最悪の展開になっている事を予想してる俺とイッセーに視線を向けてくるライザー。その途端に嫌な嘲笑を浮かべてくる。
「なあ、リアス。まさか、あの眷属候補じゃない不快な人間を除く面子がキミの下僕なのか?」
「だとしたらどうなの?」
肩眉を吊り上げながら答えるリアスの答えに、ライザーは面白おかしそうに笑い出した。
「こんなんじゃ、全く話にならないんじゃないか? 俺の下僕とまともに対抗出来そうなのはキミの『女王』である『雷の巫女』ぐらいしかいないじゃないか」
おいおい。イッセーとアーシアだけでなく、眷属である祐斗と小猫も戦力外扱いかよ。
ライザーの戦力分析に呆れてると、奴が指をパチンと鳴らした途端、部室の魔法陣が光りだす。
その紋様は当然ライザーが出現した時と同様のフェニックスの魔法陣。そこから続々と人影が出現していく。
「っ!」
魔法陣から出て姿を現す人数を見たイッセーが驚いたような顔をしていた。
「俺の眷属は十五名。そしてこれが俺のかわいい下僕たちだ」
堂々と言い放つライザーの周囲を総勢十五名の眷属悪魔達が集結した。
奴の下僕はチェスの駒数と同じフルメンバータイプか。
上級悪魔は眷属にする為の『
下僕となる者が持っている潜在能力が高ければ、駒の消費は倍となる。例えば『騎士』が一名、「戦車」が一名と言う事もある。駒が消費して人数が少なくなるデメリットはあるが、その一人の眷属が消費した駒二つ分の力を持って強力になるメリットもある。
下僕が強ければ強いほどより強力な眷族を持つ事が出来る『
主である「
加えて、もし自分より強い存在を無理矢理眷属化させてしまえば、駒の特性により更に強くなった眷属が主に反旗を翻して殺してしまう恐れもある。以前会ってイッセーが倒した、はぐれ悪魔化したバイサーのようなアレが良い例だ。
とまあ、メリットやデメリットもあるから、下僕が十五名フルに揃わない上級悪魔もいるって訳だ。尤も、目の前にいるライザーは最大人数である十五名揃っているが。
対してリアス側は、『王』のリアス、『女王』の朱乃、『戦車』の小猫、『騎士』の祐斗、そして眷属候補である『僧侶』のアーシア、『兵士』のイッセー。それぞれ一名ずつのみだ。勿論俺は眷属じゃないから、数には入らない。
数だけ見れば六対十六で、明らかにリアス達が圧倒的に不利だ。あくまで数だけでの話だが。
にしてもライザーの下僕が全員女って……本当に見た目通りのチャラ男だな。
「美女、美少女ばかり十五人だと……!?」
ライザーの眷属達を見て驚愕しているイッセーは――
「なんて奴だ……。何て
次にライザーを見て号泣していた。
全くこのバカ弟と来たら……はぁっ。まぁコイツの夢はハーレムになる事って以前俺に言ってたから、それを実現させたライザーがさぞかし羨ましいんだろうな。
「お、おい、リアス……。そこの下僕候補くん、俺を見て号泣しているんだが」
弟の行動を見たライザーも流石に引き気味な表情で言ってくる。
当然リアスもイッセーの行動に困り顔で額に手を当てていた。
「その子の夢はハーレムなのよ……」
あ、リアスが少しばかり面白く無さそうにイッセーを見てるな。自分やアーシアがいるのに、ってな感じで。
「……きもいですわ」
ライザーの眷属の一人である金髪ツイン縦ロールの少女が、嫌悪するように顔を顰めながら呟く。
ん? あの少女、何かライザーの魔力と似通ってる気が。しかもフェニックスの魔力と同じ……っておい、まさかあの子、フェニックス家の身内じゃないだろうな。
「ふ、成程な。まぁ確かに人間から見れば羨ましがるのは当然か。ならばそんな人間には、俺とこいつらの熱々なところを見せ付けてやらないとな」
羨ましがっているイッセーに、ライザーは眷属の一人と濃厚なディープキスをしだす。
おいおい、あのチャラ男はこんなところでイチャつき始めてるよ。
「…………」
「なっ、なっ、なっ……!」
その光景にリアスは呆れた眼差しで見ていて、イッセーは興奮してるように驚いていた。
「はぅはぅぅ……」
イッセーの隣では、真っ赤なトマトのように赤面したアーシアが頭をボンッとパンクしている。ったく、純真なアーシアに如何わしい光景見せんじゃねぇよ。
アーシアの教育に悪いし、俺としても人前で挑発するように堂々とイチャつこうとする光景は見るに堪えないから、さっさと止めさせるとしよう。
「アンタ等、止めてくれるか? 此処には健全な青少年達がいるんだ。そう言う事は自分の家かラブホテルでやってくれ」
「何だ人間? 貴様もそこの人間と同じく羨ましいのか?」
………この男の脳ミソを一回クリーニングしてやろうか? それとも全力を出して瞬殺してやろうか?
