The Black α&White Ω   作:オパール

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起きてる内に二話投稿完了

次回はいろんな意味で山場になる……(震え声)


救いの手を

花月荘の一室

そこに急遽設けられた、作戦司令部と思われるそこに、千冬と麻耶、クリスに加えて、一夏を初めとした専用機持ちメンバーがいた

物々しい雰囲気を放つ面々を、千冬は静かに見つめていた

 

 

 

篠ノ之束の乱入、前代未聞の第四世代IS、紅椿の登場により予定を大幅に狂わされた一同

それを取り戻そうと本来の目的を果たそうとした矢先、慌てた様子の麻耶が千冬にあることを通達、運用試験は即座に中止され、その場にいた束を除く面々はこうして花月荘に戻っていた

 

「状況を説明する」

 

室内を見渡し、静かに口を開いた千冬

遅れて、背後のモニターに一機のISが映し出された

 

「これは……」

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)。アメリカとイスラエルが共同開発した、第三世代の軍用ISだ」

「アメリカとイスラエルが……」

「……数時間前、この機体が稼働試験中に制御下を離れ暴走、そのまま見失ったという報告があった」

「!?」

 

一夏と簪、クリスが息を呑む

一夏は混乱、簪は動揺、クリスはアメリカが開発に関わった機体の暴走という事実によるものだった

 

「監視衛星による追跡の結果、ここから約2km先の地点を通過することが判明した。学園上層部は、近場にいる我々にこの件の対処を一任してきた」

 

それを聞いて、代表候補生達の視線が険しいものに変わる

 

「現状は把握したな?ではブリーフィングを始める。意見、質問があれば挙手を」

 

その言葉に、まず真っ先にラウラが挙手、千冬に銀の福音の詳細データの開示を要求、承諾された

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……私のブルー・ティアーズと同じ、全方位攻撃を行えるようですわね」

「攻撃と機動性の高さを両立した機体……かーなーり厄介ね」

「この特殊武装、きっとかなりの曲者だね……」

 

セシリア、鈴、シャルロットが意見を交わす

クリスは無言でそのデータを見つめ、一夏はようやく混乱が収まってきたといった様子だった

唯一、簪は小さく身体を震わせていたが、それを気にかける余裕は誰にも無かった

 

「……織斑先生、偵察は……無理そうだな、これ見る限り」

「ああ。目標は現在も超音速で移動している。アプローチは……一度だけだ」

「一度きりのチャンス……となれば、私のレールカノンやシャルロットのシールド・ピアース……」

「それに、俺のレーザーカノン以上の威力を持った武装による、見敵必殺(Search and Destroy)しか方法はねぇな」

 

クリスとラウラ、千冬の会話に区切りが付いた所で、一同の視線が一夏へと向かう

 

「……え?」

「織斑、お前の零落白夜しかねぇ」

「問題は、どうやって一夏をそこまで運ぶか、ね」

「見敵必殺となればかなりの速度が要求されるが……」

「え、ちょっ、俺がやるのか!?」

「off course」

 

突然話を振られ、取り乱す一夏

そんな一夏を見て、千冬は静かに告げる

 

「……言っておく。これは実戦だ。無理強いをするつもりは無い」

「───」

 

千冬の言葉に、揺らいでいた一夏の眼に、強い光が宿る

 

「……やります。俺が、やります」

「……いいだろう。では、具体案を出す。この中で現在最高速度が出せる機体は?」

「私のブルー・ティアーズが。本国から高機動パッケージも送られて来ていますので」

「運ぶだけなら俺のオメガ・プリンセスも行けるぜ。ザ・リバティの出力を機動力に全振りすれば常時イグニッション・ブーストばりのスピードが出せる」

「ふむ……オルコット、オーランド先生。超音速下での戦闘訓練時間は?」

「私は20時間です」

「おっと……こりゃ譲った方がいいかもな。俺はまだ12時間弱だ」

「いいだろう。ならば……」

 

