The Black α&White Ω   作:オパール

26 / 40
田村ボイスの天災、降臨の回
原作組が圧倒的空気になりまする


天災

アメリカ、ハワイ沖

この日、アメリカとイスラエルが共同開発した第三世代型軍用ISの稼働試験が行われていた

 

多くの軍事、ISの関係者が集まり、両国の期待を背負ったそれは、優秀なテストパイロットと、それを警護、万一の事態のために編成されたIS部隊を含め、軍用ISを新たなステージに上げるものなのだと、誰もが胸を膨らませていた

 

……その、はずだった

 

「応答しろ、ナターシャ・ファイルス!機体を……『福音』を停止させるんだ、速く!」

「だめです!こちらからの通信も、強制停止のコマンドも一切受け付けません!」

「チィッ……何をボサッとしているイーリス代表!貴様らも速く動かんか!」

『……動かねぇんだよ』

「何!?」

 

『機体が、うんともすんとも言わねえ!指先の一本も動かねぇんだ!!』

 

順調に思われたそれは、突如として終わりを迎えた

 

開発されたIS……銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

 

稼働中に、突然謎の挙動を取ったと思った次の瞬間、その武装を仲間であるIS部隊へと放ったのだ

原因は不明だが、それが暴走であると悟った面々はすぐさま関係者達の退避とIS部隊へと、福音への攻撃命令を発令した

 

だが、更なる異常

展開していたIS部隊、その全てが一切の動作が出来ない状態になっていたのだ

辛うじてシールドバリアーだけは正常に作動していたが、それにより部隊員達は一方的に暴走する福音に蹂躙されることとなってしまった

 

「Shit!!動け……動けよファング・クエイク!!」

『La……♪』

「!?」

 

多くの機体が操縦者諸共倒れ伏す中で、唯一残ったイーリスとファング・クエイク

今なおもがき続けるそれを嘲笑うかのように、福音の唄声に合わせて銀色の鐘が鳴り響き、動かぬ牙に狙いを定める

 

「……ッキショォ!ナタルーーーーーッ!!」

 

放たれた光弾の雨は、周囲一帯を焦土と化し

 

『La───♪』

 

どこか薄ら寒ささえ感じる旋律を残し、福音は彼方へと飛翔していった

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

所変わり、IS学園の一年生が現在いる場所

一般の生徒達から離れ、専用機持ちたる七人と、目の前には織斑千冬の姿が

そこから少し離れた場所には、正面に展開したディスプレイとひたすらにらめっこしているクリスの姿もある

 

各種装備、専用パーツの運用とデータ取りのために揃ったメンバーと、生徒達と同じ目的に加えてアドバイザーとしてクリスは呼ばれたのだった

 

「……では、これより装備試験を開始する。時間は限られている、各自迅速に行え」

『『『はいっ!』』』

 

クリスの役割は、主に簪の専用機である打鉄弐式の装備の最後の微調整とそのデータ集め、時折他の専用機に関してのサポートも行うため、自身のデータ収集は最後の方になる

今は、オメガ・プリンセスとその追加装備であるザ・リバティの調整と不調箇所のチェックに集中しているため、周りの音や声は殆ど耳に入っていない

 

「……あぁ、篠ノ之。お前は少し残れ」

「え?」

「お前には今日から……」

 

箒を呼び止めた千冬がそこまで言った時

 

 

 

「ちぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁぁぁあんっ!!!」

 

 

 

「」

「………」

 

彼方より、土煙を上げながらこちらに近付いてくる人影が

それぞれが目をこらして見てみれば、兎の耳を模したカチューシャに青と白のドレスという、童話にいそうな格好の妙齢の女性が尋常ではないスピードで走ってきていた

 

「会ぁぁぁいたかったよぉぉぉぉぉぉぉうぶっ」

「ド喧しい」

 

三代目の大怪盗の如き跳躍で千冬にダイブしようとした女性を、千冬は気怠げに差し出したアイアンクローで応える

ギリギリと締め上げられ、頭蓋骨が悲鳴を上げているにも関わらずその女性は満面の笑みだった

 

