メインのナターシャとサブのイーリス、簪は変えるつもりはありませんが、残りのクラリッサとか束辺りがどうにも
オリヒロインに変えるべきか否か
ドイツ軍、シュヴァルツェア・ハーゼ──通称、黒ウサギ隊
ドイツ最強との呼び声高いその部隊を構成するのは、隊長のラウラ・ボーデヴィッヒを初めに、殆どが十代半ばの少女達
所属する基地で訓練を行う彼女達に指示と檄を飛ばすのは、最年長の副隊長
クラリッサ・ハルフォーフその人であった
己の立場に強い責任を感じている彼女
凛々しく、厳しく、だが時折見せる優しさと美しさ
それに部隊員達は強く惹かれ、心から慕っている
そんな彼女の携帯端末に、上官である少女からの通信が届いたのは、訓練が一区切り付いた時であった
「……受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です」
『ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。クラリッサ、少し時間を貰っても構わんか?』
「ええ、問題ありません。丁度、部隊の訓練も落ち着いた頃合でしたので」
『ならよかった』
「……して、ご用件は?」
会話だけ聞けばよくある上官と部下のやりとり
だが、互いの声音には堅苦しさは微塵も無く、まるで公私を分ける姉妹のような気安さがあった
『うむ。実は、IS学園に貴様の知り合いと名乗る者がいてな。そのことで今回連絡を取ってみた次第だ』
「知り合い……ですか。私の?」
『ああ。今近くにいる、代わるぞ?』
「はい……」
そうして、ラウラの声が遠ざかる
耳元からは、小さな音で二、三の会話があるらしかったが、何のことかは判別できない
そして、訪れたその声はクラリッサの脳髄を双天牙月の腹でぶん殴られたような衝撃を与えることとなった
『よう!久しぶりだな、『クララ』!』
「ファッ!?」
クラリッサらしからぬ、素っ頓狂な叫びに黒ウサギ隊全員が一斉に振り返る
一方のクラリッサと言えば大いに混乱していた
年若い男の声
異性の知人などそれこそ片手の指で足りるほどしかいない
そして、クラリッサ、ではなくクララなどという矢鱈と愛らしく思える呼び名で呼ぶ男など
クラリッサの知る限り、一人しかいなかった
「く、くり、くりっ、クリス・オーランド!?」
『ははっ。何年か前に一度会っただけなのに、よく覚えててくれたなぁ』
二人目の男性IS操縦者、クリス・オーランド
過去の、ほんの僅かな交流であっても、クラリッサの心に大きな波紋を立てた男
そんな彼が、何故隊長であるラウラの側にいるのか
「な、何故貴方が……!」
『何故って……ああ、そうか。俺が学園の教師になったって、あんま知られてねぇんだな』
今年の初め、クリスがIS操縦者になったとニュースで報じられた時は口にしていたコーヒーを部下の一人に思いっきりぶち撒けてしまうほどに驚いた
それ以降の消息はぷっつりと途絶えてしまったが、まさかよりにもよってIS学園にいるなどとは思ってもみなかった
「教師、ですか。貴方が」
『副担任、て形だけどな。んでだ、クララ』
「そっ、その呼び方はやめてくださいと何度も……!」
『別にいいだろ?クラリッサ、なんて長いし噛みそうだし』
「噛むわけがないでしょう!」
何がどうしてこうなったのか
まさかクララだなんて、どこかの車椅子生活からアルプスの山々に囲まれたことで立てるようになった少女みたいな呼び方をされるようになった経緯など思い出すだけで悶絶ものだったりする
……まぁ満更でもない様子のクラリッサでもあった。無自覚だが
「そ、それよりも!私に何か?」
『自分で話逸らしといて……まぁ、いいや。今、ボーデヴィッヒの携帯借りて連絡取ってるわけだけどさ。この番号、俺の方に登録させてもらってもいいか?』
「は?」
『いや、ちらっと見ただけだけど、前に教えて貰ったのと変わってるだろ?何かあった時のために、知っといた方がいいかと思ってよ』
「……そう、ですか。そういうことなら、構いません。こちらは完全にプライベート用、仮にハッキングなぞされても、問題はありませんから」
『んなことしても得なんて無ぇって』
「用件は以上ですね?」
