「なぁ兄貴。堕天使の夕麻ちゃんが襲ってきたのって、やっぱコレか?」
「それ以外何がある? つーか奴も言ってたろ。自身に宿す
町外れの公園にいる弟のイッセーを連れ帰った翌日。
俺はイッセーと一緒に学校へ向かっている。通学途中、イッセーが自身の左手を見せて聞いてくるから、俺はそうだと答える。
俺の返答を聞いたイッセーは左手を下に向けて、がっくしと首を垂れる。
「はぁ~、やっぱそうだよなぁ~。まともな恋愛を期待してたんだけどな~」
「相手が人外だからって、あんな歪んだ心を持った堕天使相手に、そんなもん求めんな。第一俺との遠征の際、あの堕天使以外にも狙われた事があるだろうが」
「そうはつっても、殆どの相手がむさ苦しいオッサンやムカつくイケメン野郎だったんだよ。逆に兄貴は美女や美少女ばっかで!」
………まぁ確かに、これまでイッセーが狙われた相手は中年男やイケメンの悪魔や堕天使ばかり狙われてたな。俺は俺で大半が女の悪魔や堕天使ばっかりで。
その時にイッセーは相手が男だった事もあってか、左手に封じられてる神器使ってボコボコにしてた。特に女を侍らせてたイケメン相手には容赦無いほどに。一応俺も相手が女だからって、襲いかかってくる相手には容赦せずに対処したけど。
「別に俺は好きで女に狙われてる訳じゃないんだがな」
「だったら今度狙われたら代わってくれよ! 折角編み出した技がここんところ全然使えず仕舞いなんだからさ!」
「はいはい、分かった分かった。だから顔近づけんな」
懇願してくるイッセーの顔を掴んで押し出す俺。こうでもしないとずっと懇願されるからな。
そんなやり取りをしてる最中、俺達の背後から声を掛けて来る二人の男子生徒が近づいてくる。
「よー、イッセー。何朝っぱらからリューセー先輩に絡んでんだ? リューセー先輩、おはようっす」
一人は丸刈り頭のイッセーの友人――松田だ。見た目は爽やかスポーツ少年だと思われるが、コイツはイッセーと同じ変態で「変態三人組」の一人だ。
イッセーから聞いた話だと、松田は中学時代に様々な記録を塗り替えた見た目通りのスポーツ万能少年だったが、入部していた部活が写真部らしい。しかも下心丸出しな理由で写真部に入ったと。
それ故に松田の別名は『エロ坊主』、もしくは『セクハラパパラッチ』と呼ばれている。
「またリューセー先輩に怒られたのか? おはようございます、リューセー先輩」
キザな仕草をする眼鏡を掛けたイッセーの二人目の友人――元浜だ。一見真面目そうな男子生徒に見えるが、コイツもイッセーと松田と同じ変態で「変態三人組」の一人。
何でも眼鏡を通して女子の体型、と言うよりスリーサイズを一瞬で数値化出来る能力を持っているそうだ。確かスカウターだったか? 「ドラグ・ソボール」であったスカウターとは違う能力だが、それはそれである意味凄いと俺は思わず感心してしまった。因みに元浜は眼鏡を取ると急激に戦闘力が無くなる特異体質でもあるらしい。
で、元浜の別名は『エロメガネ』、『スリーサイズスカウター』と呼ばれている。
イッセーに負けず劣らずの変態二人であると同時に、イッセーの悪友二人だ。故にコイツ等はイッセーと一緒にいて女子達から「変態三人組」と称されると同時に蔑まされている。
「おはよう、松田に元浜。俺に罰を与えられて大人しくしてるみたいだな、今のところは」
「な、何言ってんすか、リューセー先輩。俺ら、ちゃんと反省してますって」
「そ、そうです。俺達は心を改め健全な学生生活を送ろうと――」
何か妙に痛いところを突かれたような表情をしてる松田と元浜だったので、俺は思わずある事を言おうとする。
「ほう? じゃあ今から持ち物検査しても良いか? 健全な学生生活を送るんだから、勿論鞄の中には如何わしい物は入ってないよな?」
「っ! す、すんませんリューセー先輩。お、俺ら今日日直なんでお先に失礼します! さぁ急ごうか元浜君!」
「そ、そうだな松田君! そ、それではリューセー先輩、俺らはこれで!」
二人は慌てるように言った直後、素早く逃走した。「メ○ルス○イム」や「は○れメ○ル」みたいに。
「松田に元浜、アイツら兄貴にあれだけ伸されたのに全然懲りてねぇんだな。しょうがねぇ奴等だ」
「お前もその一人だろうが、愚弟よ」
呆れたように言い放つイッセーだが、空かさず突っ込みを入れる俺。お前もアイツ等と同じく懲りる気配全く見せないだろうが。
どうすればコイツ等は改めるのかねぇ。やっぱり此処は三人を――
「おい兄貴、いま俺達をオカマバーに放り込もうか、って考えてたろ?」
「……別に何にも」
チッ、勘の鋭い奴め。こう言う時だけ生存本能を如何なく発揮するんだな。
「まぁそれよりもイッセー、取り敢えずお前今すぐにアイツ等の後を追って注意しといてくれないか? もし教室で堂々とエロ本やエロDVDを出したら、今度は容赦なくオカマバーに放り込むからってな」
「……やっぱ考えてたんじゃねぇか。つーかそれって殆ど死刑宣告も同然だな」
「だから早く伝えといてくれないか? 俺としてはアイツ等が同性愛者になるのは見るに堪えないから」
