ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第三十一話

 その日の夜。

 

 俺は夜の旧校舎前で運動がてら木場の相手をしていた。

 

「隙ありっ!」

 

「んなもん無ぇよ」

 

 

 ドスッ!

 

 

「ぐっ!」

 

 木刀を振り翳して来る木場の攻撃をヒョイッと避けて、俺はすぐ片手に持っている木刀で胸部を軽く突いて吹っ飛ばす。

 

 吹っ飛ばされた木場はすぐに立ち上がって再び木刀を両手に持って構えようとする。

 

「ほう、随分タフになったな。前までは起き上がるのに少し時間が掛かったが」

 

「はぁっ、はぁっ……当然ですよ。この前の手合わせで、先輩にかなり痛め付けられましたからね」

 

「痛め付けたとは酷いな。俺は単にお前の隙を突いて攻撃しただけなのに」

 

 心外そうに言い返すが、木場は油断した様子を一切見せずに構えていた。

 

 因みに以前の土日休みに、リアスの許可を貰った俺は木場を連れて剣の手合わせをした。

 

 その時の木場の喜びようは半端なく、手合わせ当日は待ち合わせの一時間以上前に来ていた。尤も、その喜びの表情は俺の手合わせによって段々険しい表情になってしまったがな。

 

 木場は剣士の中でもかなり実力はあるが、それでも俺が本気を出すほどの相手じゃなかった、それ故にずっと手加減したまま相手をしていた。それでも時々驚かされる剣の技量に思わず少し本気を出した事があったが。

 

「まぁ、それでもめげずに最後までやったのは凄いよ。俺を段々嫌いな先輩になってきたと思いながらも、ちゃんと指摘部分を聞いて改善してるからな」

 

「嫌うだなんてとんでもないです。僕は寧ろ前以上に先輩を凄い人と尊敬しています」

 

 ………え? そうなの?

 

「手合わせしてる最中に顔を顰めて嫌悪感を増してたんじゃないのか?」

 

「あれは単に全然隙が無い先輩にどうやって攻撃を当てようかと必死に考えていただけですよ。以前と違って先輩は全く隙を見せないんですから」

 

 ………何だ、俺の思い過ごしだったのか。

 

 てっきりもう今後は部活で木場と顔を合わせる際、ずっと避けられるんじゃないかと思っていたが俺の杞憂だったみたいだ。

 

「まさか先輩、僕をそう言う目で見ていたんですか? だとしたら心外にも程があります」

 

 構えを解いた木場は明らかに不機嫌ですと言う様に顔を顰めていた。

 

 けれど顰めていながらも端整な顔が引き立っているとは、流石はイケメン君。

 

「悪かった悪かった。じゃあその失礼な態度を取ってしまった木場に侘びとして……面白い(もの)を見せてやろう」

 

「っ!」

 

 木刀を両手で持ち構えて少しばかり殺気を出す俺に、木場は驚愕する。

 

 理由は手合わせの際に、俺は木場と相手をしてても片手のみしか使ってなかったからだ。その為、両手に持ち構えている俺を見て木場が驚いた訳である。

 

 因みに今の俺の構え方は、木刀を頭の上で水平にした上段の構え。その構えを見た木場は何か嫌な予感がしたのか、一切見逃さないよう最大限に警戒しながら構えていた。

 

「木場、最後まで気を緩めるなよ? そのまま研ぎ澄ませてろ」

 

「…………………」

 

「良い子だ。じゃあ行くぞ。剣技……“(じゅう)()(せん)”!」

 

「っ!?」

 

 一瞬で木場の懐に詰めて剣を振り翳す俺を木場は受け止めようとするが――

 

「がはっ!」

 

 同時に真横に振る俺の攻撃(・・・・・・・・・・・・)を受け止められず、思いっきり脇腹に当たってしまい強めに吹っ飛び、近くにあった木と激突してしまった。

 

 やばっ! ちょっとやり過ぎた!

