→このすばのゆんゆんって子、スゲー好み(二番手はめぐみん)
→せや!この子ヒロインにしてちょっと短編やってみるか!
→…見れば見る程即落ちしそうなチョロさ。これ普通に誠実に対応して適度なタイミングで告白すればイケちゃうからカップル成立までの過程がつまんなくない?
→相手側の男も誠実な感じだと幼馴染みものばりに山無し落ち無しになりそう。
→よし、カップルどころか夫婦成立した状態で話を進めてさっさと終わらせよう。
これは異世界人カズマと愉快な仲間達による魔王退治後のお話。
ある夜、すっかり高等遊民となったカズマは安酒に分類されるシュワシュワではなく、高級なアルコールで火照った身体で、その背にめぐみんを抱えながら帰路についていた。
「まっさか、ゆんゆんが結婚するとはなぁ…。」
日本ではまだ中学生程度の年齢のゆんゆんが、彼女の二つ上程度のまだまだ子供と言える年齢の冒険者仲間とカップルとなり、あっさりと結婚した事はアクセルの街にそれなりに大きな波紋を生んだが、周囲からの反応は極一部を除いて祝福ムード一色だった。
斯く言うカズマもまた祝福側の一人であり、件の冒険者がとても常識的で誠実で優秀な奴である事、ゆんゆんと真剣に交際を重ねてゴールした事も知っている。
だがしかし、今自分の背で爆睡かましている幼馴染みであるめぐみんだけは結婚式当日までこの結婚にぶつくさ言っていた。
『ああああああああ、ああのあのあのゆんゆんがけけけけけけけっ結婚んんんんーーーっ!?』
『何ですかそれ何ですかそれはーー!?騙されてます、それ絶対騙されてますよゆんゆんんんんんんんんんんんんんッ!!!』
結婚報告にカズマ達の屋敷を訪れたゆんゆんと旦那に対し、めぐみんはこう叫んだ。
すると、今までに見た事ない程にガチギレしたゆんゆんにより、めぐみんはボコボコにされた。
大抵は体格差もなんのそのでめぐみんが勝利するのだが、今回ばかりはガチでキレたのが原因であった。
『え、お前マジでゆんゆんと結婚すんの?付き合ってたのは知ってたけどさ…。』
『今のままだと安心してくれないですし、あーゆーゆんゆんを好きになったんです。確かにちょっと早いですけど、貯蓄もしっかりありますし大丈夫ですよ。』
『お、おう…。』
自分よりも小柄な幼馴染みのめぐみんをボコボコにして仁王立ちするゆんゆんの姿を横目に、男2人はこそこそと話す。
『何という割れ鍋に綴じ蓋…。ま、良いさ。結婚式には呼んでくれよ。』
『勿論。ただ紅魔族の里への挨拶には付き添ってほしいなーって…。』
『めぐみんに頼めよそこは…。』
後日、めぐみんと共に紅魔族の里に向かった二人は盛大にお祝いされつつもやっぱり大騒ぎになったそうな。
まー族長の一人娘が他所で男作って結婚とか、フツーは問題だよな、うん。
で、この一か月後にアクセルの街で冒険者仲間を始めとした世話になってる面々&紅魔族の里の人々が参加する盛大な結婚式が開かれる事となったのだ。
なお、アクセルの街に大量の紅魔族がやってくる事を聞き、一時人々が恐慌状態に陥り、他所に逃げ出すという珍事が起こったりもした。
「綺麗だったなぁ、ゆんゆん。」
そんな紆余曲折を経て開かれた結婚式は、それはもう盛大なものだった。
何せ始まりの街アクセルで結婚式をする冒険者は少ない、否、殆どいないと言っても良い。
サキュバスの存在や初心者向けの街と言う事もあって、この街に骨を埋める様な事をする者は元々いた住人とかを除けばとても少ない。
それでも田舎から出て冒険者を志す者の多くはアクセルにやってくるため、その人口が減る事は余り無い。
そのため、冒険者主体の結婚式と言うのはとても珍しく、関係各位は己が力の限り飾りつけや宴会芸に注ぎ込んだ。
結果、とても愉快で楽しいハレの気に満ちた結婚式になったのだった。
なお、神父乃至牧師役は何とアクアが就任していた。
いや、アークプリーストなので相応しくはあるのだが、アクシズ教に縁持っちゃうとか大丈夫か?と言う懸念もあったが、流石に結婚式邪魔する程アレな連中ではなかったらしく、アクセルの街に潜む少数のアクシズ教徒(!?)も今回ばかりは大人しかった。
飾り付けられた式場で、バージンロードを新婦と付き添いの両親(当然だが紅魔族族長夫婦!)が歩いていく。
ウェディングドレスに身を包んだゆんゆんのベールガール(裾持ち)を務めたのは何とめぐみんだった。
身長故に違和感はないが、二人が幼馴染みと知っている面々からすればちょっと意外だった。
よく見ればめぐみんの目元が腫れている事が分かるが、今この時は誰もそれを指摘する様な無粋な真似はしなかった。
『新郎、あなたは新婦を妻とし、病めるときも健やかなるときも、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?』
『はい、誓います。』
『新婦、あなたは新郎を夫とし、病めるときも健やかなるときも、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?』
『はい、誓います。』