「俺だってアイツ等がホモになるのは見たくねぇよ! と、取り敢えず兄貴、先に行って伝えとく!」
嫌な未来を想像したイッセーは逃走した松田と元浜の後を追い始めた。アイツの足の速さを考えると、数分後に追いついて伝言を伝えてくれるだろう。
さて、松田と元浜はイッセーに任せて、俺は俺でさっきから気配を消してコッチを見ている金髪君の対応でもするか。
「いつまでもコッチの様子ばかり伺ってないで、そろそろ普通に話しかけてきたらどうだい?」
「あはは、やっぱりバレちゃいましたか」
俺の呼びかけに反応した声の主は、気配を出すと同時に姿を現した。
「おはようございます、兵藤先輩。これでも完全に気配を消したつもりだったんですが」
「気配を消したところで、ずっとコッチを注視してたら意味が無いぞ。まだまだ甘いな、木場」
「これはまた随分と手厳しいですね」
俺の指摘を受けて苦笑する男子生徒――
木場が女子から人気あるイケメンの事もあって、駒王学園にいるモテない男子達からは敵視されている。勿論それは「変態三人組」の筆頭であるイッセーも含まれてるのは言うまでも無い。
俺も一応モテない男子の部類に入るが木場の事は毛嫌いしてなく、真面目で優しい後輩君と見て普通に接している。木場が支取と同じ悪魔であっても、な。尤も、コイツは支取のような純血種の悪魔じゃなく転生悪魔だがな。その二つの悪魔の違いについては、今此処で説明する物じゃないので後日語らせてもらう。
「まぁそれはそうと、俺に何か用でもあるのか?」
「ええ、まぁ。僕が入ってるオカルト研究部の旧校舎に、先輩が忍び込んでるって噂を聞きまして」
やはり支取だけじゃなく、オカルト研究部の方でも耳に入ってるみたいだな。まぁ当然か。勝手に自分の縄張りを忍び込まれたら、向こうとしちゃ黙ってられないだろう。特に木場が所属してるオカルト研究部の部長で支取と同じ純血種の紅髪悪魔――リアス・グレモリーさんは。因みに俺の同級生でもある。
彼女もシトリーと同様にソロモン七十二柱の内「グレモリー」家の悪魔で次期当主。しかも「
んで、その上級悪魔さんには眷属がいる。今俺の目の前にいる転生悪魔の木場や、同じオカルト研究部に入っている他二名の悪魔が。一人は省かせてもらうが、もう一人の眷属には昨日会った。イッセーが女堕天使とデートしてたのを監視していた小柄な銀髪のロリ少女――
「誰が流したのかは知らんが、俺は旧校舎に忍び込んじゃいないよ」
「ですが火の無い所に煙は立たない、とも言いますし」
否定しても未だに疑うように言ってくる木場。そう簡単に引いてくれそうには無いみたいだ。
「何だ木場? お前は先輩の俺が信じられないのか?」
「いえ、別にそう言う訳では……」
「信じてくれないんだったら、前に約束した明日の放課後に君と剣の手合わせは無しにさせてもらおうかな~?」
「ええ!?」
予想外な発言だと言わんばかりに驚く木場。
以前、俺は休日に木場が一人で剣の稽古をしてるところを偶然目撃した。それを見た俺は試しに木場と手合わせしたんだが、それが失敗だった。俺が隙を突いて勝ってしまった所為で、木場は何度も何度も俺に勝負を挑み続けた。結果は言うまでもなく木場の惨敗。その翌日に俺は木場に手合わせを申し込まれる日々が続く事になった。その時は適当な理由を言って断り続けたが全然折れてくれる様子が無い為、俺は誰にも教えないようにとの条件で明日の放課後に手合わせする予定だった。それをやっとの事で取り付けた約束を無かった事にされる木場にとって堪ったモンじゃない筈だ。
「そ、そんな困ります! やっと先輩と手合わせ出来るのに、それはいくらなんでも……!」
「じゃあもう噂の追及は止めてもらえるかな? 俺としてもこれ以上要らぬ疑いを掛けられたくないし」
「………わ、分かりました」
「なら結構」
手でポンポンと木場の肩を叩くと、木場は折れたようにがっくしと首を垂れる。
「で、ですが先輩、約束は守ってもらいますからね」
「そう念入りすんなって。ちゃんと君の相手をしてあげるから。なんなら夜まで付き合ってあげるよ。君の身体が持つまで、な」
「それは楽しみです」
そんな会話をしながら、俺は木場と一緒に学校へと向かって行った。
しかし此処で思わぬ噂が飛び交ってしまった。俺と木場の会話を聞いていた一部の女子達が変な想像をした為に、俺と木場が付き合ってると言うホモ疑惑の噂が流れたみたいだ。無論下らん噂を流した張本人達には、俺が制裁を下した。下らん事をする相手が男だろうと女だろうと容赦はしない性質なので。と言っても暴力じゃなくて、ちょっとしたOHANASHIをな。
そして放課後には――
「なぁ兄貴、何か女子達の間で兄貴と木場のホモ疑惑の噂が――」
「どうやらお前の夜の相手には筋骨隆々のオカマが必要みたいだ。ちょっと待ってろ、すぐに呼んでやるから」
「すんませんでした! どうかそれだけは勘弁して下さいお兄様!」
ふざけた事を言うイッセーにお仕置きをしてやろうと思ったが、プライドをかなぐり捨て速攻で俺に土下座してきた。