『オキナイト ダメダゼ! キアイヲ イレロ!』
………女子のボイス目覚まし時計に起こされて、俺は布団から身を起こした。そして隣のベッドで寝ていたイッセーも、その目覚まし時計に起こされて身を起こしている。
何でイッセーと一緒なのかと言うと、俺は昨日と同じくイッセーの部屋で寝ていたからだ。理由は簡単。昨夜救ったアーシア・アルジェントが俺の部屋で寝ているので、男の俺は必然的に弟の部屋で過ごす事になるって訳だ。
そして今回の起床はいつもより一時間も早い。当然これも理由がある。今日は昨夜の事もあって、早めにオカルト研究部の部室へ向かわなければいけない。
そして俺とイッセーは予め用意していた制服の袖に腕を通し部屋を出ると、いつの間にか起きていたアルジェントを連れて、そのまま学校へと向かった。
――――――――――
「いらっしゃい三人とも、時間通りね」
オカルト研究部の部室に辿り着くと、部長のグレモリーしかいなかった。
因みに朝早くに来た為、まだ学校は始まっていない。
グレモリーから翌日の朝に部室へ来るようにって昨夜言われたから、朝早くから此処に来た。
俺達が来たのを確認したグレモリーはソファーに座り、優雅に紅茶を飲んでいる。
「おはようさん、グレモリー」
「お、おはようございます、リアス先輩」
「え、えっと……お、おはよう、ございます」
「ええ、おはよう。アーシア、って言ったかしら? 別にそんなに怖がらなくても何もしないから安心して」
「は、はいぃ……」
何もしないと言ってるグレモリーだが、少し怖いみたいな感じでイッセーの腕に引っ付いているアルジェントを一瞬睨んでいたのは気のせいだろうか。
そういえば昨日から疑問に思ってたことだが、何かグレモリーはイッセーに対して優しい笑みを浮かべたり色目を使ったりと不可解な事をしていたな。まるで恋する乙女みたいに。
そして感動シーンを見せていたイッセーがいつもの調子に戻って、グレモリーからの妙なアプローチにだらしない顔を見せていた。当然、それを見ていたアルジェントが少し頬を膨らませてイッセーの頬を抓っていたが。
まだ確定していないが、グレモリーは何らかの理由でイッセーに惹かれたのかもしれない。もしくは赤龍帝の力に魅了された、とかな。
「昨日の説明で一通り聞いたけど、随分と派手にやったわね。教会が全く使い物にならないほどに」
「だから俺が力を使って修繕したじゃないか。いくら使われてないとは言え、あそこまで酷くしたら申し訳ないし」
昨夜はイッセーとアルジェントを先に帰らせ、俺はグレモリーと眷属達に状況を説明しながら教会を修繕してた。
『治癒の光』を使った後での修繕は少し堪えたが、イッセーから力の譲渡をされてたから問題なく直せた。尤も、直したのは聖堂だけで地下にあった怪しげな祭儀場までは手を加えてないが。あと俺が力を使って修繕してたのを見てたグレモリー達は不思議そうに俺を見ていたけど。
「まぁ、そこから先は私がどうこう言うつもりは無いわ。あと他に……堕天使レイナーレが部下に裏切られて殺された件だけど」
「それに関しちゃすまない。本当ならあの女堕天使をグレモリーに引き渡す予定だったんだが、向こうが予想外な展開をしてくれてな」
エリー曰く『花火』にされて木っ端微塵となってしまい、イッセーが毟り取った女堕天使の黒い羽しか渡せなかった。
アレじゃ大した証拠にはならないが、一応この町に堕天使が潜んでいたと言う証明にはなったので、結果的に依頼は一応成功と言う形となった。
まぁどの道『
「祐斗が見た銀髪の女の事ね。まさか瀕死だったとは言え、堕天使を一瞬で殺せるほどの実力者の人間が貴方たち以外にもいたなんて驚いたわ。しかも貴方たちや悪魔の私たちから逃げられる程の実力も持っているなんてね」
「………ま、人間の中にもそれだけ強い奴がいるって事だ」
冥界に属するサキュバスのエリーがレイナーレを殺した事を敢えて教えなかった。
アイツはあれでも最上級悪魔クラスの実力がある上に、現在冥界でSSSランク認定の指名手配中となってる身だった。