『って、もう切る気かよ!?もうちょっとこう、話に花咲かせたりとかさぁ』
「訓練を再開しなければなりませんので。隊長に代わってください」
『……なんで不機嫌なんだか……へいへい。わかったよ』
憮然とした口調のクラリッサに、クリスの声が遠ざかる
しばらく後、どこか楽しげなラウラの声が響いてきた
『どうだった、クラリッサ?』
「どうもこうも……驚きましたよ」
『だが、こちらも驚いた。あんなに楽しそうな声の貴様は初めてだった』
「楽し、そう……?」
『ああ。……そうか、つまりはそういうことか』
「あの、隊長……」
『私にとっての嫁が一夏であるように、クラリッサにとってはオーランド先生が嫁なのだな!』
「ふきゅぁっ!?」
◇◆◇
「……荷物持ち、ねぇ」
「すみません、ご自分の時間もあったでしょうに……」
「いやまぁ、慣れてるから問題無いんだけどよ」
「お、織斑先生にラーゼリア先生……ほ、本当にオーランド先生もご一緒するんですか?」
「なんだ山田先生。今年の水着は気合いを入れなきゃ、と言っていたのは先生本人だろう」
「で、ですけどぉ……!」
「そうですよ。大丈夫です、お楽しみは本番まで取っておくように調整しますから」
「そういう問題じゃないんですっ!」
「……私がいる意味はあるのか?」
街中を歩くのは、千冬と真耶を先頭に、その後ろを歩くトリッシュとクリスにナタリア
打鉄弐式の再調整プランを練っていた所に突如トリッシュが乱入、そのままクリスを引っ張り、監視も兼ねてナタリアまでもが巻き込まれる事態に陥っていた
「……なぁ、トリッシュ……だったか。何故私まで」
「あら。オーランド先生や私の監視下にある以上一緒に行動するのは当然。それに……」
「?」
「せっかく血生臭い世界から離れたのだもの。普通の女の子らしい日常も送った方がいいかと思って」
「……はぁ。バカバカしい」
「ふふっ……」
「……なんだ?」
「楽しみ甲斐がありそうだわぁ……♪」
「ひっ!?」
駅前のショッピングモール
入り口から足を踏み入れた四人、そんな中トリッシュはナタリアの方を向く
「そういえば、貴女下着はどんなものを?」
「………」
「女同士でもセクハラは成立するのを知っているか?」
突如として語られた言葉に、クリスは少し距離を離して耳を塞ぐと、明後日の方向に身体を向けた
と、何かを見つけたようで足早にその場を去っていく
「別に何だっていいだろう。ありがたいことに、上背はそこそこあるが身体の起伏は少ない方だ。簡単なものを適当に……」
「ダメよ」
「は?」
「織斑先生……は、そういうの無頓着でしたから山田先生、少し手伝ってくださいこの子の下着や私服も見繕います」
「え?あ、はい……」
「おい待てどういう意味だ貴様!」
「やめっ、放せ!おいクリス!ちょっと助け……どこに行ったあの男ー!」
「さぁさぁ思春期の女子が感じている世界がどんなものか知る時よナタリア・ストラタス!」
「お、織斑先生、クリスさんは……」
「空気の読める男のようだな……後で連絡を取って合流するとしよう。それよりもトリッシュの奴だ……!」
トリッシュに引きずられるナタリアと、それを追う千冬と真耶
そしてそこから離れたクリスは、二階へと上がるエスカレーターで見つけた見知った顔に声をかけていた
「更識に布仏!」
「え?」
「おー!せんせーだー!」
更識簪と布仏本音
手に小さなバッグを持った二人は、クリスに気が付くと片や頬を染めて俯き、片や両腕を高く掲げてブンブンと振り回す
「ほ、本音……!」
「いやー、見知った顔がいて助かったぜ」
「今日はどうしたんですかー?」
「荷物持ちに駆り出されてたんだけどよ、何か女同士で盛り上がってたみたいだから抜けてきた」
「荷物、持ち……?」
「ああ、山田先生にラーゼリア先生、織斑先生に……あと、ナタリアのな」
「ナタリアってー?」
「ん?あぁ、ちょっとな。それより、お前等は?」
「ふふーん。かんちゃんのー、水着を買いにきましたー!」
「うぅ……」
大仰に腕を振る本音に、簪の顔が更に濃く赤くなる
正直さっきまで一緒だった集団と同じような展開に、クリスは背を向けて立ち去ろうとする
「そっか。んじゃ邪魔したら悪いな。俺はこれで……」
「ぁ……」
「えー。せんせーも一緒にいきましょー」
