The Black α&White Ω   作:オパール

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エピローグになります


白き終わりの目覚めへと

「お疲れ様っしたー」

 

ムゲンドラモンに支配されたIS、フィアー・ドラグとの交戦を終え、クリスは事後報告とオメガ・プリンセスの返還のために職員室を訪れていた

そして、それを済ませて今は廊下へと出たところである

 

「……そういや、あの操縦者どうなったんだか」

 

思い返すのは、フィアー・ドラグの操縦者だった少女

あの後合流した教師達に連れられ、今は医務室で眠っているらしい

 

「近々、様子見に行くか」

 

そう呟いて、歩き始めるクリス

そんなクリスに、声をかける人物が

 

「ご無事で何よりです、オーランド先生」

「へ?……あっ、ラーゼリア先生。今までどこに?」

 

それは、同僚のトリッシュだった

安堵した笑みを浮かべながら、クリスへと近寄る

 

「私の方は避難する人が多くて、それで連絡も取れなかったんです」

「なるほどねぇ……」

「……聞きました。没収された機体を使って、また無茶したそうですね」

「いや、無茶ってほどでも……」

「気をつけてくださいね。山田先生や更識さんが泣いてしまいますから」

「……何で更識よ」

「あら。何だかんだで懐かれてるでしょう?」

「知ーらね」

 

両手を後頭部で組み、聞き流すクリス

それをクスクスと笑って眺めながら、思い出したようにトリッシュが言う

 

「……そういえば、ご家族やご友人は?」

「ああ、二人とも無事だったよ。「アメリカ生徒の実力がぁー」なんて、親父は嘆いてたけど」

「研究者というのも難儀な人種ですね」

「ははっ……」

 

苦笑して、クリスはふとナターシャへと無事を報告した時を思い出した

 

 

 

 

 

 

 

『ナターシャ!』

『クリス!!』

『うおっ!おま、なに抱き付いて……!』

『よかった……本当によかった、無事で……』

『……泣いてんのか?』

『な、泣いてなんかいないわっ』

『鼻声だけど』

『気・の・せ・い』

『アッハイ』

『……でも、本当によかったわ。怪我も無さそうだし』

『……必ず戻るって約束だからな』

『クリス……』

『……そ、そうだ、親父は?』

『え、ええ。おじさまだったら、向こうにいるわ』

『そ、そっか。んじゃ、俺ちょっと……』

『クリス』

『へ?』

『えっと、その……や、やっぱりいいわ!』

『なんだよ……』

 

 

 

 

 

 

 

(何言おうとしてたんだろなぁ)

「先生?」

「ん?や、何でもない。そうだ、その更識は?」

「確か……自室でしたね。生徒は寮で待機を命じられていますから」

「了解。ちょっと行ってくるわ」

「ええ。ではまた」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「………」

 

更識簪は、自室でお気に入りのヒーロー番組を見ていた

だが、頭に浮かぶのは脳裏に焼き付いた白い背中

テレビの中のヒーローのように、颯爽と現れて自分を助けてくれた、あの姿

 

(かっこよかったなぁ……)

 

少しだけ振り向いた時に見た、真剣な眼差し

その表情に、簪は不思議と胸が高鳴るのを感じていた

 

「………」

 

ほぅ、と薄く染まった頬のまま溜め息が漏れる

 

だから、ルームメイトが珍客を招いたことにも気付かなかった

 

「クリス先生……」

「なんだ?」

「………………へ?」

 

ありえないはずの声に、思わずいつもの三倍以上の速さで振り向く

今考えていた当の本人の登場に、簪の思考回路がオーバーヒートしそうになっていた

 

「なっ、なん、なん、なんで……」

「いや、無事かどうか様子見に来ただけなんだけど、同じ部屋の子が入って見ていけって言うもんだから」

「ひゃぅぅ……」

 

真っ赤になって布団を被る簪

首を傾げるクリスの向こうに、生暖かい視線を向けてくるルームメイトの姿があった

 

「……まぁでも、何も無いようで安心した。それじゃあな」

「えっ……もう、行くんですか……?」

「様子見に来ただけって言ったろ?元気そうなら問題無し」

「……そう、ですか……」

「?……あっ、そのアニメ!」

「ふぇ?」

 

背を向け立ち去ろうとしたクリスが、急に簪の見ていたアニメに釘付けになる

至近距離まで近寄られ、熱の引いた簪の顔が再び耳まで真っ赤に染まった

 

「は、はぅあうあう」

「これ、日本で放送されたオリジナルだよな!?いやー、アメリカ用に制作された奴は好きだったけど、オリジナルって見たことないんだよなぁ!」

「え……あの、ヒーロー系……好き、なんですか?」

 

「ああ、大好きだ!」

 

特に妙な意図も無く口にしたであろうその言葉

だが、簪にしてみれば真っ直ぐ自分を見つめながらのその言葉に、頭に衝撃砲ぶち込まれたようなショックが走った

 

(大好き……ダイスキ……だい、すき……!?)

