ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第四話

「すみません、兵藤先輩。こんな夜遅くまで付きあわせてしまって……」

 

「良いって良いって、久しぶりに君と手合わせして俺も思わず熱が入っちまったからな。君が謝る必要は無い」

 

 日が落ちる夜中の十時過ぎ。

 

 俺は人目が付かない広場で、前以て約束していた木場との剣の手合わせを終えて帰る準備をしていた。

 

 長く付き合わせてしまった為に木場は負い目を感じて謝るが、俺は全然気にして無い。いつもイッセーの修行ばかりしている事もあってか、純粋な剣士と呼べる木場と相手して楽しく感じていた。

 

 木刀の使っての手合わせだったが、木場の剣術は西洋のもの。しかもテクニックとスピードを重視した戦い方で、パワーはいまいちだ。それに対してイッセーはパワーとスピード重視で、テクニックはいまいち。木場とイッセーを足して二で割れば理想的なオールラウンダーになるだろうな。

 

 まぁ人には得手不得手があるし、あくまで俺の勝手な想像だ。因みに、もしこの想像をイッセーに話したら絶対嫌な顔をすると思う。アイツは大のイケメン嫌いで木場を敵視してるからな。もし戦う事になったら絶対に速攻で倒すと思う。尤も、そんな事態になればの話だが。

 

「しかし、本当に兵藤先輩は強いですね。僕もそれなりに剣の腕に自信はあったんですが、ああも簡単に躱されたり防がれたりすると、ちょっとショックです」

 

「これでも一応鍛えてるからな。それに先輩として、後輩相手に負ける訳にはいかない。もし負けてイッセーに知られでもしたら、何言われるか分かったもんじゃないし」

 

「イッセーって、確か先輩の……」

 

「ああ、俺の弟だ。木場も知ってるだろ? 駒王学園で知らぬ者はいない問題児で『変態三人組』の一人だって」

 

「え、ええ、まぁ……」

 

 愚弟の悪名を知ってる木場は言い辛そうな感じで苦笑する。兄の俺に対して気を遣ってるんだろうが、俺としちゃ今更だから別に気にしちゃいない。寧ろ悪く言っても構わないし。あの愚弟にはいつも要らんとばっちりを食らってるからな。

 

 因みにイッセーは今日、友人の松田と元浜と何処かへ遊びに行ったみたいだ。まぁ恐らく松田か元浜の家でエッチなDVD鑑賞でもしてるんだろうが。

 

「アイツはスケベなとこさえ無けりゃ、良い弟なんだけどなぁ。まぁ俺の訓練で我慢してた分、弾けさせてる俺にも原因はあるが」

 

「訓練? 先輩は弟君に訓練させてるんですか?」

 

「ああ。アイツはちょっと訳あって、俺が鍛えさせてるんだ」

 

 君のような人外な存在と渡り合える位にね、と内心付け加える。流石に口に出しては言えない。今の俺は悪魔の事を知らない唯の一般人だし。けどまぁ、俺が悪魔である木場を簡単にあしらう実力を持ってる事に、木場は何かしらの疑問を抱いてると思うがな。 

 

「……先輩、もしかして僕の手合わせをいつも断っていたのって、弟君の訓練だからですか?」

 

「まぁそれもあるけど、あとは俺の個人的な用事もある。部活に入ってない俺は結構暇そうに見えるが、これでも色々と忙しいんだ」

 

「そう、ですか……。……あの、もし――」

 

「ダメだ」

 

「まだ何も言ってませんよ!?」

 

「君の事だ。どうせ自分も訓練に参加させてくれって言うつもりなんだろ?」

 

「う……」

 

 木場は図星を突かれたように木場は言い淀む。

 

 残念だが木場にはイッセーの訓練に参加させる訳にはいかない。イッセーが知ったら絶対反対するのが目に見えてる。それに俺としてもリアス・グレモリーの眷属を鍛えたら、彼女に何言われるか分かったもんじゃないし。

 

 とまぁ、悪いけど此処は適当な理由を言って木場には諦めてもらう。それに木場は剣術の基本が出来てるから、誰かに教えてもらってると思うし。

 

「訓練に参加しなくても木場は充分に強いし才能もある。俺が見なくても大丈夫だよ」

 

「そ、そんな事ありません。僕はまだまだ未熟ですし、先輩の戦い方はとても参考になります」

 

