ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第三十五話

「いやー、リアスの『女王(クイーン)』が入れてくれたお茶は美味しいものだ」

 

「痛み入りますわ」

 

 うわぁ~。朱乃は一見ニコニコしてるが、いつもの優しげな「あらあら」や「うふふ」が一切無い。ありゃ相当あの男――ライザーを不快に思ってるんだな。

 

 まぁそれは当然だ。ソファに座るリアスに、隣に座って軽々しくリアスの肩を抱いてるライザーがセクハラしまくってるからな。リアスが手を振り払っても、ライザーは構わずまたリアスの肩や手や紅髪に触れているから、同じ女である朱乃が間近で見れば不快にならない訳が無い。。

 

 奴の行動を不快に思ってるのは何も朱乃だけじゃなく、リアスの眷属達とイッセーもだ。

 

 因みに俺達はリアスとライザーから少し離れた席に集まって、二人の様子を見ている。

 

「……なぁ兄貴、アイツぶちのめして良いか?」

 

「気持ちは分からんでもないが、取り敢えず抑えろ」

 

 特にイッセーなんか、リアスにセクハラしてるライザーに不愉快極まりない目で見てる。

 

 今までリアスからのアプローチに戸惑っているイッセーだが、何だかんだ言って彼女の事を――

 

「………俺だってあの太腿を撫でたいのに……! あ、でも俺、部長のおっぱいの感触を知って裸体も見たから、それを考えりゃ俺が勝ってるな……」

 

 ――バカな事をブツブツ言ってるイッセーに、俺は前言撤回させてもらう。ただ単にリアスの体に触れてるあの男が羨ましいだけかよ……。何考えてんだよ、この(バカ)は。しかも涎まで垂らしてるし。

 

「あの、イッセーさん。何か楽しい事でもありましたか?」

 

 ほれ見ろ。バカな事を考えてる所為で隣にいるアーシアが怪訝そうに訊いてるじゃないか。

 

 あと小猫はイッセーのだらしない顔を見てこう言い放つ。

 

「……卑猥な妄想禁止です、イッセー先輩」

 

 ぼそりと痛烈な一言に、イッセーは少し打ちのめされたかのように顔を伏せる。

 

「イッセーくん、とりあえずその涎は拭こうか。ほら、リューセー先輩が呆れてるよ」

 

 爽やかなスマイルでイッセーにハンカチを差し出す祐斗。

 

「よ、余計なお世話だっての!」

 

 祐斗の気遣いを無視するイッセーは自分の制服の袖口で拭おうとするが、先にアーシアが自身のハンカチでイッセーの口元を拭った。

 

「そろそろお茶の時間ですから、イッセーさんはお菓子の事を考えて涎が出ちゃったんですね」

 

 ハハハ、イッセーよ。心が痛むだろ? 純真なアーシアが屈託のない笑顔でそう言われると。

 

「ありがとな、アーシア」

 

 彼女に礼を言うイッセーだが、それとは別に内心謝ってるんだろうな。

 

 そのとき――

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

 激昂したリアスの声が部室に響き渡る。

 

 ソファーから立ち上がったリアスがライザーを鋭く睨むが、睨まれた本人は変わらずニヤけ顔だ。ありゃ全く懲りてないな。

 

「ライザー! 私は以前にも言ったはずよ! 私はあなたと結婚なんてしないって!」

 

「だがリアス、君のお家事情はそんな我侭が通用しないほど切羽詰ってると思うんだが?」

 

「余計なお世話よ! 家を潰すつもりはないわ! 私が次期当主である以上、婿養子は自分で決めるつもりよ!」

 

「先の戦争で激減した純血悪魔の血を絶やさないと言うのは、悪魔全体の問題でもあるんだぞ? だからこそ、君のお父さまもサーゼクス様も、未来の事を考えてフェニックス家との縁談を決めたんだ」

 

 あのシスコン魔王様が一族の為に大好きな妹をフェニックス家に差し出すとは……。奴にとっては苦渋の決断……だと思いたいんだが。

 

「父も兄も一族も、皆急ぎすぎるのよ! それに当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれる筈よ!?」

 

「ああ、そうさ。君は基本的に自由だ。大学にも行って良いし、下僕も好きにしたら良い。だが、純血悪魔の未来の為に結婚だけはしてもらう」

 

