夜が明け、IS学園一年生一同は学園へと帰る日となった
件の銀の福音暴走事件に関しては箝口令が敷かれ、当事者達以外には誰にも知られることは無い
一夏達一年生はそれぞれのクラスのバスに乗り込み、出発を待ち
千冬と麻耶、怪我の影響で車椅子に座るクリスとそれを押すトリッシュの四人は、イーリスとナターシャと言葉を交わしていた
「すまないな、イーリス代表。世話になった」
「気にすんな。私は大したことはできなかったし」
「あ、あの、イーリス代表。昨夜のことは……」
「ん?」
「い、いえ、なんでもないです、はい」
「……じゃあ、先に戻るわね、クリス」
「ああ。つっても、俺はしばらく安静の身になるから、予定してたより帰るの遅れちまうけど」
「ナターシャさん、査問の方は……」
「……ええ。なんとかなるとは、思うけど」
「……ナターシャ」
「大丈夫よ、クリス。……あの子の暴走の原因、なんとなくだけど予想はついているわ」
「……そうか」
「ええ……それじゃあ」
「「?」」
「頑張ってくれたナイト君にもお礼をしないとね」
意地の悪そうな笑みを浮かべ、ナターシャは一夏達のいる、一年一組のバスへと歩いていった
「………」
「……不機嫌そうですね、クリス」
「いや、別に……」
「ふふっ……」
「てか、さらりと名前呼びに戻ってんな」
「思い出した以上、これまでみたいな役職呼びはどうかと思いまして。……ああ、敬語に関してはもう癖なので」
「別にいいけどな」
苦笑混じりに言葉を交わす二人
幼い頃の友人同士、異性ではあれど気心の知れた仲である
「……なぁ、トリッシュ」
「何ですか?」
「出発まで、まだあるよな?」
「ええ」
「……ちょっとでいい。ナターシャと、二人にしてもらえるか?」
「……頑張れよ、ナタルに、クリスも」
「?今、何か?」
「いや、別に」
◇◆◇
「………」
「………」
海を臨む砂浜
そこに、クリスとナターシャはいた
別れの時間は迫っている。二人は、何かを話すでもなく、ただじっと海を眺めていた
「……ナターシャ」
「……なに?」
ぽつりと呼ぶクリスに、ナターシャが応える
「俺さ、今回のこと、すげぇ怖かったんだ。お前が、俺の手の届かない所に行っちまうんじゃないかって」
「………」
「いや、俺に言えた義理じゃないのはわかってる。けど……」
「……クリス」
「ん?」
クリスの言葉にナターシャは微笑み、車椅子に座ったままのクリスの正面に座る
「昔、私は言ったわ。『何があっても、貴方の味方でい続ける』って」
「………」
「あの時、貴方に置いていかれたのはすごく悲しかったし、正直、今でも怒ってる」
「う……」
「……でも」
ナターシャが、クリスの頬に手を伸ばし、優しく撫でる
それを頬を染め、むず痒そうに身を捩るクリス
「……貴方が、あの決断にどれだけ苦しんでたか、知ってるから」
「……ナターシャ」
「それに、ね。クリスは、私とあの子を助けてくれた。それだけで十分なの」
「……そう、か。俺、許されていいのか」
「バカね。許されるも何も、恨んだ事なんて無いわ」
そうして、二人で笑いあう
愛おしげに見つめ合うクリスとナターシャ
クリスの腕がナターシャの背に回り、ナターシャはクリスの首筋に腕を絡ませる
「……ずっと、言いたかったけど、言えなかったことがある」
「……ええ、私も」
「好きだ、ナターシャ。お前だけが、ずっと」
「私も好きよ、クリス。貴方だけを、昔から」
そうして、どちらともなく、唇が重なる
繋がった想いを噛み締めるように、二人はいつまでもその感触に酔いしれていた
「……ったく、見せつけてくれちまって」
「……やっぱり、先生……」
「……クリスさん」
その様子を遠目で見つめているのは、クリスが気になった麻耶と簪、そしてイーリスだった
「……揃って失恋、だな」
「………」
「ま、気持ちの整理なんてそう簡単につかないよなぁ……私もだし」
「イーリスさん……」
「……別に、泣いてねぇし」
苦しげに胸を押さえる簪と、瞳の潤んだイーリスと、気持ちを持って行く先がわからない麻耶
恋に破れた三人は、ただその場に立ち尽くしていた
◇◆◇
夜に染まった、デジタルワールド
崖の上に立つアルファモンとドゥフトモンは、そこから眼下の景色──黒に侵食されていく風景を眺めていた
「……時間が無い」
「ああ。一刻も速くロイヤルナイツを揃えねばならぬ……だが、行方の知れぬ者達は……」
「……それだがな、ドゥフトモン」
「む?」
「人間界を回る内に知った。エグザモンは駄目だったが、他の三体の目星は付けた」
「なっ……生きているのか、皆!?」
「ああ、確かに。だが、厄介なことにIS……束の造った玩具に囚われているらしい」
「……チッ。どれほど我らを追いつめれば気が済むのだ、あの小娘は」
「安心しろ。すぐに連れ戻してみせるさ」
「任せたぞ、アルファモン。我々四体は動けぬ故……あの小僧の始末も、任せる」
「それについては言われるまでもない。……では、私はそろそろ向こうに戻る」
「ああ」
───約束、か
───クリス・オーランド。お前達がイグドラシルに触れることは、二度と無い
───そして待っていろ。残ったロイヤルナイツ
───すぐに、粛正してやる……!
◇◆◇
「……なんだ?」
「どうかしたんですか、クリス?」
「いや、ちょっと気になって機体の様子覗いたんだけどさ。なんか、見たことないのが」
「?」
「ほら、これ」
「『X-PROGRAM』って奴」
そんなわけでメインヒロイン大勝利の回、ただしハーレム状況は続く
いや、メインヒロインとくっついた主人公を狙うサブヒロインズがいるラノベもあるわけだし……(震え声)