「なら尚のこと俺が見なくても大丈夫だ。自分の剣を過信せずに未熟だと思ってるなら、君はまだまだこの先伸びる。あと別に俺に頼むより、君に剣を教えてくれた先生に教えてもらったらどうだい?」

 

「………良く分かりましたね。僕に剣の指導をしてくれた人がいる事を」

 

「剣術の基本がしっかり出来てたから、さぞかし優秀な先生だと思ったよ。そんじゃ俺は帰る、また明日」

 

「って、待って下さい! 僕はまだ――」

 

 木場の隙を突くように俺は走ってその場から去る。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

「じゃあイッセー、また明日な」

 

「ああ、良い夢見ろよ」

 

 松田の家でエッチなDVD鑑賞会を終えて、元浜と一緒に帰ってる途中で別れた。

 

 何か元浜の手を振る仕草が何処となく元気が無かったな。まぁ鑑賞会を見終えたアイツはテンション下がってるから当然と言えば当然か。後で激励のメールでも送るか。

 

 元浜と別れて数分経って、俺はある事を思い出す。夕麻ちゃんに襲われた(と言ってもあしらったが)翌日、松田と元浜が夕麻ちゃんに関しての記憶が無くなってる事を。

 

 俺が夕麻ちゃんを自分の彼女と宣言した時、アイツ等は物凄く悔しそうに、そして嫉妬に満ちて涙を流していた。そんな出来事があったと言うのにも拘らず、アイツ等は揃って「お前何言ってんだ? ついに頭がおかしくなったのか?」ってバカにされたかのように言い返された。

 

 あれほど嫉妬に満ちた記憶を全く憶えてないばかりか、その経験すらしたような事の無い言いようには当然理由がある。堕天使の夕麻ちゃんが消したんだ。自分に関する記憶を根こそぎな。

 

 悪魔・天使・堕天使ってのは基本的に全く力の無い一般人に対して自分の存在を知られちゃいけないものだから、それに関わった一般人は後処理として記憶を消されるらしい。だから松田と元浜は夕麻ちゃんの事を全く知らない。当然ソイツ等だけじゃなく、夕麻ちゃんの存在を知った他の一般人にも。ま、本当ならもう一つの記憶も消してたんだろうけどな。俺と言う存在自体の記憶を。

 

「っと、つい此処に来ちまったな」

 

 夕麻ちゃんの事を考えながら歩いていると、昨日やりあった町外れの噴水公園に来ていた。

 

 あの時は夕暮れだったが今は夜の十時過ぎで辺りは真っ暗。そして周囲に人気も全く無い。夜の闇の所為か、誰もいない公園は少し不気味な感じがする。

 

 そういや確か夕麻ちゃんが捨て台詞を言って逃げたな。何れ殺すって。何時頃になったらまた俺に会いに――ん?

 

 空が歪んでるって事は……やっと来たか。昨日の夜は何時来るかと思って、兄貴と一緒に夜の散歩してたけど結局来なかったんだよなぁ。って事は、向こうとしちゃ俺だけを殺す事が目的か。そうと分かってりゃ単独行動すりゃ良かったな。

 

 まぁ良いか。折角夕麻ちゃんが来てくれたんだから、今度は逃げられないようにじっくりとあのおっぱいを味わうとしよう。

 

 堕天使の気配がコツコツと足音を立てながら近づいてきたから、俺は笑みを浮かべながら振り返ると――

 

「やぁ夕麻ちゃん、やっと来てくれ――」

 

「貴様か? あの方が言っていた殺し損ねた人間と言うのは」

 

「………………………」

 

 夕麻ちゃんだと思っていた俺だったが、スーツを着た堕天使のオッサンを見た瞬間ピシッと固まってしまった。

 

 あれぇ~? 何で? 夕麻ちゃんは? 何で俺の目の前にオッサンがいるの? 普通ここは夕麻ちゃんが来る筈だよね? 「私をコケにした分、キッチリ返してやる!」って夕麻ちゃんが言いながら現れる筈だよね?

 

「何だ人間? ふざけた顔をしながら固まっているようだが、私の姿を見て怯えているのか?」

 

「…………んな」

 

「何?」

 

「ふざけんな! オッサンなんかお呼びじゃねぇんだよ! 俺は夕麻ちゃんに用があんだ! 分かったらさっさとチェンジしやがれ!!」

 

 何が悲しゅうて堕天使のオッサンの相手なんかしなきゃいけねぇんだ! 男なんかお呼びじゃねぇ!

