ハイスクールD×D ~転生のG~   作:さすらいの旅人

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第九話

 ~リューセーがイッセーの頭をハリセンで叩く数分前~

 

 

 『無限の竜神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスが俺の部屋に来た翌日。

 

 俺はイッセーより少し遅れて学校へと向かっていた。

 

「ったく、オーフィスの奴……。会う度に勧誘ばっかしやがって」

 

 朝の通学路を歩きながら思わず舌打ちする俺。

 

 昨日のやり取りはグレモリー達の対応以上に疲れたな。別の意味で。

 

 そのやり取りは以下の内容だ。

 

 

 

『我、聖書の神を勧誘しに来た。禍の団(カオス・ブリゲード)に来て欲しい』

 

『またそれか。何度も言ったろ? 俺はそんなふざけた組織に入る気は無いし興味も無い』

 

『……何故?』

 

『何故って……。じゃあ逆に問うが、何故お前は俺を勧誘するんだ?』

 

『聖書の神の力が必要。次元の狭間にいるグレートレッドを倒して、静寂を得る為に』

 

『………………』

 

『我、理由を言った。聖書の神、今度は我の勧誘を断る理由を知りたい』

 

『……………色々あるが、俺はもう人間に転生した身だ。嘗て『聖書の神(わたし)』本来の力の大半が制限されて使えない状態だし、実力なんて全盛期の半分も満たない。例え俺が全力でお前と戦っても、精々傷を負わせるのが関の山だ』

 

『力が足りないなら、我が蛇を渡す。それを飲めば、強大な力を得られる』

 

『要らん。俺は人間となっているが、これでも一応神としての誇りはそれなりにある。他人の力を得て楽に強くなる位なら、自分で鍛えて強くなった方が遥かにマシだ』

 

『……意外。我に協力する者達、力を渡す時は喜んでいた』

 

『向こうは向こう、俺は俺だ。寧ろ楽して強くなろうとする連中の気がしれん。って、話が少し脱線したが、俺が断る他の理由は今の生活が気に入ってるからだ。それを壊すような事はしたくない』

 

『……嘗て天界を治めていた聖書の神とは思えない理由。初めて出会った時とは全く違う。何故そこまで変わった?』

 

『それはお前の想像にお任せするよ。取り敢えず今日はもう帰ってくれないか? 明日は忙しい事になるから、もう早く寝たいんだ。これでも俺は一応人間だから、身体が睡眠を欲してるんだ』

 

『……分かった、帰る。聖書の神、また来る』

 

『また来て勧誘しても断るけどな』

 

 

 

 とまあ、こんなやり取りをしてたって訳だ。

 

 オーフィスは俺を変わったとは言ってるが、アイツもアイツで充分変わったよ。俗世に永く居続けた所為か、俺が嘗て『聖書の神(わたし)』として生きていた頃、初めて会ったオーフィスとは違って大きく変質している。

 

 もし仮にグレートレッドを倒して静寂を得たとしても、当時のアイツとは違うから、次元の狭間のバランスを崩してしまうかもしれない。

 

 昨日断った理由は偽りの無い俺の本心だが、今のオーフィスに次元の狭間を治めたら危険かもしれないと思ってる。故に協力する気は無かった。

 

 けれど俺としては、協力してる連中の事が気掛かりだった。ソイツ等がオーフィスのやる事に共感して、一緒にグレートレッドを倒そうとする……何てバカ正直に付き従うとは本気で思えなかった。

 

 何しろ禍の団(カオス・ブリゲード)と言う組織のやる事はハッキリ言って、本当の意味で世界を崩壊しかねない。それを協力してる奴等が、自分から滅びの道を歩もうとするなんて到底思えない。

 

 更にオーフィスは子供のように純真で純粋な存在だから、恐らくそこに付け込んで利用してる連中ばかりかもしれない。しかも当の本人は騙されてる、利用されてるなんて微塵も思ってないし。

 

「………いっその事、オーフィスをこの世界に留まるよう説得してみるか」

 

 俺はオーフィスと言う存在は嫌ってない。寧ろ好きな部類に入ってて気に入ってる。

 

 神を司る存在の中で、アイツほど純粋な奴は滅多にいない。世界や覇権など一切興味はなく、ただ只管(ひたすら)自分の故郷に帰りたいと願い続けている存在だからな。

 

「ま、オーフィスが応じてくれればの話しだが……」

 

 一先ずアイツがまた家に来たら説得しようと考えながら歩いてると、その途中でヴェールと思われる布が落ちていた。

 

 十字架の紋様? これってまさか教会のシスターが使ってるやつか?