「その作戦、ちょぉっと待ったぁ!しばらく、しぃばぁらぁくぅぅぅぅ」

 

突如、陽気な声と共に天井の板が抜けたと思ったらそこからウサミミ女性が落下してきた

言うまでもなく、篠ノ之束その人である

 

「………」

 

千冬と箒が揃って頭を抱える

そんな二人を余所に、束は千冬にすり寄っていく

 

「ちーちゃんちーちゃん!ベストな作戦なら束さんのこの頭に!」

「出てけ」

「ここは断然、紅椿の出番なのだよ!」

「……なんだと?」

 

そして、束は説明しだした

 

紅椿には、『展開装甲』と呼ばれる技術が使われている

一夏の白式に試験的に使用されたそれを、紅椿は全身に用いている

攻撃、防御、高機動の全てに文字通り「展開」して切り替えが可能であり、あらゆる状況に対応できる万能機

現行機を越える、第四世代に相応しい性能を誇る、それが紅椿という機体だった

 

「………」

 

全てを聞き終えた一同は、愕然としていた

世界中が第三世代のIS開発に躍起になっている中での、突然の第四世代機、しかもそれが現行機を真っ向から否定するようなぶっ飛んだ性能を有しているというのだから

 

「……調べてぇ」

 

訂正

約一名、自分の興味にしか関心のない機械バカがいた

 

「……やりすぎるなと常々言ってあっただろうが馬鹿」

「てへぺろ☆」

 

スパーン

 

「うぉうおうおうおう」

「まったく……紅椿の調整はどれくらいで済む?」

「七分あればバッチシさ!」

「お、織斑先生!?私のブルー・ティアーズなら……!」

「パッケージは量子変換(インストール)してあるのか?」

「それ、は、その……」

「……オーランド先生」

「ん?俺はいつでも運用データ取るのに装備したままだからな。調整もすぐに済む。……てか」

 

そこまで言い、クリスは束、次いで箒を見やる

そして、こう口にした

 

「機体はともかく、操縦者の方は役に立つのか?」

 

その言葉に、一同はハッとして箒を見る

皆の知る限り、箒のIS操縦経験は学園での訓練機のみ

まして今回は命の危険が伴う実戦、最新鋭の専用機があるとはいえ、万が一の事態が起きたときに対処できるのかと

 

「……ん?何だみんな。まさか、私がヘマをすると思っているのか?ハハッ、大丈夫だ、安心しろ」

「………」

 

その言葉に、一同はどこか危うさを感じた

そして、それを聞いたクリスは千冬に進言する

 

「……織斑先生。今回は俺と織斑で行く。篠ノ之は待機にすることを進言したい」

「なっ!?」

「───」

 

箒は愕然とし、束の視線は一気に絶対零度まで下がる

 

「……理由を聞こうか」

「圧倒的に命のやり取りの場数に欠けてる。その点、俺や織斑ならある程度の経験もあるし、専用機の操縦時間も俺達のが上だ。紅椿なら確かに結果を出せるだろうよ。だがな……」

 

言って、再び箒を見るクリス

 

「……『命を賭ける』、この意味をわかってねぇ奴に、前線に出る資格はねぇ。……世界最強のあんたなら、わかるだろ?」

「………」

 

眼を閉じ、千冬は考える

 

クリスの言うことは理解できる

確かに、あの未知の漆黒のISと幾度も交戦したというクリス、二度に渡る学園の危機を乗り切った一夏

その二人に比べれば、確かに箒は未熟と言えるだろう

 

だが……

 

「……何様?」

 

そんな沈黙を破ったのは、意外なことに束だった

 

「……あんたが出張るとはな、博士」

「お前みたいなのが使うポンコツが箒ちゃんと紅椿以上に働けるとでも?」

「そりゃあんたお手製のまっさらな新品に比べりゃ俺の機体なんて寄せ集めのパーツで継ぎ接ぎしたオンボロさ。俺が言ってんのは……機体は優秀でも、あんたの妹は使えねぇ」

「───」

「……てか、そこまでして妹を危険に晒してぇのか?それでも人の姉かよ」

「この……!」

 

