『20周年やからって仮面ライダー希望の転生者多杉ィ!?しかも殆ど昭和やんけ!』
『せや、こいつら纏めて一つの世界に転生すりゃ手間が省けるやん!』
『転生する世界は……こいつらがいても問題ないとこ用意したろ!』
『ほな良き来世ー!』
そんなふざけた事を最後の記憶に、彼らの意識は闇に飲まれた。
……………
とある神が転生者達を送り込んだ世界。
そこはグルメ界ばりに過酷な自然環境だった。
一番弱いスライムであっても、核以外は打撃無効、強酸性の体液を持ち、あらゆる環境に適応して餌さえあれば無尽蔵に増える。
更に、モンハンに出てくる様なドラゴンがあちらこちらに生存し、終わりのない生存競争に明け暮れているのだ。
そこで彼らはその世界における人類として生を受けた。
が、その世界の人類は地球人類とは大きく異なる生態だった。
通常の人類では絶対に生き延びる事の出来ないこの地獄で、彼らは他の生物の細胞を取り込む事でその性質の一部を取り込み、人類以上の存在となって戦う。
その技術を確立する過程で多くの犠牲が出たものの、それでも生き残る術を得たのは大きい。
こうして人類は過酷な自然環境に対し、果敢にも抗い始めたのだった。
「まぁ俺達が転生したんで、技術も戦術も生活基準もがっつり上がったんだけどな。」
「そっすか。」
そんな話をされても一番新入りの転生者である自分としてどう反応すれば良いのか分からないですライダーマン先輩。
「あ、言っておくが俺の他にもライダーマンっぽい奴はいるから区別しろよ。」
「分かってます。ショッカーライダーが如く体格も声も皆さん全然違いますし。」
ただし全員がIQ200の天才的頭脳を持っていらっしゃるご様子。
俺がショッカーだったら勝てるか!と卓袱台ひっくり返すわ。
「まぁ元がグロンギというか魔法というかグルメ細胞染みた方法で変身してる訳だから、割と個体差大きいですし、生物的な見た目なんで、変身時も割と区別つきますよね。」
「慣れると一発で分かるしな。」
なお、転生者じゃなくてもこの世界で生まれた純粋なライダーマン似の人類もいる模様。
そんな多数のライダー転生あるあるは置いといて。
「で、今回の要件は何なんですか?」
「先日現れた門があるだろ?」
「あぁ、あの。」
門というのは、つい一週間程前に現れ、たった三日で消えていった不思議な石造りの門だった。
出現時に空間転移を起こしていた事から、異世界か何かと繋がっていると判明しており、観測された向う側の植生並び生物からこちらよりも気候の緩やかな地球型惑星だと推測されている。
「あの門をある程度解析した結果、こちら側でもある程度再現できそうでな。」
「流石っすね。」
「皆久々の実k…モルm……兎に角、研究対象に喜んでいてな。」
「で、本音は?」
「皆、インフラとか生活に根差した研究より興味や趣味に全力でなぁ…。」
まぁ大半がマッドサイエンティストのライダーマンsでは仕方ない。
「とは言っても、世界同士を繋げるにはその世界の座標が必要となる。そして現在、座標が判明しているのがこの世界と門の向こう側の世界しかない。」
「あー先遣隊になれ、と?」
「端的に言えばそうなる。」
厄ネタじゃないですかヤダー。
「そんな顔をするな。お前でなければならないんだ。」
「俺、って言うか俺達基本は建築とか土木工事とか装備の作成とかばっかですよ?」
「だからこそだ。お前達クウガ系は兎角汎用性が高く、集まれば戦術級の野戦陣地構築もお手の物だ。それを活かしてほしい。」
「他に同行するのは?」
「アギト系を始めに、基本は平成組だな。」
「……昭和系の先輩達は?特にRX=サン。」
「あんな戦略兵器をおいそれと動かせないだろうが。」
「ですよね。」
公式チートが多数の昭和組でも筆頭格は基本、切り札扱いです。
「というか、RXは俺達の中でも30人もいないんだから、運用には慎重にならんとダメだろう。」
「20人超えのRXとかいうパワーワード。」
どう考えても頭おかしい(確信)
ゴルゴムもクライシス帝国も泣いてよいと思う。
「オーズやフォーゼも参加するが、彼らの強みは殆ど何もない所から色々作れるお前達とはまた違うしな。」
「確かに。」
彼らはあらゆる環境下で活躍するし、工兵染みた運用も出来るが、工兵に縛るには贅沢過ぎる。
対して、クウガ系はどのフォームだろうと工兵染みた能力=モーフィングパワー(原子操作能力)を程度はどうあれ保有している。