 

「けどこの駒王町にシスターなんて……ん?」

 

 イッセーの気配を感じたので、そこに視線を向けるとイッセーだけでなく、シスターと思われる女性がいた。しかも見知らぬシスターの手を握って、見惚れてるかのようにジッと見つめている。

 

 彼女はイッセーの行動に戸惑いつつも声を掛けるが、当の本人が上の空でどうすれば良いか迷っている様子だった。

 

「ったく、何やってんだよあのバカは」

 

 懐からハリセンを取り出してイッセーの背後に近づき――

 

「いつまで女の子の手を握りながら固まってるんだ、イッセー」

 

 

 スッパァンッ!

 

 

「おぶっ!」

 

「はわっ!?」

 

 そのままイッセーの後頭部をハリセンで叩いてやった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「いやぁスマンスマン、俺はてっきりお前が朝っぱらから見知らぬシスターに良からぬ事をするんじゃないかと思って、つい」

 

「何が“つい”だ! 兄貴は普段から俺をどう言う風に見てんだよ!?」

 

 転んだシスターを介抱した事を分かった事を謝るが、心外だと言わんばかりにイッセーは激昂していた。

 

 だってしょうがないじゃん。自分好みの美少女の手をイッセーが握っていたら、何かするんじゃないかと思っちまったんだからな。

 

 普段学園でスケベな事ばっかしてるから、お前が善意でやっててもコッチから見ると良からぬ事をすると考えちまうんだよ。

 

「変態でスケベな愚弟」

 

「……あ~分かりました、今の一言でよっく分かりました! このクソ兄貴、今すぐにその面を一発ぶん殴って――」

 

「あ、あのう!」

 

 イッセーがポキポキと手の骨を鳴らしていると、金髪シスターが割って入ってきた。

 

「お、お二人はご兄弟なんですから、喧嘩はダメですよぅ!」

 

「「…………」」

 

「はううっ!」

 

 彼女の言葉を聞いた俺とイッセーは思わず揃って視線を向けると、金髪シスターは突然の視線に驚いて怖がってる様子。

 

 ………何か彼女を見てるとコッチが悪い事をした感じになるな。イッセーもイッセーで申し訳ない顔になってるし。

 

「はぁっ………あ~、すまんイッセー。俺が言い過ぎた」

 

「あ、いや、俺も悪かった」

 

 涙目となってる金髪シスターを見て互いに謝る俺達。

 

「ところで、このヴェールは君のかな?」

 

 取り敢えず早く話題を変えようと思った俺は、既に持っていたヴェールを金髪シスターに渡そうとする。

 

「あ、はい。ありがとうございますぅ」

 

 ヴェールを受け取ったシスターはお礼を言いながら再度頭に被る。

 

 見るからに純真な子だな。穢れと言う不純物が一切無いと思うほどに。

 

 よくよく考えてみたら、イッセーがこう言う純心無垢な子に対して良からぬ事なんてしないか。いかんいかん、つい先入観に囚われて誤解してしまった。

 

 そう言えば先日、ローズ店長がイッセーを襲った堕天使から聞いた情報に、レイナーレと言う女堕天使がシスターの神器(セイクリッド・ギア)に用があるって言ってたが……ひょっとしてこの子か?

 

「えっと、その旅行鞄を持ってるから察して、もしかして旅行でこの町に来たのかい?」

 

 シスターが持ってる旅行鞄を見てイッセーが問うと、相手は首を横に振る。

 

「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任する事になりまして……お二人もこの町の方なのですね。これから宜しくお願いします」

 

 この駒王町の教会、だと?