 

 俺の負の声を聞いたオッサンは不愉快そうな顔をすると同時に殺気を出し始めた。

 

「余り図に乗らん事だ。貴様のような人間風情が堕天使の私に対するその無礼、死で償ってもらう事になるぞ?」

 

「んなもん知るか! あ~もう、一気に萎えちまったな。帰ろ帰ろ」

 

 そう言って俺は堕天使のオッサンに背を向けて帰ろうとする。

 

 が、そうは行かんと言わんばかりに堕天使のオッサンは回り込んで、また俺の眼前に立って来た。

 

「何だよオッサン。俺はアンタに用はねぇんだよ」

 

「私を侮辱しておいてこのまま逃がすと思うか? 全く、低脳な人間はこれだから困る。況してや、貴様のような世間知らずで無礼な人間は特にな」

 

 堕天使のオッサンは片手から光の槍を出してそう言う。

 

「へぇ、夕麻ちゃんのとは違って、アンタの光の槍は青色なんだな。それでも歪んだ光だけど」

 

「ふむ。この状況にも拘らず、仲間の気配は無し。抵抗の意思は見せない。コレを見ながらも怯えて逃げようとする素振りすらない。状況分析からして、どうやら貴様は私の恐ろしさと殺気を感じる事の出来ない『愚者』のようだ。全く。あの方は何故(なにゆえ)こんな人間を殺し損ねたんだ?」

 

 ……………俺を『愚者』ねぇ。言ってくれるじゃねぇか。

 

「まぁ良い、取り敢えず貴様はさっさと――死ねっ!」

 

 そう言って堕天使のオッサンは俺に向かって光の槍を投擲してくる。

 

 このまま黙って見てると、俺の胸に当たりそうだったので――

 

「だから遅ぇんだって」

 

「んなっ!?」

 

 すぐに左手に封じてる俺の神器(セイクリッド・ギア)――『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』を解放し、すぐに光の槍を裏拳で叩き落した。

 

 お~お~、俺が光の槍を叩き落した事で堕天使のオッサンは夕麻ちゃんみたく驚愕してるよ。そんなに驚く事なのか?

 

 兄貴が投擲する光の槍や光の剣に比べたらめっちゃ遅ぇよ。避ける気すら無かったぜ。

 

『まぁさっきまで相棒を唯の人間と見てたからな。堕天使共が驚くのは無理もない』

 

 俺の心の声を聞いたかのように、どこからか中年のオッサンの声が聞こえてくる。

 

 その正体は既に知っている。声の主は俺のセイクリッドギアを通じて、俺に話しかけているからな。尤も、目の前のオッサンには聞こえてないが。

 

「そ、その篭手はまさか……神器(セイクリッド・ギア)! まさか貴様、既にそれを使えていたのか!?」

 

「使えるから出してんだろうが」

 

 んな分かりきった事聞くなよ。聞いててバカらしいぞ。

 

 まぁ良いや。取り敢えずこのオッサンには、この間の修行で編み出した「ドラグ・ソボール」の主人公が使うあの技の実験台になってもらうとしよう。折角コイツを出したからな。

 

 そう思って俺は未だに驚いてるオッサンを余所に技を使うために構えようとするが――

 

「あらぁ、イッセーちゃんじゃなぁい」

 

「っ!?」

 

 ………こ、こ、こ、こ、この、この、この老本さんみたいな声でオネェ口調は、ま、ま、ま、まさか!?

 

 一番聞きたくない声が空耳だったのかを確認しようと、俺は背後から声を掛けられた人物を恐る恐る振り返って見ると――

 

「こんな時間に何やってるのよぉ~。いくら高校生でもこんな夜更けに出歩いちゃダメよ~」

 

「やっぱりアンタか~~~~!!!!!」

 

 そこにはパッツンパッツンメイド服を着た筋骨隆々なオカマのオッサン――自称ローズさんがいた。

 

「な、何だアレは? 人間、なのか?」

 

 さっきまで俺に驚いてた堕天使のオッサンも気付いたみたいで、ローズさんの姿を見て人間と捉えるのを迷っていた。けど俺は無視してローズさんの方を見て問おうとする。

 

 因みにこのオカマのローズさんは兄貴の知り合いで、いつも兄貴が脅し文句で言ってたオカマバーの店長だ。

 

「ってか何でアンタがそんな格好して此処にいるんだよ!?」

 

「ああコレ? ついさっきまで魔法少女に憧れてる可愛い漢女(おとめ)ちゃん達とお茶してたのよ。中々有意義な時間だったわぁ~♪」

 

 オトメ!? 何か字ぃ違わなくねぇか!? ってか今“達”って言わなかったか!? まさかローズさんと似た様なオカマがこの町に他にもいるのか!? すっげぇ嫌なんですけど!!

