ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第三十四話

「さあリアス、約束通り教えて……っていないし」

 

 授業を終えた放課後。俺は昨日の宣言通り、いの一番に部室へと来たがリアスはいなかった。

 

「お嬢様でしたら、まだ此方に来ておりません」

 

 その代わり、昨日に会った銀髪のメイドさん――グレイフィア・ルキフグスが待っているように佇んでいた。

 

「……どうも、グレイフィアさん。昨夜ぶりです」

 

「その節は本当に申し訳ありませんでした、兵藤隆誠さま」

 

 俺の挨拶にグレイフィア・ルキフグス(以下はグレイフィアさんで)は昨日と同じくすぐ頭を下げてくる。

 

 それと同時に俺に対する警戒を全く怠っていない。どうやら俺を相当危険視しているようだな。

 

「別にもう良いですよ、昨日は理由が会った為に来たんですからね。それより、リアスが来るまでそこのソファーに座っても良いですか?」

 

「構いません。あなたはオカルト研究部の部員ですので、私の事はお気になさらず」

 

 そう言われても、そこまで警戒心を露にしてると座りづらいんだが。まぁ気にしてもしょうがないから、座って待つとするか。

 

 俺がソファーに座ると、グレイフィアさんは俺の動きを見逃さないようにジッと見ている。 

 

「………どうせなら貴女も座ったらどうですか?」

 

「私はグレモリー家の使用人ですので、そういう訳にはいきません」

 

「そうですか……。ああ、そうそう。グレイフィアさん、貴女に少しばかりお訊きしたい事があるんですが、宜しいですか?」

 

「何でしょう。使用人の私にお答え出来るのは限られますが」

 

 まるで情報を与えたくないみたいな感じだな。俺はただ純粋に以前冥界で偶然出会った、あの人懐っこい息子君(・・・・・・・・)の事を訊きたいだけなのに。

 

 けどまぁ、今あんなに警戒心丸出しにされてる状態じゃ、訊いても教えてくれそうにないから止めておくか。

 

 そう思ってると、部室のドアが開いた。入ってくるのは当然オカルト研究部の部長――リアス・グレモリー、そして眷属の姫島朱乃と登場小猫だ。

 

「よう、リアス」

 

「あらリューセー、本当にいの一番に来たのね」

 

「当然。言ったからには何が何でも来るからな」

 

 リアスはいつの間にか俺が来てる事に少し驚いた顔をしてる。リアス達の登場に、さっきまで俺を警戒していたグレイフィアさんは一礼している。

 

「お待ちしておりました、お嬢さま」

 

「グレイフィア……」

 

 彼女を見た途端、思い出したかのように少し顔を顰めるリアスは移動しながら、そのまま部長用の椅子に腰掛ける。

 

 それと俺の気のせいか、朱乃はいつも通りの笑顔でも冷たいオーラを漂わせてる。

 

 加えて小猫はまるで関わりたくないように、隅に移動して椅子に静かに座ろうとしてるし。

 

 どうやら二人は既にリアスから事情を聞いているようだな。

 

「んでリアス、昨日の事についてだが――」

 

「待って。その前に全員が来てからよ」

 

 いや、俺は『イッセー達が来てから説明するのか?』って訊こうと思ったんだが……まぁいいや。俺が先走った事にしておこう。

 

 そして待つこと数分。部室の空気が段々息苦しくなる中、眷属候補のイッセーとアーシア、眷属の祐斗が遅れて到着する。

 

 三人は空気を読んだのか、俺達に声を掛けようとはせず無言で入室する。

 

 特にアーシアはこの空気の所為で気圧されたのか、不安げな表情でイッセーの制服の袖口を掴んでいた。そんな彼女にイッセーが安心させるよう頭を撫でている。良い気遣いだぞ、イッセー。

 

 イッセー達が来た事に、リアスがメンバーの一人一人を確認すると、さっきまで無言だった口を開く。

 

「全員揃ったわね」

 

「お嬢さま、私からお話ししましょうか?」

 

 リアスはグレイフィアさんの申し出を必要無いと手を振る。

 

 昨日は説明するって言ったから自分で……ん?

 

「その前にリアス、此処には外部のお客さんも来る予定なのか?」

 

「え? そんなの来るわけ――」

 

 部室の床を見ながら問う俺にリアスが首を振りながら言おうとしてる最中、そこから描かれた魔法陣が光りだす。

 

 あの紋様はグレモリーの魔法陣じゃないな。確かアレは――

 

「――フェニックス」

 

 そうそう、フェニックスの紋様だった。呟きありがとうな、祐斗。

 

 内心祐斗に感謝してると、室内を眩い光が覆い、魔法陣から人影が姿を現す。

 

 すると魔法陣から炎が巻き起こって室内を熱気が包み込んでくる。ったく、熱いッたらありゃしない。無駄な火の粉を散らさないで欲しいんだがな。

 

 炎の中で佇む男性のシルエットが腕を横に凪ぐと、周囲の炎が一気に振り払われた。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 現れたのは、赤いスーツを着た一人の金髪男。スーツを着崩し、ネクタイもせずに胸までシャツをワイルドに開いている。

 

 まるでどこかのホストみたいな男だが、それが似合ってるように端整な顔立ちをしている。現代風に言うなら、「悪ガキ系なイケメン」ってか?

