人間で在りたい神殺し   作:鎌鼬

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まつろわず神と月の巫女

 

 

さて、腹が減ったので何か食おうかと思いバイクに乗って町にやって来たのだが…………

 

 

「やべぇ…………腹ぁ減りすぎて腹が痛い…………」

 

 

 

起きてから時間が経ったからなのか、頭が空っぽの胃袋のことを強調し出している。それは構わないのだが強調し過ぎで腹が痛くなってきた。目的の場所まではもう五、六分だがその間の時間すら待てる気がしない。

 

 

「しゃあねぇ、自販機で何か飲みもん買うか」

 

 

近くに公園があってその中に自販機があることを思い出して、車の通行の邪魔にならないところにダイナミック駐車を決めて自販機に向かう。こういうときに冷たい飲みもんだと余計に腹が痛くなることは過去の経験から明らかなので硬貨を入れてホットのコーヒーのボタンを押す。

 

 

「あ゛ぁ゛~五臓六腑に染み渡る~」

 

 

空っぽの胃袋にコーヒーを与える作業に勤しんでいると…………言い様の無い違和感を感じた。コーヒーを与える作業の片手間に辺りを見渡して周りを見てみる。すると直ぐにその違和感の正体に気がついた。

 

 

「人がいない…………?」

 

 

そう、人がいないのだ。昼時のこの公園には周囲にビルがあることもあって昼食を外で取る人がチラホラ見えている。流石に雨の日ではそんなことは出来ないが今は快晴、しかも気温は程好い具合で寧ろ外で食べたくなるような天気。

 

 

それなのに人がいない?

 

 

「ーーーーーーーーーー貴方」

 

 

違和感の正体に気づいたついでにこうなった原因を考えていると声をかけられた。無視する理由がないのでコーヒーを口に運びながら向くと…………肩にフクロウを乗せた一人の少女がいた。

 

 

銀髪にニット帽を被り、カーディガンを羽織っている少女は眠たげな垂れ目の綺麗な顔立ちをしている以外にはなんらおかしいところは見られない…………その姿には。

 

 

その少女を一目見た瞬間、俺の血がざわつくような感覚を味わった。過去にこれは感じたことはある、その時の物に比べれば劣るものの…………目の前にいるのはそういう存在なのだと理解できた。

 

 

コーヒーを飲み込むのと同時にそのざわつきを抑え込む。この少女の正体は分かったものの、今ここで相手をしていい存在でもないのだ。

 

 

「…………どうした、嬢ちゃん?」

 

 

少女の一挙一動を見逃さぬように注視しながら、その少女に話しかける。

 

 

「ーーーーーーーーーー」

 

 

少女は何度も言い淀むように口を動かしているが言葉にしてはいない。何をしようとしているのかわからないので警戒しているのだがーーーーーーーーーー

 

 

ググゥ~

 

 

「…………」

「…………」

 

 

少女から聞こえた音を聞いて一気に警戒心が解けてしまった。少女もその音が俺に聞こえたことを分かっているのか恥ずかしそうに赤くした顔をニット帽で隠そうとしている。

 

 

「…………えっと…………腹、空いてるのか?」

「…………お金、無い…………」

「…………」

「…………」

 

 

どうしたら良いのか分からなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました~」

「来たな、おら食え」

「…………いいの?」

「ガキなら遠慮なんてするな。それに飯食わせるのを渋るほど金欠でもねぇしよ」

 

 

あの後何だかとっても馬鹿らしくなってきたので少女を連れて目的のファミレスまでやって来た。それで自分用に和風ステーキ定食、少女用にお子様ランチを頼んだ。少女は遠慮がちにしているが目はキラキラしているのが分かる。俺が良いと言うとスプーンとフォークを持ってどこから責めようか悩んでいた。

 

 

「む…………やっぱり豚カツにしときゃよかったか?」

 

 

ステーキを一切れ口に放り込み、予想していた物と違う味に少し落胆しながら箸を進める。お薦めと書いてあったから頼んだが俺の口には合わなかったようだ。

 

 

「美味しい…………!!」

 

 

それとは対極的に少女は山型に盛り付けられたチキンライスを食べて目をキラッキラさせている。公園で見たときには喜怒哀楽が薄いタイプかと思ったが顔に出にくいだけできちんとあるらしい。

 

 

「がっつかなくても誰も盗りやしねぇよ。そんなに慌てて食ってると詰まらせるぞ?」

「ムグッ!?」

「ほら言った通りになった」

 

