Digital World
「……山田先生、流石の私も頭がついていかん……一体、何が起こっている……?」
「……私にも、さっぱりです……」
花月荘、対福音作戦司令部
そこで、一夏達専用機持ちメンバーの独断の行動と福音との交戦、二次移行を果たし、異形となった福音、それを制圧せんと空へ舞い上がったクリスと、同じく二次移行したオメガ・プリンセス
そこへ参戦したアメリカ国家代表と共に福音を制圧したと思った矢先、かの漆黒のISがクリス達を襲った次の瞬間には福音が再起動、謎の攻撃を放ち───そして、クリス達の反応は欠片も残さず消失
突然の事態の連続、麻耶も千冬も、脳がそれに追いついていなかった
「……ラーゼリア先生は?どうしている?」
「……応答、IS反応、共にありません……撃墜された様子はありませんでしたので、恐らく、オーランド先生達と一緒に……」
「………」
頭痛と目眩に襲われ、千冬は自分でも気付かない内に、壁に身体を預けていた
◇◆◇
(なんだ……なんなんだ、これ!?)
世界が塗り変わっていく様を遠目に眺めながら、クリスはどこか幾何学的な空間を堕ちていく
朝焼けに染まっていた砂浜と水平線はとっくに消え去り、次第に周囲全てがあらゆる景色を映し出していた
(……っ!)
その中で、一つの違和感を感じる
見えた景色に、見覚えのあるような数人の少年少女達を見た
明るい茶色の髪の少年
朱色の長い髪の少女と、紫色の髪の少女
その眼前には、巨大な、一つの機械
「これ……うっ!?」
頭に鈍痛が走る
三人の子供たちが光に包まれるのを最後に、クリスの意識は薄れていった
───おかえり、我が友よ
───また会えたね……
◇◆◇
───クリス
「ぅ、うぅ……」
───クリス、起きてっ
声が聞こえる
知っているような、知らないような、そんな二つの声が
「だれ、だ……?」
「あっ、起きた!」
「クリス、大丈夫?」
───目の前には、黄色い二足歩行のトカゲのような生き物と、一本角が生え、毛皮を纏った同じく二足歩行の生物がいた
「──うおわあああああああっ!!?」
「うわぁっ!?何!?」
「なな、何だぁお前ら!?」
「何って……ボク達がわからないの?」
「オレ達、ずっと一緒にいたじゃないかぁ」
「ごめん、マジでわからない!」
「「えー!」」
二匹は不満そうに叫ぶ
それから互いに目配せし、頷きあって口を開いた
「ボク、『アグモン』だよクリス」
「オレは『ガブモン』。思い、だした?」
トカゲのような生き物、アグモン
一本角の毛皮の生き物、ガブモン
クリスの膝上程度の大きさの二匹は、そう名乗った
「アグモン……ガブモン……」
「うん」
「そうだよ、クリス」
「………」
その名前の響きに、どこか懐かしさを覚えるクリス
その時
「ぐっ!?」
突如、その頭……否、脳に直接激痛が走った
「あ、ぐっ、ぅぅぅぅぅ!!」
「クリス!?」
「そんな、どうして!」
『な、なんなんだお前ら……!』
『ボク、アグモン!よろしくねクリス!』
『オレはガブモン!よろしく!』
『すっげぇなぁここ!』
『へへっ。ボク達も冒険してる最中なんだ』
『クリスも気に入ってくれると嬉しいな』
『飛んでる!』
『あれはバードラモンだよ』
『跳ねてる!!』
『ツノモンだね。俺も前はあの姿だったんだ』
『歩いてるー!!!』
『うわぁ、もんざえモンだ!』
『怒ると危ないけど、普段はのんびり屋さんなんだよね』
「知ってる……俺は、ここを知ってる……!」
跳ねるように起きあがるクリス
そのままアグモンとガブモンを置いて、負傷など感じさせないほどの速さで駆け抜ける
その最中で目に飛び込んできた、見たことのない植物群や木の実の数々
鬱蒼とした森を抜け、見えた光へと一直線に走り続け───
「ここは……デジタルワールド……」
その先の崖に立ち、見下ろした先には、数え切れぬ程のデジタル生命体が住まう世界
その風景は、オメガ・プリンセスの心象風景と酷く似通っていた
「く、クリス~……」
「どうしたの急に~……」
背後から、息も絶え絶えな二匹が追いついてきた
「……アグモン、ガブモン……ここは、デジタルワールドなんだよな……?」
「え?うん」
「そうだけど……」
「そう、か……」
顔を上げ、多くのデジモンが飛び交う空を見る
地球……現実世界と何ら変わりない蒼穹と太陽が、やけに目に染みた
「……そうだ」
「「?」」
「みんなは!?俺と一緒にいたみんなはどこだ!?」
脳裏に浮かぶのは、友人と生徒達、宿敵と……意識を失っていた想い人のこと
膝をついて、二匹の肩を揺さぶる
「なぁ、見てないか!?俺と同い年くらいの奴と、俺より年下な子供達が七人!」