「そこまでだ、オーランド先生。篠ノ之は参加させる」

 

「……おい、正気か?」

「ああ。織斑、篠ノ之のタッグでの強襲戦になる」

「………」

「すまんが、時間ももう無い上に、これが考え得る限りの最善だ。納得してくれ……というより、しろ」

「……Yes,ma'am」

 

拒否することも反論することも許さないといったその言葉に、クリスは渋々といった様子で引き下がる

その様を見て、束は内心ほくそ笑みながらご機嫌な様子で紅椿の調整に入っていった

 

「では、30分後に作戦を開始する。織斑、篠ノ之、各自準備を済ませておけ」

 

パンッ、と千冬が一つ手を鳴らして、その場は解散となった

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「………」

 

───クリス、何か考え事?

 

───先ほどの、篠ノ之束達とのやり取りか?

 

「……ああ。どうにも腑に落ちねぇ」

 

待機を命じられたクリスは、自室にてオメガ・プリンセスとオメガモンと、一連のやり取りについて話し合っていた

 

───確かに、わたしもなんだか……

 

───彼女は、今回の作戦が危険なものだと理解しているはずだろう?にも関わらず、肉親を危険な場所へと……

 

クリスの出した案に真っ向から反対したのは、本来ならば賛成して然るべきであるはずの束

だが、彼女は箒と紅椿を向かわせるべきだと、そう言った

 

「……もしかしたら、それが目的……?だとしたら出来過ぎな状況も……」

 

───クリス?

 

「……まさか、な」

 

───何かあったのか?

 

「……仕組まれた状況、だったらどうなる?」

 

───どういう、ことだ?

 

───っ!マッチポンプ……ってこと?

 

「状況証拠だけじゃ、確証にはならねぇがな」

 

突然起こった新型機の暴走事件、それに示し合わせたかのように開発された、妹のためだけの最新鋭の機体

あまりにも都合が良く、出来過ぎな状況は全て仕組まれたものではないかと、クリスは考えていた

 

───それが真実だとして、何故篠ノ之束はそんなことを……

 

「俺が知るかよ……」

 

だが、待機を厳命されている自分に出来ることなど無く、またそれを破ってでも出る理由は無い

ガシガシと頭を掻き、ソファから立ち上がったクリス

 

ふと、そんな時だった

 

『……リス』

「……ん?」

 

ISの秘匿回線──プライベート・チャネルに、通信が入ってきた

 

『……てるか……ク……!』

「……なんだ?」

 

───ノイズが酷い……ちょっと待って、今クリアにするから

 

オメガ・プリンセスが、通信相手からの声を鮮明なものへと変えていく

そして聞こえてきたのは、聞き慣れた友人のものだった

 

『クリス!聞こえてるか、クリス!』

『この声……イーリスか?』

『っ、よかった、繋がった……!』

 

声の主は、イーリス・コーリング

アメリカ国家代表である彼女の声は、どこか切羽詰まった様子で、所々息切れのようなものも聞こえてくる

 

『……何か、あったのか?』

『何か、どころじゃねぇ……学園に、銀の福音の撃墜指示が下されたって聞いて……』

『ああ。生徒が二人、それに参加することに』

『っ、バカ野郎!!』

『ああ?なんだよ急に』

『無理言ってでも、お前も参加しろ!二人じゃ足りねぇし……それに、お前が行かなきゃ意味ねぇんだ!!』

『要領を得ねぇな……何が言いたい?』

 

焦りが限界を越えたかのように捲したてるイーリスに、苛立ちをこめてクリスは返す

だが、次いでイーリスが発した言葉に、その思考は完全に停止することとなる

 

『……ナタル、なんだよ』

『……は?』

 

 

 

『だからっ、福音に乗ってるのはナタルなんだよっ!!』

 

 

 

「………え?」

 