 

喉に詰まらせて苦しそうにしている少女にお冷やの入ったグラスを渡すと少女は躊躇うことなくそれを一気に飲み干した。そして流し込むことが出来たのか荒い呼吸をしている。

 

 

「…………死ぬかと思った」

「ゆっくり食えや。足りなかったら追加頼んでも良いからよ」

 

 

流石に今ので懲りたのか少女は口に運ぶ量を減らして食べ出した。それを見てもう詰まらせないだろうと思い自分の定食を片付けることに集中する。

 

 

そして食べるものを食べ終えて、食後にドリンクバーから持ってきた少女用にジュースを渡して自分用のコーヒーを啜る。

 

 

「んで、どうして俺に話しかけて来たんだ?まさか飯奢って欲しかったからだけじゃないだろ?」

「…………その前に自己紹介、私はルナ」

「ルナ…………確か月って意味だよな?俺は柊龍紀だ」

「ヒイラギタツキ…………タツキ、貴方は『神殺し』?」

 

 

…………この幼女いきなり話の本題ぶちこんできたぞ。少女の言葉に少し驚きながらも周囲に聞き耳を立てる。少女の言葉に目立った反応をしているものはいない、つまりここにはそっち側の人間がいないことになる。

 

 

「そうだ、そういうお前は…………『まつろわぬ神』か?」

 

 

神殺しとまつろわぬ神、殺し合うはずの両者が同じテーブルについて飯を食ってるとバレたらそっち側の奴らはどんな反応をするのだろう。少し気になるな。

 

 

「…………違う、私はまつろわぬ神の巫女。この体を貸しているだけ。彼女は眠ってる」

「神様が人間に憑いてるのか?そりゃあ珍しい。誇りとプライドだけで生きているような人間見下す神様が人間に憑いてるとか、どういう心境だ?」

「…………彼女は消える寸前だった。だから私は体を貸した」

「なるほどねぇ、神様でも死にたくないって奴か?」

 

 

でもルナの説明のお陰でまつろわぬ神と対峙した時に感じるざわつきが小さかったことに納得が出来た。用は今まつろわぬ神は休止状態で見つかりにくいだけなのだ。だから目の前に現れてようやくまつろわぬ神がいると気づける。狙ったのか狙ってないのか分からないが上手くやってるな。

 

 

「…………え?…………うん、分かった。タツキ、彼女が話がしたいって」

「あいよ、俺もそいつがどんなやつか知りたいと思ってたんだ」

 

 

ルナが目を閉じて意識を集中させる。そして再び目が開かれた時、そこにはルナの面影はなかった。同じ顔だというのに別人のように感じられる程の変貌、今の彼女は巫女ではなくまつろわぬ神なのだ。

 

 

「ーーーーーーーーーー妾の巫女が世話になったな、神殺しよ」

「流石に腹空かせてるガキ見捨てられるほど外道やってねぇんだよこっちは。それよりもあんた…………本当にまつろわぬ神なのか?」

 

 

確かにざわつく感覚はある、しかし過去に出会った神に比べれば格段に劣るものだった。まるでこのまつろわぬ神が完成していないような。

 

 

「気づかれたか…………察しの通り、この身はまつろわぬ身では無い。神格を剥奪され、巫女の体に宿って消えることを防ぐしかできない脆弱な存在だ」

「そんな状態なのにここに来たってことは…………まつろわぬ神になるための物がここにある?」

「その通りだ、妾の半身とも言える『古の蛇』がこの地にあるのだ」

「ふーん」

「…………反応が薄いな神殺し、それでもまつろわぬ神の敵対者か?」

「べっつに~?俺神殺しなんてどうでも良いと思ってるし~?初めて殺った神様からも神殺しの使命なんてどうでも良いって言われてるし~?」

 

 

まぁ、他の神に聞かれたらキレられそうなのだが俺と宿儺からしたらそんなものなのだ。

 

 

やるなら好き勝手やってくれ、ただし面白そうなら首突っ込んでやる。

 

 

人生を楽しく生きるためには平穏も大切だけど刺激も必要なんだよ。

 

 

「なんとまぁ…………変わった気概の神殺しだ。神殺しの称号をどうでも良いと言い切るとは」

「あ?キレないのか?神殺し足るものうんぬんかんぬんとか言わないか?」

「少なくとも、妾の目からは貴方がその答えを悩み抜いた果てに出したように見える。ならそれに口出しするのは野暮と言うものだ」

「あらやだ格好いい」

 