「あうあうあうあう」
「お、おちついてよクリス~!」
気が動転するあまり、二匹の声が届いていないらしいクリス
堂々巡りを繰り返す、そんなクリスの頭に
「ニャッ!」
「ぶっ!」
黒い、謎の生き物が飛び乗った
「くっ、な、何……」
「ニャァッ」
バリッ
「───ぃいってぇぇぇぇぇ!?」
謎の生き物、その手の鋭利な爪でクリスの顔面を思い切り引っ掻いた
「くふふふっ」
生き物……見れば、二足歩行の黒猫のようなそれは、クリスの頭から飛び降りると、そのまま森の奥へと消えていった
「あれは……」
「クリスっ、大丈夫?」
「……待ちやがれゴルァァァァァッ!!」
顔にくっきりと爪痕を残して、クリスは黒猫の後を追う
「あっ、クリス!」
「もう、またなの~!?」
アグモンとガブモンもまた、再び全力疾走する羽目になってしまった
なお、死に体に近いはずのクリスが走り回れている理由として
単純に、肉体が限界を越えているだけ
脳がそれを認識していないだけの話であり、ほんの一度でも意識を手放せば
待っているのは、良くて長期の昏睡状態、最悪──永遠の安眠である
「見つけたぞ、クソ猫ーーーーーーッ!!」
「へ?」
「ウラァーーーーーーッ!!」
「ニャアーーーーーーッ!?」
「ぜえっ、ぜえっ」
「やっと、おいつい……って、クリス!それ人違い……じゃなくて、デジモン違い!」
「あ゛!?」
「……『ネコパンチ』!!」
「げふぅっ!?」
クリスが追っていた黒猫とまったく同じ姿形……違うのは色だけな白猫が放った拳は、寸分違わずクリスの腹へと炸裂した
───アルファモンに貫かれた傷の残る、その腹へ
「───!!」
「……はっ!し、しまった!」
「クリスー!!」
「し、しっかりしてクリス!て、『テイルモン』、なんてことを!」
「すっ、すまない!い、いきなり襲われたものだからつい……気をしっかり保てクリス!傷は浅いぞ!」
テイルモンと呼ばれた白猫は、クリスの名を呼びながらその頬をぺしぺしと叩く
傷口が抉り開かれそうな激痛は容赦無くクリスの意識を刈り取ろうと疼いている
「……ぶはぁっ!?」
ガバァッ!と起きあがる
傷の痛みは無理矢理に抑えつけたらしい
「クリス~!」
「よかったよぉ~!」
すぐさまアグモンとガブモンが抱きつく
それを受け止めながら、クリスは傍らの白猫……テイルモンを見やる
「……お前……」
「……まずは、すまなかった。私はテイルモン。その二匹と一緒にいるなら見てわかると思うが、私もデジモンだ、クリス」
「あぁ……ん?待て、お前なんで俺の名前……」
「そのことなんだがな……私は」
『ニャアーーーーーーッ!?』
『今よ、ギルモン!』
『うんっ!』
「!?」
「今の声……まさかとは思うが……」
突如、森の奥から聞こえてきた複数の声
クリスとアグモン、ガブモンは警戒し、テイルモンは頭を抱える
ガサガサと茂みが揺れ、その向こう側から……
「ニャアっ!?」
「つっかまーえたー!!」
「Good Job!!お手柄よ、ギルモ……」
件の黒猫、それを抱え上げた、赤い身体に黒い紋様の刻まれた、二足歩行の竜のような生き物
その後ろから、クリスにとって見覚えのありすぎる朱色の長髪の女性
「……ラーゼリア先生?」
「……オーランド先生?」
トリッシュ・ラーゼリア
現実世界においてアルファモンと交戦、消息がわからなくなっていた人が、そこにいた
◇◆◇
「……そう、だったのか」
「はい……」
クリス達がいた場所に腰を下ろし、説明を終えたトリッシュ
そこから離れた場所には、テイルモンに説教されている黒猫──ブラックテイルモンと、それを捕まえ、今はアグモンとガブモンと楽しそうにはしゃいでいる赤い竜──ギルモンがいた
トリッシュが言うには、アルファ・エンプレスとの交戦中、ほんの一瞬の不意を突かれ、取り逃がしてしまった
レーダーのIS反応を頼りにそれを追っている内、クリス達のいた砂浜の近くまで到達、そして
「あの、妙な光に呑み込まれてしまった、というわけです」
「ふむ……」
そして、同じようにデジタルワールドに辿り着いたトリッシュ
目覚めてすぐ、近くにいたギルモンと共に歩く内にブラックテイルモンと遭遇、状況説明を頼もうとした矢先に逃げられたため、追いかけていた、とのこと
「……オーランド先生、気付いていますか?」
「ん?」
「どうやら、この……デジタルワールド、でしたか?ここでは、ISの起動ができないようです」
「……マジで?」
「はい」
言われて、胸元の相棒に手を伸ばす
意識を集中させるが、うんともすんとも反応が無かった
「そんな……」