『では、指輪の交換を。』
どっかで見聞きした覚えのある誓いの言葉等にカズマがちょっと微妙な気分になった。
これもきっと過去の転生者が伝えたんだろーなーと相変わらずこの世界の変な部分に目が遠くなった。
新郎新婦が互いの左手薬指に指輪を填める。
この指輪は紅魔族の有志による魔法がかかった特別製であり、何か異変(浮気含む)があれば直ぐに相方に伝わる結構レアな代物だ。
『では、誓いの口づけを。』
『ゆんゆん、オレと一緒に幸せになってくれ。』
『はい…!』
女神と仲間達からの祝福の最中、ここに一組の夫婦が生まれたのだった。
他人の結婚式に参加するのは初めてなカズマにとって、その光景は余りに美しく、眩しく、何よりも羨ましかった。
「すぅすぅ……うぅ~ん…かずまぁ~…。」
「へいへいっと。」
その後はもう皆で正気を失う程の大宴会だった。
あれ程乱れたのは魔王退治後の打ち上げ以来であり、普段は何だかんだセーブしているクリスですら大酒カッ喰らって酔っぱらっていた程だ。
酒を樽で飲みまくるアクアや酔ってドレスを脱ぎ出そうとして取り押さえられたダクネスを放って、酔い潰れためぐみんを背負って、カズマは屋敷への帰路へと就いていた。
「なーなーめぐみーん。」
「Zzzz……。」
背中で暢気に眠るめぐみんからの返事なんて期待せず、カズマは極自然体にぽろっと口を開いた。
「俺達も結婚しないか?」
言ってから、途端に恥ずかしくなってきた。
「なーんて、な…。」
しかし、何だかんだ鋭いカズマはここで気付いてしまった。
先程まで聞こえてきためぐみんのイビキが消え、何だか背中に感じる体温が急に高くなっていく事を。
「お、おい。」
「…………。」
「まさか、その、もしかしてとは思いますが……。」
「…………。」
「起きてらっしゃいますかめぐみんさん???」
「………………………………………………………………………………はい。」
ぎゅっと、めぐみんがか細い声と共にカズマの服の背中部分を掴んだ。
「えと、その、不束者ですが……よろしく、お願いしますね?」
「お、おう!こここ今後もよろしく頼むわ!」
自分でも声が上ずり、動悸が激しくなっているのが分かる。
それでも一先ずちゃんと返事を出すべきだと思って口を開いたが、こんな時ばかりは普段の弁舌の良さは発揮できず、何か変な事言ってないか不安に過ぎた。
「でもその内リトライさせてくださいお願いします何でもしますから。」
「し、仕方ないですね。それ位は許してあげますっ。」
こうして、何だかんだ言って相性の良かった二人はアクセルの街で二組目の夫婦となるのだった。
……………
死んだと思ったら異世界転移、それも魔王退治して欲しいとか一介のアラサーには無理ゲーに過ぎる。
厨二病だったが、そう思う程度には自分と言う人間の限界も知っていた自分は転生特典を貰うと生活していく事に専念する事を決めた。
自分の特典は「どんな時も健康で頑丈な身体」「防いだ攻撃を倍にして敵に反射する盾」だ。
仕事で身体を半ば壊しながら働き続ける生活を送る中、交通事故で死んだ自分にとっては健康と護身は何よりも優先すべき事だったからだ。
が、予期しないチートの副作用と言うべきか、肉体が嘗ての人生における全盛期とも言える十代半ばで殆ど固定されてしまったのは驚いた。
髭剃る必要も殆ど無いとは言え、ちょいと感覚よりも手足のリーチが短いのは慣れが必要だなコレ。
まぁ特に問題らしい問題も無いので、この外見相応の年齢を名乗る事にしよう。
で、一応暫くは生活に困らない程度の金銭と衣服と装備一式、更に冒険者にとって始まりの街とされるアクセルに送ってもらった自分は、そのまま入口の衛兵?警備?の人の助言に従って冒険者ギルドへと登録のために向かった。
「え、えーと、登録は…あそこ、だよね…?うぅ…でもでも…っ。」
そこには如何にも人付き合いが苦手そうな奥手の魔法使いそうな女子がマゴマゴしていた。
分かる、とてもよく分かる。
自分も昔そんな感じだったからよ~~~く分かる…!
………よし、これも袖振り合うは多生の縁。
自分も異世界とか初めて尽くしだし、ここは現地住民のあの子と多少でも信頼関係を築いて情報収集&冒険者としての仲間確保を試みてみよう。
「あの、ちょっと良いですか?」
「…ふぇ!?わ、私ですか!?!」
「はい、そうです。」
「あ、あばばばばばばばばばば…!?!?!?」
「ゆっくりで良いですからねー落ち着いてくださーい。」
この時、自分は知らなかったのだ。
声をかけた魔法使いの女子、即ちゆんゆんがただのボッチ陰キャではなかった事を。
紅魔族の族長の娘であり、優れたアークウィザードであり、何より依存系メンヘラで少しでも距離を離そうとすると泣きながら縋り付き、行方を晦まそうものなら他の盗賊ギルドに依頼して情報収集し、剰えテレポートを使用してでも追跡してくるガチのストーカー気質の持ち主である事を。
この時の自分は、何も知らなかったのだ。
ま、何だかんだ言って美人だし巨乳だし優秀だしで絆されて結婚して子供作って幸せになったんだけどネ!