膝から崩れ落ちそうになるのを、クリスはギリギリで踏みとどまる

だが、頭は混乱に満たされていた

 

「なんで……なんで、ナターシャが……」

『あいつ、テストパイロットだろ?だから、今回の件任されたんだ……』

「………」

『ナタルの奴、言ってたよ。クリスが帰ってきたら驚かせてやろうって、自分も、真っ直ぐ進んでるんだって、伝えるんだって……なのに、チキショオ……!』

「……ナター、シャ」

 

ナターシャが、クリスにとって、何者にも代え難い女性が、暴走するISに乗っている

自分はそれを知らず、ただ部屋でうなだれるだけなのか?

 

「……助ける」

 

答えは、否

諦観するのも、わかったような気になるのも、もうやめると決めたのだから

 

『……安心しろ、イーリス。ナターシャは必ず助ける』

『すまねぇ、頼む……私達の機体もこっぴどくやられちまって、最低限の修理にも時間がかかっちまうんだ』

『大丈夫だ、俺が……俺達が、必ず』

『ああ、待ってる……ちゃんと助けられたら、私の処女でも何でもくれてやるからよ!』

『いらねーよバカ。……じゃあな』

『ああ……頼むぞ』

 

そうして、通信は切られる

すぐさま立ち上がったクリスは、足早に部屋を出る

 

───ま、待ってクリス!待機厳命されてるんじゃ……

 

───そうだクリス……いや、待て。そうか、その手が……

 

「そういうことだ、オメガモン」

 

千冬がいる司令室へと向かいながら、クリスは少し前の、千冬との会話を思い出す

 

「例の特権、使わせてもらうぜ……!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

非常事態下における全指揮権と、特殊状況時の特級権限

 

それは、クリスにのみ与えられている特別な権限

IS学園を二度の襲撃から防衛、被害を最小限に抑えた功績として、学園上層部から与えられたもの

それはあらゆる状況での行使が可能であり、場合によっては学年主任である千冬以上の権限さえ得ることも可能

 

「そんなわけで、俺も参加させてもらうからよ」

「……よく千冬姉が許可しましたね」

「ま、その辺は大人の事情ってやつだ」

「………」

「織斑と二人きりのタンデムが台無しになったからって、んな睨むなよ」

「べっ、別にそういうわけでは……」

 

そうして、その権限を使い、クリスはこの作戦に参加することとなった

 

『……オーランド先生。作戦開始以降、指揮権はそちらに譲渡される。自分で言い出した以上、責任は全てそちらに降りかかることになるぞ?』

「No Problem.自分のケツくらい自分で拭けるさ」

 

千冬からの警告に、笑って返す

それが切られると、今度はプライベート・チャネルで新たな通信が

 

『せ、先生……』

『……更識か。どうした?』

 

相手は簪

不安にしているのが、声だけで判断できた

 

『……そうだ、悪いな。打鉄弐式の調整できなくて』

『い、いえ……あの、先生』

『ん?』

 

『絶対……絶対、帰ってきてください……』

 

心から、そう願う簪の言葉

自身を案じてくれる者の存在に、クリスは思わず破願する

 

『……ああ。絶対』

『……がんばって、ください』

 

 

 

そして、時間が迫る

 

───よくこんな無茶が通ったものだ

 

(……やってることは公私混同、社会人としちゃ言うまでもなくアウトだけどな)

 

───でも

 

「……ああ」

 

『時間合わせ。10秒前……5秒前……3……2……』

 

(待ってろよ……ナターシャ!!)

 

「作戦、開始!!」

 

その言葉を合図に、白式を背に乗せた紅椿と、その傍らに立つオメガ・プリンセスは一気に飛び立った




束さんに理性的な会話とかさせてクリス論破させたかったけどそもそも作者自身が理性的とか程遠いので感情的になっていただきました

感情のままに行動するのは人間として当然だとどっかのコロニーGパイロットも言ってましたし

まぁ原作見る限り束さんにまともな人の情があるかどうか疑わしいですが
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