ていうかわかってたけど二巻の描写やること少ないなぁ
「シャアアアッ!!」
「遅い」
左腕の長剣を振りかぶり、ラウラに向かっていくクリス
ラウラはそれを一歩飛び退いて回避、背部から放ったワイヤーブレードがクリスに襲いかかる
「チッ!」
縦横無尽に迫り来るそれを紙一重で避け、かわしきれないものは長剣で斬り払っていく
「多少は動けるようだな」
「口を閉じてろって……言ったろうが!」
右腕のライフルの狙いをつけ、発射
防ぐでもなく、それも難なくラウラは避ける
「直情的、やはりそこの愚図と変わらんか」
「この……先生、俺も!」
「失せろ」
「なっ……!」
雪片を手に立ち上がる一夏
だが、クリスは冷めた声でそれを一蹴した
「許せねぇんだよ、テメェみたいな手合いはなぁ……!」
「私に一太刀でも浴びせてから言ってもらおう。無理だがな」
「上等だコラァっ!!」
再び剣を構え、ライフルを乱射しながら吶喊するクリス
「ふんッ」
向かいくる弾丸を避けつつ、その右手をかざすラウラ
「うおおおおおっ!」
袈裟懸けに振るわれる長剣
真っ直ぐに振り下ろされたそれは、その眼前で停止した
「っ……!?」
「無駄だと知れ、そして疾く散れ。このAICの前では全てが停止するという事実にな」
AIC
Active Inertial Canceller
慣性停止結界と呼ばれる、シュヴァルツェア・レーゲンに搭載された特殊兵装
空間自体をエネルギーで固定、範囲内の動きを文字通り「停止」させる、一対一の戦闘では抜群の効果を発揮するもの
「AIC……ここまで実用段階にこぎつけていたとはな……!」
「理解したようだな。では……消えろ」
シュヴァルツェア・レーゲンの右肩、大型のレールカノンの砲口が明滅する
超至近距離で放たれた砲弾がオメガ・プリンセスの胴体に炸裂、その装甲、シールドエネルギー、そしてクリスの意識を削る
「がっ……!?」
───づぅっ
───クリス、プリンセス!
「いい加減にしろテメェェェェっ!!」
怒髪天を突いた一夏が、スラスターを噴かし、零落白夜を発動した雪片を構えて吶喊
それにいち早く気付いたラウラは、AICを解除、両手からプラズマ刃を放ち、身構える
「遅いと言った……!」
振るわれる雪片に合わせ、右手を振りかぶるラウラ
互いの刃が交差する瞬間、ラウラが僅かに右に逸れた
「っ!?」
「織斑一夏……その首貰ったぁ!!」
喜悦に歪んだその表情
突き出される、命を刈り取る死神の鎌
「っ……!?」
その切っ先は、一夏の眼前で停止していた
「止まった……いや、これは……!」
「炸裂凍結弾。一撃決めたくらいで終わりだとでも思ったか?」
ラウラの視線の先には、凍りついた右肩
そして、その先にはライフルを構えたクリスがいた
「こちとら米軍で血反吐撒き散らしながら扱かれてきたんだよ……あれくらいで、止まると思うなクソガキっ!!」
陥没した胸部装甲
胸骨、肋骨が悲鳴を上げるも、それを無視してクリスは再度突撃を敢行する
「おの、れぇ!」
「どけ織斑ぁ!!」
「先生!」
「雑魚がっ、図に乗るなよ!」
一瞬意識の離れた一夏を弾き飛ばし、ラウラが右肩を縛る氷を破壊、再びその右手を構える
「無駄とわからんようだな、凡骨!」
「わかってねぇのはテメェだ小娘!」
振り上げられた長剣
だが、その動きはまたしてもAICの前に封じられてしまう
「さすがに驚いた……だが」
「AICの前には無力、だろ?バカだなやっぱり」
「何……?」
