徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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くそ、予定の半分もいけんとは!
次回以降はIS学園での生活になります。


IS転生 三組代表が逝く

 「テンプレテンプレ、転生特典何がほしーの?」

 

 そこで迷わずオタクな自分は「ライダー」になりたい、とか言っちゃったのが駄目だった。

 次の瞬間には、やべ退かれたかな?と思ったのだが、既に後の祭り。

 

 「おkおk。んじゃライダーにしてあげるー。転生先はランダムだけど、それに合わせたげるから。」

 

 その内容を詳しく聞く事も出来ず、気付けば私は転生していた。

 この後に自分が直面する事態も知らずに。

 

 

 ……………

 

 

 転生した私が生まれたのはよく見知った現代の日本、その極平凡な家庭だった。

 若干残念ではあるが、それでも衣食住の安全が確立している状況は喜ばしい。

 私は子供の演技をしながら、この二度目の生を平和に生きていた。

 しかし、それは唐突に崩される事となる。

 何の前触れもなくハッキングされた世界中の軍事基地から核ミサイルが日本へと発射されたのだ。

 その事態に対し、自衛隊はその総力で以て抗ったものの、余りの物量に日本消滅かと本気で危惧された。

 しかし、それはたった一機の兵器によって覆された。

 その名もインフィニット・ストラトス。

 元は宇宙開発用の多目的パワードスーツだ。

 それによって日本本土へと着弾する筈だったミサイルは全て撃墜された。

 だが、それはあくまで本土だけだ。

 本土に到達できずに墜落したミサイルにより、諸島や航空機、艦船に多大な被害が発生し、万単位の死傷者が発生した。

 その中には、私の父の名もあった。

 

 

 ……………

 

 

 日本はこの事態に対し、世界各国政府を非難すると同時に、その辺りを軸に交渉し、復興費用を各国からの基金と言う形でゲットすると言う外交的勝利を得た。

 が、余りにもデカい被害に頭を抱えつつ、センセーショナルなデビューを果たしたISについての対応も考えねばならなかった。

 と言うか、速攻で開発者を確保する事に成功したものの、知れば知る程に量産には不向きなものだと判明し、頭を抱えた。

 ISの中枢であるISコア。

 量子CPUであり、大出力の発電装置であり、慣性制御装置であり、量子変換による物質保管能力を持った、正にSFの産物だったのだ。

 当然、政府が抱える御用学者では解析し切れず、国内のあらゆる科学者がその頭脳を結集してもなお完全な解析は出来ていない。

 況や、それを量産するとなると現時点では不可能だ。

 劣化品の生産すら目途が付かない現状に、日本国政府は頭を抱えた。

 在日米軍は頑張ってくれたが、その米国からすらミサイルが飛んできた現状、日本は世界を相手に自衛できるだけの戦力を欲していた。

 しかし、単騎でそれを叶える戦力の量産は不可能だ。

 となれば、開発者には頑張ってコアを量産してもらわなければならない。

 幸いと言うべき、ガワの方は何とか出来そうな目途が立ったので、暫くの間はパイロットの少女に国防に参加してもらいつつ、開発者の基地外少女にはコア部分のみだが量産してもらう運びとなった。

 無論、報酬は個人に払うものとしては法外な額を出した。

 まぁ既存の兵器を量産し、武器弾薬まで自前で揃えるよりは遥かに低コストなのだが。

 ついでに次も同じ事態が起こった時のために、と自衛隊を国防軍にする事も出来たので、防衛組からは装備の大規模更新もあって万歳三唱された。

 しかし、これにISの存在に危機感を抱いた各国が「うちらにもISコアを寄越せ」と強請り始めたのだ。

 此処から本気モードの終わってしまった日本のグダグダが始まり、後に国立IS学園設立の運びとなる。

 

 

 ……………

 

 