そして、転生者であるクウガ系ライダー達は最低でもこれを修行してそこらの石や枝から武器を作成→弓矢作成→ペガサスボウガン作成を極普通にやってのける。
更に言えば、全員がライジングとはいかないまでも、タイタン・ペガサス・ドラゴンフォームにはなれるので、支援射撃・索敵・土木工事と何でもござれだったりする。
「そして、お前は数少ないライジングアルティメットだ。現地のクウガ系のトップとしては申し分ない。」
「他のライジングアルティメットは?」
「今度の古龍渡りのために絶賛前線基地の構築中だ。」
古龍渡りとは某怪物狩人の専門用語だが、この世界では古龍やそれに匹敵する規格外生物達の活動活発化並び大移動に対して付けられている。
「すまんが、昭和勢はそっちのために手を取られているから動けない。」
「向こう側の推定戦力は?」
「基本は人類だ。ローマ帝国兵と獣人、少数の魔法使いと再生能力持った不死身の超人が極少数確認されている。後はこっちよりも弱い野生動物だな。」
「待って何かおかしなのがいた。」
「とは言え、身体能力は昭和怪人に劣るぞ?多少の特殊能力はあるが、戦闘に使えるものは今の所確認できていない。」
「よし、オーズのタトバで。」
「敵対するならな。基本、攻撃されない限りは平和的接触に留める様に決まった。」
「あー拒否権は?」
「すまんが、今回はない。」
「ですよねー。」
一応、ライダー達にも指揮系統はある。
昭和初代の一号二号転生者の中から総当たり戦でTOPを決定し、更にV3系やビルド系と言った同じ系統のライダー同士で代表を選出し、代表会議を行うという氏族会議みたいなもので話し合い、重要事項を決定する。
「何とかしますけどね……最終的な目標は?」
「向こう側での生存権の確保だ。向こうにとっては不毛の僻地でも、俺達にとってはそうじゃない。そんな土地で良いから確保して、時間をかけて浸透していってくれ。」
「やっぱ、女性不足は深刻ですか?」
「言わずとも分かるだろう。女性陣がどう頑張っても、人口減少は止まらん。」
ライダーと言えば子供達の、正確に言えば男子達の憧れの存在だった。
ライダーに憧れ、転生を希望した者達は須らく男子として生まれた。
その結果、この世界の人類は元の数が少なかった事もあって女性の割合が激減し、絶賛少子高齢化の真っただ中だった。
幸いにも、全種族多少の強さのばらつきはあれどライダーである彼らは普通の地球人類よりも遥かに長寿であり、基本殺されない限り死なない。
しかし、この過酷な世界ではおちおち子作り&子育てもできない。
実際、彼らが死亡するのは他の強靭な生物との闘い以外は子供の頃の事故死が原因であり、人口増加は急務だった。
一時はクローン作製も考えられたが、倫理面と根本的解決策にはならない事から否定された。
そのため気候の安定し、尚且つモンスターの少ない新天地、そして交配可能な人類の存在する異世界は彼らにとって理想郷とも言えた。
「これ、侵略って言いません?」
「ローマ帝国相当の技術では、開拓技術も相応だろう。無人の土地など幾らでもある。そして、現地人との融和は必要不可欠だ。」
争いはこちら側としては望む所ではない。
しかし、古代ローマ程度の倫理観が相手であった場合、彼らに「教育」するための血が流れる事は必然になってしまうだろう。
「可能な限り、穏便な関係を構築したいと思います。」
「頼んだ。」
頭を深々と下げる先輩に、後輩のクウガ系転生者は思う。
先輩方も無用な流血は望んでいない。
しかし、世の中には相手の実力を知らず、偏見とそれまでの常識だけで殴り掛かってくる手合いが一定数存在するのだ。
「と言う訳で、君はクウガ系の一部を率いて工兵部隊として派遣が決まった。頼んだぞ、ユータ・ゴ・クウガ・バ千人長。」
「拝命しました、ユーキ・ン・マン・バ。」
こうして、特地異界にグロンギ系名称のトンでも種族がやってくる事になった。
……………
特地世界にやってきたライダー系人類(特地では通称:虫人)の入植団は人気のない荒野へと転送された後、砂漠並び山岳地帯に海岸等を目指しながら入植を開始した。
彼らはその地で急速に開発を進めていき、現地の危険な生物を駆除しつつ、接触した知的生命体とは平和的な交流に勤めた。