「……直したばっかなのに、もう傷物にしてくれやがってよぉ」
「何のことだと聞いている!」
再度光る、カノンの砲口
が、構えられた砲身はもう一つあった
「どうやら、「線」や「面」の停止はできても、まだ「点」の制圧は無理みたいだな。腹、見てみろ」
「?……はっ!?」
「凹ませてくれた礼だ、喰らいなっ!!」
【貫通弾、装填】
放たれた、ラウラの胴の至近距離……AICの効果範囲外にあったライフルから放たれた弾丸が、装甲を穿ち、エネルギーを削り取った
「バカなっ!?」
「てめえの装備の効果範囲くらい理解しとけ。その結界は……起点より手前には発生しない!!」
「ちぃっ……!」
「加えて!」
左手の手刀で長剣を捌きながら、何とか右手をかざそうとするラウラ
その最中、クリスの長剣がレールカノンの砲身を貫いた
「!?」
「意識を対象の一点に集中させなきゃ、発動できない。つまり、意識外、指先のような細かい動きには対応できない!」
先ほどの攻撃
ライフルの砲口はラウラの傍、停止結界の外側だったが、それを持つクリスの右腕は範囲内だった
だが、長剣のみを警戒し、それを止めていたラウラの意識からは完全に右腕は除外されていたのである
「このシュヴァルツェア・レーゲンが、AICに頼るだけだと思うな!」
放出されるワイヤーブレードに合わせ、プラズマ刃が唸りを上げる
至近距離で振るわれるそれは、リーチの差ゆえに長剣ではあまりにも分が悪かった
───こんな時、これしか持たない自分が恨めしいよ!
───すまない、そもそもは私が……
───それはあと!
(腐っても代表候補生……やるな!)
「機体性能を把握しきれてないのは貴様の方だな!」
「みくびるな、クソが!」
先ほどの凍結弾での流れを警戒してか、ラウラは着いては離れを繰り返し、AICを発動しない
ここにきて、クリスとラウラの経験の差が現れてきていた
「最初の威勢はどうした!?」
「おおおおおおっ!!」
だが、クリスもまた短期間で死線を潜り抜けてきたという事実と意地がある
エネルギーを削られながらも、確実に一撃ずつ加えていく
「このっ……!」
「我慢の限界みたいだなぁ、
あまりの忍耐に痺れを切らしたのか、ラウラがAIC発動の構えを取る
それを待っていたかのように、クリスは瞬時に加速───
「これは……!」
「知り合いにとんでもない瞬時加速使いがいるんでね。見様見真似さ!」
虎模様の機体を駆る、アメリカ代表の女性のどや顔が脳裏に浮かぶ
何度も立ち向かっては倒され、その度に見せ付けられたその顔が、今ではどこか頼もしく感じられた
「まずい、ここは……!」
「俺の、距離だっ!!」
停止結界が発動する直前の、その一瞬にも満たない刹那の間
振るわれたその剣は、起点となるその部位を斬り裂いた
「あっ……」
「はぁああああああっ!!」
返す刀で振り上げられた長剣
ラウラの左腕を巻き込み、その胴を薙いだ
「ぐっ、あぁぁっ!」
吹き飛ばされた身体はアリーナの壁に叩き付けられる
クリスは追撃の手を緩めず、再び加速をつけて迫っていく
「ちょっ、先生……!?」
───よせ、クリス!十分だろう!
───そうだよ!もういいでしょ!?
「………」
一夏、オメガモン、そしてオメガ・プリンセスの制止も聞かず、ただ前進を続けるクリス
───もうやめろ、相手は子供だぞ!?
「言っただろ、これは修正だ……ああいうガキは、こうして黙らせた方が手っ取り早い……」
───だからって……!