「同じ事を言わせないでちょうだい、ライザー! 私はあなたと結婚なんてしない!」

 

 何度も拒否をするリアスに、ライザーは今度こそ機嫌が悪くなったようだ。奴は片手でリアスのクイッと掴んで顔を近づける。

 

「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負ってるんだ。名前に泥を塗られるわけにもいかないんだ」

 

 奴も自分の家に誇りを持っていると言う事か。誇り高いのは結構だが、度が過ぎれば却って傲慢になるって事を奴は知ってるんだろうか。

 

「俺は君の下僕と人間共を全部燃やし尽くしてでも、君を冥界に連れ帰るぞ」

 

 そう言いながらライザーは全身からプレッシャーを放ってくる。殺意と敵意が室内全体に広がったな。

 

 人間の俺とイッセーは大したこと無いが、問題はアーシアだ。彼女はもう奴のプレッシャーに完全に震えながらイッセーの腕に抱きついてる。戦闘向きじゃないアーシアにはアレは耐えられないのは無理もない。

 

 悪魔である祐斗と小猫、朱乃はいつでも臨戦態勢には言ってもおかしくない空気を作り出していた。そしてリアスもライザーに負けじと、赤い魔力のオーラを全身から薄く発し始めている。

 

 対してライザーは体に炎を纏い始めていた。奴が放つ炎で熱気が部屋を包んでいる。

 

 この空気をどうにかしようと、俺は代表をするように戦闘意思を見せないままリアスとライザーに言おうとする。

 

「お二人さん、そこまでにしてくれるか? 人間(うち)のアーシアが怯えきってしまってるんだが」

 

「あ?」

 

 俺の声を聞いた途端、ライザーはコッチを見ながら更に不機嫌そうな顔をする。

 

「リューセー、あなた……」

 

「また貴様か。人間風情が俺たち悪魔の問題に口を挟むな」

 

 赤い魔力を発しながらもリアスはコッチを見て刺々しい雰囲気が多少緩和するが、ライザーの方は全くそれが無い。

 

「その問題に人間の俺達は要らんとばっちりを食うことになるんだよ。傍迷惑にも程がある」

 

「本当に不快な人間だな、貴様は。どうやら貴様から先に消し炭にしたほうが良さそうだ」

 

「おいおい、アンタはさっき釘刺されたのをもう忘れたのか? そこに控えてるグレイフィアさんが黙っちゃいないぞ」

 

「その通りです」

 

 俺の言葉に頷くグレイフィアさんは冷静に介入する。

 

「お嬢さま、ライザーさま、お治めくださいませ。これ以上やるのでしたら、兵藤隆誠さまの仰るとおり、私も黙って見ているわけにもいかなくなります。私はサーゼクスさまの命を受けてこの場におりますゆえ、一切の遠慮は致しません」

 

 グレイフィアさんがそう言うと、リアスだけでなくライザーも再び表情を強張らせる。

 

 ライザーはさっきの事を思い出したのか、すぐに体を覆っていた炎を落ち着かせ、息を深く吐きながら頭を振るう。

 

「……申し訳ない。俺とした事が、あなたの警告を忘れてしまった。それに最強の『女王(クイーン)』と称されるあなたに二度も警告されたら、俺も流石に不味い。バケモノ揃いと評判のサーゼクスさまの眷属と相対したら自殺行為も同然だからな」

 

 流石はグレイフィア・ルキフグス。相手が上級悪魔程度とは言え、一瞬で戦意を失わせるとは。魔王サーゼクスの眷属と言うのは、それだけ冥界に影響力が強い存在だからな。

 

 同時にリアスもライザー同様に魔力を止め、臨戦態勢を解く。二人の様子に、リアスの眷属達も一緒に解いている。俺は元から構えてもないし、イッセーも同様だ。尤も、イッセーは怯えてるアーシアを宥めている事に集中しているが。

 

 戦意が無くなったリアスとライザーを確認したグレイフィアさんは告げる。

 

「こうなることは、旦那さま方も予想されておられました。よって決裂した場合、最終手段を取り入れるよう仰せつかって参りました」

 

「最終手段? それはどういうことなの、グレイフィア」

 