 

「お、おい木場! 大丈夫か!?」

 

 すぐ木場に駆け寄る俺だったが――

 

「りゅ、リューセーさん!? な、何をなさってるんですか!?」

 

「何だ兄貴、こんな真夜中に後輩苛めか?」

 

 チラシ配りを終えて戻ってきたアーシアとイッセーに目撃されると言う、最悪な場面となってしまった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「本当にすまなかった」

 

 イッセーと一緒にチラシ配りを終えたアーシアに木場の治療を頼んだ後、俺はすぐに謝った。

 

 因みに二人は先に部室に戻っていて、俺と木場は少し経って戻っている最中だ。

 

「僕は全然気にしてませんから、そんなに謝らなくても良いですよ。寧ろ勉強になりましたから」

 

 木場が爽やかに言ってくる。本当に気にしてない様に言ってる顔だ。

 

「そうか? 木場がそう言うんなら……。これでリアスや朱乃の小言が来たら、ちょっとばかし勘弁して欲しいな」

 

「………先輩、部長や朱乃さんには名前で呼んでるんですね」

 

「ん? ああ、二人から入部したなら名前で呼んでくれって言われてな。あと塔城からは俺とイッセーを名字で呼ぶと紛らわしいから、区別を付ける為にそれぞれ名前で呼んでるし」

 

「………………」

 

 突然話題を変えてくる木場に、俺は思ったことをすぐに答える。

 

 それを聞いた途端、木場が何やら少し面白く無さそうな顔をしていた。

 

「……でしたら、僕のことを祐斗って呼んでくれませんか? あと僕も先輩の事をリューセー先輩、弟君をイッセー君って呼ばせていただきます」

 

「ん? 別に構わないぞ。折角入部したんだから仲良くしないとな」

 

「ありがとうございます、リューセー先輩」

 

 木場、ではなく祐斗は随分嬉しそうだな。そんなに名前で呼ばれることが嬉しいんだろうか。

 

 そう考えていると、いつの間にか部室に着いたので中に入ろうとする。

 

「あらあら、お疲れさま。丁度お茶を淹れたところですのでどうぞ」

 

 出迎えたのは副部長の姫島朱乃だった。

 

「どうも」

 

「ありがとうございます、朱乃さん」

 

 淹れたばかりのお茶を差し出す朱乃に、俺と木場は礼を言いながら受け取り美味しく頂く。

 

 うん。相変わらず美味しいお茶だ。

 

「……鍛錬お疲れ様です、祐斗先輩、リューセー先輩」

 

 そう言ってくるのは小柄な一年生の塔城小猫だった。朱乃から用意されたお茶を飲みながら、自分で用意したお菓子を食べている。

 

 どうでも良いが小猫。入部して分かったんだが、お菓子を食べ過ぎなような気がするぞ。

 

 悪魔だからと言って、そんなに食べ過ぎると身体の成長が――

 

「……リューセー先輩、何か失礼な事を考えてませんか?」

 

 おお、鋭い。大変失礼しました。

 

 彼女のツッコミを無視するようにお茶を飲んでると、イッセーが帰還の報告をしていた。だが豪華な椅子に座ってるリアスはイッセーの話を聞いてないのか、あらぬ方向を見つめながら物思いにふけ、更には深い溜息も吐いていた。

 

「部長、聞いてますか? 部長!」

 

 リアスが全く聞いて無い事にイッセーが少し声を大きめにして呼ぶと、リアスは漸く気付いたのかハッと我に返った様子を見せた。

 

「ご、ごめんなさい。少しボーっとしていたわ。ご苦労様、イッセー、アーシア。ああ、リューセーと祐斗も鍛錬終わったのね」

 

 何だろうか。リアスはここ最近考え込んでる事が多くなったような気がする。

 

 そう言えばこの前やった家族会議から、リアスの様子が少し変だったな。俺が話しかけても、イッセーと同じくあんな風に全く聞いてない様子を見せてる。おまけに何度も溜息をする始末だ。

 

 普段はいつも優雅に振舞うあのお嬢様が、あそこまで変わった様子を見せるとなれば、何か込み入った事情があるかもしれないな。ソレが何なのかは知らないが。

 

 そう考えながらお茶を飲んでると、イッセーとアーシア、そして俺と祐斗が揃ったことを確認すると、リアスが言った。 

 

「さて、そろそろイッセーとアーシアにはデビューしてもらいましょうか」

 

 お? デビューって事はもしや。

 

「え?」

 

「ぶ、部長。デビューって、まさか、悪魔として本格的な仕事をするんですか? 魔法陣から契約者のもとへジャンプして契約する、アレですか?」

 

 きょとんとしてるアーシアに対し、もしかしたらと思いながら尋ねるイッセー。

 