 

 妙だな。俺が知ってる限り、駒王町にある教会は一つだけしかない。けれど肝心のそこは現在、誰も使ってない筈なんだが……。

 

 俺が考え事をしてると、イッセーとシスターは会話を続けている。

 

「この町に来てから困っていたんです。その……私、日本語が上手く喋れなくて……道に迷っていたんですけど、道行く人に尋ねても言葉が通じなくて」

 

 台詞から察するに、漸く会話出来る俺達と出会えた事に安堵してるようだな。

 

 元『聖書の神』である俺は最初から言語を理解してるが、日本人であるイッセーは分からない。と思われるが、イッセーもシスターの言語を理解している。しかも日本語のように、な。当然それには理由がある。

 

 俺が遠出をする際は海外にも行っていた為、俺と一緒に同行してるイッセーは当然各国の言語が全く分からない。その対策として、俺はイッセーに音声言語を理解出来る為の術式を施しておいた。ある意味『聖書の神(わたし)』の加護、とでも言うべきか。

 

 まぁその術式を施した事によって、今のイッセーの言葉は全世界に通じる。イッセーが相手に話す際、イッセーの声を耳にする外国人は一番聞きなれた言語として受け入れる。例えばアメリカ人なら英語で、中国人なら中国語としてイッセーの言葉が聞こえる。逆にイッセーが日本語以外の言語を聞いても全て日本語として変換される。

 

 凄く便利な物だと思われるだろうが、あくまで音声だけで文字までは理解出来ない。尤も、会話が出来るだけで充分だがな。

 

 とまあ、俺が施した術によってイッセーはインターナショナルの高校生だ。その気になれば通訳士の職業にもなれる。まぁ本人は『そんな職業は俺的には嫌だ』、と言ってたがな。贅沢な奴め。

 

「教会なら俺たち知ってるよ。なぁ兄貴、この子を教会に案内しようと思ってんだけど……良いか?」

 

「ん? ああ、構わん。困っている人を助けるのは当然だからな」

 

 況してやこの子のような純真なシスターなら尚更、な。

 

「ほ、本当ですか! あ、ありがとうございますぅぅ! これも主のお導きのおかげですね!」

 

「っ!」

 

 涙を浮かべながら微笑むシスターだが、俺は思わず顔を逸らしてしまった。

 

 ………主の導き、か。

 

 今まで『聖書の神(わたし)』の名を利用して悪事を働いてた教会関係者共には嫌悪してたが、こんな純真なシスターに言われると、思わず申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「? どうかしましたか?」

 

「兄貴?」

 

「………いや、何でもない」

 

 急に顔を逸らした俺にシスターとイッセーが問うが、すぐに笑みを浮かべて何事も無いよう振舞った。

 

 そして俺とイッセーは一緒にシスターを教会へ案内してると、公園の前を横切る。

 

「うわぁぁぁぁん」

 

「大丈夫? よしくん」

 

 突然、子供の泣き声と母親と思われる声が聞こえた。

 

 あの様子から見て、子供が転んで泣いたのを見た母親が宥めているんだろう。

 

 もし子供だけだったら俺が行ってるが、母親がいるなら大丈夫だ。

 

 そう思ってると、イッセーの隣にいたシスターが突然公園の中に入って、転んだ子供の方へと向かった。

 

「おいおい」

 

「やれやれ……」

 

 シスターの行動にイッセーと俺は後を追う。

 

 どうやらシスターは母親がいても見過ごす事が出来ないようだ。

 

「大丈夫? 男の子なら、この位のケガで泣いちゃダメですよ」

 

 シスターが優しさに満ち溢れてる表情をしながら、子供の頭を優しく撫でている。

 

 言葉が通じていなくても、子供は泣くのを止めてシスターをジッと見ていた。子供の様子に彼女はゆっくりと自信の掌を子供が怪我をした膝へと当てる。

 

 何をする気だと思った次の瞬間、俺は目を見開いた。シスターの掌から淡い緑色の光が発せられて、子供の膝を照らしている。

 

「お、おい兄貴、アレってまさか……!?」

 

「そのようだ」

 

 イッセーが驚きながらも小声で俺に話しかけてくる。当然の反応だ。

 

 そして子供の怪我が見る見るうちに消え去っていく。いや、あれは傷を治している。

 

 その光景を見て俺はある事を思い出した。数日前にローズ店長が言ってた情報を。

 

『レイナーレがこの町に来る予定の現在堕天使側に所属してるシスターちゃん、正確にはシスターちゃんの神器(セイクリッド・ギア)に用があるみたいなのよ。しかも神器(セイクリッド・ギア)の中でもかなり希少よ。えっと確か……『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』だったかしら?」

 

 ……まさか、そのシスターがこの子だったとは。

 