 

 んで、その男は部室の中を見渡すと、リアスを捉えた途端に口元をにやけさせた。

 

「会いに来たぜ。愛しのリアス」

 

 ……………は? 何言ってんのコイツ? ってか、コイツとリアスってどう言う関係だ?

 

(おい兄貴、何なんだアイツは?)

 

(さぁ……?)

 

 イッセーもイッセーで俺と同じく、男の発言を聞いて信じられないような目で見ながらコッソリ俺に問いかける。

 

 男の登場にリアスは半眼で見つめていた。いや、見つめるというより睨むと言った方が正しいか。あの目は明らかに歓迎してない目だからな。だが、男はリアスの様子など気にせずに近づいていた。

 

「さて、リアス。早速だが、結婚式の会場を見に行こうか。日取りも決まってるから、なるべく早めが良い」

 

 ………成程。そう言う事か。あんまり深く調べていなかったが、どうやらリアス――グレモリー家がフェニックス家と懇意な関係になろうとする噂は本当だったみたいだな。

 

 けどだからって、リアスの結婚相手がこんなチャラ男とはねぇ……。何かフェニックス家のイメージが崩れるよ。

 

「……放してちょうだい、ライザー」

 

 幻滅してる俺を余所に、ライザーと呼ばれる男に腕を掴まれたリアスは、低く迫力のある声で振り払った。

 

 怖い声を出しちゃってまぁ……。リアスはリアスで、この男に対して相当不快に思ってるんだな。

 

 振り払われた当の本人は大して気にせずに苦笑するだけだ。まるでリアスの照れ隠しのように。

 

 すると男は人間の俺達に気付いたのか、俺とイッセー、そしてイッセーの背後に隠れて様子を窺ってるアーシアを捉えてコッチを見てくる。

 

「おいリアス、何故此処に人間がいるんだ? 此処は悪魔だけしか入れない所じゃなかったか?」

 

「彼らは此処の部員よ。あとそこにいるイッセーとアーシアは私の眷属候補なの」

 

「眷属候補? だったら何故眷族にしないんだ? 君の『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』はまだある筈だろ?」

 

「………あなたの質問に答える義務は無いわ」

 

 少し間がありながらも教えないリアス。

 

 言えやしないよな。実力差があり過ぎてイッセーを眷属にする事が出来ないって。尤も、アーシアはすぐにでも可能だが。

 

「じゃあ、そこの眷属候補でもない人間は何だ?」

 

「リューセーはイッセーの兄で、コチラ側の事情を知ってる人間だから、私が入部させたの」

 

「そう言う事だ、フェニックス家の御曹司さん。あとイッセー、アーシアと一緒に俺から少し離れてくれ」

 

「お、おう……」

 

 男に言いながら俺は背後にいる弟に声をかけると、イッセーは分かったようにアーシアと一緒に俺から離れようとする。

 

「……成程な。俺も知ってると言う事は、ただの人間じゃなさそうだな」

 

 だが、と言いながら男は手から炎の魔力を集めて――

 

「その舐めた態度は頂けないな!」

 

「ん?」

 

「ッ! 止めなさい、ライザー!」

 

 ソファーに座っている俺に向けて放ってきた。

 

 いきなりの展開に一同が驚いてる中、リアスの制止は一足遅く、炎が俺を燃やすようにソファーごと体を包んで火達磨となった。

 

「「「「リューセー(君・先輩・さん)!!」」」」

 

「リューセー! ライザー、貴方何て事を!!」

 

「………………はぁっ」

 

 朱乃・祐斗・小猫・アーシアが悲痛な声を出し、リアスは男を非難めいた目で思いっきり睨んでいる。イッセーだけは呆れたように溜息を吐いているが。

 

「ふんっ、人間風情がこの俺に舐めた態度を取るから軽く灸を据えただけだ。安心しろリアス、別に殺しちゃいない。威力は火傷程度まで抑えている」

 

 やれやれ。先の戦争の所為で人間がいなければ種の存続までもが危うい状態だってのに、最近の堕天使や悪魔と来たら……。ここのところ随分と人間を見下してるのが多いな。呆れた奴等だ。

 

「随分と生温い炎なことで。こんなんじゃフェニックス家の名が泣くと思うぞ」

 

「何っ!?」

 

 火達磨となってる俺が何事もないような声を出した事に、男だけでなくイッセーを除く全員が驚愕していた。あとグレイフィアさんは納得しているような様子を見せている。

 

 そんなそれぞれの反応を余所に、火達磨になりながらも右手を自分の眼前にまで掲げた俺は――

 

 

 パチンッ!

