「皆、大丈夫?」
「ええ、やっと目が開けれるようになりましたわ」
「僕も何とか」
「……まだ少し痛いです」
兵藤兄弟が逃走して少し経った後、今だ廃屋にいるリアスと眷属達は漸く目が回復した。それでも未だに目を開いたり閉じたりと瞬きをしている小猫が少し辛そうな顔をしているが。
小猫の様子を見ながらも、リアスは兵藤兄弟が逃走した方向へ睨むように視線を向けている。
「やってくれたわね。私とした事が、あんな手に引っ掛かるなんて……!」
白般若のお面を被っていた男を最大限に警戒して注視した事が仇となった事を自ら責めるリアス。
理由は知らないが最初から戦う気が無く逃走目的の為に、白般若の面を被っていた男が囮となり、自分達に意識を向けさせて目眩しをして逃走する。と言う算段であった事にリアスは理解した。
「私があの男の行動にもっと早く気付いてれば……!」
「リアス、そう自分を責めないで。まさか彼があんな手を使ってくるなんて誰も想像しなかったわ。リアスの判断が正しいと思って、私たちも彼を警戒していたんだから」
「朱乃……」
自分の判断を誤った事にリアスが悔いていると、朱乃はリアスの肩に手を置きながらフォローする。
「今は自分を責める前に、彼等を追いましょう」
「そうね。あの結界はそう簡単に破れない物だから、まだ外にいる筈。祐斗、二人を見つけたら私たちが来るまで足止めをして」
「分かりました」
指示を下された祐斗は一瞬でリアス達の前から一瞬で消えた。『
「小猫、まだ目が辛いなら――」
「……大丈夫です、行けます」
未だに目が回復しきってない小猫を残らせようと思っていたが、当の本人は準備万端と言うように意思表示する。
「じゃあ行くわよ。今度は同じ手を使わせないわ」
小猫の様子を見たリアスは安堵したのか、朱乃と小猫を連れて祐斗の後を追おうとする。
三人が走りながら廃屋を出ると、外は依然として結界が張られたままとなっているが、肝心の逃亡者二名の姿がなかった。
朱乃が張っていた結界があるにも拘らず、リアスは何故いないのかと周囲を見回していた。
「どう言う事? 結界は壊されてない筈なのに……朱乃、結界に何か異常はあるかしら?」
「いいえ、今も正常に機能してます」
「……ですが、二人の姿はどこも見当たりません」
余りにも不可解な事に三人が再度周囲を見回すが本当に二人はいない。
加えて祐斗の姿も見当たらないから、もしかしたら裏から逃げたのかと思い、リアスは移動しようとした。
だが――
「部長!」
突然裏の方から祐斗が焦ったような声を出しながら戻ってきた。
「祐斗、二人の足止めを命じたのに、どうして戻ってきたの?」
「それが………二人は既に結界を通り抜けて逃亡してました」
「「「!?」」」
祐斗の予想外な台詞を聞いた三人は驚愕する。
結界は正常に動いてる筈なのに、何故二人が逃げたのかと信じられないような顔をしていた。
「此方へ来て下さい。理由はそこにあります」
三人の反応を予想していたかのように、祐斗はリアス達を連れて裏へ案内する。
そして目的の場所に着くと、
「なっ!? け、結界が!」
「これは、結界を切った……のでしょうか?」
「……しかも円みたく丸い穴になってますね」
結界の一部を切り取られたように丸い円の穴が出来ている事に再び驚愕するリアス達。
「一応念の為に周囲全体を探してみましたが、二人の姿は何処にも見当たりませんでした。恐らく此処から通って逃亡したかと」
「くっ、何てことなの。まさか朱乃が張った結界さえも破るなんて……!」
完全に逃げられてしまった事にリアスは歯軋りする。
例え廃屋から撒かれても結界がある限りそう簡単に逃走出来ないと思っていたリアスだが、それは完全な誤算だった。相手の手玉に取られただけでなく、事前に手を打っておいた対策の結界までも破られた事に、もう完全にお手上げ状態。
「私の張った結界をこうも簡単に切り裂くなんて……どうやらあの二人は、相当な手練れのようですわね」
二人が逃げられた以上、結界を張る意味が無いと分かった朱乃はすぐに解除する。自分が張った逃走防止用の結界はそれなりの自信を持っていた朱乃だったが、こうも簡単に抜け出された事に悔しく思ってる反面、相手が相当な実力者である事も理解した。
「あの二人、油断出来ない相手ですね」
「……次は必ず……!」
祐斗と小猫も手強い相手だと理解するも、再び合間見えた時は最初から全力で戦おうと決意する。
そしてリアスは白般若の面を被っていた隆誠が逃走間際に、してやったりと言うような台詞を言って堂々と逃走した事を思い出す。その瞬間沸々と怒りが込み上げ、もう既に腸が煮え繰りくり返る状態となっている。次に会ったら絶対にただじゃおかないと。
怒りを込み上げるリアスだったが、キングである自分がいつまでも逆上してはいけないと目を閉じて何とか心を落ち着かせた。ある程度静める事が出来たリアスは、次に先ほどのやり取りを思い出す。
(確かあの二人は駒王学園の制服を着ていたわね。向こうは質問に答えてくれなかったけど、一先ず学園に戻って調べる必要が……そう言えば、逃げた赤い般若のお面を被ってた制服姿は――)
白般若は制服の上着を木場と同じくキチンと止めていたが、赤般若は上着やワイシャツが開いて赤いTシャツを着ていた事を頭に浮かべる。
(白い方はともかくとして、赤い般若の方には何処か見覚えが………っ! まさか!)