 ん? 待てよ。ローズ店長の情報だと、このシスターは堕天使側に所属してるって言ってたが……。シスターが行こうとしてる教会はまさか……。

 

 いや、まだあくまで俺の想像に過ぎん。確かにあの教会は使われてないが、それを堕天使側が利用してると言う確証がまだ無い。動くにしても、あのレイナーレって言う女堕天使が教会にいる証拠が必要だ。後でちょっと確認の為に、ローズ店長に訊いてみるか。

 

「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」

 

 傷の治療を終えたシスターは子供の頭をひとなでし、俺たちの方へ顔を向ける。

 

「すみません。つい」

 

 彼女は舌を出して、小さく笑う。

 

 出来れば俺としては、神器(セイクリッド・ギア)を使って治療するなんて軽率な行動をしないで欲しいんですけど。

 

 ほれ、さっきまできょとんとしていた母親が頭を垂れながら、子供を連れて薄気味悪いようにそそくさと去ったし。

 

「ありがとう! お姉ちゃん!」

 

 まぁ逆に子供は感謝してるが。

 

 子供の言葉を理解出来なかったシスターが不可解な顔をしてると――

 

「ありがとう、お姉ちゃん。だってさ」

 

 イッセーが通訳した途端、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 

「なぁ、その力って……」

 

「はい。治癒の力です。神様から頂いた素敵な物なんですよ」

 

「…………………」

 

 彼女の言葉を聞いて俺は少し顔を顰める。

 

 その素敵な力を貰ったと言うのに、『聖書の神(わたし)』の前で何故そんな寂しげな顔をしてるんだ?

 

 と言いたい衝動に駆られたが何とか抑えた。

 

 今の彼女を見てると少し忍びなかったので、俺はある目的を遂行する為にイッセーとシスターから別れようとする。

 

「イッセー、悪いがお前だけで彼女を教会まで案内してやってくれ。俺はちょっとやる事が出来たから」

 

「え? ああ、それは構わないが」

 

「もう行ってしまわれるんですか? 出来れば教会に着いたらお礼を――」

 

「その気持ちだけ受け取っておく。ああ、ついでに俺からのアドバイスとして忠告しておく」

 

「?」

 

 俺からの忠告をシスターは首を傾げながら聞こうとする。

 

「あまり言いたく無いが、あの力の事を全く知らない一般人相手には不用意に使わない事だ」

 

「!」

 

「お、おい兄貴、いきなり何を……!」

 

 俺の指摘にシスターはビクッと震えると、イッセーがすぐに割って入ろうとする。が、俺は気にせず続ける。

 

「シスターの君が善意で子供を助けたとしても、相手は逆に却って恐れられる。あの母親みたくな。人間って言う生き物は、未知の力に対して必ず恐怖する。その事を忘れないように。それじゃ」

 

 忠告をした俺はイッセーとシスターに背を向けて去っていく。先ほどそそくさと子供を連れて行った母親の後を追い、シスターに関しての記憶を消去しにいく為に。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

「……分かってます。ですけど、私はそれでも助けたいんです」

 

 兄貴が去った方角を見ながらシスターが呟く。

 

 くそっ! 文句言いたかったけど兄貴の野郎、颯爽と去りやがって!

 

 まぁ兄貴の言いたい事は分からなくもない。

 

 確かにシスターのような力は一般人から見たら恐怖モンだ。自分に絶対出来ない事を目の前で見せられたら誰だって恐怖する。それは間違っちゃいない。

 

 けどだからって、会ったばかりのこの子にいきなりそれ言うのは酷だろうが。

 

 ったく、兄貴はそう言う事に関してデリカシーねぇからな。って、そんな事より俺がシスターを元気付けないと。

 

「あ、兄貴の言った事は気にすんなって。俺は君のやった事は間違っちゃいないって思ってるからさ!」

 

「……ありがとうございます」

 

「さぁさぁ、早く教会に行こうか!」

 

 笑顔でそう言いながら俺はシスターを連れて目的地の教会へと向かった。

 

 兄貴には後で俺の方から言っておかないとな。こんな純真な子に対して酷な忠告した事について。

 




言っておきますが、私はアーシアアンチではありません(これ重要)

ただ単にリューセー(聖書の神)から見て、彼女の行動は不用意だと忠告しただけに過ぎません。
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