「わっ、わたしも!」

「おう?」

 

「わたしも、大好き、です……!」

 

「そうかそうか!あっ、そうだ!日本のこういうヒーロー物、よかったらオススメとか教えてくれよ!」

 

最後のクリスの言葉さえ無ければ、完全に誤解されると思われる会話の内容

が、テンション上がりきったクリスと訳の分からない高揚感に舞い上がっていた簪には、そんな考えなど起きるわけもなかった

 

故に、薄く開いたままだった扉から覗く黒い単眼にも、気付くことはなかった

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ふんふーん……ヒースイフードーボーザバビュー……お?」

 

時間は流れて夜

鼻歌を歌いながらクリスが向かう先は大浴場

ようやく男子専用の時間が設けられたそこへ、入浴用具を脇に抱えて向かっていた

すると、壁に寄りかかった一人の生徒を発見する

 

「……更識、楯無?」

「あっ、オーランド先生」

 

IS学園生徒会長、更識楯無

どこか儚げな表情で立っていた

 

「どうした?」

「いえ、先生にお礼を言っておきたくて」

「?」

 

すると、恭しく綺麗な姿で、頭をゆっくりと下げる楯無

 

「聞きました。簪ちゃん……妹を助けてくれて、ありがとうございました」

「ああ、そんなことか。気にすんな」

 

ひらひらと手を振って応えるクリス

それに安堵の表情を浮かべる楯無

 

「聞きましたよ?アリーナや学園の敷地をメチャクチャにした謎のISを倒したって」

「俺一人じゃないけどな。作りたくない奴にも借り作っちまったし」

「……そうですか……先生?」

「ん?」

「簪ちゃんの機体、どうですか?」

「ああ、残ってるのは起動と武装のテスト、後は稼働データ集めと問題点の改善だけ。このペースなら、臨海学校には間に合いそうだ」

「……よかった」

 

ほっとしたような、そうでないような

どこか複雑な表情を楯無は浮かべていた

 

「……仲、あんま良くないのか?」

「……というより、お互い避けてる、という感じですね」

「大変なんだな、姉妹って……」

「……深くは、聞かないんですね」

「流石に家庭内の問題となるとな。でも、何で更識……あぁ、妹さんな。頑なに一人でやろうとしてたのか、察しはついてきた」

「………」

 

更識楯無は自分が所謂「天才」という部類に入ることは自覚していた

だが、その実妹である簪は良くも悪くも並

比較され続けてきた姉妹の溝は深く、簪は一方的に姉を避け、楯無もまたそんな妹に、そもそもの原因である自分がどう接すればいいのか、わからないままでいたのだ

 

「……先生」

「ん?」

「簪ちゃんの機体、早く完成させてあげてくださいね?」

「おう、任せとけ」

「……では、私はこれで」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ようやく風呂に……ん?ちょっと待て。今は男子使用時間、織斑の奴は大浴場にはしゃいでたって聞いた……ま さ か」

 

 

 

 

 

 

 

「マイクチェックの時間だオラァッ!!!」

「うわぁっ!?」

「ひゃうっ!?」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ふぁ……」

「眠そうですね、オーランド先生」

「まぁな。山田先生はいつも通りだな」

「睡眠は食事と並んで生活の基盤ですから。どらも」欠かしてはいけないものなんです

「わかっちゃいるがなー」

「………」

「……ん?」

「あ、あの……く、クリス、さん?」

「なんだ、山田先生」

「………」プー

「?……ん?なんだあの人だかり」

「なんでしょう……あのっ、みなさんそこで何を……」

「あっ、オーランド先生だ!」

「やりますなー、この色男ー♪」

「あ?何だよ……」

「これですよぉ、この新聞部の記事!」

「?」

 

【『大好きだ!』『わたしも大好き』生徒と教師、まさかの密会!?】

 

「……え、なにこれは」

「」

「またまたとぼけちゃって!」

「自分のクラスの子とこんなこと言い合って……キャー♪」

「……あぁ、そういうことか。いやこれは」

「不純ですオーランド先生!」

「えっ」

「せっ、生徒と夜にこんなことを……何で同室のわたしには何も無いんですか!」

「ちょっと待て、落ち着こうか。これはだな」

 

「オーランド先生」

「説明を、頂けますね?」

 

「……織斑先生」

「ラーゼリア先生も……」

「……一応、話は聞いてもらえるよな?」

「とりあえずはな」

「まぁ納得させられなかった場合は」

「場合は?」

 

「「ギルティ」」

「ですよねー」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

───オメガモン

 

───プリンセス……

 

───アルファモンの言ってたことって……

 

───今回のアルファモンの行動、そのそもそもが我らロイヤルナイツだということか……

 

───うん

 

───すまない。どういうわけか、私のメモリーにそれに関する情報が見当たらないのだ……

 

───じゃあ、その理由も?

 

───ああ

 

───……そっか

 

───すまない

 

───ううん、いいの。でも……大丈夫?

 

───?

 

───このままじゃ、オメガモンも私たちも……

 

───そんなことにはさせない

 

───え?

 

───守り通してみせるさ。例え、アルファモンが本気で人間を排除する気になったとしても

 

───………

 

 

 

───あぁ、そうさ。この命に代えても……

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「さ~て。紅椿の調整も終わったしー、ちーちゃんやいっくんに会いに行く準備も出来たしー。あ、と、は」

 

 

 

「……私の制御からも離れたあの子をどうするかだよねー」

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