 イッセーからの問いにリアスが頷く。

 

「その通りよ。チラシ配りは今夜で終了。それにいつまでもやらせておくと、二人っきりなのを良いことにデートしてしまいそうだもの」

 

 おおう、何気にアーシアを牽制しているな。部長らしく振舞って二人にチラシ配りをさせてるが、内心イッセーと一緒に行きたかったんだろうな。

 

 まぁそれはそれとして、契約取りの仕事をさせると言うが、人間であるイッセーとアーシアが悪魔でも眷属でもないのに、魔法陣の転移とか出来るんだろうか。

 

「なぁリアス、契約を取りにいかせるとしても、正式なグレモリー眷属じゃないその二人がチラシの魔法陣を使って転移できるのか?」

 

「そうしたいのは山々なのだけど、あのチラシは悪魔じゃないと通れないのよ。だからその対策として、リューセーに二人を送ってほしいの。頼める?」

 

「……やっぱそうなるか」

 

 結局は俺頼みか。まぁ眷属候補でも人間だから無理ですよね~。

 

「そう言ってくるだろうと思ってたから、俺の方で人間用に転移する事が出来るアイテムを用意しといたよ」

 

 懐から悪魔召喚用のチラシと似た用紙をイッセーとアーシアに渡すと、リアスは関心を持つように見ていた。

 

「取り敢えず一枚だけ渡しとく」

 

「あ、ありがとうございます、リューセーさん」

 

「おいおい兄貴、いつの間にこんなの作ったんだ?」

 

「お前がリアスの眷属になると決めた後から」

 

「………つまり、私がイッセーを眷属にすることは最初から無理だと分かって作ったのね」

 

「……………それはリアスの想像に任せる」

 

 関心を持った顔をしていたリアスだったが、急に不機嫌そうにジロリと睨みながら言ってくるので、俺は思わず目を逸らしてしまった。

 

 だってしょうがないだろ。お前とイッセーの実力差があり過ぎるんだからさ。だからその為の対策として作ったんだから、出来ればそこは褒めて欲しいな。

 

 そんなにイッセーを眷属にしたいんなら『変異の駒(ミューテーション・ピース)』を複数持って来い、と言いたいが敢えて口にしない。アレは一種のバグで、滅多に存在しない駒らしいから、リアスが複数持っているのは考えられない。

 

 加えて俺がそれを言ったら、どうしてそこまで知ってるんだと追求されるのがオチだし。

 

「ん? 待てよ。一枚だけ渡すって事は……ひょっとしてコレ、何度も使える物じゃないのか?」

 

「当たり前だ。いくら俺でもそんな都合のいい物を作れるわけないだろうが。因みにソレは行き帰り用で一回しか使えないからな」

 

「リューセー先輩が転移アイテムをあっさり作れること自体凄いんですけどね……」

 

 俺の台詞に木場が苦笑しながらそう言ってくる。因みに朱乃も苦笑し、小猫は微妙な顔をしていた。

 

「まぁ良いわ。それじゃあイッセーとアーシアにはそれぞれ契約者の元へ言って契約を――」

 

「ちょ、ちょっと良いですか、部長?」

 

 リアスが二人に命じようとする際、突然イッセーが質問しようとする。

 

「どうしたの?」

 

「えっと……一応確認ですが、俺やアーシアが相手の願いを叶えられる範囲内ならOKですよね?」

 

「? そうだけど」

 

 今更何当たり前な事を聞いてんだよ。

 

 俺が呆れてると、リアスの返答を聞いたイッセーが何か考え始めるような顔をする。

 

 そして十秒ほど経つとイッセーが――

 

「……………(ToT)」

 

 急に涙を流して泣き始めた。

 

「……イッセー、どうして泣いているの?」

 

 不可解な行動をしてるイッセーに、怪訝そうな表情で顔を覗き込んでくるリアス。

 

「部長、ダメです。アーシアを一人で行かせるのはダメです!!」

 

 何を考えて泣いているのかと思いきや、急に首を横に振りながらそう言うイッセー。

 

 ってかあの僅かな時間で、何故アーシアの一人行動を反対する決断に至ったんだろうか。

 

「部長! アーシア一人じゃ不安ですぅ! アーシアが! アーシアがもし変な奴にいかがわしい注文されたのを知ったら俺、ソイツを全力でボコボコにして最大出力のドラゴン波で肉体ごと消滅させてしまいます!」

 

 お前は契約を取ろうとする相手を殺す気か? 

