The Black α&White Ω   作:オパール

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四巻編、夏休み突入
ちなみに作者には夏休みなんて無かった


PHASE:4 Summer Vacation ─真夏の恋物語─
夏の日、安静強要


「………」

 

臨海学校、ひいては銀の福音暴走事件よりしばらくの時が経ち、IS学園もすっかり夏休みに突入していた

 

「………」

 

医務室のベッドの中で身体を丸める、一人の男

外はかなりの熱気だが、空調が行き届いている医務室はベッドの中でもそれなりに快適であった

 

ただ一つ、問題を挙げるとするならば

 

「……寝れるかっ!つうか暇!!」

 

その状況はこの男──クリス・オーランドには耐え難いものであるということである

 

「うー、整備室整備室」

「許すとお思いで?」

「うぐっ」

 

そそくさとベッドから降りて医務室を抜け出そうとするクリス

そんな彼を、ベッド脇の椅子に腰掛け、カリカリと手元の資料にペンを走らせるトリッシュが制した

 

「……別にいいだろ、暇なんだよ!学園戻ってきて一週間寝たきりだぞ!?もう身体も痛くねぇし、久々に整備科の奴らとも作業とかさぁ……」

「二週間は絶対安静、そう言ったはずです。それに、体調が万全になってからが大変ですよ?」

「え?」

「あの一件で貴方が通した無茶や軽度とはいえ生徒達の負傷に関する始末書、上層部に提出する報告書が山のように溜まってるんですから」

「えー……」

 

ちらりと横目でクリスを制しながら、書き終えたレポートを纏めるトリッシュ

椅子から立ち上がると、まるで子供をあやすかの如くクリスの頭を優しく撫でた

 

「って、ガキ扱いすんな年下ァ!!」

「ふふっ……まぁ、帰省せずに残ってる生徒も大勢いますから、退屈はしないかと。更識さんや山田先生もお見舞いに来ているんでしょう?」

「……いや、まぁ」

「では、これで。……ああ、それでも暇を持て余すというのなら、例の報告書や始末書を持ってきます。今の内に仕上げてもよろしいかと」

「……へーい」

「……返事は?」

「Yes,ma'am!!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そんな感じで、暇を持て余して仕方の無いクリス

 

体力が戻りつつあり、怪我の具合も大分良くなり

 

そんな彼の元を訪ねる者も大勢いた

その一部始終を、お届けしよう

 

 

 

CASE:1 一年四組の場合

 

「失礼しまー」

「クリス先生が大怪我で絶対安静と聞いて!」

「織斑君が秘密でお見舞い(意味深)に来てたと聞いて!!」ホモォ

「今ならくんずほぐれつし放題だと聞いて!!!」ハァハァ

 

「出てけッ!!」

 

 

 

CASE:2 整備科の生徒達の場合

 

「こら本音。怪我人の前でお菓子広げない」

「えー。でも甘いもの食べた方がせんせーも元気出ると思ってー」

「あ、あの、クリス先生?汗とか拭きましょうか?」

「キャッ♪薫子ってばさらりと大胆っ」

「えー、何々ー?いつの間にそんな?」

「って、ちがっ、違うからぁ!」

「そんなことより先生!オメガ・プリンセスの改修案、是非ともお目通しを!」

「そんなこと!?」

「ん?どれどれ…………おい、この『とっつき』とか『ドリル』とか『◯ジマでガチタン』とか何だよ。しかもハイリスクハイリターンで確実に殺しに行く仕様じゃねぇか」

「え?男の人ってそういうのがロマンだって聞きましたけど」

「ロマン履き違えんな!それと、お前等は人の機体をどうしたいんだよ!却下!!」

 

 

 

CASE:3 ラウラ・ボーデヴィッヒとその副官(電話越し)の場合

 

『クリス!生きてますねクリス!?隊長から瀕死の重傷だと聞いたときは我が耳を疑いましたが生きているんですよね!?もう、まったくもう!貴方という人は初めて逢った時からそんなんで、精神に疾患でも患っているのですか!?ただでさえこっちは貴方の動向が心配で心配で週一サイクルで隊長から報告を受けているというのに貴方ときたらもう、ほんとにもう!もしドイツに来ることがあったら直々に矯正しますからよく覚えて……聞いていますか!?ねぇ!』

 

「……電話切ってくれボーデヴィッヒ。うるさくてかなわん」

「愛してやまない嫁に対するクラリッサなりの精一杯の愛情表現です。耐えてください」

「だから嫁って何よ……」

 

『かっ、勘違いしないでくださいね!?別にクリスにまたドイツに来て欲しいとか全然思ってないんですからねっ!』

「……そうか。来て欲しくないのか……」

『えっ』

 

 

 

CASE:4 山田麻耶の場合

 

