」

 

「何か嫌な予感がするから、もうコレは返しておくわ」

 

「「っ!」」

 

 俺の台詞を遮るかのようにエリーは持っていた『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』をイッセーにポイッと投げ渡した。

 

 余りにも意外な展開にポカンとした俺達だが、投げ渡されたイッセーはすぐに大事そうに受け取る。

 

「何のつもりだ、エリー?」

 

「言ったでしょう? 嫌な予感がするから返すって。それに私は赤龍帝のイッセー君と戦う気なんて最初から無いのよ。加えて、これ以上のお仕事は無理そうだから退散させてもらうわ」

 

 ……………待て、仕事だと?

 

 まさかエリーの奴、今回は享楽的な理由じゃなく、何か明確な目的があってレイナーレに接触したのか。

 

 アイツの言う仕事となると、恐らく誰かに依頼されたと思うが……。

 

「フフフ♪ 流石はダーリン。感付くのが早いわね~。このままダーリンに質問されたらポロッと喋っちゃうかもしれないから、バイバ~イ♪」

 

「っ! こら待てエリー! ………くそっ、逃げたか」

 

 俺の次に移る行動を見抜いたエリーはすぐに赤い魔法陣を展開して、俺とイッセーに笑顔で手を振りながら姿を消した。

 

 非常に気に食わんが、アイツもアイツで俺の事をよく知ってるからな。多分『愛するダーリンの考えはお見通し』とか言うだろうが。

 

 まぁ今はそんな事より――

 

「兄貴! 早くコレをアーシアに!!」

 

「分かった分かった。だからそんなに慌てるなって」

 

 アルジェントの神器(セイクリッド・ギア)の奪回成功と、エリーがこの場からいなくなったから、次の段階に移るとしよう。

 

 イッセーが急かすように『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を渡し、それを受け取る俺は一旦『治癒の光』を解除する。

 

「うっ……うう……」

 

 解除して包まれていた光が無くなった途端、さっきまで安らかに眠っていたアルジェントが苦しそうな表情になった。

 

 イッセーが睨んでくるが俺は気にせず、彼女の胸の上に『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を置き、ソレを両手で向けながらこう告げる。

 

「我、兵藤隆誠の名において命じる。『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』よ、いま再び、元来の所有者であるアーシア・アルジェントの元へ戻りたまえ」

 

 

 パァァァァァァッッ!

 

 

 オーラを送りながら詠唱を終えると、淡い緑色の光を発していた『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』が強い輝きを放ちながら、そのまま彼女の身体に入り込んでいく。

 

 神器(セイクリッド・ギア)が完全にアルジェントの中に入ったのを確認し、加えて苦しそうな表情が無くなったのも見た俺はオーラの波動を止めた。

 

「………はぁ」

 

「……な、なぁ兄貴、アーシアは……アーシアは、助かった……んだよな?」

 

 両手を下ろして溜息を吐いて目を瞑る俺を見たイッセーが、凄く不安な表情で途切れ途切れで訊いてくる。

 

「……………」

 

「お、おい待てよ兄貴! 何で何も言わないんだよ!? 助かったんだよな!?」

 

「ちょ、待てイッセー……!」

 

 無言になってた俺にイッセーが俺の両肩を掴んでガクガクと揺らしてると――

 

「あれ?」

 

「っ! アーシア!」

 

 瞼を開けて声を出すアルジェントに反応したのか、すぐに俺から離れた。

 

 アルジェントが上半身を起こし、キョロキョロと見回した後、イッセーの姿を捉える。

 

「……イッセーさん?」

 

「ああ、俺だよ、アーシアッ!」

 

「きゃっ! い、イッセーさんっ!?」

 

 イッセーに突然抱きしめられたアルジェントがすぐに顔を赤くして戸惑った。

 

「良かった、本当に良かった……! 俺、俺……アーシアがいなくなっちゃうんじゃないかと……!」

 

「…………大丈夫です。私はイッセーさんの傍にいますから」

 

 子供のように泣きじゃくるイッセーの声を聞いたアルジェントは、さっきまで顔を赤らめて戸惑っていた表情から一変して、優しい笑みを浮かべながらイッセーの背中に両手を回す。

 

「ゴメンなアーシア、俺が不甲斐ないばっかりにこんな死にそうな目に遭わせちまって……ホントにゴメンな」

 

「……もう、そんなに泣かないで下さい。私はもう大丈夫ですから」

 

(やれやれ、何か俺がお邪魔虫みたいだな)

