『……クリス・オーランド』
暗い空間、漆黒の隠士がぽつりと呟く
『オメガモンは、何故忘れている?あの男は……』
思い返されるのは遠い過去
世界……デジタルワールドの危機に、共に手を取り合った人間の姿
『……人間を、我々の進化へ導くわけにはいかない……そんなことは、あってはならない』
それこそが、その存在がここに、人間界にいる理由
素質無きものが力を得ても、待っているのは破滅だけ
『……はやく気付け、オメガモン……時間が、無い』
◇◆◇
「んー……」
無人のIS、そしてアルファ・エンプレスの襲撃から丸一日
整備室の一角に、目の前に展開させたオメガ・プリンセスの前で唸るクリスの姿があった
「……だーめだ。やっぱ一度全面修理しねぇとなぁ」
───やっぱり
「ごめんな、プリンセス。俺の力不足で」
───ううん、それはいいんだけど
───右腕の大破、及び脚は中破。左腕は小破止まり。通常稼働に問題が無いのがせめてもの救いか
「元々ラプターの余剰パーツを継ぎ合わせて作った間に合わせ、みたいな感じだったからな。ラボに持って帰ってオーバーホールしたいとこなんだけど……」
───夏休みまで待たなきゃだめなんだよね?
「あぁ。ここで使える部品にだって限りはあるし、騙し騙しじゃいずれ限界が来る。……出番が無いのを祈るしかないよなぁ」
先の死闘で、オメガ・プリンセスは起動不能の一歩手前まで損傷してしまっていた
起動だけなら可能なのだが、長期的な稼働や戦闘には到底耐えられないほどのレベルだった
「あーあ。どうすっかなぁ」
「クリス先生、さっきから誰と喋ってんのかしら?」
「何だかホントにISと話してるみたい」
「まさか、昨日のダメージがまだ……」
「聞こえてるぞそこー」
『『ごめんなさいっ!』』
「ったく……」
頬杖をついて空間ディスプレイを操作するクリス
損傷箇所、優先すべき修理などが映し出されてはそれを次々とスクロールしていく
「……あの、オーランド先生」
「ん?」
そんなクリスに、一人の女生徒が声をかける
振り向いた先にいたのは
「……更識?」
正体は、更識簪
後ろに布仏本音の姿もあった
「どうした?そっちから話しかけるなんて」
「あの、えっと……その」
「がんばれ~」
「ほ、本音、黙って……先生」
「ん?」
「その、この間の、話……」
「この間?」
「あの、私の、専用機……手伝って、くれるって」
「……え?」
「あの、その……よろしく、おねがいします……!」
「……いいのか?」
「まだ、全部割り切れたわけじゃない、ですけど……でも、考えてみたんです……ISの、こと」
「………」
「……ISは、道具なんかじゃなくて、相棒だって、先生、授業で言ってた……だから、考えてみて……自分勝手だなって、思ったんです」
「更識……」
「だから……!」
「OKわかった!すぐ始めようぜ!」
「え……?」
「開発だよ!あ、でも俺も自分の機体の修理とかあるから、時間は思ってるよりかかると思うけど、いいか?」
「はっ、はい!」
「整備科集合!」
『『『Yes sir!!』』』
「えっ」
「他にやることあると思うが、それと平行しつつ更識簪の専用機開発を優先してやるぞ!あ、他に受け持ちある奴は無理しなくていいから。よし、手の空いてる奴から取りかかれぃっ!!」
『『『Yes sir!!』』』
「え?え?」
「さぁさぁ何から始めます!?」
「いや、何が未完成なのかをkwsk!!」
「あ、あのっ、引っ張らないで……たすけてぇ」
整備科の生徒達に揉みくちゃにされる簪
それを微笑ましく見つめながら、クリスはオメガ・プリンセスに向き直る
「……そういうわけだ。時間食うけど、しっかりやれるとこまで直してやるからな」
───待ってるよ
───彼女を前に進ませたのは君のようだな、クリス
「そこまで大げさに考えてねぇさ」
そして、クリスもその喧噪の中へと向かう
一歩、夢へと近付いたような
そんな、確証もない確信がクリスにはあった
『DIGIMON-PROGRAM Anwaked』
どこかの国で、そんなシステムが起動された
設定のアルファモンの項を、アルファモンとアルファ・エンプレスに分割しました