「もう我慢出来ねぇ!」
そう思ってると、イッセーが嫉妬心全開にして割って入ろうとしてくる。
「おいテメェ! テメェみたいな女ったらしと部長は不釣合いだ!」
「は? 何言ってんの、おまえ? その女ったらしの俺に憧れているんだろう?」
「ぐっ!」
痛いところを突かれた顔をするイッセーだが、それでも何とか反論しようとする。
「うっ、うっせぇ! それと部長のことは話が別なんだよ! テメェがそんな調子じゃ、どうせ部長と結婚した後も他の女の子とイチャつく気だろう?」
「確か人間界の諺で、『英雄、色を好む』って言ったか? いい言葉だ。それに、これは俺と下僕達とのスキンシップだ。眷属候補のおまえでも、リアスに可愛がってもらっているんだろう?」
可愛がるどころか、リアスはイッセーに惹かれて色々とアプローチしているんだがな。しかも未遂とは言え、自分の処女をイッセーに捧げようともしてたし。
「ふざけんな! 何が英雄だ! おまえみたいな奴に火の鳥フェニックスなんか相応しくねぇよ! この種まきの焼き鳥野郎が!」
「っ! ………ぷっ、く、くく……お、おいイッセー、ぷっ、それはいくらなんでも……!」
ダメだ。余りにも今のライザーにピッタリな渾名だから、笑いを堪えるのに必死で指摘出来ねぇ!
イッセーの挑発と堪えている俺の笑い声にライザーは憤怒の表情へと変わっていく。
「焼き鳥だと!? こ、この人間共がぁぁぁぁ! 調子こきやがって! 上級悪魔に対して態度がなってねぇぜ! おいリアス! コイツらの教育はどうなってんだ!?」
抗議するライザーにリアスは知らんと言わんばかりにそっぽを向く。
「おい兄貴! 人間の俺がこの焼き鳥野郎をぶっ倒せば、フェニックス家の面目が丸潰れになって婚約破棄になるんじゃねぇのか!?」
「止めとけ。そんな事やっても、向こうがそう簡単に縁談を諦めるとは思えない。まぁ何処かの妹思いなお兄さんなら聞いてくれるかもしれないが、それは諦めろ」
出来レースも同然な『レーティングゲーム』なんてやらせようとしてんだからな、と内心付け加える。
因みに俺が「妹思いのお兄さん~」の部分から言ってる最中、グレイフィアさんの方をチラッと見た。すると彼女は訝るように目を細めるが、俺と目が合うとすぐに何でもない無表情へと戻る。
「………おい人間、俺の聞き違いか? まるでこの俺を倒せるような言い方だが」
俺の言葉にライザーが顔を顰めながら声を低くして俺にそう言ってくる。
よし、食いついた。此処で更に挑発すれば何とかいけるな。
「ああ、倒せるさ。もし仮に此処で俺たち兄弟だけでアンタとその眷属達と真っ向勝負すれば……俺達の
『っ!?』
おおう、ライザーの眷属達が一斉に俺を睨んできてるよ。下等な人間如きの俺にそんなこと言われたら、流石に頭に来るよなぁ。
「貴様……本当に不快極まりない人間だな……!」
さて、後はこの怒り心頭中のライザーがどう出るかだ。
あと念の為にグレイフィアさんに――
“相手を絶対殺傷しない事を誓いますので、出来たら少しの間だけ目を瞑ってもらえますか?”
「っ………………」
視線を向けて能力での念話を送った。突然俺からの念話にグレイフィアさんは少し驚愕していたが、何も聞いて無いかのように両目を瞑ってくれた。過失を見過ごしてくれと願っただけなのに、何も本当に目を瞑らなくても……まあ良いけど。
「不快、ねぇ。俺は事実を言っただけなんだが」
「………ミラ、やれ」
「はい、ライザーさま」
完全に頭にきたライザーは下僕の一人に命令を下した。相手は小猫と同じぐらい小柄で青髪の少女。
武道家が使いそうな長い棍を取り出して、くるくると器用に回し、次に俺に向かって構えた。あの子は見た感じ『兵士』だな。
「はぁっ……」
イッセー達から離れている俺は呆れながら思わず少女から目線を外してしまう。
やれやれ。俺を懲らしめる為とは言え、たかが『兵士』一人しか送ってこないとは……。まぁ向こうが乗ってきたから、それを利用しない手はない。
「イッセー、任せた」
「っておい! 結局ここで俺かよ! つーか――」
ガシィッ!