リアスはふと思い出す。自分が目を付けていた、とある男子の顔と制服姿を。
「……もしかしたら」
「部長、先ほどから何を考えていらっしゃるのです?」
考える仕草をしているリアスに朱乃が尋ねる。朱乃だけでなく祐斗や小猫も同様に気になっていた。
するとリアスが急に不敵な笑みを浮かべると、祐斗の方へと視線を向ける。
「祐斗、明日やってもらいたい事があるんだけど良いかしら?」
「構いませんが、何をすれば宜しいんですか?」
頼まれた祐斗は了承しながら尋ねる。
「明日の放課後、兵藤一誠君をオカルト研究部の部室に連れて来て欲しいの。私は兵藤隆誠君を連れてくるから」
――――――――――――――――――
「う~ん……多分グレモリーは気付いてるかもな」
グレモリー達から逃走後、俺は自宅前で移送方陣の術を使って部屋に戻っていた。無論イッセーも一緒に運んで、今は自分の部屋に戻っている。
夜中に出掛けていた事は両親は知らないので、家を出る前に前以て用意した影武者人形の俺とイッセーのフィギュアを部屋に置いといた。そうしておけば、俺とイッセーが部屋にいる事を誤認識させる事が出来るから。
んで、部屋に戻って影武者人形を片付けた俺は宿題をしてる最中、廃屋でグレモリー達とのやり取りを思い出していた。制服着用のままで廃屋に来た迂闊な行動も含めて。
「グレモリーの性格を考えると、明日は絶対に俺とイッセーに何かしらの接触を……ん?」
考え事をしてると、突然背後から気配を感じた。しかも存在感が薄いとも言える独特な気配。
多分部屋にいるイッセーは俺の後ろにいる存在の気配に気付いてないだろう。何しろ後ろにいる奴は俺にしか感じ取れないように抑えているからな。
見覚えのある気配に俺は振り向かずにこう告げる。
「人の部屋に忍び込むように入ってくるのは止めてくれないか?」
「……我、忍び込んでない。堂々と入った」
「俺が言ってるのはそうじゃなくて……まぁ良いか」
後ろにいる奴に言っても無駄だと分かった俺は嘆息しながら、座っている回転椅子をベッドの方へとグルリと向きを変える。
「それで? 今日は一体何の用だ、オーフィス」
「聖書の神、久しい」
俺のベッドの上にチョコンと座っている長い黒髪の小柄な少女、無限の竜神――オーフィスが俺に挨拶をしてきた。
―――――――――――――――――――
「ふあぁぁぁ……ねむっ」
廃屋ではぐれ悪魔を倒してリアス先輩とその眷属方と会った翌日の朝、俺は一人で学校に向かっていた。
大抵は兄貴と一緒に学校に言ってるが、今日は一人だ。何しろ兄貴が少し遅れて行くって珍しい事を言ってたからな。
思わず何か遭ったのかって訊いてみたけど、当の兄貴は「俺のことは気にしなくていいから、早く学校に行け」って言われたし。ありゃ何か絶対に隠してると思う。おまけに何か凄ぇ真剣な顔してたからな。
けどまぁ兄貴の隠し事ってのは殆ど危険なモンだから、あんまり気にしない事にしてる。以前好奇心の余りに自分から首を突っ込んで、とんでもねぇ目に遭ったからな。
まぁそれはともかくとして、朝学校に行く前に兄貴が、「今日は恐らくグレモリー達が接触してくるから気を付けろ」って言ってたな。赤い般若の面を被ってたから正体バレてねぇと思うけど、兄貴の言ってる事はいっつも当たるから警戒し解かないとな。
「はわう!」
ん? 何だ?
突然後方から声が聞こえると同時に、ボスンと路面に何かが転がった音がした。
思わず振り向くと、そこにはシスターが転がってってウホォ! スパークリングホワイトのパンツを穿いてる綺麗なお尻が俺の眼前に!!
「あううっ……。何で転んでしまうんでしょうか……?」
突然な幸福の光景に俺がにやけていると、手を大きく広げて顔面を地面に突っ伏しているシスターがそう言った。
俺にとっちゃ嬉しい光景だけど、何とも間抜けな転び方だな。
っと、いかんいかん! いつまでもお尻ばっか見てないで助けないとダメだな。
「だ、大丈夫っスか?」
俺が転んでるシスターへ近寄ると、起き上がれるように手を差し出した。
「ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」
あ、声からして若い。もしかして俺と同年代か?
そう思いながら手を引いて、シスターを起き上がらせる。
けど突然風が吹いて、ふわっとシスターのヴェールが飛んでいく。
ソレが飛んだ事により、シスターの金色の綺麗なストレートヘアーがの露になってキラキラと光っていた。
そしてシスターの素顔を見ようと俺は視線を移動する。
「―――っ」
…………俺は、一瞬で心を奪われた。
目の前に俺の理想とも言える金髪美少女がいる。それにグリーン色の双眸も余りに綺麗で引きこまれてしまいそうだ。
「…………可愛い」
ボソッと小さく呟きながらも、俺は目の前にいる女の子を見入っていた。
「あ、あの……どうしたんですか……?」
訝しげな表情でシスターは俺の顔を覗き込んでくるが、俺は未だにボーっとしていた。
「いつまで女の子の手を握りながら固まってるんだ、イッセー」
スッパァンッ!
「おぶっ!」
「はわっ!?」
突然俺の背後から兄貴と思わしき声と、ハリセンで叩かれる衝撃が俺の後頭部に襲い掛かってきた。