 さて、そんな国際政治は(現時点では)関係の無く、この世界が漸くIS世界だと気づいた私の下に、父の訃報が届いた。

 出張先からの帰りの便の旅客機がミサイルで撃墜されたのだ。

 無論、国からは多額の見舞金が贈られたが、父を熱愛していた母はそれで夢の国の住人となり、ベッドへと移住した。

 そして私は小学校低学年にして一人暮らしを送る破目になった。

 私みたいな転生者でもない限り、絶対精神を病むぞコレ。

 何とか近所の人や先生方の助けにより一人暮らしをしていた私だが、それもある時を境に終わる。

 ある日、日本全国で緊急の健康診断が年代を問わず行われたのだ。

 十中八九、ISコアの適正検査だ。

 実際、各検査場では妙な球体に触れさせられたとネットでも話題になっていた。

 んで、私の適正値だが……なんとAランクだった。

 実質織斑千冬以外では専用コアを使わない限り生じる事のないSランクを除けば、最高の値だった。

 そう言えば、言い忘れたが、私のチートは騎乗スキルの最上位と言うべきか、乗り物と認識さえすれば、何でも運転できると言う所だ。

 それこそ、下は竹馬、上は最新鋭戦闘機まで。

 そこにはISすら例外ではない。

 そして、政府としては現状数少ない高い適正持ちなのに、幼女が独り暮らしとか狂気の沙汰であるし、下手しなくとも誘拐の危険が高いと考えられた。

 なので、ある日役人が現れ、住み慣れた我が家から強制的に孤児院へとお引越しとなり、同時に小学校も転校となった。

 それだけならまだ良かったのだが、住み慣れた我が家は売り払われ、母の入院費にされた。

 ふざけんな!と思った私は悪くない。

 そして、孤児院から国立の学校に通い、小学校としては相当高度な教育(IS関連)を受けつつ、孤児院に帰ったら帰ったでIS関連の講義を家庭教師(強制)から受けさせられる。

 噂の要人保護プログラムよりはマシかもしれんが、前世一般人で平和に暮らしてた20代後半としては殺意しか湧かない。

 あの家、両親の思い出の品がたくさんあった上に、苦労してネット環境揃えてたんだぞ!

 しかも近所の人達と料理の交換し合いも楽しみにしてたのに!

 何時か絶対に訴えてヤラぁァァァァぁァァァァ!!

 そんな殺意を抱えつつ、私は只管IS関連の知識を詰め込み続けた。

 あ、そうそう。

 二回程オリンピックみたいなIS競技が行われ、一回目が日本優勝、二度目が不戦勝でアメリカが優勝でした。

 

 そして、中等部に進学した頃、とある人物に出会った。

 眼鏡をかけた、水色の髪の、オタク特有の気配を纏った美少女。

 そう、あの更識簪だ。

 それとなーく、映画やアニメ、漫画の話題等を振りつつ様子を窺うと、よー食いついてくる。

 あれだ、少数民族の悲哀と言うか、オタク趣味を持った人間でオープン気質ではない者は常に同胞を探しているもので、簪もその例に漏れなかった。

 なんで知ってるかって?言わせんなよ恥ずかしい。

 と言う訳で、私は簪と速攻で仲良くなった。

 その伝手でダボダボ袖ののほほんさん、もとい布仏本音さんとも仲良くなれた。

 ゲーム・アニメ・漫画好きな同士(私は特に型月系、簪さんは戦隊・メタルヒーロー等の特撮系)であり、趣味を共有できる相手として、互いに直ぐに仲良くなった。

 とは言え、最新アニメとかどうしても住んでるのが孤児院なので見れないのだが、その辺りは簪が密かに持ってきた小型端末を借りて見る事が出来た。

 人格・容姿・趣味、どれをとっても得難い友人を得る事が出来たのが、この学校に来て最大の成果だった。

 なお、時々笑みはそのままに鋭い目でこちらをじっと観察しているのほほんさんはちょっと怖かった事を明記しておく。

 後、在学中にIS学園が正式に設立、稼働を開始したので、私も簪ものほほんさんも進学先はそちらになりました(強制)。

 

 

 ……………

 

 

 「で、なーんでバトルロワイヤル形式の模擬戦かなぁ…。」

 

 倉土灯は死んだ目をしながらISを纏い、宙に浮かんでいた。

 ここは日本国国家代表候補生選抜試験の実技会場であり、そこに灯は最近量産の始まったIS打鉄を纏って参加していた。

 他の候補生達(簪含む)は強化ガラス越しにこちらを見ており、会場の反対側には同じ年ごろの少女がISを纏って宙に浮かんでいる。

 あちらが対戦相手であり、二機のISを用いた総当たり戦が今回の内容だ。

 確かに効率的なのだが、絶対に日本国政府のためには働きたくない私としては、代表候補なんて糞喰らえだった。

 だが、下手な事をすれば母親の身が危ないかもしれないし、未だガキの身では食い扶持を稼げない。

 なので、学んだ知識を生かしつつ、国家代表以外の就職先、例えば企業のテストパイロット辺りが狙い目だと思っている。

 とは言え、目の前の課題に手抜きして取り組んでは相手にも失礼だし、経歴に汚点として残りかねない。

 なので、全力を出す事にした。

 

 

 ……………

 

 

 (ふふふ、あんな気の抜けた相手なら楽勝ね。)

 

 私は勝利を確信していた。

 私の家は元々防衛関連に関係があり、父も祖父も自衛隊(祖父は警察予備隊、父は今は国防軍だが)出身で、私も将来的に国防軍所属のISライダーを目指している。

 そのためにも、この国家代表候補生選抜試験で良い成績を残す必要がある。

 幸い、相手は本当に一般人であり、こちらの様に軍事的な手解きを受けている訳ではない。

 無論、初めてのIS装着と言う事で戸惑いがあるが、それは相手も同じ条件だ。

 なら、私が負ける道理はない!