「――この程度の攻撃くらい、兄貴でも防げるだろうが」
俺と少し距離があるにも拘らず、イッセーが一瞬で来て攻撃を防いだ事に誰もが驚愕していた。
――――――――――
「ナイスだ、イッセー」
「何がナイスだよ、バカ兄貴」
ったく。兄貴の奴、何考えてるのかはまだ分かんねぇけど、何も別に俺に頼まなくても良いじゃねぇか。
「バカな……! ミラの攻撃を一瞬で防いだだと……!?」
いやいや焼き鳥野郎さん、俺や兄貴から言わせれば遅すぎだよ。
兄貴が俺達から離れ、体ごと別の方向へと向けたミラって子は、隙ありと言わんばかりに持ってる長い棍で脇腹目掛けて突こうとした。
誰もが愚かだと思っていた瞬間、俺が一瞬で割って入って攻撃を片手であっさりと防いだ事に驚愕していた。余りにも予想外だったのか、焼き鳥野郎のライザーやその眷属の美女達が信じられないような目で見てる。
「ぐっ! そ、その手を放しなさい!」
俺に棍を掴まれてる事によって、動く事も出来ない棍使いの少女が必死な顔をしてる。
「分かったよ。ほら、コレで良いだろ?」
言われたとおり、逆らう事無くアッサリと手を放す俺。
「くっ! 邪魔をするんだったら、先ずはあなたから!」
「え? 俺?」
防がれた事実を誤魔化す為に言ってるのか、今度は連続突きを仕掛ける棍使いの少女。
「うわ怖っ……な~んてな」
パシンッ! パシンッ! パシンッ! パシンッ! パシンッ!
さっき突いてきたスピードと全く同じだから、片手で問題なく防げる。
にしてもこの子、見た目とは裏腹に随分と鋭い突きだな。多分この子の実力は眷属の中で一番弱いだろうが、それでも相当実戦慣れしてる突きだ。その攻撃一つ一つが語ってくれるよ。
あのいけ好かない焼き鳥野郎つっても、それだけ実力があるって証拠か。くそっ。イケメンで女ったらしな上に実力もあるなんて、何かムカつくな。
「何をしている、ミラ! さっさと割って入ってきたそのガキを黙らせろ!」
「も、申し訳ありません、ライザーさま……! ですが……」
ライザーの怒鳴り声に萎縮する棍使いの少女。自分の可愛い眷属に怒鳴んなよ。
「おいおいフェニックスさん、思い通りの展開になってないからって、自分の眷属に八つ当たりをするのはいけないな」
俺と同じ事を考えてるのか、背後にいる兄貴が呆れたように言ってくる。
「弟のイッセーがこうも簡単に防いでいるって事は即ち、その子じゃイッセーとは力の差があり過ぎるって事だ。取り敢えずイッセー、その子を退場させてくれ」
「へいへい……はっ!」
ドンッ!
「きゃあっ!」
俺が棍使いの少女に手を向けて、軽い衝撃波を撃つと簡単に吹っ飛んだ。
「っ! ミラ!」
吹っ飛ばされた棍使いの少女をすぐに受け止めるライザー。いけ好かねぇ野郎だが、一応眷属を大事に思ってるみてぇだな。
「そこのガキッ! ミラに何をした!?」
「何って……ただ単に軽い衝撃波を当てただけだ。安心しな、その子に怪我なんてさせてねぇから」
「なん、だと……?」
「これで分かってくれたかな、ライザーさん? 下等な人間でも、その気になれば悪魔を簡単に倒せる力を持てるって事をさ」
また信じられないような顔をして言ってくるライザーに兄貴が自慢げに言ってくる。あと如何にも何か企んでますって顔してやがるし。
「もしイッセーが正式なリアスの眷属として『レーティングゲーム』で参加すれば、この不利な状況から一気に形勢逆転して勝てるんだが……。ねぇグレイフィアさん、人間の俺達は参加出来ますか?」
「………申し訳ありませんが、今回の『レーティングゲーム』が事情があっての非公式とは言え、あくまで悪魔同士のゲームですので参加は認められません」
ですが、と付け加えて言葉を続けるグレイフィアさん。
「お嬢さまとライザーさまの両者が共に合意なさるのでしたら、特例として参加は可能となっております。尤も、あくまで合意されればの話ですので」
あれ? 何かグレイフィアさんが何気に兄貴の肩を持ってるような感じがするが……俺の気のせいか?
「そうですか。それは残念です。まぁどうせフェニックスの事ですから、リアスとの勝負では確実に勝つ方を選ぶ為に、『家の将来』とか『下等な人間の参加は認めない』とか都合の良い理由を言って、眷属候補達の参加は認めないでしょうし」
「っ!」
うわぁ……。焼き鳥野郎の顔がすげぇ怖い顔してる。ありゃ相当頭に来てるな。
あんな挑発と相手を虚仮にするような言い方したら、誰だって怒るわ。
俺がもしあの野郎みたくプライドが高かったら絶対ブチ切れて――
「………良いだろう。その思いあがりを後悔と絶望へと変える為に、貴様ら人間共の参加を認めてやる!」
『っ!?』
あんな風に乗せられて参加を認める形に……っておい! マジかよ!?
当然ライザーの合意に俺だけでなく、部長達も予期せぬ出来事のように驚いていた。