 

 

 指を鳴らした瞬間、俺とソファーを包んでいた炎はアッサリと消え去った。俺もソファーも全くの無傷で。

 

 俺の状態にイッセーとグレイフィアさんを除くリアス達はまたもや驚愕している。アンタ等さっきから驚いてばかりだね。疲れないか?

 

「手加減したとは言え、この程度の炎じゃ俺に傷は負わせられないよ」

 

「貴様……! 一体何をした!?」

 

「何をしたって……見て分からないか? 俺とソファーが覆ってる薄い光の膜で炎を防いだんだが」

 

 何を分かりきった事を訊いてるんだと呆れ気味に言う俺に、男はヒクヒクと頬を引き攣らせる。

 

「違う! どうやって俺の炎を消したかと聞いてるんだ!?」

 

「ああ、そっちね。鬱陶しかったから、俺の能力で消してやったよ。あんなお粗末な炎を消すなんて造作もない」

 

 因みに俺は男の炎の威力を確かめる為に態と受けた。大した威力の無い炎で少しガッカリしたが。あとイッセーは俺が態と炎を受けた事に気付いてるから、さっき溜息を吐いていた。俺がその気になれば、炎を受ける前に消し飛ばす事が出来るのを知ってるからな。

 

「お粗末だと……? あの程度の炎を防いでいい気になるなよ、人間。どうやら貴様は少しばかり痛い目に遭わせたほうが良さそうだ」

 

 わぁ。今度は少し本気出そうとしてるし。あの程度の挑発ですぐに乗っちゃうなんて、随分と沸点が低いお坊ちゃんだこと。まぁ怒らせた俺が悪いんだけどさ。

 

「ライザー、これ以上リューセーに手を出すと私が許さないわ!」

 

 再び手から炎を出そうとする男に、リアスが割って入り阻止しようとする。

 

「退いてくれないか、リアス? あの人間が調子付かないよう本格的に灸を据えないといけないんでな」

 

 …………俺に灸を据える、ねぇ。知らないとは言え、聖書の神(わたし)相手に随分と良い度胸してる。

 

 いっそ此処で俺の正体をばらして、どう言う反応をするか見てみたいもんだ。まぁその時にはイッセーの背後にいるアーシアが100%、絶対、確実に俺の前で跪いて崇めるだろうけど。

 

 加えて聖書の神(わたし)の存在を察知した熾天使(セラフ)達が一斉に駒王学園へ押しかけてきて、あのお坊ちゃんが聖書の神(わたし)を侮辱した事を知れば確実に消滅させるだろうな。その後は問答無用で三大勢力の戦争再開、と。

 

 …………やっぱり止めよう。思わず少し怒ってしまったとは言え、どっちもとても面倒かつ大変かつとんでもない重大事件になってしまうからな。俺は一体何て恐ろしい事を考えてしまったんだろうか。少し自重しよう、うん。

 

「そこまでになさって下さい。いくらライザー様と言えど、私もこれ以上見過ごす事は出来ません」

 

「っ……」

 

 俺が恐ろしい事を考えてると、リアスの次にグレイフィアさんも割って入ると、男は表情を強張らせる。

 

 どうやらこの男、グレイフィアさんの実力はご存知のようだ。実力は自分より遥かに格上の存在だと。出なければ、あんな表情をしない筈だ。

 

「……ちっ、命拾いをしたな人間。その方に感謝するんだな」

 

 どっちがだよ。

 

 あっ、グレイフィアさんが少し焦ったような顔してる。

 

「………出来ればあなたもご自重なさってもらえますか、兵藤隆誠さま?」

 

 俺を諌めてるような言い方だけど、それとは裏腹に「申し訳ありませんが、ここは穏便に願います」と目で訴えてるよ。

 

「分かりました。んじゃ、部外者は引っ込んでます」

 

 そう言って俺はソファーから立ち上がり、イッセーとアーシアがいる位置に移動する。

 

「だ、大丈夫ですか、リューセーさん。私がすぐに治療を」

 

「大丈夫だよ、アーシア。どこも怪我してないから」

 

「つーか兄貴、何なんだあの男は? さっきから部長に偉く馴れ馴れしい態度で近寄ってるけど」

 

 俺の心配を全くしてないイッセーはあの男について訊こうとする。弟よ、少しは兄を気遣ってくれよな。まぁ別に良いけど。

 

 そしてイッセーの問いが聞こえたグレイフィアさんがコッチに視線を向けてくる。

 

「兵藤一誠さま」

 

「は、はい」

 

 突然呼ばれたイッセーが戸惑うように返事をする。

 

「この方はライザー・フェニックスさま。純血の上級悪魔であり、フェニックス家のご三男であらせられます」

 

「は、はぁ……」

 

 グレイフィアさんからの紹介に空返事をするイッセーだったが――

 

「もうついでに、グレモリー家次期当主の婿らしいぞ。早い話、リアスの婚約者だ」

 

「…………へ? こ、婚約者って……え、え………えええええええええええええええええええええええええええええっっ!!!!」

 

 俺が付け加えながら言うと、余りに信じがたい情報を聞いてしまったかのように絶叫した。

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