「お嬢さまがそれほどまでにご意思を貫き通したいのでしたら、ライザーさまと『レーティングゲーム』にて決着をつけるようにと」

 

「ッ!?」

 

 内容を聞いたリアスは心底驚くように言葉を失った。

 

 まさかリアスに『レーティングゲーム』をやらせようとはねぇ。良い性格してるよ、グレモリー家とフェニックス家は。

 

 何かグレモリー家の評価が下落しそうだ。まぁあくまで俺の個人的な評価だけど。

 

「なぁ兄貴、レーティングゲームって冥界のアレだよな?」

 

「ああ。爵位持ちの悪魔達が行う、眷属にした下僕同士を戦わせて競い合うあのゲームだ」

 

 イッセーからの確認の問いに、俺は答えながら説明する。

 

「けどアレって確か、成人した悪魔しか参加出来ないんじゃなかったか? そもそも部長って参加出来るのか?」

 

 そう。イッセーの言うとおり、本来『レーティングゲーム』は成人した悪魔しか参加出来ない。当然リアスは成人前な上に、未熟な上級悪魔なのでゲームの参加資格なんてある訳が無い。

 

「恐らく非公式でやるつもりなんだろう。純血悪魔同士のゲームに加えて、今回みたく、いがみ合いに決着を付けさせる為にな。そうなんでしょう、グレイフィアさん?」

 

「………何故人間であるあなたがそこまで詳しいのかは敢えて問いませんが、仰る通りです」

 

 グレイフィアさんだけでなく、ライザーや祐斗達は『何故そこまで知ってるんだ?』みたいな目をしてるよ。知ってるも何も以前冥界に来た際、一応『レーティングゲーム』についても粗方調べたからな。

 

 因みにリアスは俺が知ってる事に大して気にせず嘆息していた。

 

「リューセーの言うように、お父さま方はワタシが拒否した時のことを考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようって寸法なのね? ……そこまでして私の生き方をいじるなんて……っ!」

 

 相当いらついた様子を見せるリアス。しかも殺気も漲ってるよ。おお怖い怖い……。

 

「なら、お嬢さまはゲームを拒否されるのですか?」

 

「そんなわけないでしょ。こんな好機はないわ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

 あ、不味い。リアスの奴、頭に血が上ってる所為で向こうの思惑通りに動かされてる事を全く気付いてない。

 

 リアスの挑戦的な物言いにライザーはチャンスと言わんばかりに口元をにやけさせる。

 

「へぇ、受けるのか。俺は構わないぞ。言っておくが、俺はもう既に成熟してるし、公式戦のゲームも何度もやってる。いまのところ勝ち星が多い。リアス、それを分かってもやるのか?」

 

 あ~あ、ライザーはリアスの性格を理解してるように、挑戦的な態度で返してるよ。当然リアスは――

 

「やるわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげるわ!」

 

 勝気な笑みを浮かべて承諾してしまった。もうコレは完全に乗せられてるな。

 

「いいだろう。そちらが勝てば婚約破棄にしても良い。だが俺が勝てばリアスは俺と即結婚してもらうからな」

 

 ライザーはもう自分の完全勝利(チェックメイト)だと言わんばかりに余裕な笑みを浮かべてるな。

 

 リアス、出来ればもうちょっと考えて行動して欲しかったよ。

 

 とは言え、仮に冷静に『レーティングゲーム』を断ったとしても、グレモリー家とフェニックス家の事だから、二重三重の手も考えてリアスを煽るんだろうが。向こうからすれば、何としても成功させたいと思うし。

 

「承知いたしました。お二人のご意思は私、グレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私が今回のゲームの指揮を執らせてもらいます。それでよろしいでしょうか?」

 

 グレイフィアさんの問いに首を縦に振って了承するリアスとライザー。

 

「では、私からご両家の皆さんにお伝えします」

 

 確認したグレイフィアさんはペコリと頭を下げる。

 

 これにより、リアスとライザーによるレーティングゲームの対決が決まってしまった。

 

「お、おい兄貴、これってすっげぇ不味いんじゃ……!」

 

「ああ、不味いな。最悪と言ってもいいぐらいに」

 

 小声で聞いてくるイッセーに、俺はそう答えざるを得なかった。

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