あの享楽主義者が冥界で何かとんでもない事を仕出かしたのか、それとも何か特別な事情があって指名手配となったのかは知らないが、普段奴に狙われ傍迷惑な事をされてる俺としては如何でも良かった。
んで、そんな冥界で危険人物となってるサキュバスのエリーが実はレイナーレと通じていたなんてグレモリーに教えてしまったら、確実に面倒な事になってしまう。もし冥界にいる現魔王を除いた上層部の悪魔達にでも知られたら、必ず戦争の火種をばら撒くだろう。特に冥界の隅に追いやられてる旧魔王派の連中がな。
だから俺はグレモリーが三大勢力の戦争再開となる切欠を作って欲しくないので、敢えて嘘を吐いた。グレモリーの性格を考えると、自分の所為で戦争が再び始まってしまったと後悔すると思う。俺としてはそうなって欲しくないからな。
「それはそうと今回の依頼の件についての話をしたいんだが、良いかな?」
「ああ、そうだったわね」
ソファーに座るよう促すグレモリーに、俺とイッセーは向かいのソファーに腰を下ろすがアルジェントはその場から動かなかった。
「? アーシアは座んないのか?」
動かないアルジェントを見たイッセーが問うが、彼女は首を横に振った。
「いえ、私は此処で良いので気にしないで下さい」
「……そっか」
立ったままで良いと言い返すアルジェントに、グレモリーは気にせず俺とイッセーに話しかける。
「今回は堕天使が死んでしまったけど、堕天使がいたと言う証拠があったから取り敢えず今回の依頼は成功ね」
「それはありがたい。身柄を引き渡す事が出来なかったから、てっきり文句を言った後に今度は何かしらの要求をしてくるかと思っていたんだが」
「失礼ね。私はそこまで身勝手な悪魔じゃないわよ。第一私の眷属である小猫を助けてくれた貴方たちに、そんな恩知らずな事するわけ無いじゃない」
心外だと言わんばかりに端整な顔を顰めるグレモリーに、俺は苦笑しながら悪かったと謝罪する。
「話には聞いてたがアンタ……グレモリー家は本当に律儀な悪魔だな」
「当然よ。私は恩を仇で返すなんて言う恥知らずな真似はしないわ。グレモリー家の名にかけてね」
身勝手な事をする悪魔に聞かせてやりたい言葉だ。特に権力を持った傲慢な悪魔共に。
「そこまではっきり答えれるとなると、俺達はもう充分に信用出来る人間だと思って良いのか?」
「ええ、そちらが裏切るような真似をしない限りね」
「ソレは絶対無いから安心してくれ」
まぁ一先ずコレで一安心と言う事でめでたしめでたし――
「但し、今後の事もあるから、貴方たち兄弟はオカルト研究部に入部してもらうわよ」
――でもないようだ。
グレモリーの発言にイッセーやアルジェントも驚いた顔をしてるし。
「ちょっとちょっとグレモリーさん、ここまで話を進めといてそれはないと思うんですけど? いきなり入部と言う名の隷属だなんて」
「誰もそこまで言ってないわよ。入部と言っても形式上で束縛するような事じゃないわ。ただ貴方たちみたいな強い人間が学園にいると分かった以上、領主である私としては今まで通りそのまま放っておく訳にはいかないのよ。だからその措置として二人には入部してもらうって事にしたの。安心して。さっきも言ったけど入部はあくまで形に過ぎないから、今まで通りの生活は約束するわ。グレモリー家の名にかけてね」
……………一応筋が通った説明だな。
確かに駒王町の領主であるグレモリーが俺達の存在を知っておきながらも放置していたら、冥界にいる上層部の悪魔達から叱責される恐れがあるかもしれない。だからそれを回避する為に、今まで通りの生活をさせる条件として自分達の関係者にしてしまおうって寸法か。
まぁこの町にいる以上は何れにせよグレモリーにバレてしまうと思っていたから、ここら辺が潮時かもしれないな。向こうが手を打ったからには逆らわず入部するとしますか。