「照れてるね!?照れてるんだねちーちゃぁん!あぁんもう可愛いだだだだだだだだ」

「黙れアホが」

 

万力の如き力で顔面を握られていたが、女性はあっさりとその拘束から脱出、一同の前に躍り出た

 

「箒ちゃんも久しぶり!」

「……どうも」

「ん~♪可愛さ余ってやらしさ百倍?特にそのおっぱいとかぎゃんっ!?」

「殴りますよ?」

「それ殴る前に言うことじゃないかなぁ!?」

 

常時ハイテンションな女性に、千冬と箒、そして一夏と未だ機体調整を続けるクリスを除いた面々は混乱したまま動けないでいる

 

「ややっ!そこにいるのはいっくん!やぁん久しぶり~♪」

「あっはは……お久しぶりです」

「IS動かしたー、なんて聞いたもんだから驚いちゃったよー。ねぇねぇ、調べてもいい?だいじょぶだいじょぶ、ちょこーっと解剖するだけだから!」

「どこらへんが大丈夫なんですか!?」

「痛くしないから!先っちょだけだから!」

「その発言は女性としてアウトです!」

 

絡みの矛先が自分に向いたと思ったらセクハラ混じりに命の危機に晒されていた

自分でもなにを思っているのかわからない一夏は大天才だとか超人とかいうチャチなものでは断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わっていた

 

「……自己紹介くらいしろ」

「ん?んー、めんどいなぁ。まぁいいけど。私が束さんでーす、いぇいいぇい♪」

 

満面に見えてどこかやる気の感じられない笑みを浮かべ、両手でピースを決めながらそう名乗った女性

 

篠ノ之 束

 

今のこの世のIS関係者で知らぬ者はいない、ISの生みの親

世紀の天才と称される人物が、そこにいた

 

「さてさてー、時間も無いことだし、早速始めちゃおっか箒ちゃん!」

「………」

「ありゃ、無視?まぁいいや。それではー……みーあーげてーごらんー♪」

 

あまりにもマイペースなその振る舞いに、未だ混乱から抜け出せない五人と、全てを諦めた顔の千冬、無感情を全面に張り付けた表情の箒と苦笑したままの一夏

それぞれが言われるがままに空を見た

 

すると

 

「……なんだ?」

「なにか、落ちてきて……」

「……人参?」

 

ラウラ、簪、シャルロットがそれを見てぽつりと呟く

 

そして一拍遅れて、それは地面に着弾、周囲に強風と轟音を撒き散らした

 

「……っせぇなぁ」

 

そんな状況でも、ディスプレイに向き合ったままのクリスは一切動じていなかった

大した肝っ玉である

 

「な、なんだぁ!?」

「んっふっふー♪驚いてるねいっくん!その顔が見たかった!」

「………姉さん」

「うん!待ちきれないんだね箒ちゃん!ではではー……開けソバ!」

 

ゴマじゃねぇのかよ!という一夏のツッコミは彼の胸の内に留まるのみだった

 

巨大な人参を模した落下物から、圧縮された空気が抜ける

そしてその外殻の一部がゆっくりと開いていき、中にあるものが露わになる

 

───紅が、そこにいた

 

「……これが」

「そう!これが箒ちゃんの専用機『紅椿』だよ!」

 

太陽光を反射し、煌びやかに光る深紅の装甲

まるで一夏の白式の対になっているかのようなそれに、箒は自分の頬が僅かに緩むのを感じていた

 

「束さんお手製だからー、スペックは現行機と比べものにならないよ!世代で言えば第四世代になるのかなー?」

 

『『『第よ……!?』』』

「第四世代ぃっ!?」

 

束が何気なく言った言葉に、他の一年生達以上に食いついた人物がいた

人参が落ちてきても一切反応しなかった、クリス・オーランドである

 

「………」

 