 だが…

 

 『これより模擬戦を開始します。3、2、1…」

 「逝く。」

 「え?」

 

 そんな自信、否、驕りは一瞬で砕かれた。

 イグニッション・ブースト(瞬時加速)。

 熟練者にとっては必須の移動技術、自分でも未だ使えない技を、目の前の相手は使ってみせた。

 その動きをISのハイパーセンサーによって辛うじて捉えながら、しかし、私は驚きの余り動きを止めてしまった。

 ほぼ同時、衝撃が自分を襲う。

 武器を出す間もなく、ISのエネルギーシールドが干渉し合う程の距離での打撃に、私は漸く正気に戻り、次いで怒りを抱く。

 素人相手に、この私がしてやられた!

 その怒りと共に、こちらも殴り返すべくISの拳を振るう。

 しかし、相手は初体験とは思えない動きでヒラリとこちらの拳は宙返りする事で回避、次いでバススロット(拡張領域)から量子変換で呼び出されたアサルトライフルを手に距離を保って射撃してくる。

 空かさずこちらもその場から回避し、アサルトライフルを呼び出し、応射する。

 だが、そこは第二世代ISの中で最も信頼性と耐久性、精密動作に優れる打鉄である。

 互いに非固定浮遊部位である大型の物理シールドを構えつつの射撃となれば、必然的に地味な削り合いとなる。

 相手は三点バーストで、こちらはセミオートで互いを狙い、円状の回避機動を取りながら撃ち合う。

 それはさながらサークル・ロンド(円状制御飛翔)にも似た硬直状態だったが、それは30秒もしない内に均衡が崩れる。

 

 (、上に!)

 

 一瞬だけフルオートで射撃してこちらを牽制した後、相手は即座に上昇して頭上を取ってしまう。

 こうなると、重力の関係上こちらの方が受けるダメージが大きくなってしまう。

 

 「こ、の…!」 

 

 もう素人相手と言う慢心は無かった。

 ただ、負けられないと言う闘争心ばかりが身を動かしている。

 こちらも後を追う様に上昇を試みる。

 しかし、相手はそのままこちらへと頭を向けると、正面から突っ込んできた。

 その手には何処か日本刀にも似た片刃のブレードが握られ、肩に置く様に構えられており、一発で狙いが分かる。

 

 (ならこっちもブレード!)

 

 だが、こちらがブレードを展開する前に、相手はこちらにブレードを振り下ろしてきた。

 

 (重い!)

 

 咄嗟に 二枚の物理シールドで防いだが、刃が深くめり込み、こちらが一方的に押し負けてしまう。

 同じ機体、同じ出力の筈なのに、どうしてこうまで差があるのか?

 それに疑問を感じつつ、しかしこのまま負けてはやれないと物理シールドを強制排除、これで相手はブレードを使えない。

 

 「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 次いで、右手に呼び出したブレードで切り掛かる。

 だが、相手は予想以上の手練れだった。

 切り掛かるこちらの右手へと瞬時に呼び出したハンドガンで至近距離から発砲、腕部ではなく、指を正確に狙い撃ちした射撃に因り、ブレードがすっぽ抜けてしまった。

 

 「な」

 「じゃあね。」

 

 そのまま腕を掴まれ、逃げられなくされた後、眼前の至近距離へと向けられた銃口から、連続してマズルフラッシュが放たれた。

 

 「こ、のおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 だが、このままでは負けられない。

 私はもう意地だけで拳を振り回し、相手へと殴り掛かる。

 最早勝利は不可能だが、それでもこれ以上の無様は晒せなかった。

 

 「残念。」

 

 しかし、だ。

 何処の業界であっても、天才と言うのはいるらしい。

 まぁ、このISすらそうした天才の生み出した発明なのだから、当然と言えば当然だが。

 物理シールド、特に打鉄のそれは僅かながら自己修復機能を持った第二世代ISの装備において最硬の盾だ。

 なので、そんなもので拳を反らされた後、カウンターでドタマに叩き込まれようものなら、減少していたシールドエネルギーは当然の様に底を突いた。

 

 『そこまで! 勝者、倉土灯!』

 

 こうして、私の初めてのISの実機操縦は散々な目に遭う事で終わってしまった。

 

 

 

 

 なお、今回の代表候補生合格者は私とあの倉土の他、簪と言う子の三人だけだった事を明記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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