 

 折角アルジェントを助けたのに存外な扱いをされたイッセーに文句を言いたかったが、今の状況でソレが出来なかった。

 

 完全に相思相愛のカップルな光景で、松田と元浜が見たら絶対嫉妬に狂ってイッセーに襲い掛かると確信を持って断言する。

 

 因みにもしこの場でイッセーが『結婚を前提に俺と付き合ってくれ』なんて言ったら、多分アルジェントは一発OK出すと思う。

 

 今のアルジェントはイッセーに対して好意を抱いてる感じがするからな。勿論その好意はLikeじゃなくてLoveな方で。

 

 そう思ってると突然、聖堂出入り口にある扉が開いた。それに気付いた俺、そして抱き合っているイッセーとアルジェントが振り向く。

 

「遅れてすみません先輩! 加勢しに………え、えっと」

 

 勢い良く入ってきた木場だったが、抱き合ってるイッセーとアルジェントを見て間がありながら何とも言えない表情となる。

 

「あらあら、これは一体どう言う事なんでしょうか?」

 

「…………弟の兵藤先輩、女性に抱きつくのはどうかと思います」

 

「………お邪魔だったかしら?」

 

 その後、木場に続いて姫島と塔城、そしてグレモリーが現れた。

 

 それと俺の気のせいか、グレモリーがイッセーを……いや、イッセーに抱きしめられてるアルジェントを睨むように見ていた。

 

 まぁ取り敢えず俺の方から彼女達に状況を説明するとしますか。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 場所は変わって、此処はとある冥界の豪邸。

 

「どう言う事だ貴様!? 何故アーシア・アルジェントの死体を持ち帰らなかった!?」

 

「しょうがないじゃない。持ち帰ろうにも、それが出来る状況じゃなかったんだから」

 

 その一室に椅子に座ってる美青年が、目の前に立ってるサキュバス――エリーに向かって怒鳴っていた。

 

 怒鳴られたエリーは面倒臭そうな顔で答えると、美青年は益々激昂しながらも何とか抑えようとする。

 

「僕は命じた筈だぞ? 儀式を確実に成功させる為に堕天使に協力させ、その後はアーシア・アルジェントの死体と神器(セイクリッド・ギア)の回収ついでに堕天使を口封じしておけと」

 

「回収は出来なかったけど、堕天使の口封じはしたわよ」

 

 

 ドンッ!

 

 

「回収出来なければ意味が無いじゃないか! この役立たずが!」

 

 もう抑える事が出来なくなった美青年は近くにあるテーブルを叩きつける。

 

 完全に憤慨してる美青年にエリーは全く怯える顔を見せない。それどころか溜息を吐きながら理由を説明しようとする。

 

「現場を見てない貴方は知らないでしょうけど、あの場には私と互角に戦える相手が二人の男がいたのよ。そんな二人相手にシスターちゃんの死体回収なんて出来るわけ無いじゃない」

 

「相手が男なら貴様が得意な魅惑(チャーム)を使えば良かっただろう! そんな判断も出来なかったのか!?」

 

「それが通用出来る相手だったら、とっくに使ってるわよ」

 

 尤もダーリンに使っても効果が無いからこそ愛しているんだけど、とエリーは内心考えながら無理だと答える。

 

 サキュバスのエリーにとって、自身が得意として使ってる魅惑(チャーム)で簡単に引っ掛かる人間の男は今迄つまらない存在だと思っていた。それどころか精気を吸い取るだけの家畜程度としか見てなかった。隆誠に会う前までは。

 

 以前彼女は偶然隆誠と出会って、いつものように精気を奪おうと魅惑(チャーム)を使っていた。隆誠が魅惑(チャーム)を簡単に跳ね除けるどころか、サキュバスの自分を撃退する予想外な事態が起き、初めての敗北に彼女は呆然としながらショックを受けた。

 

 今まで自分の魅惑(チャーム)に引っ掛からない男はいない筈なのにと思いながら、エリーは敗北感を抱くよりも隆誠に興味を抱き始めてきた。そして何度も会う度に撃退されては、彼女は兵藤隆誠と言う人間の男に完全に惚れてしまった。一時はもう隆誠の事しか考えられないくらい愛してしまうほどに。

 

 サキュバスである自分を簡単に拒絶しただけでなく、撃退された人間の男は兵藤隆誠が初めてであった為に、エリーは彼を自分の愛する夫にしようと決めた。そしてもう隆誠以外の男の精気は吸わないと誓うほどに。尤も、エリーの想いはあくまで片思いに過ぎず、隆誠はエリーに恋愛感情は一切無く邪魔する敵としか見てないが。