勢いよく振り返り、周囲を見回すクリス

突然叫んだ彼を見る生徒達と、少し目を丸くした千冬と、箒に絡んでは所持していた日本刀の鞘で小突かれる束

十数秒費やして、クリスが取った行動は

 

「………………せろ」

「……あの、先生?」

 

簪がおずおずと声をかける

 

「俺にっ、その機体調べさせろヒャァッホォーーーーウっ!!!!」

 

簪を振り切り、一目散に紅椿へと駆け寄るクリス

その足下に縋りつき、深紅の外装をベタベタと無遠慮に触り始めた

 

「すっげぇ!これが世界初の第四世代機!やべぇ今まで見てきた機体のどれよりもハイスペックだって見ただけでわかる!あああああ、中!中はどうなって」

 

鼻息荒く、血走った目で紅椿の全身を見回すクリス

そんな彼を止めたのは

 

「は?ぐげうぅっ!?」

 

襟元を掴まれ、視界が反転したと思ったら背中に強烈な痛みが走った

顔を上げれば、件の束が汚物を見るかのような目でクリスを見下ろしていた

 

「……触んないでくれるかな?」

「……え、ごめん誰?」

「……先生、篠ノ之束博士、です……知らないんですか?」

「え、篠ノ之束?このイタい格好したキツいねーちゃんが?へー」

 

ピシッ

そんな空気を、ふと一同は感じた

 

「まぁ、んなことどうでもいいや。それよりも今はこの第四世代機をごうっ!?」

「く、クリス先生ー!」

 

立ち上がるや否や、今度は束が放った回し蹴りをモロに食らい、吹き飛ばされるクリス

一夏が叫び、簪は一目散に駆け寄った

 

「……なんか変なのいたけど、さぁさぁ箒ちゃん!はやいとこフォーマットとかフィッティングを……」

 

そういう束の額にうっすら青筋が浮かんでるように見えたのは、気のせいだと思いたいと一夏は感じた

 

(イタいって言われたの怒ってるのかなぁ)

 

 

 

 

 

そんなこんなで、束はすぐさま紅椿を箒に合わせるべく調整を始めた

が、投げられ、蹴り飛ばされてもメゲないのが機械バカたるクリス・オーランド

 

「………」

「………」

「……あの、オーランド先生」

「ん?あぁ、気にすんな」

「いえ、そんなに見られると……」

「別にお前さん見てるわけじゃねーから。気にせず無心になれ無心に」

「………」

 

紅椿を装着した箒の背後や側面に回り込んではしげしげと紅椿を眺めるクリス

箒の気まずい視線や束の殺気をこめた視線など意に介さず、ただひたすらに紅椿だけを見つめていた

 

「………」

(頼むからそんな目で私を見ないでくれ……!)

 

遠く離れた場所から恨めしげな視線を送ってくる簪に、箒はどことなく申し訳ないような気持ちになっていた

 

「……はい、終了。さすが私。箒ちゃん、待機状態にしてみて」

「アッハイ」

「あぁ待ってもうちょっと」

 

束の指示に、紅椿を一旦解除する箒

心底名残惜しげに、クリスは膝から崩れ落ちた

 

「見ていたかった……!」

「本気で悔しそうだ……」

 

 

 

そんなクリスを差し置いて、紅椿の稼働試験に移る箒と束

第四世代機の名に恥じず、高速で動き回っては束が撃ち出すミサイルの数々をその両手に握った二本の刀で次々と撃ち落としていく

 

「……すげぇなぁあの機体」

「第四、世代……」

 

食い入るようにその様子を見ていたクリスと簪、そして一夏達専用機持ちメンバー

やがて、箒は地面に降り立ち、ほぅ、と息を吐いた

 

「流石は大天才の篠ノ之束だな。まさか妹一人のためにあんな代物……」

 

そこまで言って、ハッと顔を上げるクリス

その様子に首を傾げた簪が、声をかけようとした時

 

 

 

 

 

 

 

「篠ノ之束!?え、何でここにいんだよ!?」

『『『今さら!?』』』

 