「いや、お前それは」
「いいからいいからー!」
「うおっ!?」
「本音ぇ……!」
二階に到達すると同時、クリスと簪の手を引いて駆けだした本音
途中で振り返り、簪に笑顔を見せた本音に、簪はその意図を何となく理解した
(……ありがと、本音)
◇◆◇
(……しっかし、長いよなぁ)
水着売場の外で、クリスは一人ぼんやりとしていた
流石に選ぶのに付き合うまでにはいかず、本音と彼女に引っ張られていく簪を見送った後、ふらふらとこじんまりとした箇所にあった男性用水着を一回りして、今は待機しているクリス
かつてのアメリカでも、区切られてはいたが女性用と同じくらいの規模があった水着売場
ISが登場して以降、日に日に強まる女尊男卑の風潮
男にとって肩身の狭くなった日常、もはや仲睦まじく歩く男女の方が少なくなっているほどだった
(そういう意味じゃ、あいつらは希少だよなぁ)
織斑一夏と、その周囲の少女達
六人の仲は特に良好で、色恋が絡まなければ親友と呼んで差し支えないほどだろう
が、唐変木オブ唐変木ズとまで称される一夏が友情以外の感情を抱いているわけもなく、その中の誰か一人に意識を割けば他の四人からの嫉妬に狂った制裁が行われていることはクリスも承知していた
悪気があるわけでもない一夏が受けている、理不尽とも言える行為
それでも本人は訳をわかっていないままそのことを知らぬ間に水に流している
「……今度一回注意しとくか」
そう呟いたクリス
そんな彼に、一人の女性が近付いてきた
「そこの。あそこの荷物、下まで運んでちょうだい」
「あ?」
見れば、カジュアルな格好に身を包んだクリスと同年代の女性
苛ついた様子で、気怠げな雰囲気を隠そうともせずに自分の後方を指し示す
そこには山と積まれた紙袋や包装された箱がいくつも見受けられた
「……悪い、先約あるから他当たってくれ。ていうか自分で運ぶなり台車借りるなりしたらどうだよ」
「はぁ?あんた男のくせに逆らうつもり?」
苛立ちは増した様子、加えて見下した面持ちで女性はクリスに詰め寄る
その様にクリスは一つ嘆息して、女性を真っ正面から見下ろした
「……何よその目は。あんた、自分の立場わかって」
「あんた、IS操縦者だったりする?」
「……は?いや、違うけど」
「あっそ。ちなみに俺は操縦者。ほれ」
「なっ……!?」
首元からオメガ・プリンセスを引っ張り出してふらふらと揺らすクリス
女性の顔は驚愕と屈辱に染まり、歯を食い縛ってクリスを睨む
「……確かさ。ISを動かせない奴は価値無し、なんて価値観根付いてるんだよな?じゃあさ。男で操縦者やってる俺と、女なのに操縦者やらずにこんなとこでクソみたいな真似してるあんた、どっちが無価値なんだろうなぁ?」
「この……男のくせに!!」
正面から論破され、逆上したらしい女性が腕を振り上げる
ここで暴力沙汰にでもなれば、すぐにでも警備が飛んでくるだろうことを予測していたクリスは、それを払おうと手を伸ばし……
「そこまで」
その腕は、振りかぶられた所で第三者の手により止められていた
「……ラーゼリア先生」
「もう。いつの間にかいなくなったと思ったらこんな所で……ほら、山田先生達が待ってますよ」
呆れた様子のトリッシュがそこにいた
掴んでいた腕を放すと、そのまま今度はクリスの手を取って歩き出す
「ち、ちょっと待ちなさいよ!あんた達、このままで済むと……!」
「通報でもしたいならどうぞご勝手に。でもその前に……左上をご覧ください」
トリッシュの言葉に、女性は怪訝な顔をした後に言われた方向を見やる
直後、望みを全て断たれたかのような表情に変わっていた
「見ての通り、あの監視カメラはばっちりと貴女の方を向いて、一連のやり取りを録画しているでしょう。いくら女性が優遇されるからといって……確かな証拠を前に、そんなイかれた価値観が通じるでしょうか?」
「あ、ぅ……」
「……ではこれで。もう会うことはない……いえ、会いたくもないですが、お元気で」
「……言うときは言うんだな」
「あら、ヒドい。それに、ああいう手合いは許せないんです、昔から」
「へぇ」
「……ええ、本当に」
「?」
「……消えればいいのに、あんな奴ら」
「!?」
◇◆◇
「……何やってんだあいつら」