 

「それで今帰ってる途中でイッセーちゃんと……そこの堕天使ちゃんの気配を感じたから、イッセーちゃんが心配で来たって訳なのよぉ~」

 

 来ないで下さい! 寧ろ俺の危険が迫ってるよ!!

 

 もうついでにこの人、兄貴の知り合いで俺と同じく裏事情を知ってる上に、兄貴ほどじゃねぇけど近い実力を持ってる。だから当然今の俺じゃ全然敵わない。

 

「な、何者かは知らぬが、そこの面妖な人間。私の姿を見た以上は消えてもらう!!」

 

「っ! ま、待てオッサン!!」

 

 俺がつい止めようとするが、堕天使のオッサンは無視するように光の槍を出して投擲――

 

 

 ガシッ!

 

 

「ちょっと堕天使ちゃ~ん。こんな物騒な物を人に向けて投げちゃダメよ~」

 

「なっ!? き、貴様いつの間に!?」

 

 ――する所をいつの間にかローズさんが接近して手首を掴まれ阻止された。

 

「は、放せ人間!」

 

「んもう~、最近の堕天使ちゃんってワタシみたいな弱い人間だからって随分失礼な態度取るわね~」

 

 アンタが弱い人間? 冗談は止めてくれ。アンタが弱かったら世界中の人間が三大勢力とタメはれるぞ。

 

「何なのだこの力は!? とても人間ではないぞ……!」

 

 ローズさんから逃れようとする堕天使のオッサンだが、未だに手首を掴まれたままだ。

 

 ってか、今頃気付いても遅いぞ。ローズさんに掴まれた時点でな。だってさぁ、この後のローズさんが取る行動と言えば……。

 

「ねぇイッセーちゃん、この子をワタシに譲ってくれないかしらぁ~? 悪い事をする堕天使ちゃんにはちょっとOHANASHIするからね~」

 

「………どうぞ」

 

 ほらな。悪い事をする子にはお仕置きする、みたいな事を言って来るんだよ。

 

 あと何でか知らんが――

 

「ありがとうイッセーちゃん。さぁ堕天使ちゃん、ちょっとワタシとOHANASHIしましょうねぇ~。丁度あそこにおトイレもある事だし♪」

 

 さっきまで無かった筈のトイレが何故か向こうにあるんだよなぁ~。しかも男子トイレが。

 

「わ、私に何をする気だ貴様!? いい加減に放さんか!」

 

 そう言ってもう片方の手で光の槍を出そうとするオッサンだが、またもやローズさんが空いてる手を使って手首を掴んで阻止される。

 

「うふっ♪ 言った筈よ~、ちょっとOHANASHIをするってねぇ~。それじゃあおトイレに行きましょうね~♪」

 

「っ!! や、止めろ! 放せ! 何故か分からんが急に悪寒が!! 放せ~~~!!!」

 

 堕天使のオッサンは抵抗しようにも、哀れと言うべきかローズさんにトイレへと連れて行かれてしまった。

 

 そして――

 

『ウフフッ♪ それじゃあ、タップリとOHANASIましょうねぇ~♪』

 

『止めろ人間っ!! 私にそんな趣味は……あ、アッ~~~~~~!!』

 

 哀れな堕天使のオッサンは別の意味で堕ちる羽目になってしまった。アーメン。

 

「………………帰ろ」

 

 トイレから気持ち悪い卑猥な声が聞こえるから、聞くに堪えない俺はさっきまでの出来事を見なかったり聞かなかった事にして、すぐに自分の家へ帰宅した。

 

 そしてこれは余りにも気持ち悪くて知りたくもない余談だが、あの堕天使のオッサンはローズさんによって心を入れ替えると同時に新たな趣味に目覚めたのか、ローズさんのいるオカマバーでミニスカメイドとして働き始めたそうだ。




この話を読んだ方に申し上げます。

原作で死ぬ筈だったドーナシークに敬礼を!!
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