本当に紅椿以外眼中に無かったらしい機械バカ

これには流石の束も僅かながらに驚いていた

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

太平洋上空

銀色の軌跡を描きながら、空を舞うのは福音を鳴らす銀の機体

銀の福音は、何かに突き動かされるかのように、まっすぐに飛翔している

 

そして、その中に閉じこめられた操縦者……ナターシャ・ファイルスは、操縦者保護機能を振り切った速度での飛行に耐えられず、意識を失っていた

 

 

 

『……クリス』

『……来てくれたか、ナターシャ』

『ええ……それで、大事な話って……』

『……俺たち、さ。出会ってから結構経ったよな』

『え、ええ……』

『……ガキの頃、うちの工場で一人寂しそうにしてたお前誘って、工場の中見て回って、そんで、お前の親や親父達にこっぴどく叱られてさ』

『……覚えてるわ。楽しかったもの』

『うん……それから、何するにも一緒でさ、今日まで、幼馴染、兄妹分として、ずっと一緒にいた』

『クリス……』

『んで、いつの間にか、さ』

『……?』

『……ナターシャは、俺にとって、一番大事な人になってた』

『……え?』

『……だから』

『ま、待ってクリス。今のって……』

 

『ごめん、ナターシャ』

 

『……』

『お前は、俺とずっと一緒にいたいって言ってくれた。本当に嬉しかった。でも……ごめん、それ、無理だ』

『……どういう、こと?え?何を言って……』

『……夢、あるって言ったよな』

『……覚えてる』

『うち、親父の工房……IS研究が主流になってくる。だから俺、そっちにかかりきりになる』

『待って……待ってよ、それがどうして!?』

『………』

『答えてよクリス!IS研究があるからって、どうして……!』

『……に、なるから』

『え……?』

 

『邪魔に、なるから……ナターシャが……!』

 

『───』

『夢が、もうすぐ叶えられる場所まで来てるんだ……だから、余計なことに気を割きたくない……だから……!』

『……なによ、それ』

『……だから、ごめん』

『そんな言葉を聞きたいんじゃない!どうして?何で私が邪魔になるの!?余計な、ことって……!』

『……言いたいこと、それだけだから』

『待って……待ちなさいよ!!』

『………』

『お願い、待って……言いたいことだけ言って、行かないで!クリス……クリスぅ!!』

 

 

 

───そう、ね。そうだった。あの人は、こう言って私の前から去っていった……身勝手で、私の気持ちなんか知ろうともしなかった……

 

───でも、怒ったし、悲しんで、泣いたけど……恨むことも、憎むこともできなかった……嫌いになんて、なれなかった

 

───だって、私見ちゃったもの

 

───貴方、泣いてた

 

───本当に、悔しそうに、泣いてた

 

───それに、そんな言葉をかけられても、私……

 

 

 

───貴方が……クリスが、好きなんだもの。こうなった、今でも

 

───貴方だけを、愛しているんだもの

 

───ねぇ、貴方は、私を愛してくれていた?ただの妹分だったの、私は……?

 

 

 

深い闇の中で、ナターシャは思い返し、涙した

淡く、苦い記憶

それでも、愛する人と過ごしてきた、時間を

 

 

 

その外、福音は前方に複数のISを発見した

 

紅い機体が一機、そして白い機体が……二機

 

その内の一機は、紅い機体から離れ、他の二機を振り切るように前進、右手の長刀を振りかぶる

その一閃を避けたところに、もう一機の白い機体が、左腕に装備された、橙色の長剣で福音に斬りかかった

 

『聞こえるか、ナターシャ!』

 

眼前の白い機体から、若い男の声

 

『俺だ、クリスだ!頼む、応えてくれ!!』

 

 

 

その時は来た

 

一つの因縁が終わりを告げ、また新たな因縁が生まれ

 

そして、いくつもの想いが交差し、交わる時が

 

それに打ち震えるように、銀の福音の背から、ほんの一瞬、白と黒、十二枚の翼が輝いた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。