「お加減はどうですか、クリスさん?」

「やっと良心が来てくれた……!」

「えっ、な、泣くほど嬉しいんですか?その……わたしが来て」

「ああ……濃いメンツばかりで疲れてたんだ……」

「そ、そうですか……あっ。その、お昼ご飯、作ってきたんです。もし、クリスさんがよろしければ……」

「……量は大丈夫だよな?」

「あっ、当たり前です!今度はちゃんとクリスさんの適量で作りましたから!」

「ははっ、冗談だよ。Thank you、山田先生」

「………」

「?」

「……クリスさん」

「なんだ、山田先生?」

「それですっ!」

「えっ」

「クリスさん、前に一度呼んでくれたのに、それ以降一度もわたしのこと「麻耶」って呼んでくれませんっ!」

「え?……あ、あー……学年別トーナメントの時か。いや、あれはその場の空気というか」

「ラーゼリア先生や篠ノ之博士とは旧知の仲だから納得します……てすけど、その……わっ、わたしだって、もっとクリスさんと……」

「……山田先生」

「……ですから。プライベートの時間だけでも、名前で呼んでくださいっ」

「………」

「……なんて、厚かましいですよね。すみません、今の話は忘れて……」

「……麻耶」

「……え?」

「まあ、あんたともそれなりの付き合いだからな。一時期、同室だったわけだし」

「クリスさん……」

「ああ、麻耶」

「あ、ありがとうございますぅ……!」

 

 

 

CASE:5 ナタリア・ストラタスの場合

 

「チッ、生きていたか」

「お前は本当に俺に対して辛辣だね」

「失礼、噛んだ」

「嘘つけ、噛んだってレベルじゃねーぞ。はっきりすぎるほど聞こえたし」

「かみまみた」

「わざとじゃないっ!?」

「シネ」

「明らかな悪意の言葉!」

「……まぁ、冗談はさておきだ。身体は大丈夫か?」

「ん?ああ。今のこの状況が暇すぎるってくらいには」

「そうか」

「……ん?てか、お前どうやってここに?」

「トリッシュに付き添ってもらったに決まっているだろう」

「ああ、そっか」

「……とっとと動ける許可を取って、私をアメリカに連れて行ってくれ」

「ナタリア……」

 

「もう、トリッシュにまさぐられるのはこりごりだ……ッ!」

「俺がいない間に何してんのあいつ」

 

 

 

CASE:6 更識簪の場合

 

「し、失礼、します……」

「おお、更識。悪いな、毎日のように来てくれて」

「い、いえ……あの、これ」

「ん?……うおっ!これ前にやってた特撮映画のDVD!」

「やっと手に入ったので……先生、よかったらと思って」

「ハッハー!Thank you!」

「……よかった」

「……更識?」

「………」

「何か、あったか?」

「……先生。先生は、その」

「?」

「……いえ、やっぱり、いいです。これで、失礼します」

「え?いや、もうちょっといろよ。これも一緒に見ようぜ」

「……先生」

「ん?」

「……恋人がいるのに、他の女の人を映画に誘うの、よくないと思います」

「えっ……」

「………」

 

 

 

CASE:7 織斑一夏と篠ノ之箒の場合

 

「よう」

「失礼します、クリス先生」

「具合はどうですか?」

「悪いな、お前らも色々忙しいだろうに」

「いえ、そんな……元はといえば、俺達にも原因があったわけですから」

「……オーランド先生。その……」

「……いいのか、箒?」

「ああ。私なりのケジメだ。先生、紅椿は……」

「……いや、やめとけ」

「え?」

「あの時は俺も気が立ってて、ついあんなこと言っちまったけどさ。せっかく束の奴が造った機体なんだ、まだ持っとけ」

「オーランド先生……」

「その代わり」

「は、はいっ!」

「……二度と間違えんなよ?その時は、やり直しはきかねぇからな」

「……はい。絶対に」

「……よかったな、箒」

「よかった、と言っていいのかわからんがな……」

「……その、クリス先生」

「ん?」

「………」

「……なんだよ?」

「……俺、千冬姉しか兄弟いないんです」

「らしいな」

「だから何て言うか……兄貴、男兄弟っていうのに、ちょっと憧れとかあって」

「………」

「……先生。先生のこと、「クリス兄」って呼んで、兄貴みたいに思っても、いいですか?」

「お前……」

「もちろん、学校ではちゃんと先生って呼ぶし、先生が嫌なら、このことは俺も忘れます」

「………」

「………」

「……ふぅ」

「うっ……」

「……ま、断る理由はねぇな。ただし、俺の弟分になる以上、これまでよりキツく行くぜ?」

「あっ……ありがとう、クリス兄!」

「ふふっ……千冬さんの立場が無いのではないか?」

「それもそうだな」

「千冬姉も認めてくれるって!じゃあ、俺先に戻るな、箒!」

「ああ」

「それじゃあ、失礼します、クリス兄!」

 

「……眩しい奴」

「そうですね」

「……頑張れよ?」

「え?」

「俺も幼馴染に恋して、最近になってようやく結ばれた身だ。それに……束の妹のお前、ちょっと応援してんだぜ?」

「う……」

「まっ。まずは口より先に手が出る所をどうにかしなきゃな」

「うぅ……」

 