無論、天然の騎馬民族であるケンタウロス族やゴブリンにオーガ、オーク等を始めとした敵対的な種族に対しては相応の対応をしたが。
こうして虫人と呼ばれるようになった彼らは順調にその生息域を拡大する事に成功していたのだが……
「はぁ?襲われた?」
問題が起きたという報告を聞いた入植団の長であるユータ・ゴ・クウガ・バはその詳細を聞いて驚いた。
「えぇ。近くの街に行って交易しようとしたら全身鎧の兵士に武器を向けられて…。」
そう報告するのはドライブ系の一人であり、交易に向かっていた商隊の隊長だった。
「どこの国だ?街の警備兵じゃないだろ。」
「はい。あいつらは『帝国』と名乗ってました。」
「確か以前報告にあった国だな。近場の街が所属する国も遂に併呑されたか…。」
人間至上主義を抱え、周辺国へ侵略と略奪を繰り返す『帝国』の存在は彼らからすれば特にこれといってどうでもよい存在であった。
彼らは最低限の水や空気、土さえあれば何でも生み出せるし生きられる。
疫病の類だって、例え黒死病や炭素菌だろうが生き残れるし、飲み食いすらベルトからのエネルギー供給で割りとどうにかなるのだ。
近くのこの世界の人間が多く住む街とは見知らぬ異種族ではなく、知恵があり自分達に利益の多い商売をしてくれる交易相手と思わせるために、少しおまけする形で積極的に商売をしていた事もあり、悪感情は持たれていない。
また、彼らが入植しているのは人間が寄り付けない不毛の大地が過半であるため、お互いの生息域を犯す事もなく、今日まで偶にお付き合いのある隣人程度の関係を築いてこれたのだ。
それが崩された。
「相手の人数とかは分かるか?」
「詳しい数までは不明です。ただ、見える範囲では街中に数十人、街の外壁の外には最低でも500人はいました。」
「となると、こっちに侵攻してくる可能性が高いな。」
軍隊というものは兎に角金がかかる。
構築してもその錬度を高め、維持するには訓練と食事、武器の整備と補給が不可欠だ。
そんなものを不毛の大地に近い辺境の地に500人も派遣する?
断言するが、幾ら帝国が裕福でも、そんな事を何の利益もなく行う事は有り得ない。
「目的は何なんでしょうか?彼らからすれば、俺達は辺境に暮らす蛮族で、この辺の土地にもメリットなんて…。」
「いや、ある。俺達が開発した事で、多少は住み良くなったこの土地そのものが狙いだろう。」
開拓というのものは兎に角金がかかる。
この世界の場合、人里離れた森や渓谷、山河には怪異や亜人が住んでおり、人が住めるまで開拓するには膨大な年月と人手、予算が必要となる。
20世紀地球の技術を以てしても、多少はマシになったとは言え多くの重機や人手、時間が必要なのは変わらない。
しかし、ライダー達はほぼ全員が下手な重機よりも高い身体能力を持ち、クウガ系やオーズ系、W系を始め多数の特殊能力を持ったライダー達にとっては穴掘りや伐採、整地等の作業は苦も無く低コストで行う事が出来る。
また、彼らにとっては価値は低いが、ライダー達が交易で齎した良質な金属類の延べ棒やその加工品、そして怪異等から採取できる生物系の素材等、そしてライダー達が自分達で消費するものの余りとして出来た娯楽系の食料品(甘味・酒類)もこの世界の人間からすればかなりの品質であり、贅沢の出来ない辺境の地では高い需要があった。
帝国は開拓された土地の他、そうした品やそれを作る技術等を欲していたのだ。
また、そうした技術を持って開拓を進める亜人の集団が人間だけでなく、他の亜人種とも友好な関係を築き、その勢力を伸長している事にも危機感を持った事も大きい。
「取りあえず、即応するために一旦開拓作業は中止し、警戒レベルを上げよう。」
「交易に関してはどうします?」
「件の連中が街からいなくなるまでは中止だ。一般市民を戦闘に巻き込みかねないしな。」
こうして、帝国は止めとけば良いのに、自分からグリフィンどころか古龍よりも恐ろしい何かの尾を踏みに行く事となる。
なお後日
「何、地球への門が開いただと!?」
「ヒャッハー観光だー!!」
「ユータ千人長!本国からも接触を試みろとの命令が!」
「あぁもう次から次へと…!」
うーん、書いてて消化不良。
やっぱ平成ライダーの殆どが未視聴だと上手く書けない。
自分が生放送で全話見たのはクウガとアギトだけだから、最近の多過ぎる変身やおもちゃっぽい煩いベルトとかが好きになれないのがなぁ…