 

何この神様格好いい。飲んでるのがジュースで締まらないのが残念だけど。

 

 

「つまり、貴方は妾と戦わないと言うことで良いのか?」

「あ、俺のこと信用しない方が良いぜ?自他共に認める快楽主義者だからな。だけど、少なくとも人間に憑いてるお前を殺そうなんて考えてねぇよ」

「なるほど…………つまり貴方は楽しめる状況なら介入するということか?」

「そのと~り、人生なんて一度しか無いものだからな、どうせなら楽しく生きたいじゃん?」

 

 

まぁ…………俺はあいつの玩具のされているせいで二度目なんだけどな。

 

 

「…………神殺しよ、一つ頼みがある」

「…………神様が人間に頼み事だぁ?面白そうだな、聞かせてみろよ」

「妾は元の姿に戻りたい。その為にこの町にある『古の蛇』を見つけねばならない。どうか力を貸してほしい」

 

 

そう言うとまつろわぬ神は俺に向かって頭を下げてきた。当たり前のことだがまつろわぬ神というのは多少の差こそあれど人間を見下しているものしかいない。それはそうだ、まつろわぬという神話から外れた存在だろうが神であることには変わり無いのだから人間を見下すのは奴らからしたら当たり前の事なのだろう。

 

 

だというのに、このまつろわぬ神は頭を下げてきた。見下しているはずの人間に頭を下げてまで、元の姿に戻りたいと願っているのだ。

 

 

こいつが元の姿に……………………見てみてぇな。

 

 

「貴方が望むのなら妾の体を差し出しても良い」

 

 

まつろわぬ神がそんなことを言った瞬間にガタンという音が店のあちこちから聞こえてきた。

 

 

「要らねぇよ」

 

 

俺がそう返すと俺に向かって信じられないような物を見る目線が集まる。残念ながら幼女趣味じゃ無いんでな、元の姿が想像できないからその体基準で考えてしまう。

 

 

「お前は俺をペドにしたいのか?…………まぁ、面白そうだから手を貸してやるよ」

「…………本当か?」

「嘘言ってどうする。俺が気になるのはお前の元の姿とやらだ、気になっちまったんだからやるしかねぇだろ?」

「そうか…………礼を言おう、神殺しよ」

「柊龍紀だ、いつまでも人のことを神殺し神殺しと呼ばないでくれ、物騒だ」

「あぁ、なら龍紀と呼ばせてもら…………」

 

 

言葉を言い切る前にまつろわぬ神はふらりと体制を崩しそうになった。咄嗟に手で支えているが顔色は良くない。

 

 

「限界か?」

「あぁ…………少し、休ませてもらう…………『古の蛇』の場所は…………妾の巫女に聞け…………たの、む…………」

 

 

何とか堪えようとしていたのは理解できたが耐えることが出来なかったのかまつろわぬ神は辛そうに目を閉じた。そして再び目が開いた時には眠たげな目になっていた。

 

 

「…………話は終わった?」

「あぁ、お前の神様の手伝いすることになったよ」

「…………そう、よろしく」

「躊躇なしかよ…………疑うこと覚えたらどうだ?」

「…………要らない、タツキは好い人。タツキなら安心」

「あれ?なんか懐き度カンストしてないか?」

 

 

飯与えたから懐いたのか?まんま餌付けじゃねぇか。

 

 

「さて、そいじゃ神様の探し物でも見つけに行きますか」

「…………案内は任せて。彼女と繋がりのある私ならどこにあるか分かる」

 

 

こうして俺はまつろわぬ神の元の姿が見たいからという理由でまつろっていない神様とその巫女のルナに手を貸すことを決めた。

 

 

 





と言うわけで原作に登場する銀髪ロリ神様登場でした。

この小説ではロリ神様は原作よりも激しく消耗していてルナに取り憑かなければ消滅してしまう程に弱体化しています。実はそのお陰で日本の術者の目を逃れられたという裏設定。

垂れ目の状態がルナモード、クーデレタイプ。
つり目の状態がロリ神様モード、高圧ロリタイプ。
つまりは一人で二度美味しい…………!!(錯乱)

ちなみに龍紀はロリ神様の正体に気づいてません。だってヒントが無いんだもの。蛇ってだけで分かったら相当神話に詳しい人じゃないと分からないですからね。


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