「っせぇ!許しておくわけにはいかねぇんだよ、ISを道具扱いするような奴らはなぁ!!」
「やめろって、クリス先生!」
「っ、離せてめぇ!」
後ろから一夏がクリスにしがみつき、動きを封じる
が、クリスはそれを振り払おうと、スラスターを噴かし続ける
「今のラウラが見えてないのかよ!?」
「離せって言ってんだこの野郎……邪魔すんなら!」
「先生、あんたISを道具扱いする奴は許せないって言ったよな!?」
「あぁ!?」
「じゃあ、今あんたがラウラにやろうとしてること……そのために使おうとしてるのは何なんだよ!!」
「っ!?」
一夏の言葉に、クリスの動きが止まる
同時に、怒りで真っ赤に染まっていた頭が急速に冷めていくのを感じた
「……あ、れ。俺、なに、を……」
「先生……」
「俺、ISを、使って、何を……道具に、した?俺が……」
強ばっていた身体から力が抜け、同時にISの展開も解除された
クリスはそのままその場にへたり込み、頭を抱えてうずくまる
「違う……違う、俺は……俺は、違うっ!!」
「せん……」
「俺は、俺は奴らとは違う!あんな、あんな自分のことしか頭に無いクズ共と、俺は……!」
今までにないほどに取り乱した姿のクリス
頭を振り、何度も、違う、違うと壊れたラジオのように繰り返し続ける
「先生……本当にISのこと、大事に……」
一夏がクリスの肩に手をかけようと、伸ばした時
白式のセンサーが、警告を発した
「これは……ラウラか!?」
「許さん……許さんぞ、アメリカの出来損ない……私の邪魔だけではなく、このシュヴァルツェア・レーゲンにまで傷を……!」
その方向を見やれば、そこには般若の如き形相で砲身の歪んだレールカノンを向けるラウラの姿があった
「織斑一夏共々、消し飛ばしてくれるっ!!」
「まずい……先生!」
「ごめん、ごめんプリンセス……俺……」
───そんなの、今はいいから!
───気を確かに持て、クリス!
「クソッ、シャルル!」
「わかった!」
「逃がすかァァァァァっ!!」
自身の機体、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを纏ったシャルルが一夏とクリスに近付く
そんなシャルルも標的にした、シュヴァルツェア・レーゲンの砲口が火を噴いた
「くっ、シャルル、速く!」
「ダメ、間に合わない!」
「………」
「先生っ!!」
「世話を焼かせるな、バカ共が」
──放たれたそれは、真正面に立った剣により、真っ二つに両断
アリーナの壁に衝突し、消滅した
「千冬姉!?」
「織斑先生だと何度言わせる」
そこにいたのは、生身のまま打鉄のブレードを手にした千冬だった
「教官……そこをどいてくださいっ!そいつらは……!」
「揃いも揃って学習しない奴ばかりか。織斑先生だ、同じことを繰り返し言わせるな」
刀を地面に突き刺し、ラウラと一夏達を見やる千冬
溜息を一つ吐き、直後に宣言した
「……決着は学年別トーナメントまで私が預かる。それまで、一切の私闘を禁ずる。言っておくが拒否権などあると思うなよ?アリーナのバリアーを破壊するまでやったんだ、やたらと絡んでくるラーゼリア先生を振り切るのにどれだけ苦心したか……」
ほんの一瞬だけ見せた疲労の色
それもすぐに消え、再度ラウラを見やる
「……教官が、そう仰るのなら」
そう言い、ISを解除したラウラを見届け、今度は一夏達に歩み寄る千冬
「……言った通りだ、さっさと貴様等も戻れ。オーランド先生は私が預かる」
「あ、あの……」
「織斑、私は今少々気が立っている。どこかのバカに飛び火しかねんなぁ」
「クリス先生をお願いします!行こうぜシャルル!」
「あ、うんっ。で、では、失礼しますっ!」
クリスを置いたまま、逃げるように一夏とシャルルは走り去る
ラウラもいつの間にかいなくなっており、千冬とクリスを除いて無人となったアリーナ
「……やれやれだ」
言葉は発さなくなったが、未だにうなだれたままのクリス
再び溜息を吐き、千冬がそんなクリスの肩を担ぐ
「ちがう……ちがう……おれは」
虚ろな目で、ぶつぶつと呟くクリス
それに怪訝な目を向けながら、千冬は三度溜息を吐いた
───オメガモン
───プリンセス。大丈夫か?
───クリスが、私たちISを単なる道具だなんて思ってないのはわかってるよ、大丈夫
───なら、いいが
───でも、心配だよ……
───………
───クリス、壊れちゃったりしないよね?
───プリンセス
───クリスぅ
例によってAICの件は自己解釈です
それと、ちょっとしたご指摘をいただいたので、ISキャラにデジモンを憑かせる場合、誰にするかを再検討することにしました