分身拳を使って四人になった俺は、未だに戸惑っているリアス達を連れてそれぞれ別の場所で修行を開始した。
ここから先は全く異なる修行なので、それぞれお見せしよう。
~木場祐斗の修行~
パキィィンッッ!
「はい、やり直し」
「くっ、またですか……!」
だだっ広い野原で祐斗の修行――
魔剣の能力だけでなく刀身の基本骨子も再構築するよう何度も言ってるんだが思うように出来ていなかった。何度も俺によってオーラを纏った木刀でポッキリと折られてしまう始末だ。
「前と違って多少の強度は増してるんだが、それでもまだまだか」
「……頭では、分かって、いるんですが……」
息が荒くなってる祐斗は負けじと再度魔剣を造りだす。それでも見ただけでさっきと同じ強度なのが分かった。
(このままじゃ不味いな)
祐斗が造りだす魔剣を見て俺は少し危機感を抱いた。身体能力が上がっても、
さてどうしようか。このまま同じ事をダラダラやったところで、強度が多少増した程度で終わってしまうのは明々白々。だがそれじゃ普通の修行と大して変わんないから、俺としてはちょっとした劇的な強化を求めたい。出来れば刀身の強度だけでなく、魔剣の能力自体も強化させたいんだが。
しかし、今のままじゃそれは無理だ。時間がたっぷりあれば少しずつ強度を上げさせる事は可能だが、生憎今は時間が無い。残り数日の内に何とかマシになる程度まで強化させたいが、今のままじゃちょっとなぁ。
ひたすら頭の中で創造させるんじゃなく、何か見本となる実物の魔剣を見せた方が良さそうだ。けれど祐斗に適した魔剣なんか今持ってないし………あ、あったかも。
「祐斗、俺が戻ってくるまでちょっと休憩してろ」
「え? 休憩って、先輩何処に――」
祐斗の言葉を無視する俺は転移方陣を展開して、すぐに姿を消した。
10分後――
「お待たせ」
「………リューセー先輩、もう一度訊いて良いですか? 一体何処へ行ってたんです?」
戻って来て早々、祐斗は少し顔を顰めながら訪ねてくる。
何も言わずにただ休憩してろと言われたら、流石の祐斗でも怒るか。
「悪い悪い。ちょっとある物を取りに行く為に自分の家に戻ってたんだ」
「ある物? ひょっとして先輩が持ってるソレの事ですか?」
祐斗が俺の手に持ってる布に包まれた物を見ながら言う。
「ああ、そうだ。コレを使って祐斗の魔剣強化を図ろうと思う」
「………一体ソレは何ですか? 見るからに形が剣みたいですが」
「フッフッフ……とくとご覧あれ、ってな」
俺が布を取っ払うと、ソレの中から西洋の鞘付き両刃剣が出てきた。そして柄を持って鞘から抜き出した途端、刀身から禍々しいオーラが発してくる。
「っ! な、何なんですか、その魔剣は!?」
「
と言う俺だが実は嘘。
この魔剣は天使だった若かりし頃の某総督の設計図を元に、俺が神の力を使って試しに作った物だ。尤も設計図自体は無く、
他にもコレと一緒に
この
聖剣は兎も角、神である
まぁそれはそうと、祐斗には魔剣『
「言っとくがコレはお前の造った魔剣とは比べ物にならない剣だ。さぁ祐斗、この魔剣に匹敵する剣を造れるかな?」
「……………」
俺が少し挑発染みた事を言うと祐斗がムッとした顔になりながらも――
「良いでしょう。ならばその魔剣を叩き折る魔剣を造ります!」
「ハハハ、その調子だ」
今以上にやる気を見せてくれたようだった。
~塔城小猫の修行~
「……えいっ! やぁっ!」
(………小猫の奴、やはり妖力を使う気は無いみたいだな)
森林で前の模擬戦と同様に小猫と組み手をしている俺だが、小猫の行動に確信を持った。
俺が組み手を始める前に、「全ての力を出して俺に挑め」とさり気なく妖力を使うよう促したんだが、小猫はそれを全く使う様子が見受けられなかった。
ここまで頑なに使おうとしないって事は即ち、小猫は妖力に対して何かしらの恐れがあるって事だろう。そうでなければ、全く勝てない俺に妖力をとっくに使ってる筈だ。
本当なら妖力を使えと言いたいところだが、無理にやらせる訳にもいかない。下手すればこの子と間に溝が深まってしまうからな。加えて俺もリアス達に隠してる事があるから、必死に隠してる子猫の事をああだこうだと言う資格は無い。
とは言え、小猫がずっと格闘技のみでやっていくのは正直言って無理だ。それだけじゃこの先の成長は望めない。俺としては力の全てを使って成長して欲しいんだがな。
「……隙ありです」
「おっと危ない」
考え事をしてるのに気付いた小猫が空かさず正拳突きを打ってくるが、俺は直線に向かってくる拳を阻止するように小猫の手首を掴んだ。
「……くっ、また……」
「相手の身体の中心線を狙って、的確かつ抉りこむように打つのは悪くない」
だが、と言いながら俺は即座に掴んでいる小猫の腕を持ち上げて、勢い良く小猫ごと放り投げた。
ダアンッ!