「……理由はわかりません」
「……そうだ、それよりも!」
「?」
「更識や織斑達は!?見てないのか!?」
「……っ!私としたことが……すみません、自分のことでいっぱいいっぱいで……!」
「Shit……!」
心から申し訳無さそうに語るトリッシュに、クリスは地面を拳で思い切り殴りつける
そんな二人に、テイルモンが声をかける
「……二人とも」
「あ?」
「生徒達の居場所に、心当たりがある」
「本当か!?」
「ああ。……ブラックテイルモン」
「ん。他の二人も、きっといるよ」
「他の二人……ナターシャとイーリスか!?」
コクリ
頷くブラックテイルモンに、クリスの表情がみるみる晴れやかなものになっていく
「そうと決まれば……!?」
「オーランド先生!」
立ち上がろうとした瞬間、膝から力が抜け、その場にへたりこんでしまうクリス
「このっ、クソッ……動け、動けよこのっ……!」
「……無理のしすぎは禁物だと伝えてあったのに……」
「でもよぉ……!」
「……ガブモン、頼めるか?」
「うんっ!クリスのためだもん!」
「頑張れガブモン!」
「ガブモン……?」
テイルモンの言葉に、ガブモンはクリスの側へと駆け寄っていく
次第に、その身体が光を放ち始めた
「おい、何を……」
「オレがクリスとその人を運ぶよ」
「え……」
「ここからその場所までは少し距離がある。怪我人を歩かせるには、無理があるほどに」
「大丈夫だよ、クリス。ガブモンは凄いんだ!」
「アグモン……」
「じゃあ、行くよ……!」
ガブモンの身体を包む光が、一際大きくなる
クリスは、その光にどこか見覚えがあった
(……ああ、そうだ。この光……プリンセスのコアの中で見た、俺とオメガモンを包んだ光と似てるんだ)
『ガブモン!ワープ進化!!』
ガブモンの身体が、一度データとして分解される
蒼い毛並みの狼、それが二足歩行となった姿、その二つを経て、再構築された時
そこにいたのは、鋼の狼だった
全身を機械で包み込み、背には一対のウィングブレード
四肢に見えるのは、恐らく武器群
「『メタルガルルモン』!!」
「……ガブモン……お前……」
「さぁ、乗ってクリス」
「あ、あぁ……」
「アグモンとギルモン、トリッシュも」
「うんっ!」
「行こっ、トリッシュ」
「ええ……」
「……さて、案内を頼むぞ、ブラックテイルモン」
「オッケー」
『テイルモン!超進化!!』
『ブラックテイルモン!超進化!!』
クリス達がメタルガルルモンに乗ったのを確認し、テイルモンとブラックテイルモンもまた、姿を変化──進化させる
テイルモンは、まるで女神の如き姿へと変わり、ブラックテイルモンは顔全体をマスクで覆った、悪魔を思わせる女体の姿となっていた
「『エンジェウーモン』!!」
「『レディーデビモン』!!」
「……なんかもう、驚かなくなったっつーか、頭ついていかなくなってきた……」
「同感です……」
「さっ、行くよ!こっちだから!」
一足先に空を飛翔していくレディーデビモンに続いて、エンジェウーモンが空を舞う
その二体を追いかけ、メタルガルルモンはデジタルワールドを疾駆した
「こんのっ、いい加減離れなさいよ……!」
「やっ!あなた達、イチカにひどいことするもん!」
「いっ、言いがかりもいいところですわっ!」
「イチカはわたしが守るの~!」
「は、はは……ピョコモン、気持ちは嬉しいけど……」
「な、何を受け入れているのだお前はっ!」
「うわぁっ!真剣なんてどこから持ってきたんだお前は!?」
「この子、ボタモンっていうんだぁ……ぁぁぁぁ、可愛いぃぃぃっ」
「フー♪」
「こ、こっちはトコモンか……な、なかなか、愛らしいでは……」
「……シャーッ!」
「!?」
「いいかぁ、ガオモン!拳での戦いの時は抉り込むようにぃ……打つべし!打つべし!!打つべしぃっ!!!」
「い、イエス、マスター!」
「……騒がしい。ていうか、何で人間がこんな所に……!」
「……ハックモン、だっけ?あなた……」
「寄るな人間!」
「あぅ……」
「……え、なにこれは」
走り出して数分
辿り着いた場所で見たものは、デジモン達と仲良くやっているらしい仲間達
心配が杞憂に終わっていた事実にクリスとトリッシュは目に見えた嘆息を零し
その内クリスは考えるのをやめた
アニメやゲームの描写を見る限り、デジモンの進化にはパートナーとデジヴァイスが必要
ですがサイバースルゥースを見ても、野良デジモンが進化したりとかもあったのでワープ進化や超進化だってやっちゃいました
まぁパートナーと呼べる相手ならいるのでその辺はあんまり触れないでいただけると助かります(震え声)