 

 イッセーが泣きながら詰め寄ってくる事に、流石のリアスも困惑気味だ。

 

「安心なさい、イッセー。呼び出した悪魔に対しての過度のいやらしい依頼はグレモリー一族の眷属悪魔にはこないわ。そういう注文をしてくる人間には、その手の専門悪魔がいるから大丈夫よ。だから私のところは安心なのよ? 悪魔にだって専門職があるの」

 

 知ってはいたんだが、やはり悪魔にも専門職と言う物があるんだな。まぁ当然、そう言う願いの対価はそれなりにでかいだろうが。命とか魂とかな。

 

「本当ですか部長? 本当なんですね? でも、おれ、メッチャ不安なんですよ!」

 

 はぁっ……。全くこの愚弟ときたら。

 

「リアス、悪いがイッセーとアーシアをコンビとして契約に行かせてやってくれないか? そうでもしないとこの(バカ)は、仕事を放ってまででもアーシアのところに駆けつけそうだ」

 

「はぁっ……。そのほうが良さそうね。わかったわ、イッセー。初めのうちはアーシアと一緒に行ってもらうわ。但し、ある程度経ったら一人で行ってもらうことにするから。それでいいかしら?」

 

「も、勿論です! ありがとうございます! アーシア! 変態相手だったら遠慮なく俺に任せてくれ! アーシアは普通に何事も無く契約を取れればいいからな!」

 

「は、はい」

 

 安堵の息を吐きながら手を取ってくるイッセーに、アーシアは困惑していた。

 

 何だかイッセーはこの頃アーシアを大事な娘みたく過保護になってるような気がする。まぁアーシアのような美少女を守りたい気持ちは分からなくも無いんだが……変態行動に進むよりはマシか。

 

「というわけで二人とも、依頼が入ったら、そのアイテムを使って転移してね」

 

「二人で一緒に行くなら一枚だけで大丈夫だ。あとリアス、イッセー達が行く前に契約者の場所を教えてくれ。あの転移アイテムは場所を知らなければ使えないからな」

 

「でしょうね」

 

 俺は転移アイテムの注意点を教えてると、傍から部室の床に描かれてる大きな魔法陣が光りだした。

 

 魔法陣管理者である朱乃は、魔法陣の一角に現れた悪魔文字を読み出す。

 

「あらあら、イッセー君とアーシアちゃんがこなせそうな願いを持った方が私たちを召喚しようとしていますわ」

 

「なら都合がいいわ。朱乃、場所を教えて」

 

「はい、部長」

 

 朱乃が場所を確認してイッセーとアーシアに場所を教える。と言っても、未だ日本の地理を知らないアーシアが聞いても分からないので、ここは必然的にイッセーが知らなければいけない。

 

「兄貴、コレの使い方は?」

 

「頭の中でその場所へ生きたいと念じれば、持ってるソレが反応して転移する仕組みだ」

 

「OK」

 

 そして場所を知ったイッセーは持っている転移アイテムを見て念じると、それが反応するように光りだす。

 

「じゃあ行くぞ、アーシア!」

 

「はい、イッセーさん! 頑張りましょうね!」

 

 二人が気合を入れるように言うと、光は包むように転移して消えていった。

 

「ふむ、成功して何よりだ」

 

「成功って……貴方、まさか試しもしないでイッセーに使わせたの?」

 

「一応俺も試して成功はしたんだが、俺以外の人間に使うのは初めてだったんだ。何しろ作ったばかりの代物だからな。ま、イッセーなら問題無いよ。多分アイツもそれを承知の上で使ったしな。そうでなければ、自力で契約者のところに行ってると思うし」

 

「………貴方とイッセーって、お互いに分かり合ってるのね」

 

「何を今更。俺達は兄弟だからな。弟の考えてる事くらい、兄が分からないでどうする。逆に兄の考えてる事も、弟はそれを理解してるし」

 

「っ!」

 

 俺の台詞を聞いていた小猫が妙な反応を示していた。

 

「? どうした小猫? 俺、何か変なこと言ったか?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

 小猫が何故あんな反応をしていたのかを知るには、それはもう少し先の事になるのであった。

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