それにグレモリーは他の悪魔と違って信用出来るし、もしかしたらコイツの兄である魔王サーゼクス・ルシファーとも接触出来る可能性もある。サーゼクスは魔王でも無駄な争いを好まない穏健派で話が通じる相手だから、状況次第ではパイプを作る事が出来るかもしれない。案外グレモリーの関係者になるのは悪くないな。
「………OK。アンタが出来る限り妥協しているってのが良く分かった。こっちもこっちでソレに応えないといけないな。アンタの言うとおり、オカルト研究部に入部するよ。イッセーはどうする?」
「まぁ、兄貴がそう言うなら俺は別に構わないが」
「ありがとう、二人とも」
俺とイッセーの了承にグレモリーはニコッと笑みを浮かべる。
「そうそう、昨日言いそびれてた報酬の要求を今しても良いか?」
「良いわ。何を求めるのかしら?」
「? 兄貴、報酬って何の話だ?」
ああ、そう言えばイッセーには教えてなかったな。昨日はアルジェントが攫われて色々と大変だったからすっかり忘れてた。
一先ず簡単に報酬の理由を教えてイッセーを納得させ、グレモリーに要求の対価を言おうとする。
「さて、俺達兄弟の要求だが……そこにいるシスターのアーシア・アルジェントをこの町に居住させて駒王学園に通わせて欲しい」
「……え?」
「「っ!」」
俺の要求にグレモリーは目を見開く。当然聞いていたイッセーだけでなくアルジェントも。
「彼女の居住と入学って……他には?」
「アルジェントは弟のイッセーと同い年だからクラスを一緒にさせて、あと俺達と同じくオカルト研究部にも入部させて欲しいんだが……出来るか?」
「それは別に構わないけど、でも……本当にそれだけで良いの?」
「ああ、俺等としてはアルジェントに健全な学生生活を過ごしてもらいたいからな」
「あ、あの、リューセーさん……」
「何だアルジェント? ひょっとして嫌だったか?」
「い、いえ! 私としては非常に嬉しい事ですけど、私なんかの為に何もそこまでしなくても」
「気にしない気にしない。君を家で保護すると決めた以上は、学校にも通ってもらわないといけないからな。それに……大好きなイッセーと一緒に学生生活を送りたいだろ?」
「はうっ!」
「っておい兄貴! い、いきなり何言ってやがんだ!?」
意味深な笑みを浮かべながら問いをする俺に、アルジェントだけじゃなくイッセーも顔を赤らめた。
アルジェントがああ言う反応をするって事は満更でも無さそうだ。良かった良かった。
「…………………」
おや? グレモリーが何やら面白く無さそうな顔をしてるな。やっぱりコイツ、イッセーに惹かれてるかもしれない。
そう思ってると、突然グレモリーがスクッと立ち上がる。
「ねぇ兵藤君、私から個人的なお願いがあるのだけど、良いかしら? 勿論強制的なお願いじゃないから安心して」
「? お願いって何だ?」
「それはね――」
そう言いながらグレモリーはイッセーに近づいてスッと優しく抱きしめ、一誠の額にキスをしてこう言った。
「貴方の弟君――イッセー君を私の眷属にしても良いかしら? 私、この子を気に入っちゃったの♪」
「…………はい?」
「へ? は? え? え? え? ええええ~~~~~!!??」
「………い、イッセーさん?」
余りにも突然過ぎる展開にイッセーは戸惑いつつも、グレモリーの胸に顔を挟まれてだらしない顔をしながら叫ぶ。そしてさっきまで顔を赤らめていたアルジェントは急に冷めたかのように笑顔を引き攣らせていた。
かくして俺達兵藤兄弟+アーシア・アルジェントはオカルト研究部に入部し、アルジェントも駒王学園の入学が決まったのであった。
因みにこの後、グレモリーとアルジェントがちょっとしたイッセーを巡るプチ争いが始まったが、歓迎してくれているグレモリー眷属達と俺は面白そうに見守っていた。
良かったなイッセー、モテない男から急にモテる男にクラスチェンジして。兄は凄く嬉しいぞ。父さんや母さんが知ったら目が飛び出るほどに
取り敢えず原作一巻の内容はこれで終わりです。
次回は番外編を更新予定です。
番外編の内容としては、とある漢の娘+αを登場させようかと思ってます。