「がはっ……」
俺に投げられた小猫は近くにあった大木が背中に激突して、そのまま下に落ちて倒れる。
「……ううっ」
防御力の高い小猫でも、流石に今のは効いたのかすぐに立ち上がろうとする気配が無い。しかも地面に目を向けたままだ。
「目先のみ攻撃するだけじゃなく、相手の動き全体を常に意識しながら攻撃しろ。そして――」
フッ!
「っ!?」
「相手から目を逸らしたらダメだ。それが隙となって追撃されてしまうぞ」
ドゴンッ!
一瞬で倒れている小猫の眼前に立って拳を振り下ろすが、小猫は寸でのところで身を転がして躱した。俺の拳と激突した地面が衝撃によって吹っ飛び、丸いクレーターが出来上がった。ソレを見た小猫は立ちながらも顔面蒼白している。
「今こう思ったろ。『パンチ一発だけでどうしてあそこまでの威力が?』って」
「……はい」
素直でよろしい。
「前の模擬戦で知ってると思うが、俺は身体能力だけじゃなく光のオーラも使っている。その理由が分かるか?」
「……私たち悪魔に対抗するため、ですか?」
「まぁ一応合ってはいるな。だがそれとは別に、オーラを纏わせる事で破壊力も増すんだ。俺がクレーターにした
クレーターとなった地面を指すと、小猫は思わずそこへ向けて何かを考えるように目を細めている。
「小猫、お前の格闘技は『
「…………生憎ですが、私は部長たちと違ってそこまで魔力はありません」
思ったとおり、小猫は嘘を吐いてまで妖力を絶対使いたくないみたいだ。いつもの会話と比べて返しが遅い。そこまでして使わないって事は、やはり相当込み入った事情があると見て間違いないだろう。
妖力を使わないなら、悪魔としての魔力で何とかするしか方法はないようだな。
「まぁ確かに小猫の魔力はリアスや眷属の朱乃たちと違って低い。だけどな小猫、お前は常に魔力を放出してるから気付いてないと思うが、そのバンドによってある程度魔力が上昇してるんだぞ」
「……え?」
「ほら、全身に魔力を放出している要領で、右手に魔力を纏うように集めさせてみろ。加えて魔力を鋼の如く硬い物としてイメージするんだ」
「…………………」
俺に言われた通りの事をしようと小猫は目を閉じて集中し始める。すると、小猫の右手からほんの少しずつ青白い魔力が集まり始めてきた。
「………うっ、くっ……!」
「ふむ……」
少し時間は掛かったが、何とか右手を覆うほどの魔力が集まってきたので、俺はすぐに指示をする。
「よし小猫、そのまま地面を殴ってみろ!」
「っ! ……は、はい」
突然の指示に小猫は戸惑いながらも地面を思いっきり殴ると――
ドゴンッ!