「織斑君に……デュノアさん?」
トリッシュに連れられて向かった先には、正座させられている一夏とシャルル……改め、シャルロット・デュノア
その向かいには、赤い顔で二人を叱り飛ばす真耶と呆れ果てた面持ちの千冬の姿が
「……何かあったのか?山田先生」
「あっ、オーランド先生にラーゼリア先生!聞いてください!この子達ったら、ふっ、ふふ、二人で更衣室にはいってたんですよ!?」
「はぁ?」
「あら、若いって素敵ね。怖いもの知らずで」
真耶の言葉に、真っ赤になって俯く二人
千冬を見ても、首を振るだけで特に言うことは無いらしい
「……いつかやるとは思ってたけどお前等……」
「ちょっ、クリス先生それどういう……!」
「まだ終わってませんよ織斑くん!」
「アッハイ」
「はぁ……俺最近溜め息多い気がするなぁ」
「心中お察しします」
「そりゃどーも。……あれ、そういやナタリアはどうしたんだ?」
「……ふふっ。気になりますよね?」
「……え、いや別に」
「ではお見せしましょう!生まれ変わった彼女を!ナタリアさーん!」
「……キャラ壊れてねぇかあんた」
トリッシュが叫んで数瞬後
諦めたオーラと表情を浮かべた、一人の少女が現れた
栗色の前髪を黄色の髪留めで飾り、胸元にはシルバーのハート型ペンダント
白い、フリルのついたワンピースの上から薄手のブルーのシャツを羽織り、左腕には同じくシルバーのブレスレットが光っている
下は膝上までの紺色のスカート、同じ色のニーソックスで足を覆い、靴は明るい茶色のローファー
その暗く沈みきった表情さえ除けば、誰もが羨むほどの美しさと可愛らしさを兼ね備えた、ナタリア・ストラタスがそこにいた
「ふっ、ははは……笑えよ」
そんな言葉に、クリスは一つ口笛を鳴らして口を開いた
「驚いたな、見違えたぜ」
「でしょう?いやー、私も張り切った甲斐がありました!」
「これ、全部ラーゼリア先生がコーディネートしたのか?」
「ええ。山田先生にも少し意見を伺ったりしましたけど」
「ふーん」
「……じろじろ見るな、コロすぞ」
本気の殺気をこめて睨むナタリア
首を竦めるクリスだが、そんな折り、一人の怖いもの知らずが口を開いた
「いや、似合ってるじゃないか。可愛いと思うけどなぁ」
そんな声に振り向けば、何食わぬ顔の一夏がいた
「………」
「……一夏……」
「お前ってやつはよぉ」
「男の子ねぇ」
「言っておくが、バカにつける薬は無いぞ」
「えっ、俺おかしなこと言ったのか!?」
「なるほど、貴様はそうやって誰彼構わず女に粉をかけているというわけか」
「ええっ!?」
辺り一帯から総スカンを食らい、訳がわからないといった様子の一夏
本来、襲撃者であったナタリアと一夏がこうして何でもないように話をしている理由としては、クリスが間に入って水に流すよう進言したからでもある
一夏は過ぎたこと、といってあっさり承諾、ナタリアもやることをやっただけ、とそれほど何か感じることも無かった様子だった故に、こうした時間があるのである
そんなことを思い返していたクリスの携帯に、メールが届いた
「悪い。……なんだ、布仏?」
「一組の、布仏さんですか?」
「ああ。さっき会ってよ」
携帯を開くクリス
そこには、簡素にこんな文面が
件名:うまれかわったかんちゃんを見よ!
せんせーへ
かんちゃんが選びおわったのでー、そのしゃしんをおくるましぇ
最後の方が何やら打間違いなのか、変な文法になっている
怪訝に思いつつ、添付されていた画像ファイルを開く
「ぶおっ!?」
「?失礼……あら」
そこには言葉では言い表せないほどに際どく扇情的な水着を纏った簪の姿が収められていた
写真の表情から察するに、恐らく何かしらの要因で上がってしまったテンションの結果だろう
まぁ、そんな理由などクリスにはわかるはずもないのだが
「なん、だよこりゃあ……!」
「大人しい子だと思っていたのに……やるわね、更識さん」
結局その後、合流した簪から必死の弁明を受けたクリス
写真に撮られた水着は当然お蔵入り、もっと地味目な……少なくともさっきのに比べれば……水着を購入したと言っていた
ちなみに本音はパジャマのような着ぐるみのような水着を買ったとご満悦の様子だた
設定にナタリア・ストラタスを追加しました