 

「はっ! サキュバスの中で抜きん出て戦いを好む貴様が、薄汚い人間相手に梃子摺るとは堕ちたものだ」

 

「………何ですって?」

 

 美青年の台詞を聞いたエリーは、さっきまで面倒そうな顔から一変して顔を顰めながら声を低くした。それに全く気付いてない美青年は続けて言う。

 

「事実だろう。人間と言う下等生物如きに梃子摺る貴様が他の悪魔達に知られたら僕と同じ事をガッ!!」

 

「お坊ちゃん、余り調子に乗らないでもらえるかしら?」

 

 不愉快と言わんばかりに顔を顰めて相手の首を片手で掴むエリー。突然の行動に美青年は苦しそうな表情をしてもがき始める。

 

「あ、が……!」

 

「先に言っておくけど、その下等生物の男二人が最上級悪魔クラスの私と互角に戦えるって事は即ち、未熟な上級悪魔の貴方より強いって意味してるのよ。仮にもしあの場で無理矢理にでもシスターちゃんの死体を回収なんてしたら、色々と不味い事になるわ。その二人の内の一人は色々と勘が鋭いから私を追跡する為に、駒王町で領主をしているリアス・グレモリーに協力を求めて調べようとすると思うわよ。例えば……私を使ってまで何が何でもシスターを回収しようとする酔狂な悪魔がいないか、ってね」

 

「っ!?」

 

「そんな事態になってしまったら、いずれ私が貴方と繋がってる事がバレるだけじゃなく、貴方自身も唯じゃ済まされないわ。特にもう一人の男は貴方と同じくシスターちゃんにゾッコンだから、冥界の悪魔たち全員を敵に回してでも殺すと思うわよ。何しろ彼は今代の赤龍帝だし」

 

「な、せ、赤龍帝……だと?」

 

「そうよぉ、お坊ちゃん。もし今の貴方が全力の赤龍帝と戦ったら確実に負けて殺されるのがオチね。それだけ力の差があり過ぎるって事なのよ。そしてもう一人の男は、その赤龍帝より更に強いって訳。いくら私でも、そんな二人相手にシスターちゃんの死体を回収して逃走するなんて無理よ。理解出来たかしら?」

 

 そう言ってエリーは美青年の首を掴んでる手を放す。

 

「ゴホッ! ゴホッ!」

 

 やっと解放された美青年は掴まれていた首を手で摩りながら咳き込んでいるが、エリーは気にしてない様に言葉を続ける。

 

「これでも私は雇い主である貴方をそれなりに気を配った方なのよ。貴方が裏で糸を引いている事を向こうに悟らせない為に、レイナーレを殺してさっさと退散したんだから」

 

 エリーは真実だけしか言ってないように答えてるが、若干嘘が混じっていた。隆誠に態と別の目的があった事を口にして退散したがのだが、それを目の前にいる美青年に敢えて教えなかった。言ったら言ったでまた面倒な事になるからと。

 

 いくら雇われているのが名門貴族の次期当主と言っても、戦いと言うものを全く理解してない世間知らずな我侭お坊ちゃんに役立たず扱いされるのが我慢出来なかった。特に自分より実力が劣り、首を擦って咳き込んでる目の前の弱者には。

 

「それじゃあ、私の報告は以上だから失礼させてもらうわ」

 

 言いたい事を全て言い終えたエリーは未だ苦しそうにしてる美青年の状態を気にせず、魔法陣を展開して姿を消そうとする。

 

「はぁっ、はぁっ………あの恩知らずな阿婆擦れサキュバスめ……! 誰のお蔭で身を潜めることが出来てると思ってるんだ……!」

 

 姿が消えたエリーに美青年は忌々しげに歯軋りする。

 

 あそこまで無礼な態度を取って自由気ままに振るうエリーに、美青年はすぐにでも殺したいのが本音だった。けれど美青年にはそれを実行するだけの度胸が無い。

 

 エリーは最上級悪魔クラスの実力を持っているので、下手に手を下そうとしたら自分が殺されてしまうのがオチだから。

 

「………まぁ良い。機が熟してシャルバからオーフィスの蛇を貰い、新たな力を得たその時は必ずこの手で殺してやる……!」




次回で原作一巻終了……と言う流れに出来たら良いなぁ~。と思ってます。
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