地面の一部が罅割れて吹っ飛び、俺までとはいかないが、もう一つのクレーターが出来上がった。
「ほう。やれば出来るじゃないか」
「…………」
予想外の破壊力だったのか、小猫は戸惑う様子を見せながら尻餅を付いてしまう。
「……これが、今の私の力、ですか?」
「そう言う事だ。本当なら小猫の全身に魔力を
「……やってみせます……!」
「結構」
魔力の有効的な使い方を知った小猫は、この力を磨こうと充分なやる気を見せてくれた。
~姫島朱乃の修行~
「流石は朱乃。魔力に関してはグレモリー眷属の中でピカイチだな。近接戦闘はからっきしだけど」
「……ほっといてください」
山頂で俺が前の模擬戦でやった光線と光弾を教えると、朱乃は簡単にやってのけた。雷バージョンの光線と光弾を。
小手技とも言える光線と光弾を教えれば、遠距離攻撃専門でやる朱乃には問題無くやれるだろう。
だがやはり近接戦闘は丸っきりダメで、一瞬で懐に入られたら防御せざるを得ない状態だ。それはそれで悪くは無いんだが、防御だけじゃなく近接戦になった際の迎撃方法だけは身に付けて欲しいのが俺の要望だ。
けど、だからと言って無理に苦手な近接戦をやらせようと言う気は無い。悪魔とか天使とか関係なく得手不得手と言うのがあるから、朱乃の欠点は諦めるしかない。
「にしても朱乃って、あんまり教え甲斐がないな。ちょっとコツを教えただけですぐに出来るし」
「リューセーくんの言うように、私は魔力の使い方はピカイチですので」
「………すいません」
俺は思わず謝ってしまった。事実を言ったとは言え、本人に言い返されてしまったら何故か謝ってしまう気持ちになってしまったから。
「ま、まぁそれはそうと朱乃がこの先、雷を主体とした遠距離戦でやるんなら、もうちょっとバリエーションを増やした方が良さそうだな」
「バリエーション、ですか?」
「ああ。ただ雷撃を放つってだけじゃ芸が無いから、それだと簡単に対策をたてられてしまう」
「………ではリューセーくんはどのようなバリエーションを求めるのです?」
「う~ん……」
自分で言っておいて、これと言った物は無かった。
正直言って、朱乃の能力強化はあんまり必要無いんじゃないかと思う。朱乃はただ身体能力さえ上げれば、雷魔法もそれなりに威力が上がるからな。
となれば何か新しい技を覚えさせるのが良いかもしれない。俺が朱乃に教えるのはソレ位しかないし。
朱乃向きな技とするなら何が良いか……ん? 待てよ。トレーニング中にコッソリとリアスから朱乃の性格を聞いて、確か普段は温厚だが『究極のサディスト』だと言ってたな。
それを考えて朱乃に相応しい戦い方となれば……よし、良い事を思いついた。
「なぁ朱乃、突然だが雷を物質化する事って出来るか?」
「え? 一応それなりには……」
「なら武器みたいに作る事は?」
「そこまでは流石に……。けれど何故そんな事を訊くのですか?」
俺の質問の意図が全く分からない朱乃は質問で返してくる。
「いや~、朱乃が相手を甚振る事が大好きな究極のドSだと思い出してな」
「あらあら、うふふ。それは誰から聞いたんですの? ひょっとしてリアスにですか?」
朱乃は優しい笑みをニコニコと浮かべながらも、全身からバチバチっと雷を迸らせている。イッセーが見たら冷や汗掻きながらドン引きする程の恐さだ。正直俺もちょっと恐いが。
「そ、そこはお前の想像に任せるよ。話を戻すが、さっき俺が質問した理由はこれだ」
俺が左手の人差し指と中指をくっ付けながら山頂にある大岩へ向けて振るうと――
ビュオッ!
二つの指の間から鞭状となった光が大岩を抉るように切り裂いた。
「っ! 今のは……?」
「見てのとおり、光を鞭のように振るった。俺が作る光の剣や光の槍の応用みたいなもんだ。朱乃にはコレと同じ物を作ってもらう。雷バージョンでな」
「……天使や堕天使の応用技をですか」
何か随分と嫌そうな顔をしてるな。特に堕天使と言った瞬間、何やら憎悪を感じるようだが……。まぁ気にしないでおこう。
「まぁそう言うなって。コレはコレで結構便利だぞ。朱乃が雷撃の鞭として振るって当てれば、相手を感電させるだけじゃなく、身体の一部分を巻きつかせれば雷を流して敵を仕留める事も出来る。朱乃向きな技だと俺は思うが?」
「………………」
雷と鞭のメリットを教えて、朱乃は少し考える仕草をして数分後――
「うふふ。確かにリューセーくんの言うとおり便利かもしれませんわね。個人的にはちょっと気は進みませんが、ご教授願えますか?」
と言ってる割には随分と楽しそうな顔をしていた。
俺、ひょっとして選択を誤ったかな?
だらだらと修行のシーンが長くて進行が遅いと思われますが、もう少しお待ち下さい。