『あっ、一夏!』

『ん?シャル……って、おっと!?』

『ねぇ一夏。この後時間ある?』

『あ、あぁ、まぁ』

『だったらこの後街に出ない?良いお店見つけたんだ』

『へぇ。シャルが言うなら本当なんだろうな。いいぜ、じゃあ箒も……』

『……いいからいいから!大人気だからすぐ混んじゃうんだよ!行こっ!』

『うわっ、引っ張るなって!』

 

「………」

「……行っていいぞ。ただし一夏の奴には当たるなよ?」

「一夏ァァァァァッ!!」

「……聞いちゃいねぇ」

 

『ん?おお箒……って、何で紅椿展開して……シャルまで!?いや、待てってここじゃあぶな……うわああああっ!?』

 

「……生きろ一夏」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……あ゛ー、終わったー」

「……確かに。お疲れさまでした」

 

夕刻を過ぎて夜

トリッシュから渡されたレポートの山を全て片付け、クリスはベッドへと身体を沈めた

 

「これで後は絶対安静が解除されるのを待つだけ、か」

「まぁ、生徒達相手にあれだけはしゃいでたんですから、時間の問題かと」

「………」

「……クリス?」

「……なぁ、トリッシュ」

「?」

「アルファモンのこと、どう思う?」

「どう、とは?」

「いやな。この一週間、あいつのこと色々と考えてみたんだよ。俺を狙ったり、ISコアを破壊したりしてきたあいつのことをさ」

「………」

「あいつは俺を指して、『進化の入口に立った』って言ってた。ISをただの玩具、それを使う俺を進化の先に行かせるわけにはいかない、ってさ」

「……進化、ですか」

「ああ」

「……アルファモンの口振りから言って、その対象は貴方だけではなく人類そのものに対しても同じだと思えますね」

「……それと」

「まだ、なにか?」

「ああ。アルファモンが取り憑いた機体……アルファ・エンプレスの操縦者のことだ」

「あっ……」

「俺は最初、また別の、どこかの誰かが乗ってるんじゃないかと思ってた」

「……今は?」

 

「……たぶん、誰も乗ってない」

 

「誰も……無人機、ということですか?」

「……いや、言い方が悪かったな。恐らくだけど、操縦者は、アルファモン自身だ」

「……それは」

「ムゲンドラモンと同じ理屈だと思う。ISコアに取り憑いて、その管制人格ごと掌握、自分の意思で機体を操縦する……デジモンならわけないことだ」

「……束が、そうだという可能性は?」

「いや、それは無い。あいつがわざわざISに乗って、俺を殺しにかかる理由が無いからな。それに、いざとなったら飛行中にISコアを凍結させればいいだけの話だ。……俺が墜ちた時みたいに、な」

「………」

「……とりあえず、今俺達がやるべきことはいくつかある。一つは、言わずもがな学園と生徒達を守ること。二つ目は、行方不明のロイヤルナイツを探すこと」

「行方不明……マグナモンや、スレイプモン達のこと、ですね」

「ああ。この間も言ったけど、オメガモンやアルファモン達以外にも、こっちに流れてきてるデジモンは多いはずだ。なら、死んだって確定してないみんなが人間界にいる可能性も、無いわけじゃない」

「……あと、もう一つあるんですね?」

「ああ……束に、俺達とイクドラシルとの約束を思い出させる。そして、一緒にデジタルワールドに戻る。これが一番大事なことだ」

「……その鍵は、恐らく」

「……アルファモンだ」

 

かつて、束と共にあり、クリス達とも戦友と呼べる間柄であったドルモン……アルファモン

彼との今後こそが、クリス達三人、そしてイクドラシルとデジタルワールドの今後を左右するものであると、クリスは考えていた

 

「……どうにか、しないとな」

「ええ……」

 

そして、夜が更けていく

 

そんな折、医務室のドアが開かれる音がした

 

「し、失礼します……」

「ん?」

「あら、更識さん。こんな時間にどうしたの?」

 

正体は簪だった

何やら焦った面持ちで、視線をさまよわせている

 

「あ、あの、先生……」

「……何かあったのか?」

「……その……実は」

 

 

 

 

 

 

 

『おい!出せよ!僕をここから出せ人間!』

 

 

 

 

 

 

 

「「……え?」」

 

聞き覚えのある声が、簪の指……打鉄弐式から聞こえてきた

簪がたどたどしい手付きでディスプレイを操作、モニターが現れ、その中には

 

 

 

白い身体に赤いマント、小さくも大きな可能性を感じるその体躯

 

デジタルモンスター、ハックモンがそこにいた

 

 

 

「………」

「………」

「……あの、その。あの時、連れてきちゃってたみた

いで……」

「……クリス」

「……胃が痛ぇ」

 

 

 

 

一方、アメリカ某所

 

 

 

『あの、マスター?ここがどこなのか、教えていただけますか?』

「アイエエエエ!?ガオモン!?ガオモンナンデ!?」

 

そんなアメリカ代表とデジモンの一幕があったそうな

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